2023年2月12日日曜日

「200万人来館!」という“大本営発表”

 

こんにちは、日向です。


前回、2020年6月に和歌山市駅前に新築移転して、全面開館した和歌山市民図書館が、今年1月6日に来館者数200万人を突破したとの朝日新聞の記事を取り上げました。


朝日新聞の200万人来館報道に怒った和歌山市民



全面開館から2年半で200万人来館という数字だけボンと見出しでみせられれば、なんか凄いことのように思いますよね。そのカラクリについて前回は詳しく述べましたが、この来館者数そのものの解釈については、危ういところがあるんです。凄いどころか、かなりショボイ数字なのでは、というのが私のみたてです。


その点を詳しくのべておきます。



下をみてください。








2016年に、和歌山市と同じく、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とRIAプロデュースで駅前に新築移転した宮城県多賀城市立図書館では、初年度142万人の来館者がありました。5年前の旧館と比べて15.3倍にもなっているんです。交通の便の良くなロケーションから駅前に新築移転して、内装には湯水のごとくカネをつきこんだ商業施設になったわけですから、ある程度来場者数は増えて当然なんです。 “空箱”を拝んだ142万人参照


その点、和歌山市はどうかといいますと、移転前の旧館の来館者数はだいたい年間20万人前後。それが全面開館した2020年は66万人(うち3か月は一部開館、全面開館は9か月)。翌2021年度でも75万人しかありませんでした。3~4倍ですから、多賀城市の15.3倍と比べたら、あまりにも期待外れなんです。


CCC自身、指定管理者に選定されたときに提出していたプロポーザルで目標の来館者数を「年間100万人」としていました。CCCは低めの目標を掲げておいて、「たった〇カ月で目標達成!」とぶちあげるのが、いつもの手法なのに、和歌山市に限っては、3年たってもその目標に遠く及びません。


2017年11月の指定管理者選定時にCCCから和歌山市に提出したプロポーザルには、年間来館者目標として、100万人という数字を明記していた。



こちらもCCCが2017年の指定管理者応募の際に和歌山市へ提出した文書。当時の市民図書館の来館者数19万人と、すでにツタヤ図書館として開館していた武雄市、海老名市、多賀城市、高梁市と比較している。しかし、実際に2020年にツタヤ図書館として新築移転した和歌山市民図書館の来館者数は、66万人と、人口5万人の武雄市よりも少なく、人口3万人の高梁市よりは少し多い程度だった。ちなみに和歌山市の人口は35万人(人口はいずれも開館当時)




CCCとしても、こんなことは初めての経験で、いくらコロナ禍で日本全国の文化活動が鈍ったとはいえ、こんなに苦戦するとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。


どうして、そうなったのか、その理由は、これから専門家の先生に詳しく分析してもらうわないとわかりません。


そもそも、多賀城や年間200万人来館とぶちあげている周南市などの数字自体が、よくいわれる1人の来館者が出入りするたびにダブルカウント、トリプルカウントされていた怪しい数字だったのに、和歌山市では、どういうわけか、正味の数字しか出ていないのかもしれません(和歌山市も、5か所の入り口でカウントしてCCCが市教委に報告しているそうですが)



そのくらい信頼性のない数字なんですよ。全員がチケットを購入して入るディズニーランド(2018年3200万人、2021年1200万人)やUSJ(2016年1400万人)とはまったく違うものだということは、繰り返し述べておきたいところです。


駅前ですと、学生さんや通勤する人が、仕事帰りに、気楽にのぞいて、立ち読みならぬ座り読みでもしていこうというニーズはかなりありますので、駅利用者の多くを施設の来観者に取り込めるアドバンテージは圧倒的です。もちろん、それが図書館利用者と認定されるかといえば、ほとんどが、ただ館内を通過しただけの人数ということになるはずです。


その意味では、駅前型のツタヤ図書館の来館者数がケタ違いに多いのは、「水増し」を疑うのが筋でしょう。


この水増しされた数字の問題点は、新聞や雑誌の公称部数をイメージするとわかりやすいのではと思います


かつて読売新聞の公称発行部数は「1000万部」とか言われてましたが、それは、実売部数とかけはなれた水増しされた部数だと指摘されていました。


新聞雑誌ともに、そこに広告を出稿する際には、公称部数ではなく、第三者機関による実売推定部数を基準にした数値が使われますので、公称部数を額面通りに受け取る人は、あまりいなかったのです。


ところが、ツタヤ図書館の来館指数というのは、図書館利用者ではなく、


駅の賑わいスペース、カフェと書店、物販店に子育てスペースや、イベント客、市民活動などをすべてひっくるめた来場者の数です。


しかも、来場者のカウントは一個所ではなく、数か所の出入口に設置されたカウンターによって計測されていますので、こども図書館が別棟になっていたりしますと、両施設を出入りするたびに、ひとりの利用者を2人、3人に数えてしまうおそれもあるんです。


簡単に「ダブルカウント」とか言いますが、もしそれが本当にあったとしたら、100万人とされていても、事実はその半分の50万人だったとしたら、その評価は「凄い」から「ふつう」へと、根本的に異なってくるはずです。



その、いわば公称来館者数の真偽が第三者の検証を受けることなく、疑いようもない厳然たる事実として扱われたあげく、


図書館・市民センターを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブの輝かしい実績として、他の自治体のみならず、メディアを通して全国に喧伝されて、次の受託への足掛かりとなっているんです。


これはツタヤ図書館だけに限らず、最近の複合施設にも共通していえることですが、実際の図書館利用者だけを厳しくカウントしていなければ、あまり意味のない数字になってしまいます。


図書館利用者という確たる「芯」の部分があって、そのまわりに商業施設としての利用者がついてきているのでしたら、あまり目くじらたてることもないんですけれど、


そもそも複合施設全体の来場者数には、本来の図書館利用者は極端に少なく、ほとんどが商業施設としての利用や、本来の図書館利用とは異なる持ち込み学習、ネットカフェ代りのwifi利用、書店の雑誌座り読み、イベント・コンサート客など、物見遊山の人たちばかりなのが実態ではないかと思います。


それでも、図書館に足を運ぶきっかけとしては悪くない、こどもも大人も通ううちに図書館を利用するようになるという淡い期待も、これまでのツタヤ図書館の統計データからは否定されています。新装開館の年をピークに、リニューアルしなければ年々来館者数は減っていき、貸出カードの更新時には、登録者数が半減するという実態が、それを証明しています。


図書館利用のきっかけどころか、新しい図書館に当初は何度か出かけてみたものの、そのうち飽きてきて行かなくなる。結果、図書館をますます利用しなくなってしまうという、逆説的なことが起きているのではないかとみています。




さて、話を和歌山市民図書館の2年半で200万人という来館者数に戻しましょう。


公表されている図書館要覧をみますと、初年度の2020年度は66万人でした。初めて丸12か月となる2021年度も75万人でした。







2020年からはじまったコロナ禍の影響をもろに受けているかのようにも思えますが、しかし、和歌山では、新型コロナの感染者数は、首都圏や大阪主要都市と比べてもケタ違いに少なく、CCCがイベント等で国の基準に違反して定員いっぱいの参加者を入れていたくらいですから、そんなに大きな影響があったとも思えないのです。


あえていえば、県外からの観光客の激減でしょう。


下をみてください。市民図書館が移転した南海電鉄和歌山市市駅の乗降客数の推移です。



年度    1日平均乗降人員    順位    

2018年(平成30年) 16,723 18位

2019年(令和元年) 16,455 18位

2020年(令和 2年) 12,271 17位

2021年(令和 3年) 12,714 17位

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E5%B8%82%E9%A7%85#cite_note-nankai2020-8 より


2019年に1万6000人だったのが、コロナ禍に突入した2020年は1万2000人まで減っています。翌2021年度もほとんど変わっていません。


これをみると確かに、電車での人の往来が減ったことによって、駅前立地のツタヤ図書館の来観者も当初の見込みよりも大き減ったということは言えると思います。


ただ、順位をみてください。2019年18位から2020年に17位と、ひとつあげていますが、大きな変化はありません。


コロナ禍の影響は、南海本線全体が受けているはずですので、市民図書館も含めた駅ビルのキーノ和歌山(2020年4月24日一部テナント開業、2020年6月5日市民図書館全館開業)が新しくできた南海電鉄・和歌山市駅は、コロナ禍に関係なく、この順位を大きくあげてないとおかしいのです。


なんてったって、総事業費128億円をかけた一大プロジェクトです。南海電鉄にとっても社運をかけた事業のはずですし、そこに国費32億円、和歌山市と和歌山県32億円の計64億円の公金が注ぎ込まれています。図書館の取得費34億円も含めれば、公費だけで98億円かかっているんです。


それなのに、和歌山市駅は順位をひとつあげただけで、乗降客数の減少傾向にまったく歯止めがかかっていません。


こういった情報も総合的にみていきますと、「2年半で200万人来館」という市民図書館の数字が、いかにショボイものかということが、次第にみえてくるかと思います。


つまり、オシャレなデザインと派手なイベントに騙されがちですが、当ブログで、これまでさんざん指摘してきているように、新しい図書館としての機能面でも失敗であるばかりか、中心市街地活性化のまちづくりの面でも、大失敗の可能性が高く、朝日新聞はじめ地元メディアの提灯記事は、そういった問題点をことごとく覆い隠す役割しか果たしていません。


本来なら2013年に武雄市で元祖ツタヤ図書館がオープンした後、冷静にメディアがその成果を検証しなければならなかったところ、そうしたことをまったく行なわないばかりか、CCCのアピールを鵜呑みにして垂れ流したり、はたまた、みてくれに騙されて「ツタヤ図書館は成功している」という“大本営発表”をばらまきつづけることで、ますます深刻な状況へと陥っているのではないでしょうか。


いまからでも遅くはありません。まず図書館の機能として、果たしてツタヤ図書館は、優れたものになっているのか? 図書館利用者は本当に増えているのか? 本来の役割を果たしているのか? そういったところから、検証してほしいですね。


そのうえで、まちづくりの面では、ゾンビ企業を延命するだけのために、巨額の公金が民間企業へジャブジャブ流れている事実にも、ぜひ目を向けていただきたいものです。


よろしくお願いいたします。


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2020年8月29日土曜日

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20206月》

和歌山市民図書館は、ICタグ装備せず「ICタグと自動貸出機」はセット自動貸出機についての補足説明和歌山市民図書館の自動貸出機について3800万円“安全対策”出来レースの代償後編出来レースの代償・前編専門家がほとんどいない審議会 『第9版 失業保険150%トコトン活用術』についてのお詫びと訂正 TSUTAYA占領地のレジスタンス 疑惑まみれのグランドオープン 白塗り”に隠されていた告発意図


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