2021年4月15日木曜日

NHKが垂れ流す和歌山市民図書館の“ウソ八百”


こんにちは、日向です。


本日は、先月「公式回答が“ウソ八百?”の和歌山市読書活動推進課」で取り上げました和歌山市民図書館の運営費の件についての報告です。


3/11に公共放送のニュースで、ツタヤ図書館になった市民図書館が取り上げられまして、


和歌山市は民間に任せたにもかかわらず、

運営費用は、直営時代とほとんど変わらない



という真偽不明の情報をNHKが、なんの検証もせずに垂れ流していましたので


和歌山市の担当部署に、詳細な内訳を出してもらえるよう依頼しておりましたところ、


一か月以上かかって、ようやくその内訳が出てきました。


下をみてください。これがその内訳です。






前回の記事で、私がNHKがニュースで放送した情報はウソだとした根拠は


2016年2月の議会で、尾花市長が以下のように述べていたことでした。


現在の図書館の運営費は約2億1,800万円で、建物の維持管理費で見ると約5,500万円となっています。 
公式回答が“ウソ八百?”の和歌山市読書活動推進課) 



この後、2017年に西分館がオープンして、その分も図書館運営費にプラスされますけれど、本館の運営費費自体は、2.18億円と答弁されてましたので、それからすると、直営時代でも、指定管理になってからの3.3億円と同じ費用がかかっていたというのは、いくらなんでも過大ではないのかと捉えていたわけです。


で、今回、改めて市当局が出してきた図書館運営費の内訳をみますと、この市長答弁のほうががウソだったということになっています。


どういうことかといいますと、市長答弁の2.18億円には、非常勤職員の人件費5300万円が入っておらず、それと西分館の運営費5000万円も入れた平成30年度の運営費は、CCCの指定管理になってからの3.3億円とほぼ同額だというんですね。


ますます、おかしいと思いません?


私、いつも言っているんですが、図書館は民間委託したら、運営費が安くなるなんてことはありえません。利用者から対価を取れない図書館は、民間委託したからといって収入が増えるわけではないからです。光熱費や図書購入の費用も、公営だろうが民間だろうが、たいしてかわりません。あえていえば、人件費を削りまくることくらいしか、“効率化できる部分”はありません。


ということは、和歌山市は、もともと市直営時代から、図書館の運営費がべらぼうに高かったということになってしまいますね。





で、少し検討していくと、カラクリがわかりました。下の図をみてください。








直営時代の2018年には、市民図書館の組織の中に「図書館設置準備班」という4名からなる別動隊がありました。


これ、市民図書館を市駅前に移転するために作られた部署なので、当事者に「直接図書館の運営にはあたりませんよね?」と聞いてみると、


「イベントとかで手伝うことはあったが、貸出作業や運営業務にはほとんどかかわっていない」


とのことなので、この分の人件費は、図書館運営経費からのぞくべきものです。



一方、CCCの指定管理になってからですが、市教委内の市民図書館という部署はなくなったかわりに、


読書活動推進課 という部署が新たにできました。



これ、先述した図書館設置準備班のメンバーと、直営時代の正規職員が横滑りしてできた部署です。


言いかえれば、CCC運営の指定管理施設を管掌する部署です。

この部署は、学校図書館へ3人の司書を派遣していることを除けば、市民図書館の管理運営業務の監督をするのが仕事なので、


民間企業にたとえれば、指定管理施設が直接費だとしたら、本社機能の間接費にあたる部分です。


なので、これは、当然、指定管理にしても図書館運営費に入りますので、この分の間接費が正規職員7名+再任用職員1名の8名分の人件費が上にのっかる計算です。


そうしますと、少なくとも直営時代よりも1億円前後(直営時代は3000~4000万円マイナス、指定管理以降は6000~8000万円プラス)は、指定管理になってから運営費は増えている計算です。


開館時間が直営時代の1.5倍になったとCCCサイドは、アピールしていますので、その分の人件費が直営時代の非常勤人件費約5000万円の多めに見積もって約2倍、水道光熱費・消耗品費も多めに見積もって1700万円の約2倍になったと仮定しますと、6700万円費用が増える計算です。


それでもまだ直営時代のほうが運営費は安かったという結論になります。


もちろん、民間企業が運営するのですから、どこかで利益を出さないと採算はあいませんけれど、そこは、スタバと蔦屋書店の賃料が月300万円はくだらないところを、たったの19万円で貸してくれるという、あからさまな利益供与を受けているわけですから、そちらでしっかり稼げるはずです。


ちなみな、2017年にオープンした西分館の費用は、2018年時点ですでに民間委託に出されていますので、こちらは、指定管理前後での変動はありません。





というわけで、相当アバウトな捉え方ではありますけれど、


「ツタヤ図書館になってからも、運営費は直営時代と変わらない」というのは、あきらかにデマである


ことがおわかりいただけたでしょうか?


NHKさんは、公共放送なんですから、こういうCCCの宣伝になるようなデマを垂れ流さないように注意していただきたいと思う次第です。



さて、今回提示されたデータのなかで、ひとつ気になったのが、2016年の市長答弁には含まれていなかった「非常勤人件費」です。


これが直営時代の2018年度には5300万円もかかっています。この年度の決算データをもとにしている令和元年度の図書館要覧をみますと、市民図書館の非常勤職員の数は、資料班5名、サービス班18名の計23名です。






非常勤人件費5300万円を23人で割りますと、ひとりあたり平均230万円になります。


驚くべきことに、当時の和歌山市では、パート職員はひとりも雇用しておらず、非正規の全員がフルタイム勤務で、社会保険にも加入していたそうです。


これは、スゴイですね。直営の図書館ですと、数人のフルタイム職員が図書館全体の運営業務を担い、ひとり年間103万円以内パート職員を多数雇用しているようなイメージがありましたけれど、和歌山市ではそういうことがなく、結構まともだったんですね。


非正規で年収230万円ではお世辞にも好条件とはいえませんが、直営でも、民間委託とおなじように、最低賃金で週20時間未満の社保なし勤務にするところもめずらしくなくなりつつある世知辛いなか、


非正規でも全員がフルタイムで働いていたというのは、ちょっと驚きでした。だからこそ、司書資格保有率が9割近くいて、正規職員の行政職をのぞけば、ほぼ全員が司書資格者だったというのも、なんとなくうなづけます。


CCC指定管理になってからは、総勢77人中57人がパート職員ですので、このうち司書資格者が10人(全体では26人)しかいなくなるというのも、さもありなんですね。


本館と西館の合計


スタッフ総数

パート

フルタイム

フルタイムのうち司書資格者

パートのうち

司書資格者数

司書資格者計

有資格率

2019/3/31(※)

37

23

14

10

22

32

86%

2020/03/31

77


56

23

18

10

28

36%

2020/6/30


77

57

20

16

10

26

33%

(※)便宜上、「非常勤」を「パート」、正規職員を「フルタイム」にそれぞれ分類して比較したが、実際の勤務時間でみると、この当時、短時間勤務者はおらず、全員がフルタイム勤務だったことがあとから判明した。


さらに詳しくみていけば、もっといろいろなことがわかると思いますが、とりあえず、今日わかったのは、そんなところです。




もう一点は、忘れないうちに取材メモとして書いておきたいことです。


司書資格率を指定管理者の募集要綱の業務要求水準書の段階で


パートを除く、全従事者の50%以上


としたことについて、しつこく担当部署の人に聞いてみました。


いったい、何を根拠にそのような基準にしたのかを、改めて聞きましたところ、こういう回答でした。


よく覚えていないけれど、CCCからひな形を提示されたということはない。


他の自治体のケースをおそらく参考にして、こういうのにしたんだと思う。


パートを除く、全従事者の50%以上としていたところがほかにあったかどうか記憶にない


どこかで、いまは司書を確保するのが難しくなっているという話があったので、その水準にしたんだと思う


――すでに直営での非常勤スタッフのほぼ全員が司書資格者でしたよね。その非常勤は、指定管理以降の継続雇用される方針だったことからすると、もう少し高い水準に設定するのが自然だと思うが?


和歌山市では、確かにそうだったが県内の他市は難しいという話だった。たとえば岩出市とかは。


――えっ、なんで他市のことが関係あるの?


……


→このあと、私の質問がいい加減しつこかったのか、


すみません、長くなりすぎたので、このへんでいいでしょうか?


と言われてしまいました。こちらこそ、お忙しいところ、お時間をとらせてすみませんでしたと、言って電話を切りました。


それにしても、とても納得のいく話でなく、やはり、業務要求水準書で、極端に司書資格率を落として募集したのは不自然極まりないと感じました。


【2021/04/16追記】この記事を公開した後、早速ツイッターで、awakoyotさんが以下のような和歌山市経済文教委員会での坂下氏の関連答弁をツイートされていました。これをみると、図書館費は総額で「3億9,335万9,000円」となっており「指定管理料3億3,439万2,000円」よりも6,000万円程度高いことが判明。これにより指定管理料と直営時代の図書館費用を比較して「かかる費用は同じ」としたNHKの報道は、事実ではなかったことが、より明確になりました。


和歌山市  令和 2年  3月 経済文教委員会  03月13日-01号

第7目図書館費3億9,335万9,000円は、図書館の管理運営に要する諸経費です。主なものといたしまして、第12節委託料3億3,610万6,000円は--437ページをお願いします--新市民図書館及び西分館の運営に係る指定管理者に対する管理運営委託料3億3,439万2,000円などです。https://ssp.kaigiroku.net/tenant/wakayama/SpMinuteView.html?council_id=574&schedule_id=2&minute_id=4&is_search=true



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