こんにちは、日向です。
先日に引き続き、安倍総理の地元・山口県の話題を探しておりましたところ、もうひとつみつかりました。
しかも、今回は、安倍総理ご自身の選挙区でもある下関を舞台にした事件です。
ツタヤ図書館以外にも民間委託で不正!委託料増額狙い貸出数水増、スタッフが大量貸出手続
2016年3月に宮城県多賀城市が、全国で三番目のツタヤ図書館として開館したときにビジネスジャーナルに発表した記事なんですが、
テーマは、ツタヤ図書館で初めて導入された読書通帳。預金通帳のような冊子に、借りた本を記録するツールで、事務機メーカーで有名な内田洋行さんが開発したもの。
実は、これを日本で最初に導入したのが安倍総理の地元・山口県下関市立図書館だったのですが、内田洋行さんに聞いても、なぜか第1号のココの名前が出てきませんでした。
大阪の八尾市の事例を紹介してくれたのですが、まもなく、どうして内田洋行さんが、下関の事例を積極的に言わないのかがわかりました。
2010年に全国に先駆けて指定管理者制度を導入した下関市立中央図書館では、とんでもない不祥事がおきていたのです。
拙稿から、概略を引用しておきましょう。
市立中央図書館では、その初年度から読書通帳を導入したところ、効果はてきめん。貸出件数は前年の6万6173件から23万406件と、たった1年で3.5倍に増えた。貸出冊数も09年の29万4424冊から13年には95万7425冊へと、こちらは4年で3倍増。
当初、誰もが読書通帳導入の効果だと解釈したが、そんな単純な話ではないことが次第にわかってきた。
運営を担った指定管理者は、夏休みには、子供たち向けに「100冊読破チャレンジ」と名づけたキャンペーンを実施。
ただでさえ、子供たちはゲーム感覚で、読書通帳に印字される冊数を増やすことだけに走りがちなところに、達成した生徒には記念品プレゼントというニンジンも用意されたのだから、効果が出ないはずがなかった。
子供たちは、先を争うように自動貸出機を使って貸出手続きを済ませ、毎日読みもしない本を大量に借りては読書通帳機の前に長い列をつくる光景が繰り広げられた。
そして、同じような光景がやがて大人たちにも広がっていった。読書通帳のページが一定数埋まった人に、併設されたカフェの割引券をプレゼントするなどの特典をつけ、運営者側は貸出実績を伸ばす方策を打ち出した。
極めつきは、指定管理者である運営者の関連会社スタッフが、4・5階にある図書館で本を自動貸出機で大量に貸出手続きをして、読みもせずに借りた本をそのまま1階の返却ポストに放り込んでいく光景がたびたび目撃されたことだ。
この事案は読書通帳と直接の関連性はないが、運営企業サイドが貸出冊数を増やすことのみに主眼を置いていることがよくわかる。読書をすることよりも、読書通帳にタイトルを印字することだけに血道を上げる子供たちをむしろ歓迎していると指摘されても否定できないだろう。
この事件についての詳細は、以下の記事でも、詳しく取り上げられていました。
図書館の役割否定した民営化 直営にもどした下関の教訓 やらせで急増した貸出冊数(2016年2月12日付長周新聞『図書館の役割否定した民営化』より)
CCCが武雄市に元祖ツタヤ図書館をオープンしたのは2013年ですから、それよりも3年も早く、本格的な民間企業運営の図書館として、従来の常識にとらわれない斬新な取り組みが行われていて、
そのひとつが読書通帳の導入だったわけですが、その陰では、指定管理者となった企業がとんでもない不正行為を犯していたことが、この記事に詳しく書かれています。
安倍総理のお膝元である山口県というのは、総理大臣を何人も輩出している保守王国である一方、この長周新聞のように、容赦なく権力者を批判するメディアも健在で、全国紙などでは到底書けないようなスキャンダルも平然と書いています。
ビジネスジャーナルに書いた私の記事では、多賀城市が導入した読書通帳の危険性を示す事例として、一部、長周新聞の記事を引用させていただいたわけです。
もちろん、それだけでは、記事にはなりませんので、独自取材もしています。
本日は、2016年3月当時の取材メモがみつかったので、記事にはかけなかった裏話をすべてぶちまけておきたいと思います。話をお聞きした関係者は、もちろん肩書やお名前は出せませんが、当時の事情をよくご存じの方でした。それでは、以下にそのメモの一部を転記しておきます。
――貸出冊数を増やす不正行為があったそうですが?
利用者が増えれば、指定管理者に対する評価が上がって、指定管理料も増えるということもありますので、指定管理者に指定されている団体の幹部が、部下に対して、一人何冊借りろと、いうことを言って、強制的にさせていたということを聞きました。
――公益通報や第三者調査は?
やっていない。指定管理者に指定されている団体の人が、いろんなことでパワハラみたいなことをしとったよと。自衛隊あがりの人で、強い口調で部下に対してやっていたと。
指定管理者に指定されている団体は、図書館だけ請け負っているわけではない。生涯学習プラザという館全体を指定管理で請け負っていました。五階建ての四階、五階が中央図書館なんですけれども、たとえば、一階に喫茶コーナーあって、そこが忙しいときには、図書館の人が応援に行きなさいよと言っていた。
図書館業務をやりたいからそういう仕事についている人が、突然、ウェイター、ウェイトレスになれよと言われても、やる気がおきませんよね。
読書通帳を記帳する機械も二台置いているけど、一台はサービスでメーカーに入れさせたとか、本当に問題がある。指定管理者団体が。
当初、指定管理にしようといったのが、いまの市長の前の江島さんという人、いま参議院議員、民間にできることは民間にという考えでやったんだけれど、結局5年間の指定管理の期間に、最後は市のいうこともきかんようになってきたということで、これはもう続けさせるわけにはいかんなということで直営に戻したんです。
――個々の事実、是正勧告は?
それはなかったと思う。
――市は重大な問題という受けとめなかった?
そう。
――委員会で問題には?
聞いてない。教育委員会は言わないでしょうね。自分たちの、なんでちゃんと指導しなかったのかということになるから。表ざたにせんまま、やっぱり直営がいいよとして直した。市長かわったこともあって。教育委員会としては、トップの方針変わったからと言えば、そういうことは、不祥事みたいなことはあまり表に出さず、切り替えることができたと。
――地元紙の報道は?
ないと思う。はねあがったのは、子供たちに記念品贈呈、大人には半額券、さらには四階で借りて下でほうりこんでいく。ウソの記録つくる。
――行為あったのは前市長のとき? いまの市長さん二期め。いま7年経過。2010年から指定管理。スタートはいまの市長。そうなります。決めたのは前市長ですが。
――紀伊国屋も入っているが?
指定管理になった会社は、図書館も運営も手掛けていた。本の仕入れは紀伊国屋です。
利用者からみて困ったなと思ったのは、直営のときには、山口県立の図書館のホーペジのなかで検索したら、山口県内の公共図書館、あるいき大学図書館など一斉に検索して、この図書館にはあるよとか、ないようということができていた。
指定管理になったときにシステムを変えた関係で、下関市内の図書館がその山口県内の横断検索から外れてしまった。
検索のシステムが違っていた。互換性なかった。のらなかった。それはおかしいではないか。県立図書館の検索もやる、二重にやらないかんので、県立図書館の分ものせるべきと言って、やりましょうとなって、今月の3月31から、改修で一カ月間は図書館休む。新年度はそれにのるように作業しましょうということになっている。
一カ月の間に直るかどうかわからないが、新年度はほかの図書館と同列に検索できるようになるように、いま進めているところ。
読書通帳は続けている。効果あるという判断。おかしな使い方しなければ。子供たちの読書推進にもつながりますし、自分がどんな本読んだかなという記録にもなる。
ずうっと直営でやっていたら、そんな発想もなかった。指定管理者になってこれやって通帳つくって、もとに戻したけれど、通帳続いている。そのこと自体は問題ないと思っている。なんとなく効果。読書に親しむ習慣をつける意味で。
取材に答えていただいた方の身元が特定されかねない部分はカットしましたので、ここで尻切れトンボになっています。
いま読み返して非常に興味深いなと思ったのは、国政で政権交代したときの民主党が、自民党の負の遺産にいつまでも苦しめられたのと同じく、地方でも、前市長の施策をすぐに変えられないこと。それによって問題噴出しますが、それをまた、もとに戻すに何年もかかります。
中央図書館に指定管理を導入したのは、2009年まで下関市長を務めていた江島潔氏。江島氏は、地元での安倍総理の側近のひとりとして知られています。ところが、指定管理がスタートする2010年は、江島氏は参議院議員に転出しており、そのライバルだった中尾友昭市長になってからのことでした。(2017年3月からは、安倍総理の元秘書・前田晋太郎氏が市長に就任)
奇しくも、ライバルが行った施策の後始末をさせられる格好になった中尾氏は、指定管理は図書館にはなじまないとして、直営に戻すことを決断。
指定管理をやめて直営に戻したのが、ちょうどこの取材直後の2016年4月からでした。
残念ながら、一連の不正疑惑は事実認定がされていないため、そのような事実があったことの記録が公式には残されておりません。
指定管理の“成功例”は、CCCによるツタヤ図書館のように、入館者数や利用者アンケートすら怪しい自己申告によって公然の事実のように語られているのに対して、ここまで酷い失敗事例が一切存在しないことのようにされていることに驚かされます。
東京都立高校の偽装請負事件(都立高校“ピンハネ事件”)もそうでしたが、行政であった不正行為の事実がもみ消されることの恐ろしさを、いまさらながらに感じさせる事件でした。
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