2019年7月13日土曜日

“労働警察”の取り調べ【1】

こんにちは、日向です。

先日の「都立高校ピンハネ事件」についての続報です。

2015年5月21日に、東京労働局が都立高校に調査に入りました。

その結果、2か月後の7/29には、

学校図書館の運営を民間企業に委託していた業務が違法な偽装請負であると正式に認定し、是正指導を行ったという経緯でした。

今回は、当日行われた労働局指導官による、実質的には「取り調べ」と言ってもいい都の担当者との会議の模様を詳しくみていきたいと思います。

下の書類をみてください。これが、そのときの質疑がまとめられた会議録です。開始時間は、午後2時30分~







来訪時間が2時の予定でしたので、関係書類を提出してもらってから、すぐにこの会議が開催されたものと思われます。

出席者は、労働局側が指導官2名なのに対して、都サイドからは9名。うち2名が担当教諭という、なかなかの顔ぶれです。

ぶっつけ本番の質疑


当日の朝に訪問のファックスが送られてきているところからみると、準備をする暇もなかった都サイドは、完全にぶつつけ本番で、何を聞かれるのか戦々恐々としていたはず。

まず、都側からの学校図書館委託契約の概略について説明からスタート。

・契約請求部署は学校経営支援センター。センターは中部・東部・西部と3ヶ所あ り、中部センターでは 86校の都立学校を所管
・今年度は図書館管理業務委託契約 を24校で4案件の契約を締結。都全体では 80 校の契約
・今回の調査対象となっている契約は、「松原外5校図書館管理業務委託」で受託者はサービスエース
・図書館管理業務は平成23年度から随時、各学校で実施。委託導入の背景としては都立学校全体の司書の人材の減少であり、司書が配置されない学校で導入
・本契約は、財務局において指名競争入札により業者を決定しており、今年度の中部センターでの契約は2社で各2案件契約締結


次に、労働局から委託内容についての質疑に移っています。

――委託範囲は?→書架の整理、貸出本のバーコード貼付、選書リストの作成、開館・閉館の準備など基本業務  
――本の購入は? →学校での購入とセンターでの購入がある
――業務従事者の人数は? →指定しておらず、複数人数としているが、時間帯によっては複数人数を必要とはしていない  
――資格は?→司書か司書補の資格が必要。ただし、業務責任者については必ずしも司書資格を要しない  
――司書資格を必要とする根拠は?→学校図書館法

――業務への指示は?→業務指示書を毎月学校担当から業務責任者へ提出。詳細の説明や細かい指示・ 調整等については、業務責任者訪問の際 
――業務責任者の訪問頻度は? →学校によって異なるが、農芸高校に関しては月2回以以上 
――昨年度は司書教諭と業務従事者でミーティングを実施していたか。議事録があると報告されているが保管しているか→定期的にミーティングを実施しているとは聞いていない。議事録についても見たことはない。業務内容の詳細や確認がある際は、司書教諭と簡単な調整はしている。


“労働警察”がカードを切った


従事者とのミーティングの話が出てきたところで、少し様子が変わってきましたね。それまで淡々と回答していた都サイドの回答には急に動揺がみられ始めたように感じます。


――ミーティングの目的は? こちらに報告されている議事録の内容を見ると、次回のミーティングの日程も決めているようだが →学校担当では詳細な事までは確認できていない。この後、司書教諭に確認してみる

このへんが“取り調べ”のクライマックスでしょうか。労働局の監督官が

「こちらに報告されている議事録の内容を見ると」

と、自らの手の内を明かすというか、“カード”を切りはじめました。

もしこの会議を映像でみていたら、この瞬間、都側の人たちは皆、さぞかし冷や汗タラタラだったでしょう。


ところで、通常、労働局が調査に入るときには、なんの証拠も持たず手ぶらでくるはずがありません。


本件については、まだ経緯は不明ですが、

この手の事件では、内部告発者が、ありとあらゆる資料を揃えて、すでに当局に提出していることもめずらしくありません。

よって、このとき


いまさら言い逃れしようたってムダだよ。こっちは全部つかんでるんだから

という雰囲気を労働局の監督官らが思いっきり醸し出していたのかもしれません。

なお、会議録の冒頭には、以下のような記載がありますので、通報によって労働局が着手したのは確かのようです。

【本調査の目的】 図書館管理業務委託について請負が適正に行われているか、との連絡が東京労働局に入ったことから、業務実態の把握や法遵守の徹底をすることを目的としている。


メモはしたが議事録はない


この後、労働局の監督官は、畳みかけるように、不適切な行為を追及していきます。


――業務従事者の名簿作成して性別や年齢は載せているか。写真を添付する目的は?

→平成26年度は性別と年齢を載せる欄を設けていたが、今年度からは不要と判断し、載せていない。写真については、学校現場での不審者対応の必要性から顔写真を添付依頼している。 

――日々の業務報告は?→業務日誌を使用し、従事者がその日の業務内容や伝達事項を記載。学校担当へ 提出後校内で決裁 

――日誌にある「申し送り事項」とは?→次の日の担当の従事者への伝達事項を記載。行事 や消耗品交換等の伝達

――「申し送り事項」は従事者間のみの伝達事項であれば、日誌に記載しなくても良いのでは? 学校担当(発注者)も目を通すことはできるため、間接的な指揮・命令になりかねない →あくまでも、報告レベルの内容のみ記載、指示する内容とはなっていない

――業務従事者の変更を求めたことはあるか →今まで変更を要求したことはない

もう都側は、防戦一方になってきましたね。

ここで、さきほど「司書教諭に確認してみる」と行っていた「従事者とのミーティング」についての回答が出てきます。



――従事者とのミーティングの実施頻度は? →業務委託者からの要望により互いの意見程度の認識でしていた。生徒指導は司書教諭が行うため、生徒とのやりとりの確認や図書館の利用マナーについて報告等があった。 出席者は司書教諭と従事者の中で代表1人の2名。実施頻度は、行事前など多い時で1週間に1回、通常は月に1回程度で、時間は 15 分程度。長い時は1時間程度の時と記憶

――議事録は? →メモのみで作成していない。代表従事者が他の従事者 との情報を共有するため作成したようだ。提出されていない

――従事者のシフト表は?→人が変わる事もあるため、担当が分かるように代表の従事者からもらっていた 

――その他に従事者との関わるのは? →「図書館だより」作成を毎月依頼し、内容を確認。校内決裁をするため、細かい修正等を依頼 

――司書教諭の役割は?→主に生徒指導や図書委員の活動、選書リストの確認等。選書リストは必要に応じ て訂正等を依頼

「従事者とのミーティング」は、偽装請負と指摘されかねないという認識は、都側にもあったのでしょうが、どこまでならセーフなのか確信が持てないため、回答内容がやや支離滅裂ぎみ。議事録の保管については否定してはいますが、「メモ」=議事録ではないのでしょうか。

保管していたメモを出してしたしまったら、労働局が入手した証拠と照らし合わさせて、もはや言い逃れはできなくなってしまいます。

この後の「図書館だより」と「選書リストの確認」での発言は、完成品を納品するという業務請負業の範囲を完全に逸脱していてアウト。監督官は、この段階で違法認定がほぼ完了したと安堵したに違いありません。

長くなりましたので、この続きは、また後日。

誰でもできる“図書館業務”
激烈なピンハネ屋

都立高校“ピンハネ事件”




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