2019年7月14日日曜日

不自由な図書館

こんにちは、日向です。

今回も、しつこく“都立高校ピンハネ事件”についてです。

あくまでも「業務請負」として、契約している以上、高校サイドは、業者から派遣された司書に直接指示命令はできません。

業務責任者が来たときにのみ、要望を間接的に伝えることができるだけです。

委託会社から派遣された学校司書は、生徒に対して指導することはもちろん禁止されています。許されているのは、来館した生徒が騒がしいときに注意することくらいです。

また、刊行物を制作しても、完成品を納品するのが業務請負ですから、途中で、こうして、ああしてなどと細かくやり直してもらったりすることも不可です。

ただ、図書館を開館してもらって、派遣された司書とは打ち合わせも一切せずに黙って帰っていただくだけです。


もし、司書教諭や校長が生徒の読書推進のために、学校図書館を活性化させたいと考えたら、これほど不自由なことはありません。

それでいて、事業者へ委託費を払うわけですから、いくら異業種の業者がダンピンングで入札してきたとしても、直接非常勤で司書を雇用するよりは、ずっと高い費用がかかります。

百歩譲って、“手配師”というか“口入屋”みたいな業者に依頼すれば、カネはかかっても専門の司書の確保だけは容易にできるようになったというのでしたら、許せる部分も完全にゼロではないのですが、

受託業者の中には、契約通りに業務を実施できるだけの人を確保できずに、月のうち何日も図書館をあけることができなかっと契約違反を犯して、頻繁に始末書を提出しています。たとえば以下のように。


4月から6月までの3か月は「ほとんどの営業日において、契約違反が発生しました」という前代未聞の経過報告


この委託業者の質の低さについては、あまりにも常軌を逸しているので、いずれ別のエントリーで取り上げるつもりですので、今回はこれ以上詳しくは書きませんが、

発注している学校サイドが何度厳しく注意しても、契約通りに業務が実行されないため、頭を抱えているという実態もあります。

それなのに、不祥事を起こした受託企業は、契約解除されるどころか、翌年度以降も同じ高校または、別の高校を受託できていたりします。(当時は、単年度ごとの入札で委託者決定)

このへんは、CCCが受託しているツタヤ図書館の誘致自治体と一部共通するものがあります。もっともツタヤ誘致自治体の場合は、不祥事が起きても注意すらせずに、全力でCCCをかばいにいくのが通例ですが。

都立高校の場合、

まともに人を集められないあげくに、労働局から違法行為として是正指導されたのですから、ふつうなら即契約解除でしょう。

いったい、なんのために、わざわざこんなに不自由で、成果が上がらないダメダメなことを行政が行っているのか、本当に理解に苦しみます。


違法行為しないと成り立たないスキーム



もし、都が安い費用で学校図書館を運営したければ、直接雇用で非常勤スタッフを採用して配置すればそれで済みことです。

直接雇用なら、学校司書は、たとえ非正規雇用であったとしても、担当教諭と打ち合わせしようが、指示命令を受けようが、そんなことは一切気にする必要などありません。

もちろん、生徒にも直接指導したって、違法なんて言われる筋合いは一切ありません。

なのに、わさわざ、委託業者に運営を任せるメリットがひとつもみあたりません。

第一、本来の目的である、生徒たちの読書推進をより進めていくためには、

派遣された学校司書と担当教諭が、むしろ、労働局の是正指導など一切無視して、緊密に打ち合わせするなどして、どんどん違法行為をやったほうが学校図書館としては、成果があがるというジレンマみたいなものがみえるわけです。

民間委託したばかりに、教育現場は、両手両足を縛られた格好で、そうした当たり前のことすらできなくなっています。

学校図書館を民間委託するメリットは、ほとんどみあたらないのですが、あえてあげるとすれば、学校側が図書館を運営する司書の雇用責任を追わなくていいということくらい。請負会社がめんどうなこと一切合切面倒みてくれます。

また、直接雇用なら、行政運営上かかる人件費コストにすぎませんが、業務委託にしたとたん、それが受託企業の売上となって、各種経済統計に反映されるようになることです。

かくして、低賃金で働く非正規の職が激増する一方、公務に群がる企業の業績は年々あがるという本末転倒な事態が年々進んでいっているわけです。

受託企業は、時給は最低賃金を少し上回る金額しか提示しないばかりか、社会保険料負担をさけるため、

1人当たりの勤務時間を、できるだけ週30時間未満に抑えたいので、フルタイムで働くことは困難。

運よく、現場リーダーとして採用されてフルタイム働けたとしても、一年ごとの契約なので、突然失業するリスクと常に背中合わせの“ハイリスク・ローリターン”。

かつて、この手の仕事は、配偶者の扶養の範囲内で働く専業主婦(夫)が担うものとされてきましたが、

主婦・主夫でも、子供を預けてフルタイムで働きたい人が激増、単身者の場合は、一度この仕事についても、とてもじゃないけど生活もできないと、バカらしくてやってられないと短期間で退職する人が続出しているそうです。

無理もありません。年収80万円・社会保険なしの仕事【1】に、いったい誰が喜んでつくのでしょうか? 資格を必要とする専門職なのに。

そこに目を向けなければ、永遠に、この現場が改善されることはないでしょう。


【1】「激烈なピンハネ屋」
「実際には、当時時給900円程度で募集されていましたので、延べ2名年間200日稼働で人件費が300万円弱/実態としては、1校3~4名シフト勤務で、1人当たり年収70~80万円といったところでしょうか。/もちろん、全員週30時間未満勤務にしてますから、業者は社会保険負担ゼロです」




【関連記事】
“労働警察”の取り調べ【1】
誰でもできる“図書館業務”
激烈なピンハネ屋

都立高校“ピンハネ事件”


「図書館で起きた時給180円事件」(1)



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