2018年12月31日月曜日

どこから誰が何人出ているの?

こんにちは、日向です。

やりかけのまま放置していることがたくさんあるような気がして、みつけたら、ひとつでも区切りをつけておきたいところです。

もう3ヵ月近く前、明日にでも、すぐ終らせるつもりでいたのに、そのまま放置していたのが

“海苔弁”1400枚のデータを取ってみた

で紹介しました、「黒塗りの開示資料1400枚」に含まれる

調整会議に関するデータの集計結果です。

調整会議とは、正式には、

「南海市駅周辺活性化調整会議」と呼びます。

和歌山市、和歌山県庁、南海電鉄の三者が定期的に再開発プロジェクトについて話しあう機関です。

で、この調整会議メンバーの顔ぶれを、市、県、南海電鉄の三者に加え、コンサルタントのRIA、その他の5者別に、出席者の人数を数えて集計したのが下の表です。



ここからわかったのは、以下のようなことでした。

(1)のちに基本設計~施工監理まで担当するRIAが、2014年7/24の会議から参加している

(2)のちに施工を担当することになる竹中工務店が2014年8/6だけ参加している

(3)県は、2015年に延べ97名参加しているが、2016年には延べ56名参加と激減している

(4)南海電鉄は2015年に延べ78名参加から2016年に延べ116名と激増している

だいたい、こんなところです。

ここから、仮説を立てて、それらをひとつずつ検証していきます。
まぁ、どれも、たいしたことは、わからないのですが。

教えない、教えたくない南海への64億円

こんにちは、日向です。

前回、和歌山市の再開発にからんで南海電鉄に64億円の補助金が支払われるという話を

「関西初出店となるツタヤ図書館」

に書きましたところ、その明確な裏づけとなる資料を提示しなかったものですから、ヘタヘタ調の文体ともあいまって、

裏とってないいい加減な“飛ばし記事”

の臭いがプンプンしていることに気づきました。

当然、なんか資料あるんでしょう、って聞かれるんですが、

何分、1400枚の開示資料のほとんどが黒塗りで出してくる和歌山市さんですから、このプロジェクトの資金計画全体に関する資料が1枚も出てきていません。

議会に提出したときのパワポの説明資料とかたくさんありそうなんですが、それすら1枚も出してきません。

仕方なく、担当部署に問い合わせてメモしたり、断片的な情報をつなぎ合わせたりして、出てきた数字が、先日書きましたあの数字なんです。

で、本日は、とりあえず事実であることを証明するために、2枚の資料を掲載しておきます。

まず一枚目は「概要版」というやつ。

何の説明の「概要」なのかはわかりませんが、7月に補助金に関する開示請求したときに、その回答としてではなく


「あっ、そういえば、こんなのがみつかりました」

って、和歌山市の担当部署の方が非公式に送ってくれたものです。

それまでの和歌山市の対応と比べると、あまりにも親切な対応でしたので、もう少しで感涙するところでした。








ところが、これみたとき


「えっ、こんなの真っ先に市民に出すやつじゃん!」

と思うくらい、再開発計画の基本のキの説明でした。

端っこに、総事業費補助金の金額があったから、出すのをやめたんでしょうか。

少なくとも市民図書館のサイトで公表している「新図書館建設情報」には掲載していないとおかしい基本情報です。


そして、もう1枚は、現在詳細を検証中の和歌山市が南海電鉄に対する、補助金の執行に関する資料の一部分です。

(7月末に開示請求して、45日延長を経て9月末に開示決定、10月半ばに郵送)







内容は、今年4月1日に、和歌山市が南海電鉄に対して交付を決定した通知です。

1,696,318,000

ろっぴゃくまんえん、くらいのところからはなんとなく読めるのですが、その上に三桁もあると一瞬わからなくなります。

16億9600、31万8000円ですね。

2016年~2020年の5年くらいにわたって、2ヵ月ごとに、南海電鉄に補助金が交付される計画らしいです。

なので、すべて執行されないと、総額は確定できません。


そういえば、最近、ある最近大手出版グループのトップがこんな発言をして物議を醸していましたね。


「早く情報公開制度を辞めないと、国が滅ぶ」

素人にあら捜しばかりされると、行政機能に支障がきたすという意味らしいのですが

その論にたてば、南海電鉄に64億円の補助金を出すなんてことも、市民は一切知らなくていい

ただ黙って、完成したツタヤ図書館をみて「スゲー」「カッケー」と喜んでいればいいということになってしまいます。

それこそ、何年後かに気がついたら、加計学園(2004年開講の千葉科学大学・薬学部、危機管理学部)に巨額の補助金を出したのに、

大学側は、なかなか生徒も集まらず、薬剤師国家試験の合格率低く、危機管理もできていない、自治体側は、その借金のせいで財政破綻の危機に瀕しているのではないか

といわれている千葉県銚子市みたいになりかねません。

同じ加計学園の獣医学部が新設された愛媛県今治市が、その前例を踏襲しています。

できるだけ情報を出さず、支配者に頼るようにすることを

依らしむべし、知らしむべからず

というらしいですが、役人の世界では、いまだにそのオキテが生きているのでしょうか。


和歌山市の担当部署のみなさん、いつもしつこくてたいへん申し訳ありませんが、

そんなわけで、ただ発表を垂れ流すだけでなく、オモテに出てこない情報を暴くのもわれわれの仕事なんです。

今後とも、よろしく御願い申し上げます。

2018年12月29日土曜日

「関西初出店となるツタヤ図書館」

こんにちは、日向です。

今日は、来年秋に開業が予定されています和歌山市のツタヤ図書館の建設計画に関連した話題を少し書いておきます。

まずは、これみてください。少し前に話題になった南海電鉄さんの非公式アカウントのツイートです。




2020年に開業する医療モールのテナント募集文なんですが、うたい文句がスゴイんです。


「関西初出店となるツタヤ図書館は、年間100万人来場想定!」

いやぁ、正直ですね。南海市駅の再開発プロジェクトの目玉は、やっぱり、ツタヤ図書館だったんでしょうか。昨年末にTSUTAYAの本部・CCCが指定管理者に選定されるよりも、ずーっと前から決まっていたので、うっかり、こういうところに本音がポロリと出ちゃうのでしょうか。

実は、このコピー、先日開催されました和歌山市議会の経済文教委員会でも配られました。

「南海電鉄さんは、新市民図書館のことを、『関西初出店』なんて宣伝してますよ! 図書館は「店」とか言ってますが、こんなこと許してていいんですかっ」と議員さんにチクられたわけです。

おかげで、このアカウントの担当者、真っ青になりまして、すぐさま同種のツイートはすべて削除したみたいです。せっかくチエ絞ってうまいこと書いたなぁと悦にいってたのに、残念でしたね。

あれっ、でも議会で南海電鉄は関知していないって、言ってませんでしたっけ? だったらすぐ反応して削除すること自体がヘンですよね。

さて、本題はここから。南海電鉄さんが行なっている和歌山市駅再開発プロジェクトの総事業費は123億円が見込まれています。

南海電鉄さん、思い切った投資しますねぇ。たいしたもんだ。あなたがそう思ったとしたら、それはとんでもない勘違いです。

実は、この123億円のうち100億円近くがあなたや私が納めている税金で賄われるんですよ。

えっ、そんなバカなって思いますよね。

そう思った人は、加計学園と今治市をイメージすると、わかりやすいかもしれません。

人口減少に悩んでいた今治市は、若者が来てくれるんならと、加計学園の獣医学部設置のために、93億円もの補助金を出すことになってます。総理肝いりで獣医学部を認可したことばかりが取り沙汰されますが、実はそっちのほうもたいへんな問題なんです。

和歌山市の場合は、寂れてしまった南海市駅前をなんとか活性化しようと、さんざん考えてひねり出したのが「図書館を核としたまちづくり」でした。

公式には、誰も言いませんが、活性化策を検討していた2014年当時、「年間100万人が訪れた図書館」(ウソ)として、佐賀県武雄市の元祖・ツタヤ図書館が話題沸騰だったことから、

「ヨッシャー、うちもコレで行かんか!」

となったかどうかは定かではありませんが、とにかく市駅周辺の再開発の目玉として市民図書館を持ってきたんです。

公共図書館は、なんだかんだ言っても結構集客力ありますからね。

で、なにがスゴイって、これが補助金の額です。

国交省が力を入れている中心市街地再開発関連の補助金は結構大盤振る舞いでして、社会資本総合整備計画を立てて認可されまして、

和歌山市の場合、国が32億円ポンと出してくれることになりました。

出したのは、こんなまちづくりをやると人口減少を食い止められますっていう案です。

加えて、市が18億円、県が14億円の総額64億円が、南海電鉄さんにポンとプレゼントされるんですから、

これまたとんでもなく大盤振る舞いですね。しかも、国や県の分も先に和歌山市が立替て南海電鉄さんに支払ってくれるんですから、もう至れり尽くせり

で、図書館については、建物完成後に、和歌山市が南海電鉄さんから30億円で買い取る予定なんですが、そのうち15億円は、これまた国が補助してくれるので、和歌山市としては、半額の15億円で新しい図書館を建てられるわけです。

これぞ、いまはやりの民間の資金とノウハウを活用したPPPマジック! と言いたいところですが、ちょっと待って、なんか、おかしいと思いません?

だって、市はすでに18億円補助金出してるんですよ。

30億円のうち自己負担が15億円だとしても、18+15は、合計33億円になります。

なぁんだ、国から補助してもらっても、ぜんぜんオトクじゃあないよねという話なんですが、ここで質問、さて、図書館を含む市駅再開発にかかる公金負担は、いくらになるでしょうか?

南海電鉄に対して64億円補助したうえに、和歌山市は30億円で図書館を買い取りますので、

負担金は、合計94億円になります。

図書館部分に国の補助15億円あると喜ぶのは和歌山市だけで、それもいずれ税金で賄うことには変わりないのですから。

みなさん、正解しました?

私、エラソーにいいましたけど、これ、市の担当部署の人に聞いてて、実は、私も一瞬「えっ、なんでそうなるの?」と思いました。

「おんどれ、補助金と負担金は、違うんじゃわぁ、そんなこともわからへんのか!」

と言わんばかりの沈黙のプレッシャーを感じまして、理解するのに、少し時間かかったのは、恥じ入るばかりです。Nさん、その節は、すみませんでした。

ということは、南海電鉄さんは、図書館部分は建ててあげて市に譲ることになりますが、そこが集客してくれるのですから、ある意味その効果もあてこんだ不動産賃貸業を展開できるわけです。

南海電鉄さんとしては、総事業費123億円のプロジェクトを、たったの29億円で実現できることになります。

これぞ“税金チューチューマジック”です。個人に置き換えたら、1億円のマンションを2900万円で買えるのと同じ。森友学園の土地8億円値引きなんて、南海プロジェクトの94億円負担(直接の補助金は64億円)と比べたら子供のお小遣いみたいなものですね。

市内で賃貸ビル経営している競争相手にとっては、とんでもなく不公平な話。公共交通機関だからって、副業のホテルとオフィスビルを税金で建てて、収入はゼーンブ自分たちの懐入れるのって、おかしくないですかね。いや、恥ずかしくないですかね。税金にたかっったうえに、公共図書館に集客してもらうなんて。

ここの重役、恥ずかしいどころか堂々と再開発計画アピールして、「図書館に期待」とまで発言していますから、やっぱりおかしい人たちなのかなって思います。
( どうして64億円も補助金が出るの? 
の記事末尾に南海電鉄専務の以下のような発言記録あり)


「他都市では、公立の図書館に民間の運営ノウハウを導入することで賑わい作りに成功している例があると聞いておりますので、弊社としても大変期待しているところです」

そうしますと、やはり巨額の税金が使われるわけですから、その建設プロセスなんていうのは、トーゼン情報開示しまくらないと、納税者の理解は得られないわけですよ。

ところがです。もう半年近く言い続けてきて、だんだん疲れ果ててきましたが、私が開示請求した「新市民図書館建設について南海電鉄と話し合った内容がわかるすべての文書」の開示資料1400枚がほとんど黒塗りで出てきたんです。







そのわずかに残された書類の白い部分を穴のあくほど眺めていっただけでも、えっ、これって最初からツタヤ図書館誘致が決まってたんでないのっていう疑いを抱く箇所が、あとからあとから湯水のごとく出てくるんです。

これも加計学園と似てますね。元首相秘書官の柳瀬唯夫さんが今治市の担当者に会ったかと聞かれて、「記憶にない」を連発してましたけど、和歌山市の場合も、決定前に、CCCと密談したでしょと聞かれたら、みなさん同じセリフを繰り返すでしょうから。

で、なんで、こんなザルな計画が実現できたのかっていう点は、近く発表するビジネスジャーナルの記事をご覧ください。

(↓2019.1.15にリリースされました)

ツタヤ図書館が目玉の和歌山市駅前再開発、94億円の税金投入…疑惑浮上


古典的な表現ですが「政官財」の癒着構造がクッキリと現れています。

国の予算をぶんどってきて、それをみんなで山分けする。その中心に、なぜかTSUTAYA図書館がいるという不思議な構図です。

長くなりましたので、今日はこのへんでやめておきますが、和歌山市さん、南海電鉄さん、いい加減、情報出してくださいね。出していただくまで、悪口じゃなかった、厳しい批判を続けます。

「ウマー!」ってばかり言ってると、日に日に信用ガタ落ちですよ。まぁ、巨額のゼイキン差し出してた事実すら、ほとんど知られていないので、開館したらしたで、空箱の高層書架眺めては「スゲーっ」とか「カッケー」とか、和歌山市民のみなさん喜ばれるのでしょうが。

でも、そのツケは、いずれ市民に回ってくるってことは、忘れないでくださいね。

では、また。

「申し入れ書」画像をテキスト化

こんにちは、日向です。

先日アップしました

和歌山でCCCの巨額システム費可決!

の記事のなかでご紹介しました「市内の図書館サークル」の申し入れ書の画像が不鮮明でしたので、グーグルドライブに入れてテキストに変換してみました。

やり方は、マイドライブに入れた画像ファイルを右クリックしまして「アブリで開く」→「Gougleドキュメント」をクリックしますと、画像+テキストデータが入った同名タイトルのGougleドキュメントが生成されます。

そこからテキスト部分をコピーして、こちらに貼り付けました。ただ、誤変換も少しありましたので、ところどころ修正を加えました。(まだ、誤植が残っているかもしれませんが)

これで読みやすくなったと思います。

よろしく御願いいたします。


新図書館のシステム導入費用について申し入れ 

和歌山市教育長 原一起 殿 2018年 12月 18 日 「市民図書館について学ぶ会」


私たちは、2018 年 12月14日和歌山市定例市議会・経済文数委員会を傍聴しました。ついては次のことを求めます。

1)経済文数委員資料(教育委員会)付託議案関係 補正予算 議案第1号 平成 30 年度和歌山市一般会計常正予算(第4号)中(歳入歳出予算の補正、教育施設災害復旧費について)と(債務負担行為の補正、新図書館システム導入費用について12月補正)が一つの魔案となっているが、全く異なる内容であるから別々に議案を立て賛否を問うべきです。 

2)教育施設災害復旧費は施設ごとに事業費、所処修繕料、樹木等処分委託料、維持修繕工事請負費と被害分類、件数、金額が出ています。が、新図書館システム導入費用について(12月補正)は305325千円(平成31年度~平成35年度 債務負担行為)と書いてあるだけで基本機能、追加機能の個々についての金額が出ていません。3億500 方という高額な費用をこのような形で出すのですから詳細な説明が求められて然るべきと思います。

 3)市民図書館のシステムは五年ごとに更新しなければならないため、移転する年度システム更新に1億円はかかると聞いていました。しかしこの新図書館のシステム導入は「2追加機能 蔵書検索機 能等の充実 カルチュア・コンビニエンス・クラブのシステムデータベースとの連携(ライフスタイル分類、Tカード利用等)」があることで、高額な費用を必要とすることになります。
ライフスタイル分類はカルチュア・コンビニエンス・クラプ運営の5館の図書館の分類であり,三千あまりの公共図書館の中で認められていない分類です。ライフスタイル分類は図書館界から注目されどういう体系か尋ねても企業秘密と言って出さない、ライフスタイルが変われば変わると、およそ図書館の分類といえないものです。坂下館長が「朝ご飯」を例に出して説明していましたが、 それは日本十進分類法のどこの図蓄館も特設コーナーをつくり工夫しています。
ライフスタイル分類の大きな欠陥は貸し出した本を元に戻すのが大変なことです。本屋は売ればそ れでおわりです。高額な費用を出してすることではありません。

3) Tカードを高額な費用をかけての導入はやめるべきです。Tカードの情報をカルチュア・コンビニエンス・クラブの関連会社が集約しており個人情報が外部に出ています。市民図書館の利用者の情報を危うくするTカードを図書カードとして利用するのは公立図書館ではすべきではありません。

5)指定管理の導入は経費節減でした。新図書館位のシステム導入費用が3億500万円を超えるのはあまりにも高く、それぞれの費用について説明すべきです。

2018年12月22日土曜日

「時給180円事件」裁判の結末

こんにちは、日向です。

先日アップしました

「図書館で起きた時給180円事件」(1)

「図書館で起きた時給180円事件」(2)

「図書館で起きた時給180円事件」(3)

--の記事に思いのほか、たくさんの方にアクセスしていただいたことに驚き、かつたいへん有難く思います。

 これら3本の記事によって、この事件の経緯は、だいたいおわかりいただけたと思うのですが、みなさんが気になったのは、その後の訴訟がどうなったかだと思います。

 こちらは一重に、弁護団の先生方(北千住法律事務所・主任弁護士は柿沼真利先生)による成果であり、素人が解説できるようなことはなにもないのですが、わかりずらい訴訟の構造を、素人なりに、噛み砕いて説明するくらいことはできますので、あえて蛇足を付け加えさせていただきました。




 雇止め止めされたAさんは、区立図書館の運営を受託していた㈱TK(仮名)を相手取って、2013年8月に地位確認を求める訴えを東京地裁に起しました。

その後、一年半に及ぶ会社側との答弁のやりとりを経て、2015年3月に「雇止めは無効」との地裁判決を勝ち取りました。すぐさま被告会社が控訴しましたが、同8月に東京高裁で控訴は棄却され、労働者側の全面勝利が確定しました。

 最大の争点は、有期雇用の契約更新時に生じる雇止め(会社側が更新を拒絶すること)の有効性です。

 毎年更新の有期雇用で働く労働者は、契約期間満了時に、雇用主が更新を拒絶した場合、実質的には解雇であっても「期間満了で更新しなかっただけ」と会社に言い訳されがちです。もともと1年契約なのですから、1年が終れば雇用主の会社に「お疲れさん。今日まででいいよ」といわれても、ある意味理屈としては、間違っていないからです。

 しかし、期間限定の季節労働や繁忙期のサポート要員ならいざしらず、本来、正社員として雇用すべき恒常的な業務の基幹スタッフとして働く人まで有期雇用にしてしまえば、経営者は、いつでもスタッフを1年で切ることができることになってしまいます。それはおかしいですよね。

 そこで、これまでの裁判例では、1年以内の短い契約であっても、もう何回も契約を更新していて、実質的には、正社員となんら変わらないような状態で働いている人については、正社員と同じく、会社側に解雇権の乱用がなかったかどうかが厳しく問えるようになっていました。

 たとえば、もう10回も契約が更新されていて、当然、次回も契約は更新されるはずと期待するのが当たり前のような状況だったと認められれば、正社員と同じく、本当に解雇する必要性はあったのか、労働者側に非はなかったのかなどが問われて、そのような事実はなかった場合には、雇止めは無効とされているわけです。

 ただし、これまで「雇止めは無効」との判決が出るのは、契約更新を何度も繰り返しているケースがほとんどでした。本件のように「勤務年数は2年で契約更新は一度だけ」というケースで、そのような判断が示されたのは、異例のことでした。

しかも、図書館の運営を受託している期間について、そこのスタッフは、よほどのことがない限り、契約は、更新されるべきとの判断が示されたことは、非正規労働者側にとっては、非常に大きな収穫だったと思います。

 そこいらへんの法的理論については、地裁判決後に被告会社が控訴した際の「理由書」に対して、私なりの反論を書いていました。この反論は、結局、どこにも提出することはなく、単に私の法的理論の勉強のために書いたものなので、ここで初めて発表しておきます。ただし、かなり長いです。

 弁護団の先生方は、当然、私の反論文など足元にも及ばないような鉄壁の理論を展開されていて、被告側の主張を一瞬にして打ち砕いたのは、改めて言うまでもありません。

 なお、この雇止めの法理については、これまで判例として確立されていた理論が、労働契約法19条によって明文化されましたが、本件労働者が実質解雇されてから5ヵ月後の2012年8月施行のため、直接的にこの条文が適用されることはありませんでした。






控訴理由書に対する反論

2015/5/20 

 原審判決(労働者勝訴の地裁判決のこと)を「判例法理に違反するもの」と主張している控訴人(図書館運営会社)は、その根拠として、雇止めに関する裁判例4類型のうち、本件が属するタイプの裁判例の判決と本件が大きな違いがある点等を挙げている。しかしながら、いずれも我田引水な解釈に終始しており、控訴審において改めて審理する必要性は、到底見い出せないものである。
 また、1年半の期間を費やして、お互い可能な限り証拠を提出・論証を尽くしたはずの原審では事実認定されなかった事柄を改めて持ち出してきて、被控訴人(実質解雇された労働者)が「図書館職員として不適格であった」との主張を繰り返していることは、不誠実の極みである。
 原審において、明快な判定がなされているにもかかわらず、訴訟の長期化で疲弊しがちな一個人の非正規労働者に対して、故意に訴訟を長引かせている(最初の団体交渉から、すでに3年以上経過している)控訴人の行為は、自らの不当な主張が退けられたことや、ひいては、被控訴人から数々の不法行為を関係機関へ通報・告発されたために、それまで受託していた公共施設管理の仕事をすべて失ってしまったことを逆恨みして、その腹いせを行っているとしか思えない。
 よって、それらについて詳しく議論するまでもなく、控訴人の申立を即刻棄却するべきである。以下に、控訴人の誤りを指摘しておく。


 まず控訴人は、雇止め法理を表す代表的な裁判例として、東芝柳町工場事件(最判昭和49722日)と、日立メディコ事件(最判昭和61124日)の2例を挙げたうえで、その他の裁判例から、判例法理は、①純粋有期契約タイプ、②実質無期契約タイプ、③期待保護(反復更新) タイプ④期待保護(継続特約) タイプの4つに類型化されていると述べている。
 ここまでは、労働法の一般的な考察としてなら是認できないこともないが、その後、控訴人は、なぜか唐突に、本件がこの4類型のどれに該当するかを論じ始めた。そして、詳しい論証を行わないまま「本件が、①の純粋有期契約タイプに該当することは明らかであるにもかかわらず、②乃至④のタイプと認めたことに過去の裁判例と比し、誤りがあるといわざるを得ない」と、論理に大きな飛躍のある結論を導きだしている。


 控訴理由書には、その根拠として、以下のような理由が挙げられている。
 控訴人が、すべての職員と1年ごとの有期雇用契約を締結したのは、平成22年度に本件図書館の指定管理者として指定されてから業務を始めるまでに時間的余裕がなかったため、職員の採用後に職務遂行能力をみながら「不適応者を排除していく」意味あいがあったと言う。
 このような性質の有期雇用契約は、当然、雇止めがありうることを前提としているから、ほかに雇止めがされていない裁判例や、過去に雇用契約が反復更新されたことがある裁判例、さらには、契約更新手続きが形式的なものにすぎなかなかった裁判例などを持ち出してきて、雇止めが認められなかった、いずれのタイプにも本件は属さないと主張。よって雇止めを違法とした本件は、判例違反であるというものである。
 改めて指摘までもないことだが、控訴人は、前段において、本件を「期間満了によって当然契約が終了する」タイプに該当すると主張しておきながら、「採用後に職務遂行能力をみながら「不適応者を排除していく」意味合い」があったなどと、支離滅裂な主張を展開している。
 「不適応者を排除していく」ために、有期雇用契約を締結しているのであれば、業務に適応している有期雇用社員は、更新に合理的な期待を抱くわけで、その場合、「期間満了によって当然契約が終了する」わけがない。


 控訴人がここで持ち出している雇止めに関する裁判例の4類型は、厚生労働省によって設置された「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会」がまとめた『有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告』(平成129月)に発表された内容である。(弘文堂「労働法第十版」菅野和夫232頁下段注釈欄・22)
 同研究会が、類型化するにあたって収集したのは、有期労働契約の雇止めが争点となった報告書作成当時(2000年以前)10数年の裁判例に、この分野のリーディングケースを加えた計38件の裁判例である。
 非正規労働者の不安定な雇用問題が喫緊の課題であることが社会通念となっていき、それについての国民的関心の高まりが契機となって、後の労働契約法改正につながっていく2000年代中盤以降に出された新しい裁判例は、この類型化には、まったく反映されておらず、リーディングケースを加えているとはいえ、限られた38件の裁判例だけですべてを論じるのは、あまりにも乱暴である。

 本報告書でも、類型化のもとになった裁判例について「--個々の事案ごとに有期労働契約を取り巻く状況、当該契約の内容等が異なるため、当該契約の雇止めに対する評価は、まさに多種多様な判断要素を総合的に勘案して判断されている」としたうえで、「したがって、ここで試みた類型化は確立したものではないことはもとより、個別具体的な有期労働契約一つ一つについて、6項目(裁判所の判断要素)それぞれに関する状況を整理しても、当該契約が4タイプのいずれかに該当するかをか必ずしも直ちに明確に判断できるものではない」(同報告書15ページ)との但し書きが加えられているのである。

 よって、これらの類型化が裁判例のおおまかな傾向をつかむためには、ある程度有効な手段だとしても、その逆のアプローチ、すなわち本件を4類型にあてはめたうえで、それぞれの類型における裁判例と比較してその適否を論じるのは、甚だ不適切である。
 特に、「5回も更新された事案」(理由書4頁14行 更新回数は5回であっても、契約期間は2カ月なので勤続10カ月にすぎない)などと、状況が大きく異なる他の裁判例における更新回数などを、ご都合主義的に一部のみ抜き出して、本件と単純に比較しているのは、まったく当を得ないものである。

 本件は、公共施設のなかでもかなり特殊な公立図書館という職場で、なおかつその管理運営を役所から施設単位で丸ごと民間事業者に委託される指定管理者という新しい制度のもとで締結されている労働契約であるという特殊性があり、そこのところの基本的な条件が大きく異なる民間事業における一般的な労働契約と単純比較して「判例法理に適合しているかどうか」は判断できないはずである。
 なお、雇止め法理の裁判例は、平成24年8月施行の改正労働契約法19条によって明確に条文として整備されているが、そこには控訴人が主張するような4類型をもとにした判断基準などは、なんら示されていない。


 雇止め法理に則って、被控訴人の契約期間満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるか、それがあるとすれば、本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるか--の2段階で、原審は、本件における被控訴人に対する雇止めの適否を判断している。
 まず第一に、被控訴人には、更新に対する合理的な理由があるのかどうかについては、以下の4つが原審によって疑いのない事実として認定されている。

1)控訴人が指定管理者としての本件図書館運営業務は、5年間の契約であった。被控訴人も含めた本件図書館全スタッフとは、1年ごとの期間の定めのある契約を締結しており、期間満了時の更新に関して事前に何らかの合意があったとは認められない。

2)控訴人は、本件図書館を受託した5年間、司書資格者4名を配置する必要に迫られていた

3)従業員を継続して雇用する方針を控訴人自ら積極的に採用していた

4)現実に、被控訴人を除いては、更新を希望した従業員の全員更新されている

 このことから原審は、被控訴人を含めた図書館全スタッフと期間の定めのある労働契約を結んだのは、施設管理の受託期間満了後の雇用維持をスタッフに保証できないことを主たる理由としたものであるとして、それには合理的理由を認めることができるとした。
 しかし、その一方で、受託期間の中途である平成24331日の雇用期間満了時に、司書資格を有して本件図書館運営業務に従事していた被控訴人が、本件労働契約が更新されるものと期待することには、2)司書配置の必要性、3)控訴人の雇用継続方針、4)希望者全員更新の実態--という3つの事実によって、当然のことながら、合理的な理由があったというべき、との明快な判断を下しているのである。

 そのうえで、本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるかについては、控訴人が主張する、被控訴人についての評価が妥当なものであるかかを原審は、慎重に検討した。
 具体的には、以下のような内容である。
「ルール遵守の意識や協調性が致命的に欠如し、自己中心的であり、職員としての立場を自覚した行動がとれていないのであって、業務遂行能力が低く、勤務態度も十分でない」
 その結果、「原告について、雇用関係の継続に支障を来すような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があるということはできない」と、原審では最終的に結論づけた。

 控訴人が被控訴人に対する評価の根拠とした、平成23年度における契約書の不提出及びそれに関連した社会保険労務士との面談時における態度、上司に対して行った自らの評価への執拗な抗議等については、いずれも、伝聞のみで客観的証拠がなく事実とは認められなかったり、あるいはたとえ事実だと認められたとしても、そのことをもってして業務に支障が生じるほどの出来事とは認められないと判定されて、控訴人の主張はことごとく退けられたのである。



 本件労働契約は、期間満了によって当然に雇用関係は終了する純粋有機契約タイプである、つまり、自己都合で退職する者以外は、自動的に雇用を継続されていた裁判例などとは根本的に異なると、控訴人は主張していて、その証拠に、本件図書館スタッフの雇用契約にあたっては、必ず全員と面接のうえ更新の有無を決定することとしていたと理由書5ページで述べている。

 確かに、本件図書館では、個別の面接や契約書を交わす実態は存在していたのは事実だが、それらはかなり形式的なものであったと思われる。
 被控訴人も含めて、本件図書館に勤務している職員の大半は、控訴人が本件図書館を受託した平成22年以前に、区内にある他の図書館(または同じ図書館)で勤務経験があり、ほかの指定管理者に雇用されていた場合でも、本人が希望さえすれば契約が更新された経験を持っていたため、個別の面接試験によって更新可否が決定されるとの認識を持っていたスタッフはいなかったものと思われる。

 にもかかわらず、本件では、「一年目は、東日本大震災が起きたため、十分な手続きを踏むことが困難であったという事情は存在する」(控訴理由書5頁8行)と、控訴人は釈明しているが、東日本大震災が起きたのは3月11日であったことをどう説明するのだろうか。
 更新しないスタッフに対しては、満了の1カ月前までに通知しなければならないことを考えれば、もし、面接のうえ更新の有無を決定していたのであれば、2月中には、それらの手続きはすべて終えていないといけない。したがって、3月11日の震災発生時には、それらの手続きは一通り終わっているはずだから、震災を理由に「十分な手続きを踏むことが困難であった」というのは、辻褄が合わない。
 控訴人が被控訴人に対して、雇止めを通告したのは、翌年平成24年1月19日であったことからすれば、更新の有無と、その手続きの様態には直接の相関関係はまったくないと考えるのが妥当である。
 原審では、その点について認定はなかったものの、本件図書館に勤務する全スタッフに対して、控訴人が契約更新手続きを厳密に行っていた形跡はみられないのである。



 控訴人がもうひとつ本件控訴の重要な理由として力説しているのが、解雇権が類推適用されたこととなった場合における「客観的で合理的な理由」の要件についてである。
 すなわち、この「客観的で合理的な理由」は、正社員と同様の基準ではないと最高裁も認めるところ」として、本件において、控訴人が雇用する正社員と、契約社員である被控訴人とでは、保護の必要性は大きく異なるべきであるとしている。
 つまり、正社員における場合よりも緩和された簡易な要件にて有期雇用社員を解雇できるはずであるから、原審が「雇用関係の継続に支障を来すような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があるということはできない」としたのは、正社員を解雇するときと同じレベルでの「合理的理由」の要件によって判断しているからで、その結果として更新拒絶を違法無効としたのは、「判例違反、経験則違反、審理不尽の違法がある」というわけである。
 しかしながら、ここでの控訴人の主張には、その前提条件からして、根本的な勘違いがある。
 それは、被控訴人が勤務していた〇〇図書館のスタッフは、館長をはじめとした全員が有期雇用のスタッフであって、正社員はひとりもいないということである。

 控訴人が挙げているNK所長は、施設管理部門の人事を統括する本社の責任者であって、たまたま図書館の隣に併設されている〇〇地域学習センターの所長として勤務していたことから、あたかも彼女が図書館業務も統括していたかのように誤解しがちだが、被控訴人が勤務していた図書館の業務について、NK氏には指示命令を出す権限はない。そのような権限を保持しているのは、図書館長だけである。

 さらにいえば、図書館と地域学習センターは、同じ建物に設置されてはいるものの、両方のスタッフ間に人事交流はなく、もちろん日常的にも、センターのスタッフが図書館の業務をサポートしたり、その逆に、図書館のスタッフがセンターの業務をサポートすることも一切なく、まったく別の施設として運営されていたのである。
 したがって、同じ事業所において、正社員と非正規社員の二種類の取り扱いルールがあってしかるべきとの控訴人の主張は、前提条件からして間違っている。そうすると、控訴人の主張は、根底から崩れることになるのである。


 控訴人が裁判例として挙げている「日立メディコ事件」を例にとると、工場の業績悪化により人員整理の必要性が生じたときに、「正規従業員に先立って臨時社員の削減をはかるのは社会的にみて合理的であり、臨時員の雇止めに先立って正規従業員より希望退職を募集することは要求されない」と判断された。
 臨時工は、簡易な手続きで締結された短期の有期雇用である以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、終身雇用の期待のもとに期間の定めのない労働契約を締結している場合とはおのずから合理的な差異があるべきとされたわけである。(菅野前掲書233ページ)
 しかしながら、本件においては、経営状態の悪化によって人員整理の必要性が生じたような事情は一切みあたらない。

 被控訴人が入社した年からスタートしている足立区より本件図書館運営を受託した5年間は、足立区役所から支払われる運営費によって安定した収入が保証されていたのであるから、前記の裁判例とは、その前提となる状況がまったく異なるのは、改めて説明するまでもないことである。
 当初の予想以上に従業員の人件費がかさんで、収益の確保が困難になっていた事実もなく、原審判決でも、「期間の途中で従業員の数を減らすことが予定されていたとか、従業員の数を減らす必要が生じたなどの事情は認められず」と明確に否定されているのである。
 また、簡易な手続きによって採用されているのだから、解雇時に求められる「合理的理由」は正社員のそれよりもハードルの低い基準を元にしてもよいのではないか、との控訴人主張については、同じ事業所に勤務している正社員がいてはじめて成立する論である。

 先述した通り、本件図書館には、正社員は、ひとりもいない。控訴人が受託している隣の地域学習センターに勤務する正社員であるNK所長は、法的な規定(図書館法など)も異なる別の事業所の従業員であるため、この両者において許容される解雇理由の基準を比較することに、なんら妥当性を見いだせない。
 よしんば、世間的な広い意味での「正社員」との比較が許されるのだとしても、その場合でも、控訴人が主張するほど、簡易な理由で有期雇用労働者の解雇が認められているわけではない。
 過去の裁判例では、「正規従業員に比べ遜色のない業務に従事し、基幹労働力化している有期契約労働者については、人員整理の必要性をはじめとする要件が厳しく吟味される。(たとえば、薬剤師に関するヘルスケアセンター事件-横浜地判平11930労判77961頁)」(菅野前掲書233頁10行め参照)とされている。

 館長をはじめとしたスタッフ全員が有期雇用であった本件図書館においては、パート従業員を除く職員の全員が、「正規従業員に比べ遜色のない業務に従事し、基幹労働力化している有期契約労働者」にあたると言え、副館長であった被控訴人の雇止めにあたっては、当然のことながら「要件が厳しく吟味される」べきである。
 いずれにしろ、原審判決は、妥当なものであり、控訴人の「判例違反、経験則違反、審理不尽の違法がある」ところは、どこにもみあたらないのである。


 控訴人は、被控訴人を雇止めした理由を「職員として不適格であったため」としているが、原審において、結局、そのことが事実であるとの証明はまったくなされなかった。
 「審理不尽」と言うが、もともと原審が始まって半年以上経過した時点(平成26年5月29)でも、控訴人は客観的な証拠となる書類を1枚(乙1号ハローワークの求人票)しか提出しておらず、そのときの裁判官から「乙号証が出てませんが、よろしいですか?」と指摘され、その後(平成26年8月21日)になって、ようやく何点か出してきたものの、そのほとんどが自ら作成した書類(証拠説明書に作成年月日の記載すらなく、後に訂正版を提出)であって、利害関係のない第三者によって主張事実を客観的に証明するものを提出しなかった。

 被控訴人の「職員として不適格」に関して、唯一客観性のあるものとして認められたのは、本件図書館長で、被控訴人の上司であったTG氏の手による被控訴人についての評価メモ(乙26号証)だけであった。
 それも控訴人からの命令で作成したとの記述内容があり、また、被控訴人がその文書を発見して本人に問いただしたところ「副社長から執拗に求められて無理やり絞り出したもの」と同氏は釈明していることが認められることから、原審では、それが被控訴人の「職員として不適格」さを表すものとは認めなかったのである。
 本件において、解雇権乱用法理の類推適用がさなれた場合、当然のこながら、控訴人の側が本件解雇に合理的理由があったと立証する責任を負っていたのであるが、結局1年半にわたる答弁のなかで、控訴人が、そのことを証明することができなかったのは、そのような事実は、そもそも最初から存在しなかったからにほかならない。


 控訴理由書に書かれている通り、控訴人が原審において主張したのは、以下の通りである。
「控訴人が何度も奨約書の提出を促したにもかかわらず、評価に不満があるという契約書不提出の理由とはなり得ない理由をもって、頑なにその提出を拒み、多忙な館長、所長の休憩時間を奪うような執拗な苦情を行うことによって、評価のやり直しをせざるを得ない状況に上司を追いやり、社外の人間である社労士とわざわざ内容を確認せざる得ない状況に控訴人を追いやった被控訴人の勤務態度を問題としているのである。」
 このうち、原審で事実と認定されたのは、被控訴人が契約書を提出しなかったことと、社外の社会保険労務士との面談によって契約成立が確認されたこと--の2点にすぎない。「控訴人が何度も奨約書の提出を促した」事実もなければ、被控訴人が「評価に不満があるという理由をもって、頑なにその提出を拒んだ」わけでもなく、さらには「館長、所長の休憩時間を奪うような執拗な苦情を行った」のも、まったくの事実無根である。
 よって、控訴理由書6頁以降で控訴人が主張している内容は、すべて自らの主張通りに事実認定されなかったことに対する恨み事の域を出ない。
 「原審は、ことさら、被控訴人の不満が評価なのか昇給なのか、社労士との面談の際に文句を言ったかどうか、という問題提起をすることによって , ことさら問題を短禁小化」して」いると、控訴人は不満を述べているが、これは、原審の裁判官が、明らかに事実と認定できるわずかな糸口から本件の争点にアプローチしようとしているために、控訴人主張とはほど遠いものになったにすぎない。


 通常、職場において控訴人が繰り返し主張するほどの異端な事実があるのならば、同僚や関係者の証言があったり、あるいは人事考課制度による客観的な指標に基づいた採点が提出されるものだが、控訴人の場合は、そのような客観的な証拠は一切提示することなく、まるで壊れたテープレコーダーのように、ただひたすら同じ発言を繰り返して、被控訴人を誹謗中傷することに終始している。
 控訴人のこのような「一方的に相手を誹謗中傷はするが、その論拠となる証拠は一切出さない」というスタンスは、本件が被控訴人との争いとなった当初から一貫している。

 図書館内で行われた不法行為の中止を進言したがために雇止めされたと、被控訴人が平成24年2月、足立区コンプライアンス課に公益通報したときも、公益通報された内容の調査を担当した第三者機関である足立区公益監察員及び同事務局から、被控訴人の勤務不良に関する証拠資料の提出や事情説明の要請を何度も受けたにもかかわらず、控訴人は、頑なにそれを拒否し続けていて(甲27号証、甲28号証の16)「期間満了(の更新拒絶)に、正当な理由は必要ない」と、同じことを繰り返し述べているのである。
 被控訴人との訴訟になっても、控訴人における、このスタンスはまったく変わらず、客観的な証拠は出さないまま、一方的に相手を誹謗中傷することに終始している。
 よって、もし、控訴人が控訴審において改めて客観的な証拠を提出できないのであれば、審理するだけ時間の無駄であるため、すぐに結審して、控訴人の申し立てを棄却すべきてある。


 では、本件の真相はどのようなものであったのだろうか。最後にその点をまとめて、控訴人の控訴理由書に対する反論を締めくくりたいと思う。

 本件の基本的な構造は、いみじくも控訴人が理由書で述べている言葉に集約される。


「--パート職員以外の社員は、1年の有期雇用を締結したものである。これは、職務遂行能力を実際に雇用をして勤務態度を見る中で不適格者を排除していくという意味合いを有するものである」(理由書4頁7行め)

 東京・足立区で長年にわたって金属加工業を営んでいた控訴人は、図書館運営業務のノウハウを持っていたわけではなかったため、とりあえずその道の経験者及び司書の資格者を採用して現場業務にあたらせ、特に問題がなければ翌年以降も雇用を継続する方針(被告経営者本人尋問調書2014行、第一審判決1811行)で臨んでいたのだが、逆にもし何か問題があれば更新はしないという密かな意志をもって運営していた。

 しかし、控訴人のこの「問題があれば」という基準は、勤務態度が不良だったり、職務に適しない従業員を排除するというものではなく、自らの利益をより多く得たいという不当な目的をもって行われるものであった。

 すなわち、本件においては、被控訴人が賃金アップの交渉をしてきたこと、その交渉のプロセスにおいて経営者の命令(他館館長就任、契約書の提出、社会保険労務士との面談設定日時等)に素直に従わなかったこと、さらに決定的だったのは、図書館内で控訴人副社長自らが指揮して行った違法な超低賃金の内職作業について上司に異議を述べ「違法行為なので中止するよう」強く要求してきたことが、控訴人にとっては、決定的に「問題のある従業員なので排除すべき」と感じられるに至った。

 そのときの控訴人の主観的な認識こそが、「ルール遵守の意識や協調性が致命的に欠如し、自己中心的であり、職員としての立場を自覚した行動がとれていないのであって、業務遂行能力が低く、勤務態度も十分でない」(第一審判決11頁)であったのだろう。
 控訴人は、どこから聞いてきたのかわからないが、


「有期雇用の従業員であれば、更新拒絶に合理的理由は必要ない」

との生半可な知識から、平成24年1月に、被控訴人に対して更新拒絶を通告した。
 しかしながら、被控訴人には、控訴人が指摘したような勤務不良の事実はまったくなく、むしろ本件図書館のなかでも、最もその運営に誠実に取り組んでいて、同僚たちや委託元の足立区担当者から厚い信頼を得ていたほどであった。


 自らが雇止めされたのは、図書館内で行われた不法行為中止の進言をしたことが大きな原因ではないかと被控訴人は考えざるをえなかった。
 前年夏、図書館の蔵書2万冊に盗難防止シールを貼付する作業をパート従業員が行うことになったのだが、なぜか「残業」ではなく、就業時間終了後に「内職」として作業することになっていて、報酬も完全出来高性の1枚7円という条件だった。

 実際に始まってみると、1時間に3050枚程度しか貼れなかったため、作業時間の2時間で割ると、時給は当初100円台という明らかに最低賃金を下回る額だった。
 パート従業員のそんな劣悪な状況をみてみぬふりすることができなかった被控訴人は、何度もTG館長及び本社の人事担当者であったNK氏に「そのような違法行為は即刻中止すべき」と進言したのだが、その意見は黙殺されたばかりか、その声が控訴人の耳にも届き、また、春から続けていた自身も賃上げ交渉ともあいまって、控訴人から経営者の方針従わない反逆社員として排除の対象になったのは明白だった。

 そこで、期間満了直前の同年2月に、不法な雇止めの撤回を求めるとともに、足立区コンプライアンス課に、公益通報を行い、自らの不当な雇止めの真相究明調査を依頼したのである。

 被控訴人の公益通報はすぐに受理され、第三者機関である足立区公益監察員を勤める弁護士が本件図書館に勤務する同僚や上司など多数(16名以上)の関係者に長時間(合計9時間)聴取して調査を行ったところ、控訴人が主張する被控訴人についての勤務不良の事実はどこからも出てこなかった。
 それどころか同僚たちからは「尊敬や申し訳なさ、いかに職場にとって貴重な存在であったかといった声が多く聞かれた」(甲27号証)と、控訴人の主張とは正反対の事実ばかりが続々と出てくる始末であった。


 足立区公益監察員は、公益通報を受理してから4か月後の平成25年6月25日付けで、足立区長宛てに最初の報告書を提出し、そのなかで最低賃金に満たない報酬でのシール貼り作業が本当に行われたことを関係者の証言や資料によって明確に認定(甲9の1・2頁)。そのうえで、「(控訴人が)通報者の問題点として雇止め通知書に記載した事実は存在しないと推認される」(甲9号証の1・5頁21行)と報告したばかりか、「(控訴人が)通報者に対して雇止めしたのは、公益通報者保護法に違反している可能性が高い」とまで言及(甲9号証の1・6頁8行)している。

 その後、公益監察員は、控訴人に対して反論の機会を与え、自らの主張を証明する証拠の提出を求めたが、控訴人は「期間満了(の更新拒絶)に、正当な理由は必要ない」と、その要請をことごとく拒否したため調査は暗礁に乗り上げてしまった。
 一方で、被控訴人の賃上げに理解を示していたNK氏が被控訴人を高く評価した再評価表(甲6号証)を公益監察員が入手したことから、その高評価と控訴人評価の乖離についての説明を控訴人に要求せざるをえなくなった。

 その際、「不当な調査なので、回答できない」と控訴人がこれまで通りの対応を取ることが予想された。
 そこで、公益監察員にとっての「伝家の宝刀」とも呼ぶべき、地方自治法第244条2の第10号を法的根拠とした、区長権限を発動する(区長名で担当部署が回答を要求)という、前代未聞の措置を取ることで、控訴人に強く回答を迫ったのである(甲27号証、甲28号証の16)。


 ところが、控訴人は、それでも頑なに回答を拒絶し続けたために、何度か回答要請のやりとりが公益監察員事務局と控訴人との間で継続されたが、まともな回答はないまま、徒に時間ばかりが経過していくこととなった。

 最終的には、公益通報から2年後の平成25年3月に公益監察員は、区長宛の最終報告書(甲9号証2・1頁8行)を提出し、そのなかで控訴人が主張していた被控訴人の勤務不良について「(控訴人)の主張する事実は認められない」と、キッパリと断言したうえで、「(控訴人)が更新しない理由としたルールが守れないとか、業務遂行能力がないという指摘は虚偽である。(中略)このような所内評価(NK氏による高得点の再評価のこと)がありながら、事実に反する主張を再三行っている点でも指定管理者としての適性に問題があると思われる」とまで踏み込んだ報告を行っているのである。

 一方で、控訴人が犯した労基法違反等の違法行為については、指定管理者として本件図書館を受託したときに足立区と締結した「協定違反と認められる」と認定し、担当部署からの注意処分と、今後、指定管理者選考において、「関係法令に違反したことがあることを判断の要素とすべき」とされ、実際にその通りの措置(担当部署による厳重な是正指導と改善プログラムの実施、指定管理者募集における選定委員への報告等)がそのあとに取られることとなった。


 控訴人が平成23年に犯した最低賃金法違反については、被控訴人の告発を受理した足立労働基準監督署が、平成24年6月に、控訴人本社に立ち入り調査に入った結果、その違反事実が認められたために、その日に正式な是正勧告が出されている。

 また、控訴人は、原審において、この最低賃金法違反を「--この問題点にまったく気づいておらず、原告からも指摘はなかった」(第一審判決11頁)との立場を取っているが、足立区公益監察員の報告書(甲9号証1・4頁8行)の中で、雇止め通告を受ける前年にこの行為が行われたとき、館長に異議を申し立てていることが認定されているばかりか、「~書籍の運搬作業などに予想外の時間がかかる旨の報告が図書館スタッフから館長になされ」(被告準備書面1・9頁12行)と、控訴人自らが内職作業に職員から異議申し立てがあったことを認めていて、その異議を申し立てた職員こそが本件被控訴人であることが、ほぼ証明されている。

 さらにもう一点付け加えておくと、控訴人は、最低賃金違反について「まったく気づいていなかった」との主張を根底から覆す証拠を自ら提出している。
 それが最低賃金違反内職が行われる直前に、控訴人副社長に対して、TG館長が送付したメール文の乙25号証である。

 驚いたことに、このメールには、以下のような記述がある。
「テープ貼付作業とテープの磁気の撤去作業を含め、1時間で120本ペースを見込んでいます」(同本文4行)
 出来高賃金は、1枚貼るたびに7円であったから、「1時間で120本」は、時給に直すと840円である。この作業が始まる平成23年8月当時における東京都の最低賃金は、821円であった(甲101)。つまり、当初の想定だった時給840円は、すでに最低賃金ギリギリの額であった(まだ、内職作業が継続していた平成2310月からは837円とさらにギリギリとなった)。もし何か少しでも想定外のことがおきれば、たちまち最低賃金を下回る労働に陥ってしまうことは、明らかであった。

 ことのほか法令遵守を厳しく求められる公務の労務管理者である控訴人には、最低賃金未満の労働条件に陥ってしまう結果となる可能性は、容易に予見できたはず。
 にもかかわらず、本件において控訴人が、そうした労務管理者としての注意義務を怠った反省がまったくなく、あくまでも「そのような低賃金になっていたことを知らなかった」との立場を貫き通せるのは、もはや、あっぱれというほかない。
 もし、控訴人が審理不尽を言い、控訴審にて新たな証拠や証言を提示するのであれば、
こうした点も含めて、いま一度、徹底的に検証するべきである。


 原審においては、被控訴人がパート従業員が従事した違法な内職について上司に異議を申し立て、改善要求を行っていることまで事実認定されたものの、そこから以降については、これら公益監察員の報告書等の客観的な証拠を検討するまでもなく、契約の状況や勤務についての基本的な事実によって、更新期待に対する合理的な理由はあると認め、本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとの結論を導き出しているのであった。

 なお、控訴人は、理由書5頁後ろから13行めで、平成253月に、本件図書館に併設された〇〇地域センターの職員を雇止めした事実を挙げて、「当然に更新をするということが控訴人のスタンスではないことの証左である」と述べているが、実は、この件においても控訴人は、当該労働者を雇止めする前に、自らの不法行為を当該労働者から労基署に告発され、労基署から是正勧告を受けているばかりか、その後、当該労働者によって、足立区コンプライアンス課へ15もの法令違反を告発される、一大公益通報事件にまで発展していて、現在、控訴人は、当該労働者と雇止めについて、本件と同様に係争中である。

 このように、著しくコンプライアンス意識の低い控訴人は、受託していた3つの公共施設の運営管理業務の期間満了を昨年3月から今年3月にかけて次々と迎えたものの、本件被控訴人および前記したセンター元職員の告発によって違法行為が発覚したため、一昨年は、指定管理事業者募集に際して応募不可の扱いを受け、また昨年は、応募はしたものの書類審査で不合格となるなどしたため、平成27年4月以降は、すべての公務から実質追放処分と言っていいような措置を受けたことを付け加えておく。(了)

和歌山でCCCの巨額システム費可決!

こんにちは、日向です。

速報です。
来年秋に開館予定の新しい和歌山市民図書館について、補正予算に入っていました議案が12月21日の本会議で可決されました。

可決されたのは、すでに話題になっておりますCCCによるシステム導入費用総額3億円の債務負担行為です。

 同じツタヤ図書館でも、和歌山市のシステム費用3億円は、多賀城の約3倍、周南市の2.5倍という常識破りの巨額費用になっていました。

それにもかかわらず、会議では、ほとんど議論なしで通りました。

これについて、市内の図書館サークルがすでに18日の時点で、教育長に申し入れをしています。

その文面を掲載しておきます。

よろしくお願いいたします。

※2018年12月29日追記 下の画像が読みづらかったので、テキスト化してみました。→ 「申し入れ書」画像をテキスト化






2018年12月20日木曜日

●図書館で起きた時給180円事件(3)

図書館で起きた時給180円事件(2)」からのつづき

●図書館で起きた時給180円事件(3)


 違法行為を犯した事業者は、指定管理を取り消されて当然。次回から図書館運営の仕事を失うはず。ところが、現実には、区がルールを急遽変更してまで、違法行為だらけの事業者に指定管理を続けさせようとした。


事件を報じるAERA


10.他の2施設も受託できない危機

 ところが㈱TK(仮名)が運営していた図書館と同じ施設内にあるセンターでも、もう1 件労基署から是正勧告を受けていまして、それが2012 年12 月なのです。ですから指定管理者の公募開始時点(2014 年7 月)では、2 年に満たないので応募資格はありません。受託施設のすべてを失うことになる㈱TKとしては、大打撃です。

11.区が応募資格要件を緩和

 一方で、区は、どうしても㈱TKに指定管理を継続させたい様子でしたので、もしかしたら、何か救済措置を設けるのではないかと悪い予感がしておりましたところ、それが的中しました。

 公募開始直前の2014 年6 月16 日に開催された区議会総務委員会で、指定管理者の応募資格のなかに、急遽こんな新しい但し書きを追加したんです。



「但し、法規違反の認定より3か月以内に改善されるなど改善意欲が確実に認められる場合は、選定委員会の意見を付して区長決定により、応募資格のない期間を「1年以上」まで短縮することができる」

 これ、完全に㈱TK救済です。あからさまだったので、野党議員が怒ったと聞いています。改正の理由は「悪意のないミスを犯した事業者を救済するため」ということだと説明されていましたが、異例なことに総務部長が直々に答弁しています。

「・・・選定委員会の意見を付して区長が決定するということなので、1年間まで短くすることはできると。やはり法律違反にはわれわれも厳しくのぞみたい」と述べていましたが、何の説得力もありません。

12.起死回生の「バズーカ砲」、㈱TK書類審査で不合格

 さて、区の応募資格の緩和措置によって、一度は、残り三館の契約更新がすべて絶望的になっていた㈱TKは不死鳥のように蘇りました。応募さえできれば、現職は圧倒的に有利です。ところが、最後の最後に、どんでん返しが待ってました。

 図書館併設の地域学習センター、公民館ですね、そこに勤めていた方が㈱TKの就業規則違反などを労基署に申し立てて雇止めにされ、15 以上の法律違反を指摘して公益通報されていました。

 とどめを刺したのは提訴です。この方もうちの妻と同じく、解雇撤回を求めて団交していたのですが、その交渉が決裂したため、2014 年8 月、㈱TKを提訴しました。1年前からのうちの妻の取組みを、まるで、そのままリフレインするかのように、東京地裁での会見の模様がNHK ニュース等で報道されました。ここに至っては、区も15 もの法律違反は庇いきれないと思ったのでしょう。

 第2次選考会のプレゼンテーションが開催される9月1 日のこと、私は、労組の幹部の方と一緒に、㈱TKを選定しないよう区側に求めに行ったところ、その場で、総務部長は、書類審査で不合格とし


“㈱TKさんは(プレゼンには)呼んでいない”

と明言しました。私にとっては、事件全体を通して、いちばん嬉しい瞬間でした。

 不正行為を犯した会社が仕事をすべて失い、公務からは締め出される、一罰百戒です。今後もこれが前例となって、区内では、こういう業者が出てこないような道筋ができたのではないかと思います。


13.地裁、高裁とも勝利判決

 一方、苦戦が予想されておりました裁判のほうは、翌年2015 年3 月12 日に、東京地裁で雇止め無効の勝利判決が出ました。

 担当弁護士からは、通常、何度も更新して、実質的には正社員と変わらないくらいの長期勤務の実態がないと、非正規労働者が解雇撤回裁判で勝つのは難しいと言われていました。それが図書館で5年の指定管理期間中は、労働者が契約更新を期待するのも当然という内容の画期的な判断が出たのです。

 こちらは、弁護団の先生方のご尽力と、地域労組や区労連及び共闘会議を結成していただいた公務公共一般労働組合 (公共一般)の関係者の皆様等、大勢の支援者の方のサポートおかげで勝ち取った勝利です。毎回、裁判所まで傍聴に足を運んでいただいた大勢の方の熱気が、裁判長をつき動かしたのではないかと思います。

 相手方は、地裁判決を不服として即時控訴しましたが5ヵ月後の8 月4 日、東京高裁も地裁判決を踏襲して全面勝利となり――夢のような結果が出ました。

 残念ながら、雇用主であった㈱TKは、すでに公務から実質追放処分となっていましたので、妻は、元の職場に戻るという希望を、ついにかなえることはできませんでした。
 それでも、自分が正しかったことを広く世間の方に認めてもらえたことで、これ以上ないほどの雪辱を果たせたのではないかと思います。時間をオーバーしました。発表を終わります。ありがとうございました。

裁判については、
「時給180円事件」裁判の結末
をご参照ください。

【注釈】 地方自治法第244 条の2 第10 項:普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。


詳細な説明図版が入った講演録は、以下の冊子に収録されています。また、この冊子では、メインの講演である
「ツタヤ図書館を追ってみえたこと」も収録されていますので、ご関心のある方は、以下でお買い求めください。
「時給180円事件」裁判の結末 につづく)






●図書館で起きた時給180円事件(2)

図書館で起きた時給180円事件(1)」からのつづき

●図書館で起きた時給180円事件・(2)

 公共図書館で起きた「時給180円事件」。それを告発した司書は、実質解雇され、権利回復はほぼ絶望的だった。
そこに急転直下、救いの神が現れた――。


事件を報じるAERAの記事



5.突破口は、労働基準監督署の是正勧告

 意外にも、最初の突破口は、労基署でした。労基署が突然、是正勧告を出したんですね。
 これは私も不思議だったのですが、申告から4 か月後の2012 年6 月11 日に経過を電話で問い合わせたところ、係官から


 「ちょうど今日、㈱TK(仮名)に調査に入りました」

と言われたんですね。

 労基署には、2 月に本人が申告した後も、組合幹部の方も同行して頂いて着手するよう要請に行ったり、係官とは、定期的に連絡をとって、根気良く、労基法違反行為を摘発するよう催促したりしていましたので、それが功を奏したのかもしれません。

 係官が会社に調査に入った結果、最低賃金法違反行為に対して是正勧告が正式に出されました。違法行為が初めて認定されました。

 このことは、事件全体にとって非常に大きい意味を持ちました。これがなければ、その後の展開はうやむやになっていたでしょう。“不適切な行為はあったが、違法行為はなかった。すぐに改善したので問題はなかった”と、波風立てずに、この業者に続けさせたい区は、そう言うに決まっています。

 ところが、労基法違反・最低賃金法違反となりましたので、われわれは堂々と“違法行為を犯した業者”とアナウンスできるようになりました。


6.第二の突破口は、マスコミ報道

 その成果が出たのが、まずメディアの報道です。これは朝日新聞『AERA』2013 年2 月25日号に掲載された記事です。「公務員の代替時給180 円」という非常にショッキングな見出しで、妻の事件が報じられました。朝日新聞の記者は、当事者たちに大変丁寧に取材して、時間をかけて事実を固めて記事にしていました。

7.公益監察員が区長に報告書を提出

 ここまで詳細な報道が出ると、区としても、もはや知らん顔はできなくなったようです。アエラの記事が出た翌々月の4月、さんざん待たされた公益監察員の報告がついに出ました。

 退職直前の前年2月に公益通報した妻は、当初、1カ月位で報告が出て、それを受けた区の改善指導によって4月以降も継続して勤務できるんじゃないかと淡い希望を抱いてましたが、区からは、何の音沙汰もない。いくら待っても、区は何もしてくれないのだなと憤慨していたところ、1年後、アエラの報道を受けて、やっと報告書を出してきたのです。

 報告書のなかで、公益監察員は、妻の不当解雇について


“㈱TKは契約更新拒否の理由として挙げている指摘は虚偽である”

と断定しています。

 通報から1年かかりましたが、結果として、その内容は、非常に厳しいものとなりました。そして、


“㈱TKは事実に反する主張を再三行っている”

と、こちらの主張を全面的に事実認定し、さらに


“㈱TKからの報告では、足立労働基準監督署からの是正勧告を受け・・・この事態を回避すべき責任を負っていながら回避しなかったと評価でき、基本協定に違反する”

と結論づけていました。

 また、報告書では、終始一貫して㈱TKの行為を強く非難していました。

 たとえば


“区長に対して行った報告に事実に反する点があるなど、不誠実な対応が散在する”

――これは何かというと、彼らは“資料を出せ。説明しろ”という公益監察員の要求を、ことごとく拒否していました。

 そのやりとりの詳細文書を情報開示で請求したところ、本当に区を馬鹿にしたようなノラリクラリした態度で公益監察員の弁護士さんも翻弄され、怒り心頭に達していた様子がわかりました。

 そのあたり経緯が報告書の文章表現に込められていたのです。地方自治法第244 条の2 第10 項6という法的根拠を明確にした区長権限での“書類を出しなさい。正直に言いなさい”との公益監察員からの要求を、会社はことごとく撥ねつけていたのですから。

8.㈱TKを東京地裁に提訴

 ところが、公益通報に対する調査報告書は出たものの、今度は、待てど暮らせど、区はこの会社を処分しようとしません。そこでしびれをきらしたわれわれが次にとった最終手段が訴訟です。


 最初に法律事務所の弁護士の先生に相談したときには、


「裁判で勝算は五分五分ですかね?」


と訊いたら難しい顔をされました。五分五分も無いような勝算の裁判を起こすことはほとんど考えていなかったのですが、“ここで記者会見すれば世間にわっと広がるんじゃないか”――団交は決裂していますし、区も処分をしないので、事態を打開するには訴訟に踏み切るしかないのではと思い至りました。

2013 年8 月21 日、解雇撤回を求めて㈱TKを提訴。東京地裁の記者クラブで弁護団、労組幹部同席のうえ会見したところ、案の定、NHKのニュース、翌日の日経、読売、毎日等に取り上げられました。

9.区の処分が決定

 それを受けて、翌月9 月18 日、ようやく区は重い腰を上げて処分を決定するのです。

 何をしたかというと、㈱TKが受託している三つの公共施設-図書館併設の地域学習センター2 館と運動場というスポーツ施設-のうちスポーツ施設だけを、来期で満了になるから外すこと(違法行為を犯した事業者の応募を受け付けない)で収拾を図ろうとしました。

 委託費は3 施設全体で2 億円程度ですが、この運動場はせいぜい2、3 千万円位の仕事です。㈱TKとしては“こんなものを飛ばされても仕方ないか”というところでした。

 問題はここからです。その翌年2015 年3 月にも、残る2 施設も期間満了になるのですが、その応募資格にこんな記載がありました。


「団体又はその代表者が、指定管理者として行う業務に関連する法規に違反するとして関係機関に認定された日から2 年を経過しない者でないこと」

 要するに、“法律違反をしたら2 年間は指定管理者に応募できませんよ”ということなのです。うちの妻が労基署に告発して、その是正勧告が出されたのが2012 年6 月でしたから、その2年あとの2014 年6 月には指定管理者に応募できるようになります。

 翌7 月には指定管理者公募開始ですから、これは、かろうじてセーフなのです。

(「図書館で起きた時給180円事件(3)」につづく)

裁判については、「時給180円事件」裁判の結末 をご参照ください。

●図書館で起きた時給180円事件(1)

 こんにちは、日向です。

 昨日、東京・練馬区立図書館の非常勤司書で構成される労働組合が「直接雇用の継続を求めてストライキ突入か」というニュースが飛び込んできました。

 12月19日現在、区教委と「一定の合意が得られた」として、直近のストライキは延期になりましたが、このニュースをきっかけにして、公共図書館の民間委託の是非についての関心が急速に高まっているようです。

 そこで、今回は、私が図書館の問題に関心を持つきっかけになった個人的な体験を披露したいと思います。

 以下は、2017年7月9日、「東京の図書館をもっとよくする会」の招きで、講演させていただいたときの記録です。そのダイジェスト版を、何回かに分けて、転載させていただきます。

 これを読めば、図書館の運営を丸ごと民間企業に任せると、どういうことが起きるのか、ツタヤ図書館だけの問題ではないことがおわかりいただけるかと思います。

 また、四面楚歌に立たされた労働者が、各地の労働組合の皆さんの支援の輪によって支えられていることも実感していただけるのではないかと思います。

よろしく御願いいたします。


1.区立図書館・時給180円事件

 私が図書館の問題を書くきっかけになったのは、個人的な事情です。都内の公共図書館を運営していたある民間事業者が、時給180 円でパートの人を働かせてしまったという事件がありまして、これが起きたのがうちの妻が勤めていた図書館でした。少し長いですが読み上げます。



  2011年夏、区立図書館の指定管理者である㈱TK(仮名)は、図書館蔵書2万冊に、盗難防止BDS 装置を装着する業務をパート従業員の時間外労働によって実施した。その際、割高となる時間外手当を支払うことを避けるため、パート従業員が余暇に内職として取り組んだかのように偽装して、完全出来高払いの給与(1枚7円)を支払った。(1日の仕事を終え、タイムカードを押してから図書館内で作業開始)


 その結果、作業開始当初、この作業にあたったパート従業員の賃金は、時給にすると180円にも満たない額となった。パート従業員を監督する立場にあった職員のA さんは「これは、不正な脱法行為ではないか」と、再三、館長及び地域学習センター長に中止するよう進言したが、まったく受け入れられらなかった。正しいことを主張したはずのAさんは会社から「トラブルを起こす人間」とみなされたのか、翌年3月末で契約更新を拒絶され、実質解雇された。
事件を報じるAERAの記事


 概略はこういう事件です。これがそのときの作業の出来高表(図表20「BDS タトルテープ装着作業表」枚数のみ掲載)です。赤で囲んだところは、30~50 枚で時給に換算すると200円以下のところ。青で囲んだところは100枚を少し超えていますが、大体300円とか400円のところです。

 当時の最低賃金・時給821 円を上回るためには、2時間の作業で1 日235 枚以上が必要なのですが、最後まで誰一人1 日235 枚達成できた人はいませんでした。中にはアフター5ではなく、非番の日にわざわざ出てきてやってらした方もいましたが、3 時間・4 時間やってもその枚数にならなかったということです。


2.どんな作業だったのか

 現場を知っている方は“1 枚7 円だったら、そんなに安くならないだろう”という疑問を持たれるかもしれませんので、作業マニュアル(図表21「BDS タトルテープ装着作業の基本的な流れ」)を出してみました。1 番から11 番までありますが、7 番までは付帯作業で、実際にテープを貼るのは8 番だけです。これから作業する本を出してきたり、リストを作ったり、それに団体カードで貸出作業をしたりとかして、やっとテープを貼れるんです。その後、後作業もあります。


3.A さんの中止進言と会社の報復

“1人1時間程度”とありますが、実際はみなさん2時間程度やっていらした――というのがこの事件の真相です。その中止を進言したのが、ここで「A さん」と書いたうちの妻です。すると、翌年1月、雇用主の運営会社は、妻に対して、4月以降、契約を更新しないと通告してきました。

 雇止めの理由書には、こう書かれていました。


“ルールを守らない。協調性がない。誠意がない。業務を遂行する能力、勤務態度が十分でないと認められるため”

 そのように虚偽の内容を出してきたものですから、ここからが納得がいかない、うちの妻がとった行動です。

4.納得いかないA さんがとった行動

①区へ公益通報

 まず区に公益通報しました。先に私の方から区長に“こういう事件に対処しないのですか”という手紙を書いたところ、区長部局から公益通報制度の利用を勧められましたので、妻がそれに応じました。で、所管するのがコンプライアンス推進課というところで、第三者機関としての外部の弁護士さん(公益監察員)に事件の調査を委嘱し、その人が関係者に事情聴取をして報告書を出すということでした。

 ところがこの公益監察員という第三者機関は、区に不正があったかどうかを調査するためのものであって、労働者個人を救済するための制度ではないのです。

“調査はするが、雇止めについては区には権限がないため何もできない。あなたが自分の権利を守るためには、自ら裁判を起こすか、権限を持っている労働基準監督署 (労基署)に行きなさい”と、妻は弁護士に言われたそうです。また“一緒に労基署に行きましょうか”とコンプライアンス推進課の職員に言われたそうですが、“区自らが不正行為を糾弾するつもりもないなら、意味ないじゃないか”と本人はたいへん憤慨しておりました。


②地域労組に加入・団体交渉を通じで解雇撤回を求める

 次に、地元の労働組合に入って、団体交渉という流れになりました。これは、他の会社でもよくあるパターンだと思いますが、雇用主の会社は、組合が申し入れた団交には、一応形だけは応じるふりをするがノラリクラリ対処する。“有期雇用なので更新拒否に理由は必要ない。内職の件は、区に説明して理解してもらった”と、うそぶき、組合が要求したことへの回答とか文書提出はすべて拒否するという対応を取りました。


③労働基準監督署(労基署)へ不当解雇と最低賃金法違反を通報

 もう一つは労基署です。労基署にも不法行為の中止の進言をしたら解雇されたと告発に出向きましたところ、対応した係官は、労働契約法の範囲内でしか指導できないとのこと。(1年ごとの契約なので、雇用主である会社は、単に契約を更新しなかっただけで、解雇ではないと主張すれば、労基署は、違法認定するのは困難)

 館長はじめほぼ全員が非正規で働いている指定管理の図書館で、労基署がこういう対応をすると、中でどんな不法行為があっても指定管理者のやりたい放題になってしまいます。

 時給180円で働かされたパート従業員に対する労基法違反についても、被害者本人からの申告がないと動けないというのです。しかし、本人からの申告は無理です。なぜなら会社が非常に強いプレッシャーをかけていて、うちの妻が告発しようとした次の週にミーティングをやって、全員に内職の実態について内申書みたいなものを出しなさいというパワハラをしていました。するとみなさん“私は最低賃金未満で働かされました”という事実を言えなくなって、申告も出来ない。もし、申告したら、妻と同様に契約更新を拒絶されかねません。

 ここは非常に難しいところでした。労基署は、妻からの申告を第三者からの通報として“一応受理はするけれども、結果はどうなるかは分からない”というような対応でした。
 その結果、“下手に正義感を発揮して、告発はしたけれども、告発者は一切守られない。権利回復は、ほぼ絶望的”というよう最悪の事態になりつつありました。

(「図書館で起きた時給180円事件(2)」につづく)

裁判については、「時給180円事件」裁判の結末 をご参照ください。

2018年12月19日水曜日

「大家さんと闘うボク」(2)

家賃は今すぐ下げられる
(発行:三五館シンンャ/発売:フォレスト出版)より



 こんにちは、日向です。

 先日の 「大家さんと闘うボク」(1) に続いて、本日も、拙著の告知をさせていただきます。

 先月刊行された『家賃は今すぐ下げられる』(発行:三五館シンンャ/発売:フォレスト出版)では、担当編集者N氏の実体験を事細かにレポートしています。






 顧問弁護士が何人もゾロゾロと出てくる大手サブリース会社と家賃値下げ交渉をしたN氏は、ある一言によって、それまで劣勢だった交渉の局面を一気に打開しました。

 そのときの交渉材料のひとつが更新料でした。

 その顛末は、本書をお読みいただくとして、今回は、この更新料の法的効力について解説した本書から一部、ダイジェスト(というより、こちらのほうが長い)にしてご紹介したします。






●更新料を払わないで訴えられたらどうなる?

 平成23年7月の最高裁判決によって「更新料は有効」との判断が示された。それまで「法的根拠がない更新料を請求するのは違法行為で無効である」との判決が何件か相次いでいた流れを根底から覆したもので、これにより「更新料は必ず払わないもの」との論調が勢いを増した。
 しかし、知っておきたいのは、このとき最高裁は、単に「更新料は有効」と認めただけで、「更新料の支払い義務」を無条件で肯定しているわけではないということ。

 まず第一に、「更新料が有効」とされるのは、1.高額すぎない(1年更新で3か月未満)、2.法定更新の場合にも更新料は払うと契約書に予め記載されていた--の2条件を満たしている場合に限ると言う基準が示された。
 ということは、契約書に明記されている1カ月分程度の更新料は、払わないと大変なことになると思いがちだが、現実には、そうとは言えない。

 大家側は、「更新料を払え」と店子を訴えることはできる。また、店子の更新料不払いを理由に契約解除を求めて提訴することもできる。しかし、そのことと、裁判所が「家賃高いと文句ばかり言ってないで、店子は、いますぐ更新料を払え」とか「更新料を払わないような店子は契約解除して叩き出しても良い」と言う判決が出ることとの間には、まだ大きな乖離があると言わざるを得ない。

 裁判所は、双方の事情を詳しく聞いたうえで慎重に判断することになる。その過程において「家賃高すぎる」との主張も店子側はおおいに展開できる。途中で裁判官から、更新料を払うかわりに家賃を世間相場まで下げる和解案が示される可能性も高い。そうなったら大家側にとっては、提訴は、完全に薮蛇だ。なので大家側は、まず提訴してこない。

 もし、敗訴となったとしても、その時点で更新料を払えば済むだけの話である。(請求時からの金利が加算されるが、元の額が数万円なので、加算額は、せいぜい数千円程度)
 立場の弱い店子保護の借地借家法の精神から鑑みて、単に家賃減額交渉がまとまるまで更新料支払い猶予しているだけの店子との「契約解除」を裁判所が安易に認めるとは考えにくい。

 それにもかかわらずネットの記事などで、「更新料を支払わないと、裁判に訴えられたら必ず負ける」とか「契約で定められた更新料の支払を店子が拒否したら、契約解除される」などといった大家寄りの発言をする弁護士(不動産業界の利害関係者)も少なくないので、そのような言辞に騙されないよう、くれぐれも注意したい。

●更新料請求は違法!

 「更新料は有効」として平成23年7月の最高裁判決の至った背景を解説しておこう。
大前提として、忘れてはいけないのは、この判決が、店子は大家に更新料を払えというものではなく、すでに店子が払った更新料を大家は返還しなくていいよというものであった点である。

 その数年前から「更新料を請求するのは違法行為で無効である」との判決が各地で相次いでいた流れからすれば、このとき、いよいよ最高裁でも同じ判断が下されるのではないかと、世の不動産事業者たちは、戦々恐々として見守っていた。

 ところがふたをあけてみれば、「常識的な範囲内で、契約にも定められていれば有効」という肩透かしを食らわすような結果になったのだが、この判断は、更新料の積極的な肯定ではなく、すでに払った分を返還しなくていいよという消極的な更新料の肯定だったのだ。

●サラ金を壊滅させた“鬼平判決”

 同じような話をみなさんもどこかで聞いたことがあるはず。そう、サラ金の過払い請求である。
 本来、法律で定められた利息制限法(改正前10万円以上100万円未満は18%)を超えた違法な金利を取っていると、法的には超えた分は返還せよという判決が出るはず。ところが、利息制限法超であっても、違反すると刑罰が課せられる出資法(改正前29.2%・最高40%)未満であれば、たとえ違法無効であっても、債務者が返済した分は返還しなくてもいいよという「みなし弁済」を認めていた。

 この利息制限法超・出資法未満の「グレーゾーン金利」で、サラ金は大儲けしていたのだ。契約書面・領収書面を交付していて、その契約のもとに債務者が任意に超過利息を支払っているのであれば、合法であると裁判所がお墨付きを与えていたからだ。

 ところが、2006年1月に突然、最高裁が法解釈を厳密に行って、この「みなし弁済」を認めない判決を出した。それまで法律が求める要件をすべて満たした貸し付けを行っていて、裁判をすれば連戦連勝だった貸金業者が敗訴したことで、業界は大混乱に陥った。

 以後、過払い請求が激増。訴訟になると貸金業者はことごとく敗訴。武富士をはじめとしたサラ金事業者は、壊滅的な打撃を受け、まるで氷河期に突入したときの恐竜のように、たった数年で次々と倒れていった。(逆に、弁護士激増で瀕死寸前だったはずの法曹業界は、おおいに潤った)

●ネット記事で洗脳する「お抱え弁護士」

 さて、賃貸住宅における更新料も、そうした文脈でみると、賃貸にかかわる不動産事業者にとって、更新料の有効性を問う裁判は、サラ金のグレーゾーン金利の再来のようにみえていたはず。件の最高裁判決が出るまでは、戦々恐々だったわけだ。

 来島氏がコメントしている通り、もし、最高裁が「更新料は無効」などと判断したら、過払い金請求と同じく、過去にさかのぼって、日本列島のありとあらゆる賃借人たちから、すでに払った更新料を返せと一斉に請求されかねず、サラ金業者のように殲滅まではいかないにしても、賃貸業界は、かなり大きな打撃を受けたはずだ。

 ところが、結果は「消極的な肯定」だった。最高裁も、更新料が無効との判決を出したときの不動産事業者への影響の甚大さも考慮したはずで、ドラスチックな変更は避けたというのが大方の法律家の見方だろう。

 「消極的な肯定」ではあっても、最高裁が更新料を「有効」であるとの判断を示したのも紛れもない事実。当然、賃貸事業にかかわる不動産事業者の利害関係者たちは、これを機に「更新料は支払い義務のあるもの」というキャンペーンを張りだした。ネット記事の多くは、不動産会社のスポンサードのため、あっというまに世間では「法定更新しても、更新料の支払い義務はある」という論調が定着した。

 しかし、積極的な肯定、つまり、大家側が更新料を請求して、それを店子側はあらかじめ契約で合意していたんだから、無条件で払いなさいという判決が出ているわけではない。
 なので、家賃減額交渉を行っていて、その交渉が決裂したために、やむなく更新料の支払いを猶予しているケースでも、裁判所が払えという判決を出すか、さらには更新料不払いを理由に契約解除を認めるかどうかは、かなり怪しいと言える。

 もし、そのような店子敗訴の判決が出たとしたら、実質的に、弱い立場の賃借人を保護する借地借家法の精神を大きく逸脱してしまうからだ。これでは、法律との整合性がつかない。

 サラ金の「みなし弁済」のときのように、事業者側が調子に乗って、債務者を次々と提訴すると、それまで「消極的な肯定」をしていたにすぎない裁判所が、弱い立場の賃借人を保護するために、突然、事業者側の契約手続きに、より厳格化を求める可能性も捨て切れない。

 だから、サブリース大手も含めた大家サイドは、「更新料を払え」という「積極的肯定」を求めた訴訟は、まずしてこないのではないかと筆者はみている。

 業界の賢い弁護士は、サラ金の二の舞いにだけはならないように静かにしているべきと考えているはず。一方で、「更新料は支払い義務あり」と言い続けるのがいちばん効果的だと認識していて、いまのところその戦略は、見事に成功していると言える。世間はそれをなんとなく受容してしまうからだ。。

 以上のようなことから、店子サイドは、闇雲に更新料を不払いにするのではなく、家賃減額交渉を行ったうえで、その交渉が決裂したためにやむなく更新料の支払いを猶予しているというスタンスをとり続けることが重要であると言えるだろう。


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