2019年5月3日金曜日

「忖度」という背信

こんにちは、日向です。

先日リリースされました和歌山市CCC選定の不正採点疑惑の件、もう少し補足しておきたいと思います。

ツタヤ図書館、和歌山市民図書館の指定管理者選定時に不自然な採点か…2委員のみCCCに極端な高得点

一昨年11月24日に行われた和歌山市民図書館の指定管理者選考会での出来事です。

図書館の運営管理を手掛ける最大手・図書館流通センター(TRC)と、13年に佐賀県武雄市で初めて受託して以来、蔦屋書店とスターバックスを併設した公共図書館の運営に次々と乗り出していたCCCの一騎打ち。

民間の有識者3名と市の幹部職員2名の計5名で構成された選定委員会が選んだのは、CCCでした。

選定委員のひとりが、あからさまにCCC贔屓の点数をつけていたことが市民の情報開示によって判明したのですが、その人物が、当時産業まちづくり局長を務めていた有馬専至氏ではないかと言われているのです。

「なんで、そんなすぐにバレるような不正行為をするんだろう」と疑問に思わたかもしれませんので、本日は、そこから説明しておきます。

下の表をみてください。選定結果を市が2017/11/30に発表したときの採点表がコレです。




いずれも1400点満点で、CCCが1249点、TRCが1157点という結果でした。100点満点に直せば、89点と82点で6.5ポイント差程度ですから、まぁ見方によっては「結構、僅差だった」とみられた方が多かったかもしれません。

で、突然、この評価のおかしさがあかるみに出たのは、翌年1月末になって、市民が開示請求をしていた選定プロセスについての資料開示されたのがきっかけでした。

両社の提案内容は、ほとんどが黒塗りされていましたが、選定結果の概略が開示されまして、そこには、名前はイニシャルで伏せられた選定委員5人の詳しい評価点数が明記されていました。

下の表をみてください。これが5人の採点表です。


カルチュア・コンビニエンス・クラブ














審査項目/選定委員 配点 A氏 B氏 C氏 D氏 E氏
図書館運営の基本方針・理念 30 24 18 30 30 24 126
図書館の運営・経営に関する取り組み 80 65 56 70 65 57 313
空間イメージの提案 30 24 24 30 30 30 138
自主事業実施に関する取り組み 40 30 32 36 40 34 172
提案価格の評価 100 100 100 100 100 100 500
合計 280 243 230 266 265 245 1249
















図書館流通センター














審査項目/選定委員 配点 A氏 B氏 C氏 D氏 E氏
図書館運営の基本方針・理念 30 24 24 24 12 18 102
図書館の運営・経営に関する取り組み 80 72 69 75 54 58 328
空間イメージの提案 30 24 18 24 12 24 102
自主事業実施に関する取り組み 40 26 32 34 12 26 130
提案価格の評価 100 99 99 99 99 99 495
合計 280 245 242 256 189 225 1157








両社得点差 0 -2 -12 10 76 20 92


A~C氏までの3人は、両社に対して、最高でも12点差をつける程度のごく常識的な範囲内での評価。最後のE氏も20点差とややCCC優位の点数はつけたものの、それほど問題になるような採点ではありませんでした。

ところがD氏だけは違いました。CCCには、ほとんどの項目で満点をつけているのに対して、TRCに対しては、極端に辛い点数をつけていたことがわかりました。

下をみてください。これが5項目すべてについて、100点満点に換算してみた数字です。


●↓100点満点換算







カルチュア・コンビニエンス・クラブ
















審査項目/選定委員
A氏 B氏 C氏 D氏 E氏   総合点
図書館運営の基本方針・理念 100 80 60 100 100 80

図書館の運営・経営に関する取り組み 100 81.25 70 87.5 81.25 71.25

空間イメージの提案 100 80 80 100 100 100

自主事業実施に関する取り組み 100 75 80 90 100 85

提案価格の評価 100 100 100 100 100 100

合計点の評価
86.78 82.14 95 94.64 87.5 446.06 89.212



























図書館流通センター
















審査項目/選定委員
A氏 B氏 C氏 D氏 E氏   総合点
図書館運営の基本方針・理念 100 80 80 80 40 60

図書館の運営・経営に関する取り組み 100 90 86.25 93.75 67.5 72.5

空間イメージの提案 100 80 60 80 40 80

自主事業実施に関する取り組み 100 65 80 85 30 65

提案価格の評価 100 99 99 99 99 99

合計点の評価
87.5 86.42 91.42 67.5 80.35 413.19 82.638









両社得点差
-0.72 -4.28 3.58 27.14 7.15
6.574



















D氏のCCC評価は、「図書館の運営・経営に関する取り組み」のみ81点、あとの4項目はすべて満点。逆にTRCに対しては、「自主事業実施に関する取り組み」は100点満点の30点をつけるなど、「あれっ、どうして?」と思わず問いただしたくなるような不自然な結果だったのです。

もともと、和歌山市は、市駅前に移転して開館する市民図書館の指定管理者には、かなり早い段階からCCCを選定することを決めていたフシが随所にみられるなか、このような強力な証拠が出てきたのは、これが初めてでした。

そして、市が選定委員を紹介した順番に並べてみると、D氏の位置には、当時産業まちづくり局長を務めていた有馬氏が、疑惑の中心人物として浮かび上がってきたのです。




その有馬氏がこの3月で退任したとあって「もしかしてCCCの関連企業に、天下りするのではないか」とまでささやかれていたのです。

市当局も有馬氏も、当然、ここまで情報が開示されるとは考えてなかったでしょう。だから、あんなにあからさまな点数差をつけてしまったというのが、どうやらことの真相のようです。


なりふり構わず決定する責任


さて、ではどうして有馬氏と思しき、D氏はそこまであからさまにCCCひいきの点数をつけたのでしょうか。

考えてみてください。もし自分が同じ立場にたたされたら、どうしますか?

私がもし同じ状況におかれて、市の方針を忖度したのだとしら、E氏と同じく“ややCCC有利”の点数をつけますね。D氏ほどの大差はつけないように思うのですが。

しかし、現実は違いました。それは、選定会議当日、両社のプレゼンを聞いたD氏がそれくらい点数差をつけないと、「CCC優位は危うい」と感じたからなのか、それとも、僅差でCCCが勝ったのではダメで、どうしてもCCCが大差で勝つという結果がほしかったのか。

ある図書館関係者の方は、和歌山市の選定が出来レースだったということを前提にして、こう話してくれました。



「CCC選定は実質的には決定されているのであって、CCCを外すという余地は市長にもないし、ましてや一局長にはないはずです。

審査員としては他に図書館長もいますが、役職から見て、予定通りCCCを指定管理者に決定する責任の大きさ、忠誠心を求められる度合いは比較にならないほど大きいと思います。それが両者の採点に反映しているように見えます。
 

なりふり構わずにCCCに決定する責任を負わされていると思います。(本人が積極的に役割を果たそうとしたのか、いやいやながらやったのかは分かりませんが、後から名指しされるとは考えなかったでしょう。)」


CCC選定という“結果”を残したD氏が、もし有馬氏だったとしたら、その人物が2年後に退任するという事実を、われわれは、いったいどう解釈したらよいのでしょうか。

ツタヤ図書館、和歌山市民図書館の指定管理者選定時に不自然な採点か…2委員のみCCCに極端な高得点


【2021.04.06追記】その後の取材と分析によって、選定委員のD氏は、有馬氏ではなく、当時の図書館長だった坂下氏ではという可能性が濃厚となってきた。両氏のその後の転身については、以下の記事で再度取り上げている→坂下元館長が和歌山市を退職していた



0 件のコメント:

コメントを投稿