「大どんでん返し」とは、こういうことを言うんだなぁと、本当にあきれ返った出来事が数日前にありました。
何を隠そう、和歌山市の学校図書館のことです。
詳しい経緯はややこしいので、以下に、粗筋だけメモしておきます。
全国で6番目のツタヤ図書館を来月、いよいよグランドオープンする和歌山市では、
市内の小中学校内にある学校図書館まで、TSUTAYAの本社CCCに委託しようという動きが2年ほど前から水面下で進んでいました。
この動きをいち早くキャッチした市内の市民団体が昨年6月、「学校図書館までTSUTAY化するなんて絶対に許せない」と、「学校図書館は、市の直接雇用の司書を配置する」ことを求めた請願を議会に提出するべく署名活動をスタートしていました。
この市民団体の方たちは、請願署名を集めると同時に、市議会各会派の議員のセンセイ方たちに対して、文科省が推進している、学校司書の配置等、
学校図書館を整備・充実に関する制度の主旨や、与党の国会議員が参画している議員連盟の活動などについて、根気よく説明して回っていました。
この2月、そうした地道な活動が実ったのか、とりあえずCCCから学校図書館へ司書を派遣する話は立ち消えとなる一方、教職員課のほうで直接雇用の学校司書を3名採用することが決まったのです。
たった3名?と言われるかもしれませんが、これでも大きな進歩です。
そもそも、学校図書館の運営には、文科省の施策で、1.5校に1名の司書を雇用できるだけの予算を地方交付税交付金として、各自治体は、国から交付されています。
最近は、全校配置を達成する自治体もゾクゾクと出てきているほど。にもかかわらず、市内小中学校が71校【1】もある和歌山市の専任の学校司書はたったの1名。その1名が3校を回るという、とんでもなく貧弱な体制でした。
本来ならば学校司書を50人くらい配置していないとおかしいのに、たったの1名を非常勤で雇用していただけというのですから呆れます。
国からもらった予算をほかへ流用していて、子供の読書推進などにほとんど力を入れていなかったとのそしりは免れられないでしょう。
そこへ新しい市民図書館の運営をTSUTAYAの本社CCCが担うことになったため、ついでに学校図書もTSUTAYAにめんどうみてもらったらいいと水面下で市当局が民間委託をもくろんでいたのです。
そうしたなかで、市民の反対運動が展開されたため事態は一変。今回一気に3名の学校司書を直接雇用で採用して、一部に配置されるということで、
地道な活動をされてきた市民の方にとっては、これでようやくスタートラインに立てたという安堵の気持ちだったろうと思います。
そんな事態が暗転したのが数日前のこと。
和歌山市では、市内に小中学校が71校もあるのに、学校司書を1人しか雇用していなかった。しかも、その1人は1校専任ではなく、小学校3校、中学校1校を巡回している状態だった。 |
学校司書の配置に関するレクがあり、そこに説明に出てきた人物が、なんと市民図書館を管掌する「読書活動推進課」の担当者だったのです。
「読書活動推進課」とは、昨年12月にCCCが指定管理者になるまでは、「市民図書館」本体を直営していた部署です。
各校に配置する学校司書の採用を決めたのは、学校教育全般を司る「教職員課」のはずが、なぜ社会教育を担当する部署が出てくるのか。
この話を教えてくれた市民の方によりますと、
「人事権は、(市民図書館の)読書活動推進課が握って、指揮命令は、現場の学校長が行うということらしいです」
これ実は、とんでもない暴挙です。
なぜならば、社会教育を担う市民図書館と、学校教育を担う学校図書館とは、そもそも似て非なるもの。根拠となる法律もまったく別。それを一緒くたにして、あわよくば民間委託した市民図書館の配下に、学校図書館をおこうとするものだからです。
奇しくも、和歌山市では、社会教育を担う市民図書館や博物館を、市長部局へ移管するという話が進められているらしく、
この話の先にあるのは、やがて市民図書館が、教育委員会のしちめんどうくさい手続きを経ずに市長の一存で動かせるようになることです。
民間委託した出先の配下に学校図書館を置くとなったら、市長の権限は絶大になる一方。今回の「ねじれ」は、そうした動きを先取りしたものではないのかと、ある図書館関係者に言われたそうです。
で、このレクに登場した読書活動推進課の担当者が、こう言い放ったそうです。
新しい市民図書館もできたことですから、学校司書は、市民図書館(CCCのスタッフ)やボランティアの人たちとも活発に交流してもらう
「学校司書は、まずは学校内で教師や生徒と交流を深めるべきなのに、なんでいきなり外の委託会社と連携するの?」
そう思いますよね。
かくして、学校図書館のTSUTAYA化だけは、なんとか阻止できた
という市民の方たちの目標達成の喜びは、一瞬にして粉々打ち砕かれてしまいました。
これを許せば、いずれ近いうちに、直接雇用した学校司書を指定管理者に転籍させるなど、当初の目論見通り「学校図書館の運営もTSUTAYAにお任せ」が実現することになるかもしれません。
一部の自治体で、某大手委託会社が指定管理者としての優位的地位を利用して、学校図書館にまで入り込んでいることは承知していますが、こういう形で、学校教育の現場まで、見識のない人たちが入ってくることに市民の方たちは、不安を募らせています。
それはそうでしょう。大量の古本を系列企業から入れて自治体に高値で売りつけるモラルのない公共図書館の破壊者と交流して連携なんかされたら、なにをされるかわかったものではないと思います。
賑わい創出のために、市内小中学校の生徒全員に、Tポイントカードを作らせろとか
その個人情報をCCCの関連会社に一括管理させろ
とか、かつて武雄市であやうく現実になりそうだった悪夢が、またぞろ復活しそうになってきた
わけですから、本当に、ツタヤ図書館問題というのは、やっかいこのうえないですね。
では、また。
【1】当初、和歌山市内小中学校の数を「72校」と書いてましたが、「71校」の間違いでしたので、そのように訂正しました。2020/03/27
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