2021年1月12日火曜日

海南ノビノス読書通帳の無責任

 

こんにちは、日向です。


本日は、和歌山市のお隣にある和歌山県海南市に昨年6月にオープンした複合施設 海南 nobinos の話題について書いておきます。



ノビノスは、TRC図書館流通センターが指定管理者として運営する、CCCによるツタヤ図書館に、真っ向から対抗した“賑わい施設”なんですが、開館から4か月後の10月になって、こんなリリースが出されていました。



“賑わう図書館”海南 nobinos に新型「読書通帳機」が登場

和歌山県内初。 読書履歴を通帳に貯めることで、ますます子どもが行きたくなる図書館に。


https://kainan-nobinos.jp/cms/wp-content/uploads/2020/10/201019_press.pdf より




読書通帳といえば、事務機器メーカーの内田洋行さんが公共図書館向けに開発したシステムで、自分が借りた本のデータを銀行の預金通帳のように記録できることで人気をよんでいるものです。


なんでそんなものを?と思われるかもしれませんけれど、そもそも図書館というのは、利用者が何を借りたかという記録を保持しません。


貸出をして返却された瞬間に、そのデータは消去されることになっています。なので、いつどんな本を借りたかなんて記録は自分でとっておかないと、あとで「まとめて出してよ」と頼んでも図書館は応じてくれません。


根拠は、図書館の自由に関する宣言 第3 図書館は利用者の秘密を守る。に規定されています。


戦前に思想善導機関として機能した図書館の暗黒歴史の反省からきているものですから、捜査機関から貸出記録の照会があっても、裁判所からの令状がないとそれには応じられないというのが図書館の基本中の基本なので、いくら利用者が希望しても応じてくれないのは、仕方のないことなんです。(現実には、守られていない自治体も少なくないようですが)



そういう前提をすっ飛ばしてしまったのが、図書館が公式に導入している読書通帳なんです。



読書通帳って、便利じゃん、これ入れたら、こどもたちも喜ぶから入れようよ、数字も飛躍的に延びるしね


なんていう安易な考えで入れてしまうと、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のように捜査機関にホイホイ個人情報を提供してしまう民間事業者がいますので、


いくら通帳に印刷後はデータを完全消去するしくみがあると言われても、やはり決断にあたっては、外部の有識者に意見を聞いたり、教育委員会や図書館協議会にはかったりして、相当慎重に検討するのがふつうだと思うんです。


何より、これ10万や20万で入れられるものではなく、少なくとも一台500万円以上はかかり、システムも含めると、1000万円単位の費用がかかるものですから、少し考えれば、そんな金あるなら、一冊でも多く本を入れたほうがマシとという意見のほうがはるかに説得力があるんですよ。


1500万円なら、一冊1500円の本を1万冊も買えるんですから。機械一台入れるよりもはるかに費用対効果は大きいはず。


こどもたちだって、最初はものめずらしさで使うかもしれませんけれど、もともとゲーム感覚で競争しているだけですから、そのうち飽きてくるのは目に見えるようです。





で、そんな疑問から、さきほど海南市の担当者に聞いてみたんですよ。読書通帳導入の概算費用と経緯を。


そしたら、なんかとんでもなくそのプロセスが不透明なんです。


まず、費用については、


・機械だけで一台550万円の見積もりを内田洋行さんからもらっているが、実際にはシステム導入全体で決裁をとっているので、それだけにかかった費用はいくらなのかわからない


・システムを受託したのは、富士通。富士通さんにも、読書通帳と同じ「読書記録」という商品はあるみたいだが、今回は、内田洋行さんの読書通帳を組み込んでいる。なぜそうなったのかはわからない


・入札の際の仕様書段階で、読書通帳の機能を持たせるシステムを明記していた


・読書通帳機能を仕様書に入れることは、部内で話しあって決めた。特別に外部識者の意見を聞いたり会議をしたことはない


・部内での話し合いは、口頭で行った。メモも一切残っていない


・利用者のデータが流出するリスクについては、特に検討していない。そんなこと言い出したら図書館システムそのものまで疑わなくてはいけなくなる


・1000万円を超える機材の導入にはなるが、システム全体で1億数千万円なので、そのうちいくらが読書通帳なのかわからない


・営業は、内田洋行さんも以前からよく来ていて、bdsのシステムなどと一緒に直接説明は受けていた。




ヤバイのは、やはり「部内で話しあったけど、なんの記録も残していない」のところですね。この担当者は、読書通帳の指摘されている危険性も認識していて、過去に、読書通帳を初めて入れた山口県下関市で起きた不正事件についてもご存じのようでした。なのに、


だったら、なんなの?


という感じで、行政が市民から批判や誤解をされないように、キチンとプロセスを経てその記録を残すことの重要性をまったく理解されていないご様子で、話をしていて、ほとほと疲れ果ててしまいました。


話をしているうちに、私もついコーフンしてしまいまして、


ロクに検討もせずに、担当部署レベルで1000万円単位の機器の導入を決められるなんて、おかしいですよ。それって、あなたが黙って公金をポッケに入れているのとたいして変わらないじゃないですか?


なんていう暴言を吐いてしまいました。その点は、言いすぎでした。たいへん申し訳ありませんでした。



図書館については、プロであるTRC図書館流通センターが運営しているノビノスは、同じ和歌山県でも、わりとまともなのではないのかと思っていましたが、この対応でガラリと印象は変わりました。


こんな大事なこと、紙切れ一枚も残さずに決めて、何が悪いの?っていうのって、ツタヤ図書館を誘致する自治体の特徴だと思ってましたが、そんなことないんですね。民間に丸投げして、平気な自治体は、どこも本当に無責任です。


ぜひ、みなさんもお住まいの自治体に読書通帳が導入されていたら、どういうプロセスだったのか、よく聞いてみてください。


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