2021年5月9日日曜日

ツタヤ図書館3つの罠

 

こんにちは、日向です。



 先日snsをみていたら、2018年に新しい複合施設「Mallmall 」(まるまる)のなかに新しい市立図書館ができた宮崎県都城市の市民が


ツタヤ図書館なんかと一緒にするな!


みたいな発言がありました。


居心地のよい館内にカフェを設置して「年間200万人来館する図書館」として、アピールポイントは、CCC運営のツタヤ図書館ソックリで、都城市の担当職員自らが


「モデルは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として運営に乗り出し話題になった佐賀県武雄市の図書館」(図書館とイベント広場を核に年間約200万人を集客、都城市「Mallmall」 https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/052800107/?P=4)


 

そう公言するほど、開発手法が似ているにもかかわらず、図書館そのものは、ツタヤ図書館とは似ても似つかない、ちゃんとしたものだと市民の方が主張されていました。


まったくその通りで、世の中には「ツタヤ図書館」的な開発手法は、結構あちこちでみられはするものの、図書館の機能そのものをみた場合、「ツタヤ図書館」とソックリな機能をもったところは、まずみあたりません。


なぜならば、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営している公共図書館というのは、他の運営者はマネをできないというか、しないことばかりだからです。


そこで、これまで一度も書いてこなかった、ツタヤ図書館の定義について、今回は、書いておきたいと思います。





多くの人にとって、ツタヤ図書館というと


「カフェを併設した図書館」とか「代官山蔦屋書店のようなお洒落な空間演出をした図書館」、あるいは「新刊書店を併設した図書館」といったことを思い浮かべると思います。


また、わるいイメージでは「大切な郷土資料を捨てる図書館」だとか「ベストセラーばかり置いている図書館」「健康本や料理本を多くおいている図書館」さらには「クズのような古本を大量に入れている図書館」ということを思い浮かべる人もいるかもしれません。


しかし、どれもツタヤ図書館の定義として採用するには適切

とは言えません。ほかの会社が運営する図書館でも、十分にありえることばかりだからです。あえていえば、古本を入れた図書館だけは、CCCしかないかもしれませんが、さすがに2015年に武雄市と海老名市などで発覚して以来、いまはもうそのようなことをしていません。



私は、以下の3つをツタヤ図書館の要素として、いつもあげています。


①高層書架を設置していること


②ライフスタイル分類と呼ばれるCCC独自分類を採用していること


③図書カードのTポイントカードを採用していること




まず、高層書架については、ダミー本を配架して、お洒落な吹き抜け空間を演出するために設置されたように思われていますが、


実は、いちばん説得力のあるのが、2013年に開館した元祖の武雄市で、蔦屋書店とスターバックスのスペースを確保するために、無理やり書架を上に伸ばしたのではないかという説です。


最近になって、一部マネをする図書館もどきも出てきたようですが、あれだけ高い位置に重たい本を配架するのは設計上、容易ではないはずで、そこをクリアするためには加重の少ない空箱のダミーを入れるというのもなかなか納得のいく話です。



ツタヤ図書館、お飾り用の読めない洋書購入に巨額税金投入…高さ9mの棚に固定 より




次に、図書館にとっていちばん大切な分類についてですが、一般的なNDC(日本十進分類法)を使わずに、あえて自社独自の書店方式を使って配架するというのも、CCCだけです。


さらには、図書カードにTポイント機能を付与できるようにしているのも、これまたCCCだけしか採用していない決定的な特徴です。Tポイントカードにすると、利用者の貸出データは、CCCサイドに筒抜けになるリスクが発生します。(CCCは、貸出デターなどは取得しておらず、カードの有効性のみ確認としていますが)


ややこしくなるので、詳しく書きませんけれど、どれも図書館本来の機能を強化するどころか、あやうくしかねないものばかりで、とりわけ独自分類は「おもわぬ発見性がある」などと、CCC自らさかんにアピールしていましたけれど、図書館をよく利用する人で、あれが使いやすいという声を私は一度も聞いたことがありません。


私は、それらの情報に接するたびに感じるのは、実はCCCにとって、これらの3要素が利用者の利便性に貢献するから採用しているわけではなく、


オレたちはほかの図書館とは違う特別なノウハウを持っているんだ


という独自性を主張したいがためだけに採用しているだけなのではってことです。



そして、高層書架にしても、独自分類にしても、Tカードにしても、一度それを採用すると、元に戻すのがおそろしくたいへんになる、いわゆる「ベンダーロックイン」状態を作り出せるわけですね。


一度汎用性があまりない特殊なシステムを採用してしまうと、何から何までそれに縛られてしまい、それ以降、他社に乗り換えるのがとっても困難になるというものです。


これってCCCの思うツボです。



もともと、この3要素はいずれも、図書館機能の利便性や専門性にたいして貢献しないものですから、その3つを同時採用しているツタヤ図書館というものが、図書館としては、とんでもなくダメというか、使いにくいといいますか、危険ですらあるわけで、それらも我慢すればその分、運営費用が安くなったりするのであればまた話は別なんですが、決定的なのは、


高層書架にしても、独自分類にしても、Tカード機能にしても、それらを採用することで、一般的な図書館よりもコスト高になるってことです。


考えてもみてください。独自分類を導入しようと思ったら、すべての蔵書について、いまあるラベルの上に別のラベルを貼り、また、それ専用のシステムを入れなけれならないのですから、とんでもなく費用とコストがかかるのは当たり前です。


それを望みもしないのに、無理やり負担させられたあげくに、「カラマーゾフの兄弟」や「旧約聖書・出エジプト記」が「旅行」に分類されていたりするんですよ。


わざわざ、高いお金を出して不便を買うみたいなことになっていて、図書館機能をあまり使わない人にとっては「スタバもあって、オシャレで快適」かもしれませんけれど、特注の家具や図書館の看板にあたるサインも特注だし、Tポイント機能付カードも自治体の予算で作成・発行しますし、もう何から何までCCC仕様のバカ高い費用を自治体は負担させられますから、本当に、いったい誰のためにこんなことをしているのかと嘆きたくなるほど、図書館としてはダメダメなんですね。


それでも最近は多少改善されてきてはいるんでしょうけれども、高層書架、ヘンテコ分類、Tカードの3要素がある限り、ツタヤ図書館は、酷い図書館です。


ですので、都城市の市民の方が


ツタヤ図書館なんかと一緒にするな!


というご意見は、まことにごもっともであり、これら3要素がないというだけで、図書館としては、ずいぶんとまともだといえるわけなんです。


もっとも、だからといって、素晴らしい図書館かどうかは、そのほかの図書館機能を評価してみないとわかりませんが。


というわけで、前回の「ツタヤ図書館的なもの」として、巨額補助金投入した再開発と来館者数至上主義について述べたのにつづいて、今回は、「ツタヤ図書館」そのもののデメリットについて述べてみましたが、みなさんは果たしてどのようにお感じになられたでしょうか。


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