2020年1月26日日曜日

選定前の密談記録(3)

こんにちは、日向です。

先日の 選定前の密談記録(2) のつづきです。


公共事業の公募前に、行政当局がその候補者と打ち合わせすることがどれだけヤバイことなのかは、

行政に少しでも関わったことのある人ならば、身に染みてわかっていることだと思います。

だからこそ、多賀城市の職員は、CCCとの打ち合わせ内容を詳細に記録した復命書の存在を議会でいくら追及されても、

頑として「ない」と隠蔽していたわけで、それが暴露された時点で、自分たちの行為が非難の的になることは重々承知していたはずです。


さて、そうしたなかで、疑問なのは、果たして選定される側のCCCのスタッフが、この密談のヤバさをどの程度理解していたかです。


行政側は、この密談のヤバさをわかっていながらも、現実問題として市長が独断で進めようとしている以上、

もう抵抗できる術はないと、この際だから、CCCサイドとの事業の進め方について多少なりとも、やり方や真意をつかんでおきたいという気持ちがそこかしこに読み取ることができます。

一方でCCCサイドは、あっけらかんとしているというか、こうするのが当然とばかりに自信満々で武雄市での事例を述べていることに驚かされます。


武雄市では、こうしてもらいました

武雄市では、こうでした

先例主義といいますか、ひとつ成功モデルがあって、その通りにしたいのならば、われわれの言う通りにやんなさいというようなニュアンスすら感じ取れます。


このときのやりとりは、

TSUTAYAのフランチャイズに加盟して店舗を出そうとしている事業者が、本部のCCCに詳しいレクチャーを受けているという構図でしかないわけです。

多賀城市はCCCの下請け業者か?

と、週プレに書いたのは、そんな背景があってのことでした。


以下、週プレNEWSの拙稿から、ハイライト部分を引用してみましょう。




通常ならば、公務を受託したい民間事業者の質問に、権限を持つ役所が回答するはず。が、なぜかこの質疑では、役所側が「どうなるのでしょうか?」と様々な不安を口にしては、それに対して民間事業者であるCCCが回答する格好になっている。決定権を持っているのはあくまでCCCであり、市はまるでそれに従う“下請け業者”のようだ。 

例えば、壁一面に本を配架する高層書架について「その辺の変化や対応というのは、これからの話し合いの中で十分できるのか、それともCCCとしてはあの構想案を貫きたいと思っているのか」と市が聞いている。

また、施設内に同居を予定しているカフェや書店などの商業施設との境界線を設けることや、Tポイントが図書の貸出に付与されることなどの不安点を列挙したりもしている。 

これに対してCCC側は、武雄市のケースでは「建物サイズが決まっていたので、身動きがとれない部分があった」が、多賀城市では「フリーハンドで作れる」と、まるで自分たちが施主であるかのようなスタンスで回答。

具体的には「CCCが思っている部分と両立させるやり方で~」と曖昧(あいまい)な表現に終始しつつ「そこは話し合いですし、おざなりにするつもりはありません」と、今後の折衝次第のニュアンスを残している。 

当時の武雄市図書館はまだ開業から3ヵ月しか経過しておらず、後にCCCの高橋聡カンパニー長が「武雄の時は“ど素人”でした」と発言しているように、同社の図書館運営に関してはヨチヨチ歩き状態だったはず。それを画期的なノウハウを持っているかのごとく、崇めなければいけない雰囲気でもあったのだろうか

内部文書を徹底検証ーー疑惑の“ツタヤ図書館“が新たに選定された和歌山でも裏で画策…? より

地方自治体の公務員が、自らの使命も忘れて、東京・渋谷区代官山に2年前にお目見えしたオシャレな雰囲気の蔦屋書店にひたすらひれ伏していると感じるのは、私だけでしょうか。


この後、多賀城市サイドが

「多賀城市図書館が35年間積み上げてきたものを大事にしたい」

と自らのアイデンティティだけは大切にしたい旨の発言をしているのですが、

それに対して、
「一番最初に(多賀城市教育委員会事務局の)生涯学習課長が言われていましたので、それはきちんと担保します」

とCCCは明言していることについて、記事では、その後の検証によって、こうファクトチェックしています。



ところがその後、16年3月、多賀城市“ツタヤ図書館”オープンまでの経過を見ると、当初から「新図書館の柱として歴史・郷土に力を入れる」としていた市側の思いを、CCCが実現できたとは到底言い難い。 

例えば、大切にするはずの郷土資料は手の届かない高層書架に追いやられ、分類も一部、世界史と日本史が同じになっているなど配架の混乱状況を議会で指摘されている。 

また、追加蔵書として購入した図書3万1千冊のうち約1万1千冊は料理や旅行、美容・健康など生活実用書を中心とした中古本だった。
その中身も酷い。選書リストには、刊行後5年以上経過したものが4400冊、10年以上経過したものも1200冊あり、武雄市であれだけ批判された“古本騒動”と全く同じことを繰り返している。 

重点的に強化するはずだった歴史・郷土に関する図書は、新装開館後に大きく増やすどころか、蔵書全体に占める比率を0.4%落としている。同じく市側が重点分野に指定していた児童書も3.4%ダウン。当然、CCCが主催するイベントの告知に歴史・郷土関係のものはあまり見かけない。 

市とCCC担当者とのミーティング内容のほとんどは、結果としてCCC優位で決められており、どちらが主導権を握っていたかは火を見るよりも明らかだ。

内部文書を徹底検証ーー疑惑の“ツタヤ図書館“が新たに選定された和歌山でも裏で画策…? より

公金にたかったうえ、自治体を下請けのような扱う、このスタンスこそが、ツタヤ図書館すべてに通底するCCCの傲慢さの表れと言えるでしょう。

さて、週プレNEWSでは、この後、暴露された内部文書の内容について、和歌山市の担当者とCCC広報のコメントが続くのですが、本文の締めくくりとしてこう書いています。


こうした内幕を知ると、名前が出てからたった2週間でCCCを新図書館の指定管理者に選定した和歌山市のケースでも、やはり議会運営も含めて、行政と事前の打ち合わせをしたのでは?と疑わざるをえない。特に、決定するまでの議会運営等は同社が事細かに指南したのではないかとの疑いがますます濃厚になる

内部文書を徹底検証ーー疑惑の“ツタヤ図書館“が新たに選定された和歌山でも裏で画策…? より


そうです。あくまでもこの記事の主題は、和歌山市です。和歌山市でも、おそらく多賀城市と同様の密談が事前に行われていたのではないかというのが結論で、その論証となる記事がこの後、さらに何本かつづくことになるわけです。

ちなみに、この記事を出してから半年後、和歌山市から97%が黒塗りで開示された1400枚の関係者会議の資料の中に、多賀城市のケースと同じように、

まだ何も決まっていない段階で、和歌山市の実務スタッフが大挙して武雄市を訪問していることが判明したのですが、それについては、また後日詳しく書きたいと思います。

よろしくお願いいたします。







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