こんにちは、日向です。
先日、判明しました和歌山市民図書館の通路部分の使用料について、もう少し整理して、書いておきたいと思います。
カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するツタヤ図書館には、スターバックスと蔦屋書店が入っています。これ、もちろん民業ですから、CCCは図書館の運営費として年間3億数千万円を和歌山市からもらう一方で、
店舗スペースの分の家賃は、自治体に目的外使用として払うしくみなんですが、それが和歌山市の場合、たったの月19万円なんですね。
年間60万人以上来場する駅前の一等地ですから、ふつうに借りたら、月300万円はくだらないだろうと言われていまして、その安さの秘密のひとつが、純粋に店舗の棚やカウンターだけの面積が算定対象で、通路部分は、一切賃料を払わなくてもいいとされてる点です。
催事場の屋台とか、公共施設内の自動販売機みたいな扱いになっているわけです。
ところがですよ、今回、新たにわかったのは、年末のクリスマスシーズンを前に、その賃料を払っていない通路部分にも、ビッシリと販売の平台を設置して、まるでドンキホーテと見まがうばかりの密集販売を、蔦屋とスタバが行なっていることが、利用者がsnsに投稿した館内風景の写真でわかったんです。
snsに投稿された和歌山市民図書館の一階通路部分。 https://archive.ph/1odWw より |
あれ、おかしいな。通路部分は、賃料おさめていないはずなのに。
ということで問い合わせたところ、11月と12月の2カ月に関しては、この通路部分の使用許可申請が出てきまして、その賃料として、2か月で2万9000円、一か月あたり1万4500円をCCCが市に収めていることがわかったんです。
申請した面積は、土地建物が14.68平米、広告物が3.5平米でした。
で、その申請を許可したのは、一階のどこなの?ということで、担当部署に再度問い合わせたところ、詳細な位置については、正式な開示申出を出さないと図面等をみせてもらえないようでしたが、とりあえず、口頭で、その内訳を教えてもらいました。
・1.946㎡(1.215*1.62)の台が4つ
・その間に3.28㎡(2.025*1.62)の台がひとつ
・小さいスペース0.32㎡が8つ、1㎡がひとつで計14.68㎡
・広告物は、0.7㎡平米のポスターが5つで計3.5㎡。
一か所のスペースだけドンと申請しているのでなく、結構細かく使用位置を決めて申請していることがわかったんですが、おおまかにいえば、
2㎡くらいの平台が4つと、それよりもやや大き目の3㎡の平台がひとつと、あとは細切れスペース9か所を集めて全体で14㎡。それに5枚のポスターを貼る箇所について申請が出ているということでした。
これ驚くのが、やはり賃料の異様な安さです。
和歌山市の条例で定められている目的外使用料は、約220㎡で月19.3万円ですので、平米当たりの単価は、月額877円。それから試算すると、2㎡の平台ひとつにつき、月1700円くらい(1日当たり56円)。大き目の3㎡の平台でも月2600円程度(1日当たり86円)でしかありません。
この金額は、月額ですので、ほぼタダと考えていいかと思います。平台をどこかからレンタルする費用や、商品を陳列するアルバイトの人件費のほうがはるかに高い費用がかかっていて、賃料そのものは、無視していいように金額だと思います。
ふだんは、純粋に棚ごとの賃料だけで、通路部分の賃料は一切払わないのに、11月から年末の繁忙期だけは、そこもスポットで借りて商売をするというんですから、これとんでもなくズルくないてすか?
商業施設の催事場で、イベントのあるときだけスポットでスペースを借りて商売する場合、しらべてみたところ、どんなに安くても平台一台あたり3000円~5000円。これ日額ですよ。月額にすれば、小さめの平台一台あたりの賃料は10万円以上かかるんです。
人が集まるイベント期間だけの短期の賃料ですから、通常の賃料よりも割高になるのは当たり前で、その代わりに人の流れの多い時期に集中して稼げるわけです。
CCCという会社は、そういう街の商売については、プロですから、そういう常識を熟知したうえで、これやっているんですね。
図書館という公共施設内に設置した自社店舗(スターバックスも、ライセンス供与を受けた自社経営)については、通路部分を除いた棚一本いくらで賃料を狭く払いつつ、クリスマスシーズンなど儲かる時期だけ、別に申請を出して、通路部分も激安で借りる、という裏技を駆使しているわけなんです。
で、ちょうど同じタイミングで判明したのが、熊本県宇城市のツタバ(書店とカフェ)賃料が、月額にして3,707円であること。
来春、図書館のみならず併設の美術館をCCCプロデュースでリニューアルオープン予定の宇城市では、史上空前とまでいうと大袈裟ですが、日本一賃料の安いスターバックス・蔦屋が登場することがわかったんです。
スタバが54.5平米、蔦屋書店が9.05平米ということですから、おそらく、こちらでも、イベント期間中だけ別に申請して、ふだんは1円もはらっていない通路部分で派手に密集販売をすることになろうかと思います。
市民は喜びますか?
たぶん、しばらくは喜ぶと思います。自分たちの懐が痛む実感がないままに、図書館の知的な雰囲気を背景にした都会的な商業空間ができるわけですから。
でも、それで何か起きるでしょうか?
まちは元気になるでしょうか? 人口は増えるでしょうか? 文化は豊かになるでしょうか? 経済効果は商店街まで波及するでしょうか?
どの問いについての、答えは、ノーです。
物見遊山の観光客だけは一時的に多数訪れるでしょうけれど、お金が落ちるのは、CCC経営の店舗だけです。
年間70万人訪れる商業施設を、自治体が税金で内装まで作ってあげて、図書館の運営費に巨額の指定管理料を払ったうえで、店舗部分の賃料はタダ同然にしてあげる。
地元雇用のスタッフはほとんどが非正規の最低賃金。競争力のない地元の書店や雑貨店、カフェはどんどん潰れていきます。どんなに経営努力をしても、激安賃料で優遇されているCCCにかなうはずがありません。
もう絵に描いたような「民業圧迫」ですね。
イメージとしては、かつてアメリカにおいて、個人商店やミニスーパーしかない地方に進出し、地元の競合商店を次々倒産・廃業に追い込んだ挙句、不採算を理由に撤退するウォルマートみたいな感じでしょうか。ウォルマートは、圧倒的な大資本の力だけで、まちを壊していきましたが、ツタヤの場合は、官民連携の利益供与によって、まちを壊していくんですから、余計にタチが悪いです。(運営費をもらえるCCCの場合、撤退はせず、施設の増設や改修費用を自治体に負担させて残りますが)
さて、そういった賃料問題について、和歌山市も宇城市も、役所の方々たちは、
これはマズイなぁ、市民の理解が得られるかなぁ
という感覚を持っているふうにはとても思えないんですね。長年慣習として、条例で決まった通りにやってるのに、それが何が悪いんだと。悪く言えば開き直りともとれるような対応に接することもあります。
そうなってしまうのは、そもそも、ツタヤ図書館が標榜してきた「官民連携」がどういうものかを、みなさんすっかり忘れてしまっているからではないでしょうか。
その点について、しつこいようですが、これまでも何度も述べてきたことを以下に、引用して、本日は終わりにておきます。
よろしくお願いいたします。
PPP/PFIと呼ばれる手法は、民間企業のノウハウや資金を有効に活用して、行政が行う事業をより効率的に進めるものだと思ってました。
巨額の税金を投入しなくても、より安い費用でより質の高いサービスを提供できるのが指定管理者制度などを活用した官民連携の手法なんだと理解しておりました。
例をあげるとすれば、自治体所有の土地を自治体自らが開発すると、役人は商売が下手なので金がかかるだけのハコモノになってしまいます。
そこで、その開発が得意な民間に貸し出す。建設費も一部民間に出させて公共施設の入るビルを建ててもらい、一部を商業施設にすれば人が集まり、自治体は高額な家賃や地代収入を民間から継続的に得ることができ、少ない費用で、公共施設を運営できるわけです。
しかしながら、少なくともツタヤ図書館の例では、そういう効率的なスキームにはなっていません。
開館時間は増えますが、図書館の運営費は高くなり、カルチュア・コンビニエンス・クラブにきてもらうために、施設をCCCのいわれるがままに設計・改修して、独特のオシャレ空間をつくりあげるわけです。
市民が聞いたらぶっ飛ぶような巨額の費用がかかったうえに、民業部分では、先述したようなあからさまな利益供与まで行いますので、これは到底「効率のいい行政」などと呼べるものではありません。
高い費用をかけて、指定管理者にビジネスしやすい環境を提供して独占的に儲けさせる。
かかった費用を知らされていない市民は、タダで利用できると喜びますが、
そのツケはいずれ自分たちに回ってくるもの。ツタヤ施設に費やす予算のしわ寄せは、市政のさまざまな行政サービスを削るという形でのちに払わされます。
その構造がわかりにくいので、反対する人は少ないんですけれど、もしわかる人がいたら、誰もこんな話は賛成しません。
というような話なんですよ、ツタヤ図書館問題というのは。
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2020年8月29日土曜日
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