2020年6月28日日曜日

「ICタグと自動貸出機」はセット


こんにちは、日向です。

昨日のエントリに書きました和歌山市民図書館の自動貸出機の件、

資料をあさってみましたところ、ひとつ面白いものがみつかりました。

下をみてください。






これは、2016年にツタヤ図書館を開館した岡山県高梁市にCCCが提出した提案書の自動貸出機に関する記述です。




新図書館ではICタグ、自動貸出機を導入することで、利用者自身での貸出手続きを提案します。銀行のATMよりも手軽な操作性で、高齢者や児童でも問題なく貸出処理ができます。ICタグの特徴は、複数冊(2~10冊)を同時に 貸出処理できることで、貸出に要する時間は数秒です。


しっかり説明されていましたね。「ICタグと自動貸出機」はセットでとらえており、私の説明よりも的確でした。

注目したいのは、セールストークの部分です。どうして、このシステムを導入したらオトクなのかを、人件費と初期費用の対比で検証しています。

自動貸出機を使ってもらえば、その分、窓口に来る人は減ることが予想され、その分人件費が節減できるという理屈なんですが、


先に、導入費用からいきますと、自動貸出機2台が737万円、タグ費用が285万円で、計1000万円ちょっとかかる計算がされています。

それに対して、上の試算は人件費ですね。時給850円で1日平均13.3時間窓口対応が減ると仮定して、年間人件費が約200万円。かける5年間で約1000万円となり、5年でペイしますよ、という売り込みになっているわけです。


まぁ、実際には、そこまで自動貸出機の利用が伸びるわけがないので、この手のセールストークにありがちな「とんでもなく過大に試算したな」という印象をぬぐえないわけですが。

あともうひとつ注目したいのが「タグ単価20.4円」のところです。

和歌山市民図書館の蔵書50万冊にすべてICタグを装着すると、単純計算で1000万円。先の自動貸出機導入費用1000万円と合わせて2000万円ですから、まぁ、湯水のごとく新しい図書館にカネをつぎ込んでいる和歌山市にとっては、負担できない額ではないですよね。

当然、この高梁市と同じ提案をCCCは、和歌山市でもしたはずですから、何故、高梁市ではできて、和歌山市ではできなかったのかが不思議なんです。

さらに、なぜ自動貸出機がバーコードを読む方式になっているのかも。ホントに不思議です。

ありえるとしたら、蔵書全冊ICタグ装着しようとした、あるいは現在も取り組んでいるけれど作業が遅れていて、グランドオープンまでにまにあわなかった。

あるいは、蔵書の一部だけICタグをつけたけれども、すべての蔵書までは、とても手が回らなかった

ということくらいでしょうか。


和歌山市民図書館は、昨年12月に一部開館として、CCCの指定管理がスタートしましたが、

8月末までは通常通り開館して、休刊したのが9月からでしたから、

全蔵書のデータを更新する作業にあてられる期間はかなり限られていました。

通常でしたら、少なくとも開館前の半年は全面休館として、本格的な移転作業をするところでしたが、

和歌山市の場合は、それができない理由がありました。

耐震補強ではなく新築して移転するときの理由のひととつに

新築なら、ほとんど休館せずに、開館しながら新しい図書館へ移行できる」というメリットをあげていた手前【※1】

「休館します」と言えなかったのかもしれません。

とにかく50万冊の図書のラベルをすべてツタヤ分類のためにラベルを貼り替えて、データを更新するとしたら、本当に地獄のようなタイヘンな作業が待っていたことでしょう。

人海戦術にも限界がありますし、TRCなど他社のサポートを受けたとしても、これは鬼のように苛烈な作業だったであろうことは、過去のツタヤ図書館開業などをみていますと、なんとなく想像できます。

でも、そんなのは、利用者の利便性にはまったく貢献しない。自社の手前勝手な行為なんですけどね。


いずれにしろ、ICタグの問題は、なんでそうなったのか、ぜひその経緯がわかる資料を開示してもらいたいところです。


なお、さきほどの高梁市提案書の末尾にCCCがこんなことを書いているにも驚きました。


また、他人に借りる本を見られたくない、センシティブな内容の資料を利用する といった利用者にも気兼ねなく図書館を利用頂けるようになります。これは、「図書館の自由に関する宣言」の第3条「図書館は利用者の秘密を守る」にも則したサービスであると考えます。


自分たちがTカード連携で、さんざん「図書館の自由に関する宣言」を危うくしているのに、手前勝手な自動貸出機の導入を

「図書館は利用者の秘密を守る」にも則したサービスとは、

どの口がそんなこと言うんじゃあ!

と思わずツッコミたくになりますね。

本日は、そんなところです。




【※1】“新築なら、ほとんど休館せずに、開館しながら新しい図書館へ移行できる」というメリットをあげていた”
――の出典を探していたのですが、すぐに出てきません。

もしかしたら、私の記憶違いかもしれない。もしそうなら削除すべきと思っていたところ、2015年7月に和歌山市教委が発表した『和歌山市民図書館 新図書館基本構想』の中に、移転せずに耐震工事のみ行った場合のデメリットとして、以下のような記述がみつかりました。



耐震改修工事を実施すると、9 カ月程度の休館が必要となることや、図書館内にはブレ ース等が設置され、利用者の動線を損ない、収蔵能力が低下し、図書館の使用スペースが 狭くなることから、市民サービスの低下につながる。
 http://www.city.wakayama.wakayama.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/179/menu_1/new/h27/tosyokankihonkoso/koso.pdf

つまり新築移転であれば、「9 カ月もの休館は必要ない」という意味の主張はされていたことがわかりました。引き続き出典を探してみます。



和歌山市民図書館は、ICタグ装備せず 
へつづく




【関連記事】

和歌山市民図書館の自動貸出機について

自動貸出機についての補足説明









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