こんにちは、日向です。
この年末年始に、2022年の振り返りを書くつもりでしたが、なかなか着手できずに年があけて、三が日も(とっくに)過ぎてしまいました。
本日は、2022年版・ほぼ月刊ツタヤ図書館のビッグニュースのひとつだった、沖縄県読谷村のPFI事業について、書き足りなかったことを書いておきたいとおもいます。
沖縄県読谷村では、昨年1月、建設、維持管理、運営等までを長期に民間に任せるPFIという手法で、図書館と公文書館、村民資料室が一体化した(仮称)総合情報センターの整備をすすめるとして、
その受託者に、カルチュア・コンビニエンス・クラブが入ったコンソーシアムを選定。これにより、2025年から契約期間20年のツタヤ図書館が誕生することが確定しました。
その決定までのプロセスにおいて、ちょっと信じられない話なんですが、読谷村役場は、ただの一度も住民の意見を聞いてませんでした。
いまはやりのパブリックコメントの募集すらなく、村長と役所の幹部職員に加えて、コンサルタントだけですべてを決めていたんです。
当然、そんなことしますと、村民からも「ちゃんと説明してよ!」という声があがりましたが、それさえもシカトして、ついに最後まで、(仮称)総合情報センターについての説明会は一度も実施されませんでした。
それが決定的になった、昨年7月に、こう書きました。
そして、すべて決まったあとに、一連の文書を開示しただけですから、そもそも説明しようという意志がまったくないどころか、CCCサイドの「正式決定までは、反対運動が起きないように、絶対に村民に情報出さないでほしい」とのサジェスチョンがもしかしたらあったのではないのか(小牧市や宇部市のようなことがおきないよう)って思うほどの、異様な情報統制でした。
説明会は開催しないけれど、広報誌がその説明会の代りということになってしまうのは、ある意味必然でした。
なぜならば、村にも受託したSPC(特別目的会社)にも、説明できるだけの情報を持っている人は誰もいないからです。
どうするのか中身は、すべてコンサルタント任せできましたので、肝心の図書館部分は、青写真を描いたCCCから、高橋さんか誰かに出てきてもらうしかないんですが、さすがにそれやると、丸投げなのがバレバレなのでできない。
ならどうするかというところで、お金を出して見栄えのいい広告媒体をつくって配布するしかないんです。
それが7月に出た村の広報誌です。
特集ミライの図書館(仮称)読谷村総合情報センター より
中身を詳しくみていきましょう。
さすがプロが制作しているだけあって、見栄えのするイラストが配置された、きれいなレイアウトです。
(仮称)読谷村総合情報センター(以降「総合情報センター」)は、村立図書館、行政文書保管庫、村史編集室、青少年センターの4つの施設が一体となった施設です。この事業ではPFIと呼ばれる手法を用いて、図書館施設の老朽化などハード面の課題と併せて、民間のノウハウを活用し、更に質の高い図書館サービスを提供できる施設を目指しています。
単なる図書館ではなく、行政文書保管庫や村史編集室に、青少年センターまで一緒になった複合施設だということはわかるんですが、それが合体することで、どんな機能の充実をめざしているのかがイマイチ不明です。
そして、こうつづきます。
PFIとは・・・プライベート・ファイナンス・イニシアティブの略で、従来のように村が直接施設整備を行わずに、民間のノウハウ、資金を活用して、民間に施設整備と公共サービスの提供を委ねる手法です。本事業は、設計・建設・什じゅうき器備品調達などの建設業務をはじめ、施設の20年間の維持管理業務および図書館運営業務を一括して発注するものです。
本文途中のコラム扱いで、PFIの意味を簡単に説明しているんですが、なんのことかさっぱりわかりません。たぶん書いてるコピーライターも、まったくわかってないと思います。
PFI事業を正式に推進する(特定事業の選定)ためには、自治体が直接実施するよりも費用が安いことが大前提ですが、読谷村の場合は、開示された資料の肝心なその部分の試算がすべて黒塗りされていて、本当に安くなっているのかどうかわかりません。私が独自に入手した試算の数字は、毎年の運営費がとんでもなく安い金額で試算されていて、いくらなんでもこんな乱暴な試算あってたまるかというものでした。
もし説明会を実施していたら、村民から質問はバンバン出るはず。「なんでPFIにしたの?」「どうして20年契約なの?」「本当に事業費は役所が行うより安くなっているの?」といった質問に、村長もSPIのメンバーもまともに回答できずに立ち往生することになるでしょう。それを避けるために、村民の説明会開催要請をシカトして、逃げまくったのでしょう。
新しい図書館は、読谷村役場の南側に整備を予定しており、一年(慰霊の日を除く)を通して10時から22時まで開館し、従来と比べ、多くの方々が利用できる施設となります。
この手の広告文案を書くコピーライターでしたら、アタマから、こんなにスゴイ機能を備えてるんだと、まず施設の目玉の機能を先にバーンと出したいところですが、それがありません。
図書館と公文書館・村史編纂室を(行政文書保管庫)を合体した、チャレンジングな試みを示すものはなにもなく、いきなりコンビニみたいに「年中無休」をアピールしています。がっかりですね。
平成11年に旧議会棟をを改築して整備された現在の図書館は、改築から20年を超え、老朽化などさまざまな課題が出てきました。本村では、平成24年3月に策定した(仮称)読谷村総合情報センター基本計画報告書や利用者アンケートを基に、新たな図書館整備計画を作成しました。
この10年前に作成した“基本計画報告書や利用者アンケート”が、今回のPFI計画の土台になっているとおっしゃるんですね。ですから、村民の意見を聞いてないじゃあないか!と言われたら「いや10年前に聞きましたよ」と言えるわけですが、さすがに10年もたちますと、状況は大きく変わっています。ふつうでしたら、もう一度新たな図書館計画を作成して、その結果をもとにPFI計画を立案するべきでした。
致命的なのは、10年前に作成した基本計画報告書の奥付にあった検討委員名簿をゴッソリ抜いて、PFI事業を報告するサイトに掲載していたことです。
当時作成した基本計画を元にしたとおっしゃるんでしたら、この検討委員名簿は必須のはずです。
さらに決定的だったのは、カットされた資料編の中に読谷村と同じく、公共図書館と公文書館を一体化した複合施設を整備した栃木県芳賀町の事例(芳賀町の場合は博物館も同居)を詳しく取り上げているパートがあったことです。
10年前の基本計画では、運営を民間委託して賑わい創出をめざす要素も多分に取り入れられている半面、肝心の地域文化の振興という観点からの考察が充分ではないという検討委員たちからの意見があり、その点を今後の課題として取り組んでいくという意味あいで、この巻末資料が挿入されたものであることは明白です。
なのに、その部分もゴッソリと抜いたものを、基本計画として、PFI事業の説明ページで公開したのですから、自分たちが導き出したい結論と異なる部分を意図的にとばしたのではと非難されても仕方ありません。
「利用者アンケート」に至っては、基本計画よりも前の11年前に作成された基本構想にあったものをひっぱってきているんですね。そんな大昔の調査を元にして「市民の意見を聞いた」と企画政策課が言っているのは、とんでもないデタラメだと思います。
今回の事業では、建設費の削減や更なる図書館サービスの向上を期待し、PFIと呼ばれる手法を採用して情報センターの設計・建設・維持管理・図書館運営業務を一括して民間企業に発注することとしました。令和3年度、審査委員会を経て3つの提案グループから村内企業を中心とする黄金環くがにかん株式会社を選定しました。
安い費用でより質の高いサービスをPFIにしたら提供できるという理屈ですが、そんな証明はどこでもされていません。TRC図書館流通センターが手がけた日本初のPFI図書館は、大失敗だったと言われています。
日本初の図書館PFIである桑名市立中央図書館と直営の田原市中央図書館を比較すると、投入した経費は施設、資料、職員でありますが、ほぼ同等であるが、サービス実績は住民1人当たりの貸し出し点数、入館者比率などは田原のほうが2倍以上高く、図書館におけるPFIの優位性は認められません。これは、田原市中央図書館が専門職館長を招聘し、ほぼ全員が司書、専門職員であるなど、必要な資源を投入してきたことが大きな理由となっています。経営破綻や公費投入で直営になるなど、東京や福岡、高知、近江八幡、三重県、倉敷、仙台などPFI事業は問題が起きています。
(高浜市議会平成28年6月定例会 本会議 第3日 内藤とし子議員の質問)https://www.city.takahama.lg.jp/soshiki/gikai/2307.html
そういう都合の悪い情報は一切検討することもなく、最初からPFIありきで突っ走ったプロジェクトだったのではないかと思います。
総合情報センターは、村立図書館、村史編集室、青少年センターおよび行政文書保管庫と、民間企業の提案によるカフェと物販店舗(ポップ・アップショップ)を併設した施設です。施設周辺に広場や水辺空間、ホームセンターなどを設置します。
お堅い施設の周辺に市民の憩いの場をつくると言うのは、たいへん結構なことですが、肝心の複合施設の中核機能についての説明がなにもありません。カフェとブッパンこそが、総合情報センターの中核施設なのでしょうか?
新しい図書館は、役場南側に移転し、開館日数や時間も拡大します。これまで利用しづらかった村民の皆さまも足を運びやすくなります。カフェでゆったりと読書を楽しんだり、無音の集中ゾーンで調査研究や学習等に集中したりと、様々な用途にあった利用ができます。キッズゾーンでは絵本を楽しんだ後、すぐそばにある水辺空間で水遊びをして、お腹がすいたら木陰でお弁当も楽しむなど、1日中楽しめる新たな子育てスポットが生まれます。
どうやら、そのようですね。村民が主体になって文化を育んでいくというよりも、村民は、CCCなどが提供するサービスを購入する消費者としての位置づけです。村民や県外からの旅行者は、企業にお金を出してサービスを買うことによって、企業が儲かり、そのお金が村全体を潤すならばそれは喜ばしいことですが、CCCは東京本社機能の企業ですから、利益はすべて中央にもっていかれます。そのCCCが運営を担当すれば、消費するカフェ代とは別に税金から巨額の運営費も払われます。お客さんであると同時に、その企業が儲かる場まで提供してあげるわけですね。
工事費をゼネコンにすべてもっていかれるより多少マシかもしれませんが、今後20年間の運営費はすべてCCCにもってかれるのはいいんでしょうか。
村史編集室には、県内に1冊しかない貴重な図書や資料が保管されています。新しい図書館では、図書館で学んだことを、村史編集室の図書資料を使って更に知識を深めることがより容易になります。
ようやく出てきましたね。これが本来の複合施設の中核機能のはずですが,それについての説明はたったの6行でした。
これなら、すでにある読谷村史編集室のサイト(読谷村の多様な歴史・文化を 調査、記録、収集、保存)に行ったほうが詳しいです。デジタル化された資料を、いますぐに全国誰でもみれます。
図書館は社会教育の中でも多くの方が利用する施設で、いわゆる「知の拠点」となる場所です。
みなさん聞きましたか? 「知の拠点」という殺し文句出てきましたね。「知の拠点」というからには、そんじょそこらの図書館にはない貴重な資料が多数保管されていたり、あるいは沖縄の貴重な郷土文化にふれる機会をふんだんに提供してくれるようなイメージを抱きます。
また、そんなカタイ資料ばかりではなく、戦後の沖縄で培われてきたさまざまな流行・ムーブメントがわかる資料や、地元メディアの報道や出版物が集められた資料室なども期待されます。
しかし、そうしたキラーコンテンツについては、なんの言及もなく、こうつづきます。
生涯にわたって自主的な学習を行い、地域の実情に応じた情報提供サービスを行うことなど、総合情報センターには、よりよい充実した施設であることが求められています。いつでも気軽に利用できる施設を整備することは、働き盛りの世代や学生の利用増を図るだけではなく、民間施設との連携により、多種多様なイベントの開催や、カフェを併設した居心地のよい空間を演出するなど、これまで図書館に足を運ぶ機会がなかった方々の利用が期待できます。
派手にぶちあげた「知の拠点」からは、どんどん、遠ざかっていきますね。
要するに、CCCによるツタヤ図書館というのは、これまで図書館なんか行ったこともない人たちが気軽に足を運ぶようになる施設ということでしょうか。(カフェで憩いのひとときを楽しむのは有料)だとしたら、1円の古本でもいいかとか、健康・旅行・料理などムックみたいな本ばかり並べとけよなどと思われたりしたら、村民としては困りますよね。「知の拠点」どころか「痴の拠点」になってしまいますから。
全般的にみて、この広報誌の文章を書いたコピーライターは、もう少し読谷村のことについて勉強したほうがいいのではと思いました。CCC経由の発注なのかな、ずいぶんとやっつけ仕事だなと思いました。この媒体の制作に読谷村は、いったいくら費用をかけたのでしょうか。村民の方は、ぜひ一度開示請求してみてください。
それから、随所にこういうパワポのチャートが出てくるんですが、中身が怪しいですね。結論部分の“読谷村内企業による読谷村らしさある設計”ってホントかな?と思います。読谷村らしい設計ができるんなら、村民相手の説明会も難なく開催できるでしょうに。
長くなりましたので、このつづきは別のエントリーに書きます。
よろしくお願いいたします。
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2020年8月29日土曜日
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