こんにちは、日向です。
今回も、読谷村が住民への説明会の代りに、プロのコピーライターに宣伝文句を書いてもらったと思われる広報誌の内容について、コメントしていきます。
特集ミライの図書館(仮称)読谷村総合情報センター より
Q1.どうして新しい図書館をつくるの?
A.建物の老朽化によることや、図書の所蔵スペースが不足しているからです
今の図書館は、旧議会棟を改築して20年以上が経過しており、雨漏りなど建物の老朽化が進んでいます。 また増え続ける図書を所蔵するスペースも足りなくなっているため、新しい図書館をつくる必要があるのです。
ほんとうかな? 改修ではダメなんでしょうか。どこも建て替えは、判で押したように建物の老朽化や耐震性を理由にしますが、なんか別の動機があるように思えて仕方ありません。もし、新しい図書館をつくる必要があるのなら、どうして村民に説明会を一度も実施しないのでしょうか。村民の声は聞きたくないんでしょうか。主役は村民ではないのでしょうか?
Q2.新しい図書館は何が変わるの?
A.施設が大きくなり、開館時間や日数が増えます。
面積や最大収容冊数が約2倍になり、よりたくさんの図書を所蔵できるようになります。 休館日は慰霊の日のみとなり、開館時間は10時から22時までと拡大し、さらにカフェを併設することで、これまで以上に気軽に図書館を利用することができるようになります。
本が増えるのは喜ばしいことですが、図書館の建設費に巨額の予算費やしたら、新しい本を買えなくなるのでは? 年中無休は、低賃金の非正規労働者が増えるだけのこと。
地元の賛成派議員さんたちは、CCCが本社から有能な司書を連れてきてくれると、勝手に思い込んでいるようですが、そんなことはしてくれません。地元の若者を最低賃金で働かせて貧困を加速させるだけです。そして、司書という専門職を育てる機能が完全に失われてしまいます。
カフェ併設は、なにか特別なことのようにとらえてますが、図書館にちょっとした憩いの場ができるというだけにすぎません。
一方で、館内の一等地でCCCに儲けさせるために、激安賃料で優遇すれば、民業圧迫になって公平な競争を阻害します。ツタヤ図書館ができたら、村内の書店やカフェは次々と潰れていくでしょう。
また、利用する市民は、無料座り読みスペースとして活用するでしょうけれど、それによって図書館として、なにか新しい価値が生まれることはありません。既存のツタヤ図書館をみていても、本の貸出や利用が増えることもないようです。消費するだけの商業空間ですから、そのうち飽きてきて、定期的にリニューアルを繰り返さないと、来館者数すらもどんどん減っていくことになるでしょう。
Q3.読谷村内の人じゃなきゃ、本を借りることはできないの?
A.読谷村内以外の人も借りることができます
新しい図書館では、村民を始め、日本にお住まいのすべての方にご利用いただけます。
居住地関係なく、誰でも借りれるのはいいことだとは思いますけれど、村民にとっては特にメリットはないと思います。物見遊山で来館する旅行者にとっても、返却送料負担してまで、借りたいと思う人は少ないのではないでしょうか。現状でも、自治体同士の相互貸借の制度を利用すれば、往復の送料は無料で資料を借りれます。(私も、昨年、地元図書館を経由して、読谷村立図書館から『新読谷村立図書館基本構想』(平成23年3月)の現物を相互貸借で借りました)
Q4.図書館建物内で飲食ができますか?
A.フタ付きの飲み物ならOK!
フタ付きの飲み物であれば、図書館内どこでもお飲みいただけます。 カフェで提供されるお食事はカフェ内で食べることができます。
図書館内ならどこでもスタバの飲み物を飲めるようにする一方で、スタバの座席は、スタバで購入した人だけにしたいのでしょうか。それなら、キッチリCCCから賃料をもらってくださいね。そうしないと、スタバが賃料を払っていない共用スペースまでもスタバ専用にされてしまいますので。
Q5.なぜ民間企業に運営をまかせるの?
A.より質の高いサービスの提供が実現できます
民間企業に運営をまかせることにより、開館時間・日数の拡大、さらなるレファレンスサービス※の強化や多種多彩なイベント、村史編集室との連携強化など質の高いサービスの提供が可能となります
カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営している図書館で、図書館業務の質が直営時代よりも向上したというエビデンスは、どこにもありません。これまで7つの自治体でCCCはツタヤ図書館を運営していますが、そのほとんどで不祥事や疑惑が続出しています。
「開館時間・日数の拡大」は、民間でないとできないわけではありません。あえていえば、「開館時間・日数の拡大」のために、最低賃金の非正規労働を激増させることも民間なら無責任に、いくらでもできるということでしょうか。
最低賃金の非正規スタッフを雇用しますので「レファレンスサービス※の強化」は困難です。もしそれ無理に実現させようとしたら、低賃金なのに過大な責務を負わせて、人材を育てるどころか潰すだけになるでしょう。
重要なことなので何度でも繰り返しますが、CCCが本社から有能な司書を派遣してくれるわけではありません。地元の若者を低賃金で雇用するだけです。ほとんどが一年契約の非正規スタッフですので、ワーキングプア絶望社会が加速することになるでしょう。
「多種多彩なイベント」は、公共スペースに人を集めるために行なわれます。人が集まれば、カフェと物販で儲かるからです。それによって、図書館本来の機能が充実するわけではありません。
Q6.新しい図書館の運営は誰がやるの?
A.黄金環くがにかん株式会社およびCCCが行います。
黄金環株式会社は、(仮称)読谷村総合情報センター整備事業を実施するために村が選定した民間会社です 。
カルチア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)は、黄金環株式会社から図書館運営業務を受ける企業で 、武雄市図書館(佐賀県)をはじめ 、全国で7つの図書館を運営する民間会社です。
受託企業が倒産して巨額の負債を抱え込んだりしたら、PFI事業も破綻しかねません。そこで、SPCと呼ばれる特別目的会社をコンソーシアムに参加した企業が出資して設立します。
そのSPCである黄金環が事業主体になるわけですが、この会社は図書館については何もわかりませんので、実質、図書館運営については最初からCCCが計画して、自分たちの好きなように、やりたい放題ができるしくみになっています。
CCCは、2013年に佐賀県武雄市で、元祖ツタヤ図書館をはじめましたが、地元市民には反対する人も少なくなく、CCC運営の図書館によって損害を受けたとして、二度も住民訴訟を提起きれています。その他でも不祥事や不正疑惑が絶えません。
Q7.図書館の本は誰が選んで廃棄するときはどうするの?
A.民間業者の選書・廃棄を村がチェックします。
民間業者が本の選書リスト・廃棄リストを作成し、村が確認・決定後 、購入・廃棄を行います。
2015年9月に、CCCがクズ本(市価100円未満円の中古本)を大量に入れていたことが発覚したことをきっかけに、ツタヤ図書館の自治体では、本の選書・除籍を教育委員会がいちいち細かくチェックをして、不適切な本は入れないというしくみを取り入れました。
しかし、これにより、図書館の選書を現場の館長や司書の判断に任せず、検閲するかのように教委が監視するようになりました。これは、図書館の蔵書について、こういう本を入れろとか、こういう本は入れるなという権力が社会教育に直接介入するスキを与えることになったのではないかとの批判がなされています。
指定管理者がおかしな本を入れないよう、行政が責任をもってしっかりチェックしていくというつもりなのかもしれませんが、現実には、図書館司書でもない教委の担当者が選書や除籍のリストをみても、なにがなにやらさっぱりわからないでしょう。なので、過去に武雄市や海老名市で起きた「クズ本騒動はうちでは起きないはず」「起きてほしくない」と言っているにすぎません。
Q8.新しい図書館では講座などのイベントは開催するのですか ?
A.多種多彩な楽しいイベントを開催します。
作家や著名人の講演会イベントや 、村民が講師となり互いに教え合うイベ ント、子ども向け多言語による読み聞かせや着ぐるみイベントなど 、さまざまな イベントの開催を予定しています。
CCCは全国でTSUTAYAや蔦屋書店を出店していますので、他のツタヤ図書館で実施したのと同じ著者が講演するなど、自社のネットワークを活かしたイベントができるようになるのは確かです。
しかし、それによって、地域の文化が飛躍的に活性化するわけではありません。CCCはあくまでも、自社の商売のために、人を多く集めようとしているだけで、その地域の市民のニーズにあったイベントが開催されるかどうかは不明です。
“子ども向け多言語による読み聞かせ”は本当かな?と思いますが、着ぐるみイベントなどは、図書館ではめずらしいかもしれませんが、公民館や市民センターでしたら、どこでもやってするような催しものです。過度の期待は禁物です。
Q9.予算はどのぐらいかかるのですか?
A.約 37億円を計上しています。
この予算は建築・設計費だけでなく、20年間の維持管理費および運営費も含まれた額となっています 。
※ 収入については 、民間収益施設土地貸付地代(30年 )で約6 .4億円 、その他固定資産税やカフェ、 POP-UPショップの家賃収入などがあります 。
公開された資料では、整備費と運営費の内訳はすべて黒塗りされていて、詳細はわからないようになっていますが、私の独自取材では、総事業費37億円は税込なので、税抜き34億円のうち24億円が整備費(建設費)でした。
残り10億円が20年間の図書館運営費です。1年あたり5000万円になる計算。ほかのツタヤ図書館の指定管理料は最も安い岡山県高梁市ですら1億5000万円とその3倍ですから、到底この金額では不可能なので、どこかで運営費は改定されると思います。
PFI事業の認定を受けるために、意図的に安い試算の図書館運営費を出してきたのではないかと疑っています。
民間収益施設土地貸付地代(30年)で約6 .4億円とのことですが、1年あたりに直すと2000万円程度。民間収益施設の広さ7,738.57 ㎡で割りますと、平米当たり2,584円。12カ月で割りますと、平米当たり月215円にすぎません。こんな安く土地が借りられるのなら、民間企業は喜んで建物を建てるでしょう。
“カフェ、 POP-UPショップの家賃収入”については、金額が書かれていませんが、和歌山市のケースなどをみますと、タダみたいな金額でCCCに貸しています。和歌山市では、CCCはそれを他店に又貸ししてボロ儲けしていますので、おそらく読谷村でも似たようなことをするのでしょう。市民にわからないような数字を出して煙に巻いてますが、ちゃんとその条件を精査しますと、とんでもなくCCCに有利な契約になっているはずです。
Q10.開館はいつですか?
A.令和7年度( 2025年度)開館予定です。
令和4年度から設計と建設工事を行い 、令和7年10 月頃の開館を計画しています 。
設計をCCCが独占的に担当しますと、システムも含めて、他の運営者に代えづらくなるような独自仕様にしますので、いわゆるベンダーロックイン状態に陥ります。
CCCは、自社では1円も出さずに、全額読谷村の負担で、自社の独自デザインの商業施設をつくることができます。
果たして順調にいくでしょうか? それまでに、いまもTSUTAYAの大量閉店で苦しんでいるCCCの経営が傾かないことを祈るばかりです。
さて、気になるところだけざっとみていきましたが、読者の方はどのように捉えたでしょうか。
武雄市「9つの市民価値」の残骸
いまからちょうど10年前の2013年4月、元祖ツタヤ図書館となった佐賀県武雄市図書館・歴史資料館がCCCの運営でリニューアルオープンしました。
そのときにCCCが打ち出したのが「9つの市民価値」というものでした。
1. 20万冊の知に出会える場所
2. 雑誌販売の導入
3. 映画・音楽の充実
4. 文具販売の導入
5. 電子端末を活用した検索サービス
6. カフェ・ダイニングの導入
7. 「代官山 蔦屋書店」のノウハウを活用した品揃えやサービスの導入
8. Tカード、Tポイントの導入
9. 365日、朝9時~夜9時までの開館時間
10年たって、読谷村で新たな計画が村民向けに詳しく説明された広報誌には、この9つの市民価値のうち、そのまんま打ち出しているのは、
365日、朝9時~夜9時までの開館時間
だけでした。
この間、「20万冊の知」は系列の新古書店から入れた「2万冊のクズ本リスト」で大炎上し、レンタルコーナーは廃止され、Tポイント・Tカードは個人情報の流出リスクが指摘されるなど、いっときは輝いていたはずのメッキが次々とはがれました。
そのタイミングで、読谷村がCCCによる新図書館を誘致したという事実を地元の人たちは、これからしっかり受け止めていかねばならないのです。
よろしくお願いいたします。
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2020年8月29日土曜日
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