こんにちは、日向です。
先日から何度も取り上げております、昨年11月11日に開催されました和歌山市の図書館運営審議会について、本日は、くわしくみていきたいと思います。
まずは、河島健教育学部長の挨拶から。
新しい市民図書館になり、これがはじめての運営審議会となりますが、
というところに注目しました。
新しい市民図書館が全面開館したのが2020年6月5日です。意外なことに、それから2年半もの間、一度も運営審議会は開催されていなかったのです。
2020年3月頃から始まったコロナ禍で、2020年度と2021年度は一度も運営審議会を開催できなかったのは仕方ないと、みなさん思われるかもしれません。
しかし、この間、企業や官庁、学校など、ありとあらゆる公式の場では、Zoomミーティングなどのウェブ会議形式が急速に普及しました。そうしたなかで、この審議会では、なぜ、それらの手法を、ただの一度も採用しなかったのか不思議です。
指定管理者のCCC社員たちは、日常的に本社とウェブ会議していたはずですから、その気になれば、いつでも開催できたはず。
また、仁坂吉伸和歌山県知事による積極的なコロナ対策が全国的に注目を集めるなか、和歌山市は、大阪圏や首都圏などと比べて、感染者数がケタ違いに少なく抑えられていました。
そのおかげで、2020年9月には、4階多目的ルーム(皮肉にも、この運営審議会の会場が多目的ルーム)には、定員の50%までという国の基準を超える人を入れてイベントが行なわれていたほど(和歌山市民図書館は、イベント開催制限を無視?)行動制限が緩かった和歌山市で、図書館運営審議会だけは、異様に慎重になっていたのです。
ということで、和歌山市としても、CCCとしても、運営審議会はできれば開催したくないのが本音で、コロナ禍で開催できなかったというのは単なる言い訳なのではないのかと思います。
このあと、すでに取り上げました、CCC社員である平井薫館長と山本剛揮統括マネージャーの2人のお名前が「■■」と黒塗りされた出席者紹介(館長の名前が黒塗りされた図書館の会議録)に移ったあと、審議会の会長に、甲南大学の長谷川雄彦特任教授が推薦されて、その提案がスンナリ了承されます。
会長に就任された長谷川氏は、自己紹介で、どうして神戸の大学からわざわざ和歌山にきたのかという疑問について、こう述べています。
甲南大学では、まちづくり連携をするために、 大阪湾岸の都市を中心に、包括連携 協定を結んでおります。 この和歌山市もその一つで、平成30年の1月29日に協定を締結させていただいています。 具体的には、和歌山市のUIJターンのためのパンフレットを作成して、学校に置かせていただいたり、逆に和歌山市の職員の方々に来ていただいて、 地域連携という内容の講義をしていただいたり、というふうなことをさせていただいています。
まちづくり連携ということで、甲南大学と和歌山市がコラボして、さまざまな活動に取り組んでいるということなんでしょうけれど、コレ調べてみても、いまいち活動の主旨がみえてきません。お互いどんなメリットがあり、どんな成果が得られているのでしょうか?
また、まちづくりで連携している甲南大学から、まちづくりの専門家を審議会の委員に招聘したのならわかるのですが、そうではありませんでした。
招聘されたのは、図書館の司書の課程や学校図書館の司書教諭の課程を担当している長谷川先生なのですから、そのへんがどうもしっくりいきません。
わざわざ、まちづくりで連携している大学から、図書館運営審議会の委員を派遣してもらう必然性がみあたりません。
やはり、甲南大学と懇意なCCCが、両者を仲介して、自社に都合のいい発言をしてくれそうな先生を紹介して送り込んだのではないのかなと疑ってしまいます。
まぁ、そのへんは、あまり深く突っ込んでも仕方ないでやめておきますが、ここでさらに気になったのが、「関西湾岸 SDGs チャレンジ」なる取り組みです。長谷川先生はこう述べておられます。
現在、関西湾岸 SDGs チャレンジということで朝日新聞社と共催をしていまして、神戸市、堺市、和歌山市、徳島市、岡山市からなる湾岸ネットワーク事業として、 甲南大学の学生、各市の高校生が、 SDGsの視点からフィールドワークを用いた学習を行い、課題を見つけて 解決策を提案するというような事業も行っております。 このような連携事業の1つとして、 和歌山市民図書館運営審議会の委員を、ぜひということで、参加させていただいている次第でございます。
5つの市と甲南大学が一緒になって、地域の課題を解決するしくみづくりを学生たちに提案させるというもので、そこに和歌山市も参加しているんですね。
素晴らしい試みであることは間違いないんですが、甲南大学に限らず、ここへきて多くの大学が、この手の地域連携プロジェクトに取り組むようになったのは、いったいどんな背景があるのでしょうか?
先立つものがないと、こんな試みはできません。各省庁が地方創生がらみ(または産学共同プロジェクト)で国の予算を獲得するようになったことと無縁ではなく、具体的な事業名まで特定できませんでしたが、こうした自治体と大学との連携にも、おそらく文科省等から補助金もしくは交付金が出るしくみがあるんだろうと思います。
国が支援する産学共同事業の一例。大学と地域社会の連携が大きなテーマとなっている。 https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2022/03/2203.pdf より |
この補助金や交付金によって行なう事業の受益者は、役所と大学だけではありません。
「関西湾岸 SDGsチャレンジ」と命名した、このプロジェクトを主催しているのが、実は、朝日新聞なんです。
といっても編集局は直接関与しておらず、広告部門の「朝日新聞社メディアビジネス局」が主体になっているんです。
巷間言われるように、ここ数年、全国紙は部数減による経営環境はますます厳しくなっており、自治体と大学というのは、新聞社にとって定期的に大口広告を出稿してくれる、数少ないお得意様ですから、広告部門が、SDGsと銘打ったイベントを仕掛けては、より関係を深めているのは、新聞社の経営戦略としては自然な流れでしょう。
しかも、ジャーナリズムの看板等なげうって、自社主催イベントの活動を本紙で詳しく取り上げるなんていう顧客サービスは、もうどこでも当たり前のように行なわれているようです。(その典型例がツタヤ図書館を大絶賛する記事)
全国紙や地方紙の記事が、まるでフリーペーパーのような提灯記事で溢れているのは、そのような背景があるとみることもできます。
地方紙が県庁や市役所とベッタリの関係で、役所を批判するような記事はなかなか出せなくなっていると最近よく言われますが、全国紙の地方版とて台所事情は似たようなもの。
長谷川先生がここで得々と述べられている、和歌山市と甲南大学の関係というのも、朝日新聞というメディアを挟んで、文字通り「ウィンウィンの関係」で公金を原資にしたビジネスをしているんだなぁという、感想を改めて抱きました。
そうした経緯を知ると、新聞社に対する見方はガラリと変わってきます。
昨年12月27日、和歌山市民が市民図書館の運営に不正・違法行為が多数あるとして、住民監査請求を行なったことを地元メディアは完全に無視しました。
和歌山市の市民団体が住民監査請求!【16時50分追記】BJ記事リリース・【17時10分追記】監査請求全文
とりわけ朝日新聞の対応は酷いものでした。
監査請求をした翌日だか年明けだかに、市民団体の世話人の方が、わざわざ記者クラブまで出向いて監査請求内容をくわしく記者にレクチャーしたにもかかわらず、結局そのことはベタ記事にすらなりませんでした。
彼らがあの監査請求には、ニュースバリューはないと判断したのは仕方ないにしても、その翌月にCCCのデタラメなアピールをもとにした「和歌山市民図書館、200万人来館!」を大きく地方版で取り上げた(200万人達成してから何週間もたってから)ことは不可解極まりないものでした。
その背景には「SDGsチャレンジ」に象徴されるような、新聞社と自治体との癒着関係があるのではないのかって、みられても仕方ないような対応だったと思います。
すみません。話がすっかり脱線してしまいました。運営審議会の会長に就任した長谷川先生の挨拶からは、実に示唆にとんだ内容が読み取れるというわけなんです。
長くなりましたので、このつづきはまた次回にしたいと思ます。
よろしくお願いいたします。
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