2022年2月1日火曜日

保健所に応援に行く図書館非正規スタッフ

 

こんにちは、日向です。


先週、ちょっと疑問に思って調べたことを忘れないうちに書いておきます。



発端は、図書館関係者の方から教えてもらった以下のようなニュースでした。



岡山市は20日、新型コロナウイルスの感染拡大で保健所業務が逼迫(ひっぱく)しているとして、21日から10の市立図書館と37の公民館を臨時休館とし、職員を保健所への応援に当たらせると発表した。業務継続計画(BCP)に基づく措置。


図書館を臨時休館、職員ら保健所応援へ 岡山市 - 産経ニュース (sankei.com)

https://www.sankei.com/article/20220120-OCHHSU33A5JU5DKFQXXTYKEOTU/>




東京 杉並区 一部の図書館閉館 職員を保健所の応援に充当へ|NHK 首都圏のニュース

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20220119/1000075326.html

(リンク切れしてますがアーカイブがありました→ https://archive.ph/sKl1n )





これについて、巷で話題になっているのが


指定管理とか委託のスタッフも保健所の応援に入るのか?



ということでした。



もしそうだとしたら、



指定管理は条例によって定めなければならないので、図書館は指定管理にすることはできても、保健所の業務は指定管理にする条例はないはず


なのに、図書館の指定管理者者スタッフが保健所の業務を担当することになれば、


条例で指定管理することを決めなくとも、どこにでも指定管理会社のスタッフが入って実質的な指定管理が可能になる。


コロナ禍のどさくさに紛れて、そんな脱法的なことが行なわれているのではないか?


――というような疑問です。





そこで、あちこち聞いてみました。



まず、岡山市ですが、担当部署によれば、保健所に応援に行くのは、市の正規職員のみ。コールセンター、パソコン入力など事務作業を担当。


市立図書館が10館、公民館が37館が対象。すでに昨年5月と9月に派遣実績があるそうです。


なるほど、それなら特に問題なさそうですね。



もう一方の東京・杉並区は、担当部署に聞いてみると、


保健所へ応援に幾のは、指定管理者をのぞく直営館のみだそうですが、こちらは、正規だけではなくて、会計年度任用職員も応援に入る


というのです。



となると、問題出てきそうですが、役所サイドとしては、採用時に図書館のみ勤務の契約にはしていないので、問題ないとの認識のようです。果たしてそのあたりは、どうなんでしょうか。



休館する杉並区の直営館は、柿木、高円寺、西荻の三館と、郷土資料館の四施設。すでに40名が他部署から応援に入っていたところを、これらの四施設から30名入って、計70名、今後感染拡大したら、最大で100名まで増やす計画だそうです。


また、杉並区は、保健所のコールセンター業務に関しては、すでに一部民間委託しているそうなので、それとあわせて運用していくとのことでした(1/20朝日新聞デジタル「図書館を閉め、保健所に増員 杉並区がコロナ版「BCP」発動」によれば、電話などで1日2回、自宅療養者の健康観察を行う業務はすでに外部委託し、80人規模で取り組んでいる)

ちなみに、今回、保健所応援の対象になった直営の杉並区立図書館は、館長だけは正規職員とのこと。あとは再任用と、会計年度フルタイムと会計年度パートタイムの組み合わせのようなので、不満の声が当然出てくると思います


杉並区の策定しているBCP(事業継続計画)では、継続部署の優先順位を決めているだけだそうなので、そのつど、こういうことが行われるのだろうと思いました。




さて、ここからがさらなる疑問です。



今回、コロナ感染者急増の対応した保健所への職員配置は、あらがめ策定されたBCP(事業継続計画)にのっとって行なわれるのです。


そもそもBCPとは、どういうものなのでしようか。



「中小企業BCP策定運用指針」(中小事業庁)

 「BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業 の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。」

「このBCPの特徴は、①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する、(中略)ことにあります」



これを引用した前出の図書館関係者は、こう解説してくれます。



この2区市はBCPに基づいた措置と言っています。

両区市においては、図書館は「優先して継続・復旧すべき中核事業」とは真逆の事業として、

事業資産の損害を最小限にとどめる(余計な予算を支出しないで済ませる)ために

図書館・博物館を休館させたのであろうと思われます。



杉並区のこうした、真っ先に図書館と郷土資料館の休館を決めて、あとからそこの職員を保健所の応援に行かせると決めたことには、各方面からかなりツッコミが入りそうです。



杉並全体で均等に応援職員を出せば、博物館・図書館3館を休館させなくともすむのに、 なぜ4施設を休館させたのか?


そう図書館関係者は、続けます。




杉並区の職員数は、全体で約3600名(再任用含む。会計年度は別に942名※1)もいますから、各部署から正規職員を少しずつ出せば、100名くらいはあっと言う間に集まりそうですが、なぜかそうはせずに、あらかじめ策定したBCPによって、重要度が低いとされた図書館や郷土博物館の休館を先に決めた。どうせ休館するならば、そこの職員から応援に回せばいいというような、随分と安易なやり方のようにみえます。


で、問題なのが、その応援に行かされる図書館や郷土資料館のスタッフは、ほとんどが非正規の会計年度職員だという点です。行かされるほうとしては、ただでさえ薄給にもかかわらず、エッセンシャルワーカーとして、ふだん最前線で感染リスクの高い仕事をしているのに、さらに畑違いの部署に行けというのは、かなり不満出るのではないでしょうか。



ある23区の自体OBの方が、こうコメントしてくれました。


一見して、「総動員法」を自治体が先導する先取りみたいで気味が悪いです。背に腹は代えられないのでしょうが、すでに正規職員の動員をしているようですね。


本来、仕事に対応する職員の配置は、かなり厳密で、定数として条例に定められているはずです。議会が関与しています。そのまえに組織規則がありますが。定数は、組合との基本的な交渉事項なはずでもあります。それは、ある仕事が予算もついて、担保の組織、定員を補償してさせるための手法です。


つまり、どこかから任意に定数をはがして違うところに配置することは簡単には出来ないでしょう。


随分前に、公明党の提案で地域振興券を配布する、年度途中で仕事をせざるを得なくなりました。

既定の組織から、定数をいじらずにはがして特別の臨時の執行組織を作ってやったことがこの手の始まりと思います。


コロナ対応として、定数はいじらずに臨時的に各部署から動員しているのでしょうが、それが常態化すれば、ルールが変わったことになるのかもしれません。

結果(的には)それで出来ていたのだから、定員は減らす(となる)・・・・・ありそうで、なら、仕事はいい加減にならない保証はありません。



そう聞くと、指定管理や委託された民間スタッフも、もしかして、やり方によっては、派遣可能なのではないのかと思いはじめました。


たとえば、特定の部署のみ切り出した委託ではなく、役所事務全体のの包括委託なら、


委託会社内の異動で、図書館や郷土資料館もスタッフも保健所に応援にいかせることも、もしかしたら可能ではないのか


と思ってしまうわけです。



昨年、大阪府守口市の学童保育で不当労働行為を認定された共立メンテナンスなどは、個別の業務にとどまらず、行政事務の包括委託も手掛けているようなので、やりかねないなと思ったりもしました。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/koukyou/01_madoguchi/pdf/2017kyoritu.pdf


行政事務の包括民間委託について

H29年度公共サービスイノベーションPF in 四国 行政事務の包括民間委託について より


そんなわけで、戦時中の国家総動員法をイメージするような出来事が、これからまだ当分は続くのでしょうか。




※1 杉並区 職員白 書 令和2年度(2020)

https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/674/shokuin_hakusho_2020.pdf


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