2021年12月14日火曜日

誰が“駅前”を殺したのか？～キーノ和歌山の意外な真実～


 こんにちは、　日向です。


前々から、一度調べてみたいと思っていたのが、昨年6月にグランドオープンしました南海電鉄・和歌山市駅にできたキーノ和歌山についです。


この複合商業施設の一角にに新しい和歌山市民図書館があるわけですが、とっても不思議なことに、総事業費123億円（オフィス棟は別）かけてできた新しい駅ビルの最大の目玉が「関西初出店のツタヤ図書館」とアピールされてきました。




公共図書館が「出店」という表現も批判を浴びたのは記憶に新しいところですが、人口36万人を誇る県庁所在地のターミナル駅に、それだけお金をかけてつくった商業施設のいちばんの魅力が、ツタヤ図書館だとは、なんか納得いかないままきてしまいました。




ファッションとか、コスメとか、誰もが一度は行きたいとおもっていた人気の飲食店とか、これまでにない新感覚の雑貨店、地域の老舗の名店、さまざまな便利なサービスに、最先端医療モールも併設されていれば、


文字通り多彩な地域文化が一個所に集結した賑わいの場になるであろう商業施設。そのなかでいちばんの目玉が、公共図書館だというのは、いくらCCCがスタバと代官山風蔦屋書店をもってきたとはいえ、それら商業施設にいまいち魅力がないのかなぁと思っていました。



そんななか、先日、和歌山市民の方から「キーノ和歌山に入っているのは、南海が大阪から連れてきた店ばかりだから、市民が落としたお金はぜんぶ大阪にもっていかれる」


というようなことをおっしゃっていたましたので、本当にそうなのか？と思い、各店舗の本社・本店所在地をしらべてみました。


それが以下の表です。薄いピンクのところが和歌山県内に本社があると思われる店舗です。あれ、結構ピンクはめだちますね。


ということは、南海が大阪から連れてきた業者さんばかり、ということでもないんですね。


ところが、個別にみていくと、気がついたことがいくつかありました。






まず第一に、いちばんテナント料が高そうな一階のフロアについてです。


青果・精肉・鮮魚をはじめ、グロッサリーや総菜といった食の専門店が集まるマーケット「ROCK STAR FARMs」。


花屋も含めた6店舗と、小さな業者が集まった直販ブースのヤードがありますが、和歌山の地場なのは、3店舗のみ。


ほかにもは、マツモトキヨシ、麺屋 丈六、カフェ・酒場 プロント、大和証券 和歌山支店、和歌山バス案内所 乗車券発売所と、バス案内所をのぞいてすべて県外本社の店舗。関東に住んでいる者にとっても、マツモトキヨシとプロントは、あまりにも見慣れた光景です。



さすがに2階をみると、ほとんどが和歌山県内に本拠地を置く店舗でしたが、東京本社の保険クリニックを除いて、すべてが飲食店でした。


また、3階の医療・健康モールのところも、ほぼ地元の医療機関でしたが、セントラルスポーツジムスタ24スタジオヨガピスと快活CLUBは、いずれも東京本社の企業です。


快活CLUBは、スーツのAOKIグループが全国で運営する24時間営業の会員制複合カフェですから、これがあるだけで、かなり平凡な感じがしました。



そして、ホテル棟の4階以上に、鳴り物入りで進出してきたカンデオホテルズ。


“「ビジネスホテルの価格帯でシティホテル並みのラグジュアリーを」をモットーに、毎日 60品目以上の健康朝食ビュッフェ、シモンズ社製の高級ベッド、最上階に紀の川を望む絶景露天風呂付大浴場を備え、リーズナブルでありながら機能性とラグジュアリーを凝縮したワンランク上のスタイリッシュホテルです。客室数は 120 室です”



さらに、キーノ和歌山のいちばん端っこに位置するのが


地上５階 延床面積約９，６００㎡

 収蔵冊数 開館時約５０万冊予定（収蔵能力約６０万冊）



を誇る、新・和歌山市民図書館です。こちらには、代官山風・蔦屋書店とスターバックスが併設されている



というのが全体像です。





さて、ここまでみてきて、何か気づかれたことはありませんか？　おかしいな、これってと思いませんでしたか？


私は、ずうっと、そう思ってましたが、それがなんなのかわからないでおりましたが、こうやって整理してみて、やっとわかりました。


それは、


ファッションがないんです。メンズも、レディスも。ただの一店舗も。


雑貨店もありません。コスメ（マツモトキヨシは別として）もありません。アクセサリーもありません。




キーノ和歌山は、もともと高島屋があった駅ビルを建て替えたものです。百貨店というのは、そもそも存在自体がファッションビルと言ってもいいくらいなものでしたので、そこが撤退した後で採算の合う商売になるのは、飲食店とスーパーしかないということなんでしょうか？



そんなことはないですよね。



試しに、同じく百貨店跡地に2016年にできた枚方T-SITEをみてみますと、ごくふつうにファッションの店舗は入っています。同じ和歌山でも、JR和歌山駅ビルの「MIO」にも「フッション&グッズ」のフロアはあります。





賑わい創出ということでいえば、南海電鉄の本拠地にある、なんばパークスにはレディス、メンズ、服飾・雑貨、インテリア&雑貨、コスメ、キッズ・ベビーといった、実に多彩な店舗が集まっています。



なのに、キーノ和歌山はほとんど飲食店のみ。これが、「決定的に足りないもの」だということに、はたと気づいたというわけです。



どうして、そうなったのかについては、正直、わかりません。



プロデュースを担当したのは、市民図書館の内装も担当した㈱スペースという会社です。どこにでもありそうな店舗になりがちななか、地元産地の食品を直販する「ROCK STAR FARMs」をもってきたり、飲食店も、それなりに和歌山地場の人気店をうまく配置していると思います。



駅ビルは、飲食店中心にして、あとはそこから市内の商店街を回遊してもらう仕掛けが別にあるのでしょうか？



だとしたら、大阪から来て「一日いられる」とばかりに、市民図書館の中だけだけで完結してしまうイナゴのような“ツタヤ図書館観光”ばかりが増えることは、和歌山市にとっては、カネは落ちないのに、負荷がふえるだけでマイナスでしかありません。



山口県周南市では、徳山駅前に巨額の費用をかけて、2017年にツタヤ図書館をオープンしてはみたもののの、経済効果はほとんどなく、


再度、ＪＲ徳山駅前にある旧近鉄松下百貨店を取り壊して総事業費108億円の再開発を進めています。


ただでさえ、中心市街地の再開発は成果が出ないと言われているなか、まるでブラックホールのなかに巨額の金が吸い込まれていくような事業が、これからもつづくように思います。


ツタヤ図書館は、賛否両論あるけれど、実際に出かけてみたら、人がたくさん来て活発に利用されていて、結構いい感じだったと、みたまんまに感想を言う人たちには、


図書館という公共財の機能を犠牲にしてまでも、巨額の公金つぎ込んで賑わい創出しようとした事業そのものが、破綻しつつあることには気づかないのでしょうか。


それが不思議でなりません。


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●宇城市へ情報開示決定の審査請求を行いました●和歌山市へ提出されたCCC開館準備報告書　●和歌山市CCCとの定例会議・議事録を入手（その3）添付資料　●和歌山市CCCとの定例会議・議事録を入手（その2）　●公式回答が“ウソ八百？”の和歌山市読書活動推進課　●高石市で蔦屋書店の相棒となった日本測地設計　●和歌山市CCCとの定例会議・議事録を入手（その1）　●大阪府高石市は、蔦屋と南海のカモ？　●『雇用保険から排除される非正規労働者～』の記事が出ました　●蔦屋書店は悪くないと言う高石市の担当課長　●速報！“ツタヤ図書館もどき“が大阪府高石市にもできる？




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2020年8月29日土曜日

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《2020年6月》

●和歌山市民図書館は、ICタグ装備せず●「ICタグと自動貸出機」はセット●自動貸出機についての補足説明●和歌山市民図書館の自動貸出機について●３８００万円の“安全対策”●出来レースの代償・後編●出来レースの代償・前編●専門家がほとんどいない審議会 ●『第9版　失業保険150％トコトン活用術』についてのお詫びと訂正 ●TSUTAYA占領地のレジスタンス ●疑惑まみれのグランドオープン ●“白塗り”に隠されていた告発意図


《2020年5月》

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