2021年12月20日月曜日

『雇用保険のデマを検証』の後編がリリースされました

 

こんにちは、日向です。



先週リリースされました


“雇用保険は破綻寸前”というデマを検証…保険料引き上げのための世論誘導か



――につづく後編記事がさきほどリリースされました


「雇用保険が破綻寸前」は厚労省による世論誘導?給付カットの半面、積立金は激増





先月中頃からさかんに新聞紙上(snsやネット記事でも)を賑わせておりました、



雇用保険制度が破綻の危機! 保険料大幅アップ!


の報道が、世論を操作をもくろんでいる厚労省サイドのストーリーに、まんまと乗せられていることに気づきまして、


保険料大幅値上げの実態がどういうものなのか、できるだけ丁寧に検証して解説をこころみたものです。




前回の記事では、積立金の激増に伴って、ここ数年起きていた国庫負担の激減と、異様なレベルまで保険料をさげてきた経緯を振り返って、


そこに突然コロナ禍が襲ってきた流れを解説しました。



今回の後編記事では、さらに突っ込んで積立金激増後に、国が行なった法改正についても詳しく触れています。



ふつう、積立金が激増するということは、「給付を絞り過ぎた結果起きたセーフティーネットの不具合」という側面が大きいため、


2000年代初めに起きた本物の財政危機の際に緊急措置として行なってきた給付カットはやめて、もとに戻すというのが、雇用対策をつかさどる国としての責務だったはずです。


ところが、国はこれをせずに、20年前の財政危機以来、とにかく給付をカットすることだけに鬼のように、邁進してきたんです。



なぜだかわかりますか?


それは、雇用保険の国庫負担ゼロをめざしていたからです。



つまり、国は関与せず、完全に労使の保険料だけで運営していく体制です。



小泉政権のときに、社会保障費を大幅に削減していく方針が示されて、その流れのなかで、なぜかたいした負担でもない雇用保険制度までもが、そのターゲットにされたわけです。


国はもうカネ出さないので、みなさんだけでやっていけるでしょう、というわけですが、


その直後に起きた08年のリーマンショックによって、国が雇用対策に関与しない無責任な体制が、どれだけ多くの人を不幸のどん底に陥れるかを知らしめました。


そこで、とりあえず国庫負担全廃の方向性は立ち消えにはなりましたが、一度カットされた給付を元に戻すことはしませんでしたので、ただ使いみちのない積立金だけがどんどん膨れあがっていきました。




そこにコロナ禍が襲ってきて、失業給付の支出はまったく増えないのに、休業手当を支給した事業主に出す雇用調整助成金への支出だけが異様にふくらんでいき、仕方なく失業給付の積立金をそちらに回したというのが、今回の財政危機の真相です。


ちなみに、この雇用調整助成金は、国庫負担ゼロです。失業給付も本来は4分の1=25%を国が負担することになっていましたが、ここ数年積立金が激増していたために、その負担をたったの2.5%まで引き下げていたんです。



2016年以後に行なったのは、使い途に困った積立金を、直接失業給付とは関係ない部分にばらまく、大盤振る舞いでした。


この時期に行なった法改正のほとんどが、失業給付アップではなく、周辺の給付を積み上げることばかりでした。


それを検証したのが以下の表です。記事でもスペースの関係上、見出しだけしか掲載できませんでしたので、ここに全文を掲載しておきます。





 ●積立金が激増した2016年以降に行なわれた主な雇用保険法改正






たとえていうならば、今回の雇用保険破綻寸前にみえる危機というのは、ちょうど全国の保健所と、医療機関の病床を大幅に削減して、医療費を抑制しようとしたところに、突然、コロナ禍が襲来したのに似ています。


それらのリソースをカットして、財政負担を減らそうとしたところに、通常の何十倍、何百倍もの負荷がかかったわけですから、保健所の体制や感染症対策を担う現場、そしてコロナ患者を受け入れる医療機関が崩壊の危機に直面するのは、ある意味、自明の理といえます。



雇用保険ケースもそれと似ていて、コロナ禍が直撃した雇用は、比較的女性の就業が多い飲食・サービスに集中。それらサービス業種においては、シフト勤務というおかしな契約慣行が蔓延していたため、大幅減収になってもすぐに退職することもできない。


結果、失業給付は1円ももらえないまま生活困窮する人たちが激増していることは、支援団体の炊き出しや食料配布に、みたこともないような長い行列ができる映像が如実に物語っています。



それらの人たちの存在は、「失業率」には換算されませんし、雇用保険受給者数にも換算されません。



国の政策立案の元となるデータに現れないのですから、なにか有効な対策が講じられる期待も望み薄です。



そもそも、私のような、バッタモンの物書きが、こんなことを書かないといけないこと自体がとんでもなくおかしい話なので、ぜひ、報道機関のみなさんや偉い大学の先生方たちには、国の政策を厳しく批判していただきたい、また一般の読者の方には、雇用保険料が大幅値上げなんていうデマ(数年前の水準に戻すだけのこと)に踊らされないようにしていただきたいと願うばかりです。


とにかく、いま必要なのは、失業状態に陥ったら、誰もが失業手当を受け取れるよう、この20年間カットしつづけた給付を元に戻すことです。いまのままでは、雇用保険がセーフティーネットの役割を果たすことが、ほとんど期待できませんので。


よろしくお願いいたします。


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