こんにちは、日向です。
2016年3月に、駅前の新築図書館としてオープンしました宮城県の多賀城市立図書館の定例アンケート結果が出てましたので、そのことを取りを急ぎ書いておきたいと思います。
通常は年2回実施(令和元年のみ年一回)している利用者アンケートで、最新のものは令和3年(2021年)9月実施でした。
令和3年度 多賀城市立図書館 利用者アンケート調査 結果報告書 |
結果は、利用者に限定してCCCが実施したいつもの方式なので、満足度85%と自画自賛となっているのは、他のツタヤ図書館と同じ“お約束”と言っていい内容でした。
ツタヤ図書館としては、先ごろ、和歌山市がはじめて市独自に実施したアンケート結果が出まして、そちらの市民満足度はCCC実施よりも、大幅にダウンしていることが判明したのは、まだ記憶に新しいところです。
さて、今回多賀城の最新結果をざっとみてみましたところ、以前々から話題になっていた、ある質問が目に留まりました。
それは、以下の質問です。
■問8 あなたは、市立図書館の各種サービスをどのくらい利用していますか。(項目ごとに〇は1つ)
1_図書館の本を読む
2_図書館の本を借りる
3_図書館の本の予約・リクエスト
4_レファレンスサービス(スタッフへの調査・相談)
などといった、項目別に、
1 よく利用している 、2 時々利用している 、3 利用したことはない、4 サービスを知らない
の4つの選択肢のうちどれかを選んで回答するようになっているんですね。
で、何が興味深いかといいますと「図書館の本を読む」について「利用したことがない」と回答した人が、最新の結果では、8.9%もいるんですよ。
さらに「サービスを知らない」(「図書館の本を読む」について)と回答した人も0.9%いました。
「図書館の本を借りる」には、「利用したことがない」人が29.5%、「サービスを知らない」人が1.4%いました。
ということは、多賀城市立図書館の利用者のなかには、図書館で、本を読んだり借りたりしたことがない人が一定数いて、なかには図書館で本を読んだり、借りたりできるサービスがあることすら知らないという人もいるということなんですね。
平成28年度(2016年)からの時系列でみていきますと、「図書館の本を読む」サービスを知らない人が、平成29年度に10.4%もいますし、同サービスを「利用したことがない」人も、令和2年度には28.8%もいました。
あとの「図書館の本の予約やリクエスト」や「レファレンスサービス」などは、押してしるべしで、多くの利用者は、そういった図書館としての基本的な機能を、あまり利用していないことがわかりました。
だとしたら、みなさん、いったい、なにをしに図書館に来るのでしょうか?
本を読んだり、借りにくるよりも、スタバでコーヒー飲んだり、なんとなく“店内”の雰囲気を楽しんだりして過ごすということなんでしょうか?
ところが、このアンケートでは、その前の質問で、図書館に来る目的を聞いているんですね。
問4あなたは、市立図書館をどのような目的で利用することが 多いですか。
具体的にあげますと、図書館の本を読む・借りる(読書、趣味、日常生活など、仕事以外に関するもの)が75.2%、図書館の本を読む・借りる(仕事に関するもの)が18.6%となっているんです。複数回答なので、この両方にマルをつけた人も多いでしょう。それにしても、この設問だけからしてみたら、ほとんどのの人は、本を読み・借りにきていることになります。
目的としては、本を読みに、また本を借りにはくるんだけれど、実際にはあまり図書館で本を読んでもないし、借りてもない、ということなんでしょうか? このへんが、アンケートの設問次第で、対象者の回答が大きくぶれているんだろうと思うしかないんですがけれど、
いずれにしても、2016年に「東北随一の文化交流拠点」と、鳴り物入りで駅前に新築開館した多賀城市の図書館でしたが、5年たっても、図書館としての基本機能すら、いまだ市民に対して十分に周知させることができていないというんですから、そのことだけをもってしても「巨額の費用をかけた図書館の新築移転は、大失敗だったのではないのか」との批判が聞こえてきそうです。
新しい図書館ができても、そこで本を読んだり借りたりする人は増えていない傾向は、ツタヤ図書館に限らず、全国的にあると思うんですね。
そうしたなかで、われわれは、ついメディアで報道される新しいサービスに関心がいくんですけれども、本当に、そのサービスにニーズはあるんだろうかと思うことが多くなってきました。
たとえば、最近さかんに整備を急げと言われて話題になっている電子図書館のサービスなどはその典型。多くの利用者が果たして求めているんだろうか、活用されるんだろうかと、いつも疑問に思います。
コロナ禍で教育機関がリモート授業を取り入れるなか、公共図書館もわざわざ借りに行かなくても、自宅にいながらにしてスマホやパソコンで、電子書籍を借りて読めるようにするべきだという論調ですね。
まったくもって、ごもっともなんでしょうけれど、費用対効果を考えたら、もっと先にやるべきことがあるような気がしてならないんです。
図書館をよく利用する人ならば、自宅のパソコンやスマホから、日常的に市内にある図書館の蔵書検索して、もし読みたい本がみつかれば、予約して即確保。もしなければ近隣から取り寄せてもらったり、またはリクエストを出して、新規に入れてもらったりする。それを自宅や職場近くの図書館・公共施設で受り、返却も近くの公共施設の専用ポストですませる。
自宅で図書館サイトにつなぎさえすれば、読みたい本を、ほとんど人と接触することなく、また、たいした手間もなく借りて返すことができます。ネットで検索・予約・最寄り施設に回送する図書館システムは、かなり前からありますが、いまだに大きな図書館へ出かけて行かないと何もできないと思っている人は多いのではないでしょうか。
複数の図書館が設置されている地域であれば、ベストセラーをのぞいて、大半の読みたい本は、どこかしらの図書館が蔵書していることに気づきます。
ところが、多賀城市のケースをみているとよくわかるように、図書館に出かけても本を借りたことがない人すら結構いて、多くの図書館利用者は、基本的な図書館機能や活用ノウハウについて、いまだによく知らされていなんですね。もしかしたら、利用者自身が、そこまでしたくないというか、興味もないし、知ろうともしていないのかもしれません。
商業施設の感覚でぱっと行ってみて、面白そうな本があればパラパラめくってみる人が多いとしたら、もし電子書籍を多数図書館で揃えたとしても、それを活用するために、ネットの検索や予約すらしない人たちが、電子図書館を利用するために、別の申し込みをしたり、あるいは自宅のスマホやタブレットにアプリを設定してみるでしょうか?
たぶん、そこまでしない人がほとんどだと思います。
それこそ、ふだんからamazonのKindleを使っているような、一部のヘビーユーザーだけのサービスになることはもう目に見えているような気がします。
それよりも、まず図書館の利用率を高めたいのでしたら、別置や特集棚で、話題の本を紹介することはもちろんのこと、本の探し方、借り方などを詳しく市民にレクチャーするのが先決のような気がしてならないのです。
シニア向けに、スマホやパソコンの使い方講座があるように、図書館を利用したことない人向けに、図書館での本の探し方、借り方講座を開催したらいいのではと思ったりもします。
そこをスルーしたまんま、ハコモノをいくら素晴らしくしたり、カフェや店舗の併設、イベントに開催など周辺の機能ばかりに力を入れても、本丸の図書館本来の機能は活用されずに、劣化ししたままです。それでは、地域の文化の発展も見込めないと思うんですね。
多賀城では、「東北随一の文化交流拠点」と、すばらしいキャッチコピーを掲げたものの、そもそもCCCは、そんな目標を達成する気もサラサラないでしょう。8割超の満足度が出るような利用者アンケートの設問設計テクニックさえあれば、指定管理者の地位は永遠に安泰です。
「賑わい創出」という、なんとなく人が集まってくる場所ができれば、それでもう万々歳ととらえている、地元の政治家や役所の人たちの見識のなさを、より一層クッキリと浮かび上がらせてくれた点こそが、CCCによるツタヤ図書館の最大の功績なのかもしれません。
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2020年8月29日土曜日
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