2022年1月3日月曜日

36年前の江古田図書館・試作品第0号


 こんにちは、日向です。



2021年は、1年延期された東京五輪を強行開催したために、コロナ禍が終息するどころか、8月に第5波の感染爆発が起きまして、本当に厳しい1年だったと思います



その影響もあるのかないのか、ツタヤ図書館界隈の話題といえば、2021年は、新規受託決ニュースがゼロとなりました。


2013年に佐賀県武雄市で始まった、カルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者となる公共図書館運営事業で、オープンまたは事業者選定のニュースがまったくなかった年は、私が知る限り、これまで一度もなかったように記憶しています。


一件も新規開館がなかったのは、2014年と2019年ですが、どちらの年も、次のツタヤ図書館誘致の話題が世間を賑わせていました(2019年は和歌山市で12月に形だけ一部開館しましたが全面開館は2020年6月)。なので、2021年は、武雄市以来はじめて受託が「ぼうず」(ゼロ件)だった年です。(大阪府高石市は駅前基本構想・基本計画をCCCが受託しましたが施設運営は未定)これから3月末までにかけて2021年度にCCCが受託する自治体が出てくるでしょうか?


一昨年の2020年は、丸亀市、宇部市、宇城市、門真市と、夏から年末にかけて、たて続けに、CCC決定のニュースが駆け巡っていただけに、2021年はそれとは対照的に、実に静かな1年だったように思います。(宇部市は、その後施設条例が議会で否決されてツタヤ図書館もどき計画が頓挫)


その代りといってもは変ですが、これまで表に出てきていなかった不祥事が一昨年6月にグランドオープンを迎えた和歌山市を中心に、次々と噴出。CCCによる図書館運営事業のイメージは、ところどころはげかかったメッキがさらに深くえぐられていくような無残な姿をさらけ出した年だったように思います。



一方で、ツタヤ図書館風の賑わい創出をめざした新しい図書館および図書館もどきはというと、ここ数年、燎原の火のごとくというのはさすがに大袈裟ですが、以前よりも勢いをまして全国各地で次々登場しているように感じます。


前にも述べましたように、CCCによるTSUTAYA図書館というのは、1高層書架、2書店式独自分類、3Tカード導入――という他社では絶対にマネしないの3つの特徴を備えておりますので、さすがにそこまでマネする受託企業・自治体はないにしても、とにかく人が集まるようなオシャレな空間設計にした図書館が次第に主流になりつつあるといったら、いいすぎでしょうか。


そういうなかで、昨年11月に突然出てきたのが、東京・中野区の超高層書架を備えた新しい図書館のニュースでした。





「客寄せ図書館」というのは、どちらかといえば比較的人口の少ない地方で、賑わい創出のためにつくられるものだと思っていたところが、黙っていても人が集まる東京23区のど真ん中で、しかも国の補助金などまったくあてにしない都市部で設置されたことには、本当に驚かされました。



で、いまだによくわからないのが、中野東図書館という、中学校や生涯学習センターとの複合施設内に新たに建てられた、完全に実用的な施設であるにもかかわらず、いったいどうして10メートルを超える高層書架をもってきたのかということなんです。


いくら区長がツタヤ図書館に憧れていたからといっても、こんなアクロバチックなしかけで図書館が“集客”する必要があると考えるほうが、頭がどうかしているとおもわざるをえないんです。


どうやら、前区長時代に進められていた設計案の段階で、すでにこの計画が出ていたらしく、いまだ真相は藪の中なんですが、なにかものごとの本質を決定的に見誤っている人たちが、実権を握っているのではないのかという気がしてならないんです。



CCCが広めた、客寄せ図書館というのは、地方都市にとっての観光資源のようなもの。そこに人が集まるしかけを、巨額の公金を使って行なうものです。リスクゼロで自社だけが儲かれば、それでいいという私企業の野放図な利益追求の動機と、それにまんまと騙される情けない地方自治体の首長・役人という構図があるんですけれど、都心の中野区には、そんな構図はありませんので、指定管理者にしても、設計にまで関与しているようには思えず、この計画に関与している人たちの見識のなさに、ただただ嘆息するばかりなんです。



公共施設だって人を呼ぶ空間設計は大事なんだよ。まぁ、まあ、そうカタイコトいうなよ


なんていう人がいたら、


それ10万や20万円でできると思ってるんですか?と聞いてみたいですね。


12月10日付の東京新聞によれば、この「高層本棚」の価格は、1570万円。一冊2000円の本が7850冊買える予算が、このキケンでバカげた飾りに使われているわけです。







さて、そうこうしているうちに、年末になって、面白いものを入手しました。


下の画像をみてください。これがいまから36年前、1986年に中野区江古田に開館した江古田図書館の当時の館長さんが作成した幻の媒体です。


中野区で新しい図書館が建設された当時の雰囲気をビビィットに伝える、実に興味深い内容なんです。


江古田図書館は、昭和60(1985)4月に開設準備を始め、翌、昭和60(1986)2月に開館


富士通K10を使って直打ちで編集。「ワープロは使えませんでした。オフィスはありませんでした。一館単独でパソコン管理が普通になってきたころで、ネットワークはずっと後からです」とのこと




とりあえず、画像として引用したのは、創刊準備号のような位置づけの号で、行政サイドとして、基本的な方向性を打つ出しつつも、手探りといいますか、一歩引いて、利用者と一緒につくりあげていこうという熱気が溢れているんですね。


超高層書架の写真をあげて炎上した中野東図書館の「100日後に開館する図書館」ツイートは一方通行で、淡々と開館準備風景を告知していくだけだったのを思い出してください。


36年前に作成されたこの媒体は、市民に対して、新しい図書館サービスについての批判や意見をドシドシ投稿してほしいと呼びかけているのです。


残念ながら、この媒体は0号がその年の10月で、1号、2号、3号で終わっています。担当した館長さんは、この後、図書館ではない別の部署に異動になってしまい、後任には引き継がれませんでしたが、この頃から培われてきた市民との協働スタイルが、いまも中野区の伝統として、社会教育の分野での活動に引き継がれているように感じました。



私は不勉強でまったく知りませんでしたが、中野区では、その後、2004年度から8館あった区立図書館をすべて民間委託へ移行しています。


このときに、東中野図書館と中央図書館の2館を、民間委託によって雇止めになった元非常勤職員たちが集まって設立したNPO法人に委託しましたが、それも数年限りだったそうで、結局は、すべてを民間企業が運営するスタイルになったことも最近知りました。



実務者だけで、事業運営に関してはほとんど経験のない非営利のNPO法人と、営利と人の雇用に長けた一般企業とを同じ土俵で競わせたようにもみえ、それは尋常ではないパカげた施策だと私には映るのですが。


当事者として、図書館運営にコミットメントしている専門職の館長さんがいなくなり、司書ではない行政職をトップにいただいて非常勤スタッフを中心に運営していく時代へ。そして、一部委託から指定管理(実質丸投げ)へと、コミットメントしない人たちだけで運営していく、いわばカネで寄せ集めた「外人部隊」を、首長という司令官が動かす――。


今回突如として出てきた「客寄せ図書館」は、その延長線上にある、中身のない空虚な雰囲気をありがたがる商業主義の権化と言えるのかもしれません。


そんなとりとめないことを、つらつらと考えているうちに、2022年の元旦を迎えてしまいました。




さて、2018年9月に、97%が黒塗りで開示された和歌山市の関係者会議録1400枚の中身を追及するためにスタートした当ブログは、


CCCの指定管理が始まる2019年末で、いったん役目を終えて、そのまま放置する予定でしたが、その後、和歌山市で隠蔽された事実が次々とあきらかになり、


一昨年には、丸亀市、宇部市、宇城市、門真市と、立て続けにツタヤ図書館・もどきが増殖することとなったため、その対応に追われているうちに4年めを迎えてしまいました。


CCC関連の話題としては、今年春に熊本県・宇城市に、ツタヤ図書館・美術館のオープンが予定されています。また、中野区のように、TSUTAYAではない“ツタヤ図書館インスパイア系”(byビジネスジャーナル編集部)図書館がまた現れそうですので、まだ当面はつづけていかないといけないかもしれません。


本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


                                                              2022年1月3日



2022年1月3日19:30追記

「36年前の試作新聞」とのタイトルで更新しましたが、さきほど「36年前の江古田図書館・試作品第0号」に改題しました。



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2020年8月29日土曜日

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