こんにちは、日向です。
東京都議会議員選挙が、先週6月25日に告示になりました。
今回の都議選は、秋の国政選挙の前哨戦と位置づけられていることから、
来る7月4日投票に向けて、都内各地で熱い舌戦が展開されている、といいたいところですが、
候補者同士による政策論争というよりは、党派性が色濃く出てしまっていて、いまいち各候補者が訴える政策の違いがわからないと戸惑われている有権者の方も多いのではないでしょうか。
そこで、本日からしばらくは、当ブログでこれまでしつこくとりあげてきました東京都立高校の学校図書館の問題の深層について、連載で詳しく取り上げておきたいと思います。
公務の民間委託というのは、いったいどのようにして政治と結びついて、ここまで蔓延ってきたのか、それを推し進めた張本人は誰なのか、どういう政治と行政の力学によって、そのようなことが進められたのかを、非常に狭いエリアでの事例をみていくことによって、それらの謎のほんの一部でもを解き明かしていきたいと思っています。
まず下の図をみてください。
平成21年(2009年)2月に都議会で行われた自民党・高島直樹都議(足立区選出)の代表質問の一部抜粋です。
学校を取り巻く状況が厳しくなるなかで、児童・生徒の学力向上などの課題解決には、外部人材の活用拡大が必要ではないのかとの高島都議の質問に対して、当時の教育長は、
すでに市区町村の教育委員会レベルでは、学校図書館の運営に外部人材を導入していると前置きしたうえで、今後は、それらの充実強化が求めらるとして、「学校のニーズに応じた適材適所の人材活用ができる仕組みを構築していくことが必要であると認識しております」と答弁されています。
奇しくもこの翌々年の2011年度から始まったのが、例の都立高校学校図書館の民間委託でした。
当ブログの読者のみなさんは、すでに御存じの通り、
都立高校学校図書館は、偽装請負や受託企業の契約不履行(仕様書通りに司書を配置せず)などの不祥事が頻発し、来年度以降の新規委託は全面廃止する決定が発表されました。
派遣や非常勤採用ではなく、企業への業務委託にしたせいで、学校図書館の現場は、教師と打ち合わせもまともにできない不自由を余儀なくされたうえ、そもそも契約通りに専門の司書を配置することすらできない惨状を「遅い、高い、まずい」と評されたのは、これまで何度も取り上げてきた通りです。
教育効果をみこめない、費用は安くなっていない、不祥事だらけと、とにかく、いったい、なんのために東京都教委は、学校図書館を民間委託したのか、そのねらいはどこにあったのかがさっぱりわからない実に不可解な民間委託でした。
次に以下の書類をみてください。これ平成30年に自民党東京都足立第三支部へ寄付した企業のリストです。
「㈱光管財」が12万円、「エースシステム」が6万円を
自民党東京足立第3支部に、献金しています。
この二社ともに、都立高校の学校図書館の受託企業です。みなさん、この会社名をよく覚えておいてください。次回以降、両社とも、このイシューの主役に躍り出ることになりますので。
で、この自民党足立第三支部の代表者は、高島直樹センセイなんですね。いったいどういうことでしょうか?
現在の公職選挙法では、政治家個人への企業献金は原則として禁止されていますが、政治団体への政治献金ならば、企業が献金するのは全く問題ないんです。
じゃあ、この政党支部に入ってきたお金はどこに出ていっているのかってところが最大のポイント。とんでもない事実がうかび上がってきました。
収入総額3600万円のうち、約2000万円超が政党支部の代表者である高島センセイ個人の資金管理団体へと寄付されているんですね。
「迂回献金」という言葉が果たして適切かどうかわかりませんけれど、政党支部を経由して、実質的には、その政党支部の代表者をつとめる政治家個人の資金管理団体へとお金が流れているということは、まぎれもない事実だと思います。
「㈱光管財」と「エースシステム」の二社ともに、都立高校学校図書館を受託している業者です。献金額は総額18万円と少ないですけれども、もしかたら、このほかにも、オモテに出てこないカネもあるのではないのかって、つい疑ってしまいます。
高島センセイの場合は、毎年、1月には、浅草ビューホテルの大会場を借り切って、数日間ぶちぬきでとてつもなくド派手な新年パーティーをすることで有名です。その場には、足立区内に限らず数多くの都内の会社経営者の方たちが訪れるでしょうから、パーティー券も購入などのつきあいも含めたら、もっと大きな額が動いているかもしれません。
もうひとつ、興味深い情報もおみせしておきましょう。
東京ビルメンテナンス政治連盟という、ビル管理業者で設立した政治団体がありまして、その2017年の収支報告書をみますと、自民党東京都足立区第三支部(住所は高島センセイの事務所)に50万円の寄付をしています。
東京ビルメンテナンス政治連盟の名簿には、足立区では、光管財一社のみの名前がみつかります。
ほほう、てことは、業界団体なんかもうまくトンネルとしてつかって、特定の政治家個人への献金できるしくみなわけで、こちらのほうこそ、なかなか巧妙な迂回献金なのではないのかって、つい疑ってしまいます。
高島センセイといえば、長年、都議会に君臨し続けた前都議の内田茂さんが2017年に引退した後、その跡目を継いだ「都議会のドン」として知られています。
2014年に、晴れて都議会議長に就任した際のパーティーには、安倍晋三総理もかけつけるなど、自民党内では、国会議員なみのプレゼンス保持するほどになりました。
現在は、自由民主党東京都支部連合会幹事長をつとめており、今回の都議選も、自民党支持者による盤石な体制でのぞんでおり、足立区ではトップ当選を果たすのではないのかとみられています。
そんな高島センセイですが、これまでは、もちろんご苦労もされています。
2009年の都議選では、内田さんとともに落選の憂き目を味わい、浪人生活を余儀なくされました。もっとも、落選中も自民党東京支部の顧問として専用車をあてがわれていて、関係者によれば「とても落選した人とは思えないような特別待遇だった」そうですが。
当時、足立区内を通りかかると「充電完了」という高島センセイのポスターがそこいらじゅうに貼られていたのを覚えています。
さて、話をもとに戻しましょう。冒頭でご紹介した、高島センセイが2009年に代表質問した際の答弁は、特定業界への利益誘導との疑念を持たれかねないような内容とも言えるわけですが、これから教育現場でも、どんどん外部人材も活用したらいいではないのかという、自民公明の議員さんに共通する考えともいえます。
しかしですね、都立高校学校図書館の民間委託では、先月、ビジネスジャーナルで都民ファーストの会所属の米川大二郎都議が昨年9月におこなった一般質問の前後にどのようなことがあったのか?
まったく表に出てこない水面下で、米川都議が都教委や財務局と、さんざんやりとりをした結果、委託廃止という結論が今年3月末に出てきたことを思い出してください。
なるほど、議会でのあれだけの答弁の裏では、各方面がさまざまな思惑で動いておりましたので、
もしかしたら、2009年の高島質問においても、水面下で、何かそういった民間委託推進の動きが具体化していったのではないのか、というのが私の感想です。
ある関係者は、こう話してくれます。
「都議なら、その分野の事業が今後どういう方向で進むかについて、いち早く情報が得られますので、その情報を自分の支援者に教えることができます。また、入札に参加したいんだけれども、やり方がよくわからないようなときには、担当部署の人間を呼んできてくれて、直接詳しく接説明させるなんてことも気軽にできます」
それで仕事がうまく取れたら、もちろん御礼をするのがわれわれの社会の常識なんですが…。
民間にできることは民間に
2001年に発足した小泉政権以降、そんな合言葉のもとに、ありとあらゆる公共部門の民営化が推し進められていきました。
公務を役所自らが行うと、その分の費用は、単なるコストとしか認識されません。ところが、ひとたびその業務を民間企業にやらせることができれば、税金が民間企業の売上に化け、増えた売上が、そのまんま経済成長として換算される。
人口が減って、勤労者の所得も減り、低賃金の非正規労働者が激増しているのに、なぜか着実に、国全体の経済成長率だけが積みあがっていくマジックのカラクリがそこにあったのです。
その民営化の津波は、国鉄JR、電電公社NTTにつづいて、2000年代に入ると、郵政かんぽJPまでも飲み込んでいきました。
そしてついに、最後の聖域ともいえる、教育現場に押し寄せてきたことを示したのが学校図書館の民間委託でした。
7月4日に開票される都議会議員選挙では、おそらく4年前に小池旋風で当選した都民ファーストが苦戦する一方で、公明党とヨリを戻した自民党が大きく盛り返すのではないのかと予測されています。
そういう展開になるりますと、またぞろ民間委託を強力に推進しようとする政官財の力学が働いて、学校図書館をはじめとした教育現場を、民間企業のビジネスチャンスに差し出そうとする勢力が跋扈するのではないのかって、心配している次第です。
では、2011年にスタートした都立高校・学校図書館の民間委託を担ってきた政治力を持つ地元企業とはいったいどのような会社だったのか。そのへんについては、次回から、詳しくみていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
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