こんにちは、日向です。
都教委は、いずれ、この3社に都立高校の学校図書館をすべて任せる方針なんだと思う。しかも、この3社って、実態は、すべてひとつのファミリー企業なんです。(都立高校・学校図書館の闇(1)~3社で独占する“教育市場”~ より)
ある関係者から聞いた、とんでもないスキャンダル。都教委が、都立高校190校の学校図書館を、すべてあるファミリー企業に任せようとしているという陰謀めいた話は、果たして事実なのか。その真相を、今回も丹念に追っていきます。
前回、都立高校・学校図書館の闇(1)~3社で独占する“教育市場”~ にこう書きました。
しかし、いちばん驚くのが東京23区の西のほうと東京都下を担当する西部センターです。2017年頃から、すべての委託校を光管財という会社1社で担当しています。ただの1社も例外はありません。文字通り、1社による地域独占です。
今回は、この光管財について、詳しくみていくことにします。
下の表をみてください。
都立高校の学校図書館を最も多く受託している光管財(43校)が、東京都から受託した業務一覧を一部抜粋したものです。
光管財株式会社とは、東京・足立区に本社を置く地場の中小会社で、本業は、ビルメンテナンスと警備です。
そのほとんどが役所の発注のようでしたので、とりあえず東京都に過去の契約実績を開示請求してみることにしました。その結果、出てきた資料がこれです。過去5年間でざっと41案件、総額にして約30億円。
直近の2020年だけでも、11案件計7億円もの業務を受託しています。
業務の内容を詳しくみていきますと、
公共施設の草刈作業から始まって、合同庁舎の建物管理委託、警備、受付・案内業務、樹木せん定、ダクトフード清掃など、ありとあらゆる分野の雑多な業務をこなし、
受託額は、もっと安いもので病棟のカーテン修理5万円から、もっとも高い施設管理2億円まで。
かつては、どこの役所でも自前で行っていた業務を、細かく切り出して、それぞれ外部の専門業者に委託するようになっている実態が、この資料からは如実にみてとれます。
それにしても驚くのが、ここ数年における同社の受託額の急増ぶりです。
新規委託のみで比較しますと、2016年には、東京都の受託額は約3億6000万円だったのが、4年後の2020年には約7億円と、ぼほ倍増しているのです。
新しい業務を落札していける秘密のカギを握っていたのが、都立高校の学校図書館など新しい分野への進出だったとみても、決して的外れではないように思えてきました。
ビルや設備の管理を受託する事業者は、自社で、電気や機械の運転に関する資格・技能を持ったスタッフを採用して、設備の保守点検の任にあたらせます。
その流れのなかで、教育機関である学校図書館でも、司書資格をもったスタッフを自社で採用さえすれば、施設の運営も可能になると考えたとしても、なんら不思議ではありません。
発注する都教委サイドでも、教育関係を専門とする事業者か、あるいは公共図書館にかかわる企業に限定した指名競争入札にしてもいいはずですが、なぜか、そのような縛りは一切設けませんでした。
2018年から、あらかじめ参加企業を評価した「技術点」を加味して選定される方式に変更になりましたが、
2011年にスタートした当初は、そのような縛りは何もなく、とにかく電子入札の価格だけで決まる落札方式でした。
ツタヤ図書館を誘致している自治体では、指定管理者も応募要件に、同種の施設運営の実績があることなどを入れているのと比べると、こちらは単なる業務委託だとしても、少し奇異な印象を受けます。
こうしたことから、光管財に限らず、ビルメンテナンス業者や施設の清掃をメインにする業者、あるいはもともと事務派遣業を手広く展開していた業者などの異業種もゾクゾクとこの分野に参入してきたわけです。
光管財という企業は、そうした異業種参入組のなかでも、ここ数年、メキメキと頭角をあらわした事業者だったようです。
学校図書館の分野に乗り出すことによって、受託額も増えていきました。
都立高校の学校図書館など、まだ参入者が少なく新しい分野であれば、価格だけで勝負して受託できるからです。
では、図書館業務だけに限定すると、同社はどのくらい受託しているのでしょうか。
下の表をみてください。
2016年から2020年の5年間について、光管財が東京都から受託した業務から、図書館業務だけを抽出したものです。
これって、なんかおかしいことに気づきづきませんか? 契約年数のところに注目してください。2017年から3年契約の案件が出てきています。
毎年単年度契約をしていると、スタッフの採用も困難なため、都教委は2017年頃から3年の複数年契約を採用し始めたわけですが、そうすると、入札して新規受託していない年度も、更新契約として契約年数だけ売上がたちます。前記の表では、その部分が抜けているのです。
そこで、下の表をみてください。これが更新分の案件も反映された、同社の学校図書館受託額の推移です。
2016年の9100万円から、2020年には2億8000万円と、たった4年で受託額が3倍にもなっていることがわかります。
もうひとつ興味深いのは、一校当たりの受託金額です。
2016年に光管財が落札した 都立片倉高等学校外10校図書館管理業務委託(西部所)の契約金額は、4000万円。これを表題の片倉も含めた11校で割ると、一校当たりの平均受託額は371万円程度になる計算です。
それが2020年の 都立町田高等学校外11校図書館管理業務委託(西部)(単価契約)でみると、1億170万円を、表題の町田も含めた12校で割りますと、一校当たりの平均受託額は847万円。
配置する現場スタッフの賃金は、ほとんど変わっていないのに、一校当たりの平均受託額は2倍以上に急騰しているのです。
民間委託した都立高校の学校図書館業務は、2015年に東京労働局から、発注者が委託会社の現場スタッフに直接指示命令を出していた偽装請負の違法行為があったとして是正指導をされています。また、2015~2016年にかけて、仕様書通りに従事者を配置しなかった契約不履行なども頻発しました。
都教委は、この時期、これらの不祥事に対応するためなのか、履行した分だけ委託費を払う単価契約に変更したり、複数年契約を導入したり、入札価格だけでなく技術点も加味した総合点で落札者を決める方式に変えたりといった対策を講じています。
つまり、不祥事が起きるたびに、受託企業の適性を問うどころか、受託企業が儲かる方向へと制度が次々と改定されていったことがわかります。
落札金額の高騰については、そのメカニズムがまだ解明できておりませんが、少なくとも複数年契約や、技術点の採用などについては、一部の受託企業にとっては、追い風となったのではとおもわれます。
長くなりましたので、残り二社の寡占企業については、次回に詳しくとりあげたいと思います。
よろしくお願いいたします。
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