こんにちは、日向です。
本日は、当ブログで、これまでもしつこくとりあげております東京都立高校の学校図書館についてです。
3月23日、東京都議会・予算特別委員会で、都立高校学校図書館の民間委託を全面的に廃止する方針を藤田裕司教育長があきらかにしました。
下の図をみてください。
今年度新たに契約された55校を最後に、委託事業者の募集は停止。今後契約満了したものから、順次、直接雇用(会計年度任用)へと切り替わっていき、令和5年4月からは民間委託が全廃される見通し。“米川大二郎ブログ”より |
全部で190校ある都立高校のうち、学校図書館を民間委託している128校の契約が、来年度以降、赤い矢印のところから順次なくなります。令和5年(2023)4月1日以降は、委託校はゼロとなり、民間委託は全廃されることになりました。
2015年に東京労働局に偽装請負で是正指導されたり、委託業者が契約不履行を繰り返したりといった不祥事の責任を、ついに都教委が認めることとなり、その後始末を余儀なくされた結果がこれです。
公共図書館の世界では、2018年、茨城県守谷市が市立図書館の運営を直営に戻したという地域ニュースが全国を駆け巡りました。
それまでTRC図書館流通センターが指定管理者となって運営していた館で退職者が続出したことから、このままでは、専門知識を持った司書の養成が困難という理由で直営に戻したのです。
ありとあらゆる分野で急速に進む公務の民営化に急ブレーキがかかった事例として取り上げられたわけですが、それと比べても、
首都・東京の公立高校の図書館において、民間委託がすべて廃止される
というニュースは、とてつもなく大きな意味を持っているはずです。しかもその原因が不法行為や不祥事が頻発したことだったというのですから、ただごとではありません。
東京ローカルメディアなら、翌日の教育分野トップで扱ってもおかしくないようなニュースでした。
ところが、私が調べた限り、これまでどこのメディアもこの件に関しては、一行も報じていません。
いったい、どうしてでしょうか?
それは、公式には、藤田教育長の答弁内容が“翻訳”が必要なほどの「霞が関文学」ならぬ「西新宿文学」を駆使した、曖昧模糊とした表現に終始したからです。【※1】
藤田教育長は、この日、過去に、学校図書館の民間委託事業が、やらかしたことについて一切言及しておらず、あくまで「新指導要領の改定にともなって」「学校図書館をより一層活用するために」行った施策の一環として、委託から直接雇用(ただし、会計年度任用)に切り替えた
――という建前を述べているだけだからです。都政クラブの記者たちは、ほかの話題に眼が言ってしまったのか、この件を完全にスルーしてしまいました。【※1】
昨年9月に、都民ファーストの会所属の米川大二郎都議が、「平成27年のときのように、再び東京労働局の発注者指導が行われるようなことがあれば、業務の予算化は認められません」という一般質問が、まるでなにもなかったかのような扱いでした。
当ブログの読者のなかには
日向のヤロー、また大袈裟なこと書きやがって、だいたいツタヤ図書館のこともそうだけど、都立高校の学校図書館の件なんか、たいした事件でもないのに、騒ぎすぎなんだよ。そんなんどこでもやってることだろうよ
そう思われていた方もいたかもしれませんが、違うんです。東京都教育委員会という組織が、巧妙に隠していたことと、メディアの記者たちが労働法と、学校図書館運営に、あまりにも無知だったために起きた現象です。
それでも、不祥事乱発のカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するツタヤ図書館をひたすらもちあげるメディアをふだんみてきている者としたら、まぁ、そんなものかという感想なんですが。
そもそも2015年に、都立高校が偽装請負を東京労働局に認定されて、是正指導を受けた事実自体、東京都は公表しておらず、不祥事を隠蔽した格好になっていました。
それに関する当時の公文書を入手した筆者が、ビジネスジャーナルに初めて書いたのが2019年9月のこと。
東京都、都立高校図書館で“偽装請負”蔓延か…労働局が調査、ノウハウない事業者に委託
これで隠蔽されていた事件がようやく日の目をみたわけですが、運よく、この記事に注目していただいた米川都議が昨年9月に議会の一般質問で取り上げてくれて、そこから事態は、急展開しました。
しかし、米川都議の追及にもかかわらず、都教委のその後の動きは鈍く、一部直接雇用も併用するだけで、民間委託が大きく改善される見通しはまったく立ちませんでした。
さて、そうしたなかで、八面六臂の活躍をみせたのが、学校勤務の経験もあり、葛飾区議時代から学校図書館の整備に力を入れていた米川都議でした。
米川都議は、都議会で一般質問に立つ3か月以上の前から、この問題に取り組み、5000枚を超える公文書を入手して分析するなど、ジャーナリスト顔負けの調査を行うことで、都教委が言い逃れのできない決定的な違法の証拠をつかんでいたのです。
米川都議は、その「爆弾」を携えたまま、都教委や都財務局との交渉に臨んでいました。もし都教委が要求を突っぱねたなら、与党議員が、「爆弾発言」を都議会で再度破裂させていたところでした。
そのあたりの舞台裏については、近く、ビジネスジャーナルで米川都議のインタビューを発表する予定です。いまのところ、前編・中編・後編の全3回にわけて、リリースする計画で、現在、原稿の最後の詰めを行っているところです。
リリースまで、もうしばらくお待ちください。
よろしくお願いいたします。
↓6/11(金)に、リリースされました。
東京都・学校図書館の民間委託を廃止させた都議に聞く(1)…業務委託推進の波を覆せた理由
東京都・学校図書館の民間委託を廃止させた都議に聞く(2)…違法状態横行、単身で切り込む
東京都・学校図書館の民間委託を廃止させた都議に聞く(3)…民間委託加速の潮流に待った
【※1】3/23の都議会予算特別委員会で都民ファーストの会・森村都議
3月23日(火曜日) 予算特別委員会 しめくくり総括質疑
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/live/reg2021-1.html 1.19.30~
追記 ちなみに、民間委託している学校図書館は、最大手・TRC図書館流通センターが受託している分だけでも、2021年5月現在・32自治体842校もある。
【※1】↓3月23日 予算特別委員会 しめくくり総括質疑での藤田教育長答弁
森村都議)都立学校図書館のあり方についてお伺いします。現在、都立高校190校のうち128校の学校図書館では、業務委託により運営していると聞いています。
一方で、令和4年度から、高等学校において、新しい学習指導要領の実施が始まり、今回の改訂では、学校図書館を計画的に利用し、その機能の活用を図り、生徒の主体的、対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に活かすことが求められています。
高等学校の新学習指導要領が改訂され、学校図書館の役割が大きく変わろうとしている今、令和2年第三回都議会定例会における私たちの質問に対し、教育長から、「今後、学校図書館の活用の在り方について検討していく必要がある。」という旨の答弁がありました。自主性、主体性、問題解決力を伸ばす教育などで重要な役割を担う学校図書館の機能を最大限活用するため、学校図書館の運営方法を見直し、より一層の充実を図るべきであると考えますが、都教育委員会の検討状況を伺います。
藤田教育長答弁)高等学校の新学習指導要領が、令和4年度から年次進行で全面実施されることに伴い、各学校において学校図書館の機能を、より一層活用し、それぞれ特色ある教育活動に生かしていく必要がございます。
そのため、令和3年度は、都立高校10校に司書の資格を有する会計年度任用職員を図書館専門員として新たに配置いたします。その中で、各教科の日々の授業において、主体的・対話的な学びを深めるための教員との効果的な連携方法や具体的な運営手法などについての検証も行ってまいります。この検証の結果なども取り入れながら、新学習指導要領の趣旨を実現するための図書館運営の新たな体制整備に取り組んでまいります。
森村都議)ただ今、教育長から、来年度検証し、図書館運営の体制整備に取り組んでいくとの答弁がありましたが、新学習指導要領の実施は令和4年度からであり、早急に対策を講じていかなければなりません。
現在、業務が委託されている128校は、3年間の長期継続契約になっており、契約終期が今年度末、3年度末、4年度末と分かれていると聞いております。具体的にどのように取り組んでいくのか、都教委の見解をお伺いします。
藤田教育長答弁)今年度末に長期継続契約が終了いたします55校につきましては、図書館専門員を活用した新たな運営体制への早期移行に向けまして、来年度の契約を単年度の契約としてまいります。
また、契約期間中でございますその他の高校につきましても、契約期間が終了し次第、令和4年度及び令和5年度からの、新たな運営体制の本格実施を目指してまいります。あわせて、図書館専門員の活用に関する令和3年度の検証を踏まえ、図書館運営の充実を図るガイドラインを作成してまいります。こうした取組によりまして、各学校が図書館の機能をより一層発揮できるよう支援してまいります。
米川 大二郎 ブログ 都立学校図書館、再起動に向けて、第一歩を踏み出す 2021/5/2 より
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