こんにちは、日向です。
先週書きました 電話をガチャ切りする図書館受託企業 のつづきです。
先日、東京都立高校・学校図書館の運営業務を受託している企業三社に、「決算公告はどこでされているのか?」を直接を問い合わせしてみましたところ、
うち二社が「担当者がいないので回答できない」と回答し、もう一社が「そんなことにはこたらえれませんッ!」と、電話の途中でガチャ切りされました。
そこで、「担当者がいない」と回答した二社に、本日午後もう一度電話してみましたところ、また前回と同じく「担当者がいないので、回答できない」ということでした。
仕方なく、二社ともに、先日の用件をもう一度説明しまして、再度、担当の方に伝言をお願いして、こちらの連絡先をお伝えしました。ただし、本日は、そのうえで、最後にこう付け加えました。
もし、ご連絡いただけない場合は、回答拒否として扱わせていただきますので、よろしくお願いいたします。
ガチャ切りされた三社めにも、もう一度電話しようと思ったのですが、すでに「ガチャ切り」そのものが回答拒否の意思表示ですので、今回は、それ以上は、追及しないことにしました。
これ、何が問題なのか。
昔ながらの経営者はご存じないかもしれませんが、2005年の会社法改正によって、すべての株式会社は、決算公告を義務づけられています。
株式会社は、株主総会の終結後、決算データ(貸借対照表又はその要旨)を公告することが義務づけられていまして(会社法第440条第1項)、これを怠った場合は、行政罰として「100万円以下の過料に処す」と定められています。(会社法第976条第2号)
公告の方法は、一定の要件を満たせば自社のウェブサイトに掲載して行ってもいいですし、官報などに掲載するとしてる企業も多いようです。
なので、手広く公務を担うような会社さんでしたら、問い合わせがあれば、誠実に対応して、「いついつの官報に載せてますよ」と回答すればいいだけのことなんです。
「決算公告ってなんのこと?」「なんで、そんなことお前に教えないといけないの?」みたいな対応をされるのでしたら、たいへん恐縮ですが、公的なお仕事からは完全に身を引いて、自由に民間の世界でご活躍されるべきだと思います。
なにもやましいことはないよと、おっしゃるのでしたら、株式会社ではなく、合同会社、合資会社などの公開を義務付けられていない会社形態で事業を運営されるべきです。
なんで、私がこんなことを始めたかといいますと、
都立高校に限らず、学校図書館の運営業務を受託している企業のなかには、本業が清掃業だったり、ビル管理業だったり、事務派遣業だったり、「えっ、この会社が学校図書館を運営できるの?」と驚くような、異業種から参入している地場の中小企業が結構あります。
それらについて調べようと思ったら、自社サイトに掲載されている情報だけではいまいち実像がつかめず、少なくとも決算データなんかも開示していただかないと、どんな会社なのかが、わからないですよね。
私が問い合わせた三社については、おそらくどこも決算公告の義務は果たしていないものと推認されるわけですが、そうしますと、いまこの瞬間も、違法行為を続けているかもしれず、そういうコンプライアンス意識の希薄な企業が公務を担うのはいかがなものか、という話にも自然となってくるわけです。
で、この後、その点を、委託企業との契約事務を一手に担っている東京都財務局の担当部署に、こう聞いてみました。
都の業務の受託企業している企業は、法令で定められたルールを厳守するように、是正指導すべきではないのか?
すると、返ってきた答えは、こうでした。
受託企業が、法律違反を犯しているのだとしたら、その法律を管轄する役所の機関が、正式に違法と認定しないと、われわれは動けない
ほほうー、これはなかなか興味深い展開になってきました。
私なりに解釈しますと、この発言の意味するところは、
公務を委託している企業が違法行為を犯しても、監督官庁が違法と正式に認定しない限り、発注者である役所は、委託企業に一言も注意することすらできないと言っているんですね。
今回の決算公告については、契約企業の決算内容が東京都の開示対象になっていなかったことから、ついでといいますか、気軽な気持ちで始めたものでしたが、いきなり民間委託の核心部分にぶちあたってしまったんです。
「監督官庁が違法と認定しない限り、発注者が注意しない」については、既視感いっぱいといいますか、これまで何度も経験してきました。
たとえば、2015年に以下のような記事をリリースしています。
ツタヤ図書館だけじゃない!公共施設、民間委託のトンデモ実態 違法行為オンパレード
ということは、たとえば、公務の受託企業が残業代を払わなかったとか、違法な条件で職員を働かせたというようなケースでは、労基署がその企業に調査に入って違法認定を行ったうえに、是正指導までしていないと、職員が発注者である役所に、いいつけに行っても、まったく知らん顔されるわけです。
みなさんもご存じのように、労基署も含めた労働局なんてところは、少々の違反では是正指導なんかしてくれません。
都立高校の場合は、たまたま2015年の偽装請負のときには、どなたかが、これでもかというほど証拠書類一式を取り揃えて内部告発したおかげで、労働局としても「これ動かなかったら、労働法の根幹がないがしろにされる」というくらいの事案でしたが、通常のちょっとした違反くらいでは、まったく動いてくれないわけですよ。
それからしますと、今回の決算公告は法務省所管なので、違法認定となりますと、かなりハードルが高いように思います。
で、なにがいいたいかといいますと、これ本当でしたら
発注者が「ダメじゃない。こんなことしたら。ちゃんとやってよね」と迅速に指導をし、されたほうも「すんませんでした。今度から気を付けます」と始末書一枚出せば済むようなことなんですよ。(事実、契約通りの司書配置しなかった不履行事案では、都教委の指導センターが指導して始末書を出させている)
そのことによって、いわゆる「ガバナンス」といいますか、役所が、市民の意向を反映させるよう強大な権限を持って公務を委託した企業をコントロールできるはずですが、いちいち細かいことについても「監督官庁の違法認定がないと注意することすらできない」となりますと、受託企業のやりたい放題がまかり通ることになってしまいます。
一度受託に成功して、一定の経験さえ積めば、後は適当にその受託実績をアピールし続ければいいわけで、多少の違反なんかはまったく気にする必要もないということになってしまいますよね。
都立高校学校図書館の民間委託は、実際に、それに近い状態になっているのですが。
でも、まだこれが「委託契約」であるうちは、1年とか3年で不祥事を犯した業者は変えることはできますが、業務を切り分けしないで、施設運営まるごとを民間に任せる指定管理者制度なんかになりますと、どうなるでしょうか?
一度、任せてしまうと、最低でも5年間、一度更新しただけで10年間も一社に全てを委ねるわけですから、これはもう施設を人質に取られているようなものですね。
おまけに指定管理ですと、議会の承認も必要ですので、ある意味、政治案件の要素が色濃くなってくるわけで、このへんも、図書館の運営費がどうしたとか、貸出数がどうのこうのなんていう問題なんかよりもはるかに重要な問題になってます。
民間委託は、不正の温床になりかねない危うさ、言いかえれば、常に不祥事の不発弾を抱えていると言えるのではないかと思いました。
ツタヤ図書館のカルチュア・コンビニエンス・クラブの場合、消費者庁から虚偽広告で一億円の課徴金を課せられても、発注者である和歌山市や海老名市は、「違法行為を犯した子会社TSUTAYA(現蔦屋書店)は、CCCとは別人格なので」という理由で、お咎めなしとしました。
そのことによって、指定管理者は、
正式に違法認定されても、受託にはなんの影響もない
ことが証明されたのですから、これは、本当にやりたい放題になりますよね。
ということを改めて痛感した次第です。
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