こんにちは、日向です。
鎌倉市の市民団体が、「司書資格をもつ正職員の新規採用」を要望する陳情を議会に提出したとのニュースが話題になっていました。
結局、9/14の教育福祉常任委員会で否決されてしまい、本会議でも、おそらく不採択になるだろうとの観測が出ています。
否決になったひとつの理由としては、司書は将来AI(人工知能)に代替されるから、というもので、なんかどこかで聞いたことあるなと思っていたら、
一昨年の12月、 学校図書館で子どもの読書や学習を支える学校司書の配置増を求める国会決議案に、与野党で唯一、日本維新の会が「近い将来、司書の仕事は人工知能(AI)で代替可能になる」と反対し、臨時国会への提出が見送られていた事件がありました。
維新「司書はAIで代替可能」
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/569589/
司書に限らず、最近やたらと、何々の仕事はエーアイがとってかわるからいらなくなるとか、生き残れないとかいう話が出るようになってまして、
ただでさえ図書館の専門職である司書は非正規雇用ばかりで、条件が劣悪になる一方なのに、そういう時代の波に飲み込まれていくのかなと思った人も多いのではないのかと思いました。
もちろん、多少ものごとがわかる人でしたら、エーアイが図書館運営なんてできるわけがなく、できると思っている人は、カウンターでピッと貸出返却作業をするのが司書だと思っているからだと思います。
司書に限らず、コンビニでもスーパーでも、じゃあモノの受入はどうするのかということに、少し思いをはせれば、自動化はかなり困難であり、もしできるとしたら、その技術導入のためには莫大な費用がかかりますので、当面は、正規司書を採用してふつうに給与をはらうほうがはるかに安いだろうことは、少し考えればわかります。
ところで、そういう話題のなかで、昨年まで和歌山市局に配属されていた朝日新聞の藤野隆晃記者が、こんなツイートをされていましたので、少し引用させていただきます。
記者という仕事柄、図書館や司書さんにはお世話になります。
印象に残っていることがいくつかあって、一つは「和歌山とアヘン」をテーマに取材をしていた時のこと。
史料集めをする中で、和歌山県立図書館にアヘンの原料・ケシ関連の本や、日本のアヘン政策を扱う本がそろっていると気づきました→
ニッチなテーマです。にもかかわらず、地方の図書館でこんなにそろっているとはと驚きました。
(もちろん一部は国会図書館も利用)
ここからは推測ですが、司書さんの中に和歌山のケシ栽培のことを知っていて、資料を集めるようにしていたのでは?と思います→
・和歌山は有数のケシ栽培地
・郷土史として大事
という観点がないと、こんなニッチなテーマで本を入れないと思うんですよね。
地域の情報を頭に入れながら資料を集める。文にすると簡単ですが、なかなかできることではないでしょう。
司書さんの専門性を思い知った出来事でした→
和歌山の図書館で忘れてはいけないのが、和歌山市民図書館の移民資料室。移民送り出し県だった和歌山関連資料はもちろん、国内外の様々な資料がそろっています。
この資料を集めたのも司書さんたちでした。
国内でも有数の充実度です。
https://twitter.com/fujino_asahi/status/1438059829738700800 からつづくスレッドの引用
藤野記者は、昨年6月の新和歌山市民図書館グランドオープン直後に
変わる公立図書館、いいの? 司書半減…でも屋上テラス
と題された記事を書かれていたので、和歌山市の事情もよくご存じです。いま、市民に快適な居場所と人気の新・市民図書館が、本来、公共図書館が担うべき役割を放棄してしまうのではないのかという危機感を持たれているんだろうと思いました。
ところで、本日、メモとして書いておきたかった事実がひとつあります。
人を介して聞いた話なので、通常は、単なるウワサ話として扱う情報なんですが、かなり信頼のおける筋からの情報ですので、間違いないだろうと判断しましたので、ここに書いておきます。
元々は和歌山市が市駅前再開発を考えたとき、駅にとりあえず小さい図書館ができたら国の交付金が受けられる、というところから始まった。(市長周辺から出てきた?)
図書館職員は図書館が縮小されると聞いて危機感を持った。
貴重な書籍が捨てられると思い、県立図書館で預かってもらえるように頼んだが断られた。
何が驚いたかといいますと、2014年当初は、補助金のためだけに市駅前に「小さい図書館」をつくる予定だったということ。そうすると、50万冊近くある市民図書館の蔵書は、かなり廃棄しなければならず、なんとか県立図書館ででも引き受けてくれれば、生き延びれるけれど、それも断られたたということなんです。
私さんざん、これまでツタヤ図書館になるまでの内幕を書いてきましたけれど、こんな話はどこからも聞いたことがありませんでした。
おそらく和歌山市の図書館史に残る最大級のピンチだったと思います。関係者の方の尽力によって、「小さな図書館」ではなく、すべての蔵書をひきつげるだけの図書館にすることができ、なんとか最悪の事態は免れることになったわけですが、
お前はさんざん批判ばかり書いてきたけれど、中の人間はここまで残すのに、相当苦労したんだぞ!
そんな声が聞こえてくるようです。
しかしながら、新しい市民図書館は、ツタヤ図書館になって、これまでレポートしてきました通り、スタバと蔦屋書店のあるオシャレスペースとしての人気と、各種イベントで市民活動活発になる一方、本来の図書館機能は、驚くほど劣化しつつあるというのは、まぎれもない事実です。
で、心配しているのは、集客できる各種イベントは派手に広報して、力を入れますが、これまで和歌山市が積み上げてきた遺産、たとえば、移民資料館や有吉佐和子文庫のようなコーナーについては、CCCはほとんどアピールしません。それらは、コストばかりかかって、集客にはつながらないからでしょう。
かくして、藤野記者が県立図書館で得たような恩恵は、市民図書館では、得られなくなるだろうと思います。
そして、一度あることは、二度あると言います。
近い将来、移民資料館の資料などは、県立図書館で引きうけてくれませんかとお願いする日がくることもありえるのではないかと思います。
レコードや紙芝居のような、リバイバルで人気を呼びそうなものはフルに活用されますが、かつてCCCが他の図書館で廃棄しまくったビデオテープのソフトなどと同じような扱いがされる資料も今後はどんどん出てくるような気がします。
県立図書館と市立図書館があるのは、二重行政だから、どちらかひとつに統一して運営費を削減するべきとか、市立図書館は、健康や料理本だけで憩いの場にすればいいという声が大きくなるでしょう。
というわけで、和歌山市も、すんでのところで大量の資料が廃棄される危機に瀕していたという、知られていない事実を、ここに記録しておきます。
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