こんにちは、日向です。
先日お知らせしました超高層書架の中野東図書館についての記事が今朝、リリースされました。
中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架
タイミングとしては、一週間前に炎上してから、地元の方のブログ解説(中野非公式リポート)や他社のネットニュースがこの問題を取り上げましたので、なんでいまごろ後追いを?というやや間抜けな感じは否めないのですが、もちろん、その分、単に炎上したことを紹介するだけでなく、いろんな角度からこの問題をとらえています。
公式アカウントが、来年2月開館予定の図書館に設置された超高層書架の写真をツイートしたのが7日日曜のお昼頃。その直後からリツイートやリプライでコメントが次々とつくようになり、天井までみあげるようにそびえたつ超高層書架の存在が、8日月曜から10日水曜にかけて倍々ゲームで拡散されていきました。
その結果、11日には、子ども・教育政策課が急遽「中野東図書館の吹抜書架の取扱いと安全対策」として、区のサイドで以下のような対策を発表しました。
中野東図書館の吹抜書架の取扱いと安全対策
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/651500/d031606.html
安全対策
○展示物については、紙及び発泡スチロール等の素材で作成します。
○各階上層部分については、書架として認識可能なように本のダミーを設置します。こちらも紙及び発泡スチロール等の素材で作成し、固定します。
○吹抜書架向かいのフロア側については、落下防止ネットを設置します。
これ、ちょうど同じ日に、昼間たかしさんという方が
ネットで批判殺到、中野区図書館の「吹き抜け本棚」には「裏」があった。
https://news.careerconnection.jp/news/social/127160/
という記事をネットニュースに発表されて、これが結構話題を呼んでましたので、区は、急遽対策を講じて発表することになったんだろうと思います。
この記事のなかで、興味深いのは、担当課長がこう答えていることです。
「上のほうに本を置くことは考えていません。公共施設である以上、利用者の安全が第一です。高いところに本を置いたら危ないのは当たり前じゃないですか」
なんか、人をコケにした言い方じゃないですか? もともと本なんて置くとは一言の言ってないのに、みなさんが勝手に、妄想したんでしょう、大丈夫ですよ。重たい本なんかおきませんので。(ツイートでは「高い高い本棚」と明記)
というふうに聞こえますので。
で、私の記事のほうも、すでに9日の火曜日に電話で担当者からお話を聞いておりましたので、高層書架の裏からアクセスできるという釈明は聞いてました。
しかし私は、それを聞いても「なぁんだ、そうだったのか」とは思いませんでした。このとき、昼間さんの取材に答えた課長とは別の担当者は、本物の本は配架しないとは、断言しませんでした。
なので、記事中にもあるように「本を固定するの?」としつこく聞いてます。
とりあえず、裏から配置するとしても、バー1本で固定するだけなら、もし地震で本がズレて落ちたらキケンじゃあないですか?
すると
いろいろご意見をいただいているところなので、そこについては検討重ねているところ。
と逃げられました。
そして、11日に、なぜか「紙及び発泡スチロール等の素材で作られたダミーを置く」「落下防止ネットを設置」という安全対策が、とってつけたような安全対策が発表されたわけです。
で、私がいちばん知りたかったのは、
――この書架は誰のアイデアなのか?
ということでした。
BJ記事にあるように、回答は、こんなふうでした。
こちらの要望に基づいて、設計者が基本設計、実施設計をした。何度か折衝したと聞いている。基本設計の段階から吹き抜けは出ていない。2018年の途中から実施設計から変わった。
これも逃げてますね。発案者は、誰かは言わない。施主と設計者が折衝した結果、こうなったと。
さらに記事を少しさかのぼりますと、
「100日後に開館する~」との名称を記載しているのは区側の提案によるものではないかという指摘があることについても、区は、それを否定して、指定管理者と、お互いの意見交換の結果としているんです。
こうした一連の対応は、なにか問題がおきて批判された際に、責任の所在をうやむやにするために、役所がとる典型的な「責任逃れ」パターンと言えるわけですが、
ツタヤ図書館の自治体とは、やや異なるのは、指定管理者の影があまり出てこないところなんです。
民間側からいろいろな提案があって、それをもとに検討して決定したということであれば、ある程度そのプロセスというのがみえてくるはずなのに、中野区のケースでは、それがみえてきません。
となると、記事にも書きました図書館関係者の方のコメントが、なかなか説得力を持ってきます。
「設計者が、このような奇を衒ったものを自ら提案するとは思えません。図書館管轄部署は反対することもできず、これをどのように使うのかの計画すら、いまだにできていない状態になっています。ツイッターの公式アカウントについても、指定管理業者は問題を引き起こしかねないのは十分に分かっているはずで、自らの意思でトラブルを呼び込むことはしないはずです。それを行わせる力を持ち、自分にとって大いに得になると信じた人間が、全体の黒幕であると思います」
黒幕は、2018年11月に武雄市を視察した際に、「ツタヤ図書館に憧れていた」とFBに書き込んだ酒井区長なのか、まぁ、区長自ら指示していろいろやらせてるんだろうなと想像をたくましくするわけなんです。
2018年11月18日の酒井区長FBのコメント。ツイートした人がぶら下げていた画像より。詳細は以下を参照ください。 |
中野区の酒井区長が武雄市立図書館を視察。まさか…中野にツタヤ図書館を……?
さて、まだ解明されていないその意思決定プロセスを突き止めるために欠かせないのが、建築パースの存在です。
ツタヤ誘致の自治体では、だいたい基本設計が発表された際に、新図書館がどんなふうになるのかを示した完成予想図が発表されます。
また、TSUTAYAの本部・カルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者に選定された際にも、CCC提供のパースが新聞などに出てきます。
2017年春に発表された和歌山市民図書館の基本設計のパース。指定管理者にCCCが選定されるのは、この年の12月のことだった。 |
それが中野区では、地元の方がブログで開示請求された資料等をみる限りは、これまで一枚も出てきていないんようなんです。そこを今回聞いてみたら、区側も出してないと回答しています。
おかしくないですか? 当然、設計事務所は、役所への説明のためにパースは作成して、区長にもみせているはずなんです。
2017年の基本設計の段階では、まだ吹き抜けの存在も明らかになっていなかったとされていますので、そのへんのプロセスが、とんでもなくグレーなんですね。
少なくとも、2018年の実施設計の段階では、市民に公表されるべきものです。それをひた隠しにして、建物が竣工した後、小出しにアピールするネタとして、館内の写真をツイートしているのだとしたら、これは相当に秘密主義ですね。とてもオープンな区政とは言えないのではないのかと思います。
昨年の指定管理者選定時には、CCCは応募すらしてなかったと地元の方が指摘されていましたが、それをもってして、最初からCCCは関与してなかったと断定するのは早計だと思います。
当初は、CCC本体かどうかは別にして、CCCの息のかかったコンサルタントが計画にからんでいた可能性もまだ残っており、その段階で吹き抜けと超高層書架の青写真はあったのではないのかって、私は疑っています。
2018年に開業した周南市立徳山駅前図書館は、開館1年前のの2017年に9メートルの高層書架に中古の洋書をはりつける計画が表面化して、炎上しましたが、このときの最初の発火点が「高層書架にダミー本を152万円かけて設置する」ということが、委員会であきらかになったことでした。
中野区では、そういう新図書館の中身についての報告があまり詳しくなく、建築パースもなかったというのは、やはりなにか隠したかったのではないのかって、さんざんおかしなプロセスをみていると、そんな疑問も出てくるんです。
なので、もし可能であれば、地元の方には、設計事務所が区に提出した新図書館の図面に付属していたはずの建築パースを開示請求していただきたいと思いました。
それから、最後になりましたが、中野区で図書館行政に携われていたOBの方にも、話を聞いています。記事中では、専門家ならではの知見を披露していただいておりますので、なぜ図書館に高い書架を設置すべきではないのか、ということについての的確な回答になったのではと思います。
よろしくお願いいたします。
中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架
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