こんにちは、日向です。
東京・中野区の「100日後に開館する中野東図書館」のツイートが炎上しているようです。
ゆうに高さ10メートルはあると思われる超高層書架の写真つきで
(高所恐怖症のスタッフは見上げるだけでもドキドキです……
とツイートした(11月8日日曜日午後0時)のですから、燃えないわけがありません。
本は飾りか? 地震がきたらどうするの? ツタヤ図書館みたい
といったリプライが続々とつけられました。
役所の公式なのに、「100日後に死ぬワニ」をマネた「100日後に開館する中野東図書館」なるアカウント名にしているのも、油を注ぐひとつの要因になりました。
ツタヤとは関係ない話なので、しばらく静観しておりましたが、世間の反応がなぜか
ツタヤ図書館が悪い!
みたいな方向に流れていきましたので、私もおととい火曜日に役所と関係者に取材をして記事を書きました。
昨日編集部に送りましたので、おそらく修正や追加情報もいれたうえで、近日中にリリースになると思います。【※2021/11/15追記】今朝リリースされました。
中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架
ボツになることは絶対ないとまでは断言はできませんが、もし、なんらかの事情で公開できなかった場合には、その原稿は、後日ブログにアップするつもりです。
すでに地元の方がブログで、開示請求資料をもとに詳しく経緯を解説されていますので、いまさら後追い感はぬぐえませんが、拙稿では、いまだ解明されていないいくつかの疑問には答えることができたと自負していました(過去形に修正しました)。
リリースまで、いましばらくお待ちください。
と、ここまで書いたところで、「巨大本棚登場!ネットで炎上」みたいな切り口で、他社のネットニュースやテレ朝のニュースでも取り上げられるなど、もう抜かれっぱなしになりつつあります。まぁ、切り口が違いますし、拙稿では、とっておきの関係者インタビューを巻末につけていますのでいいんですけれど…。
記事で詳しくふれることができなかったことを挙げておきますと、今回の中野区の件は、ふたつのポイントがあるように思います。
まず第一に、カルチュア・コンビニエンス・クラブによるツタヤ図書館が、「パンドラの箱」をあけてしまったのではないのかということ。
すなわち、「賑わい創出」という、図書館機能とはなんの関係もない商業施設の価値観を前面押し出して、「稼げる図書館」みたいな志向が、われわれが感じているよりも、ずっと激しい流れになって、全国的に広がりつつあるではないのか、
あからさまにCCCのマネはしないまでも、日本全国どこの行政でも、あきらかに「凄い図書館」の絵柄を求めるようになっているのではないのかと感じます。
今回の中野区の炎上は、図書館の機能を犠牲にしてでも、派手な絵柄がほしいという施主もしくは、その意向を組んだ建築家の野心がありありとみてとれます。そして、その告知をカウントダウン方式で展開するというんですから呆れます。
話題になったツイートは、そういう「反知性主義」を非常にわかりやすく、なんのてらいもなく一枚の写真でどんと出したというのが、やはり大きかったと思います。
で、このような「見た目が9割」で激烈な反応が短期間に大量に出てくる現象は、「ツタヤ図書館スゴイ!」「ツタヤ図書館カッケー」と喜ぶ人が、新しいツタヤ図書館が登場するたびに、雨後のタケノコのように出てくるのと、ちょうど表裏をなしていて、
場合によっては、この超高層書架を批判している人と、ツタヤ図書館がオシャレで居心地がいいと絶賛している人は、一部重なるのかもしれないって思うんです。
一枚の写真がわかることって、多いようで少ないですし、撮影した人の意図によっても大きく変わってきますので、その事実をどちらからみるかによって、意見はまるで違ってくるというのは、改めて私などが指摘するまでもないことです。
なので、中野区はたまたま炎上しましたが、一枚の写真で人々の感情を揺さぶる「見世物図書館」は、これからも全国各地でつくられるのではないのかと思いました。
もうひとつ、忘れないうちに書いておきますと、東京・中野区は、ツタヤ自治体のように巨額の補助金めあてに新図書館を建設したわけではありません。
つまり、国の補助金をもらうために、来館者数や交流人口の増加の目標を定めて、なにがなんでもそれを達成する必要があるツタヤ自治体とは、根本的に事情が異なっています。
人口の多い東京23区内ですから、黙っていても入館者数は稼げ「賑わい創出」する必要はありません。
にもかかわらず、ほかではやらないような超高層書架を設置して注目を集めようとしているのです。
2018年にオープンした山口県周南市立徳山駅前図書館。開館1年前に、9メートルの高さの書架に中古の洋書を張り付ける計画をBJでスクープしたところ非難が殺到して、計画中止に追い込まれた その結果、地元アーチストの原案をもとにした本の壁紙に急遽変更してオープンを迎えた。施工を担当した船場は、自社サイトで、クライアントを周南市ではなく、CCCと明記し、地元アーチスト名も明記しない非礼な扱いをしている。 |
もう一点は、あらためて指定管理者制度の破壊力の凄さを、中野区はみせつけてくれました。
前の田中区長の時代に、中野区は8館一括(現在は2館廃止されて1館新設の7館)で、ひとつの指定管理者に運営を任せるようになりました。
驚くべきことに、中央館も指定管理です。
23区内で私が、いちばん邪悪に民間委託していると思う足立区ですら、中央だけは一部委託にとどまってます。そうしないと、完全にその自治体の組織のなかに図書館運営能力が失われるからでしょう。
それが中野区は、もう10年前から中央も含めて民間にぶん投げてしまっているんです。
しかも、通常は、一館ごとに指定管理者を事業者を募集して選定するのに、中野区は8館一括で募集して、その8館すべてを一社(ヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体)に任せてしまったというんですから、これは、とんでもなくおかしな話です。
当然、各館の館長さんは、指定管理者の契約社員ですから、全員非正規です。
関係者によれば、
7館プラス本館で、7館×7人プラス30人=79人・・・・・もっと多いと思いますが、この人件費を浮かそうとした
とのこと。
そうすると、どうなるかといいますと、かつてテレビ局が、自前で制作スタッフを抱えることを辞めて、すべて外部の制作会社に任せるようになってどうなったかといいますと、本体に人を育てるしくみが完全になくなってしまい、番組をよそから買ってきて流すだけの存在になってしまいました。
行政でこれを始めると、看板だけ掲げて、実務はすべて下請けに丸投げする存在になり下がってしまいます。
現場で働く人の賃金を下げて、昇給をなくし、やりがいを根こそぎ奪っていく。
それでは、行政に課せられたミッションを達成することなどできるはずがないと思うのは、果たして私だけでしょうか。
誰も、わがまちの図書館を、市民の社会教育の砦にしたいなどと考えるはずがなく、
中身カラッポでいいから、とにかく人気の的になるようなものをめざします。
かくして、元祖ツタヤ図書館の武雄市のように、市外から観光バスで見学客が大挙して押し寄せるという
運営会社と市長だけが賞賛されるものが現れるのですが、そうした手法がツタヤ自治体だけでなく、ほかの自治体もマネして取り入れるようになっているんだとしたら、
今回のような「巨大本棚登場!ネットで炎上」みたいなことが起きるのも、必然ではないのか。
そう思いました。
というところで、今回は、11月号の予告のみにて失礼します。よろしくお願いいたします。
【※2021/11/15追記】今朝リリースされました。
中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架
- 消えた建築パース へつづく
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2020年8月29日土曜日
- 宇部市の“暗黒行政”
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