~CCCにボラれていた丸亀市と延岡市~
こんにちは、日向です。
前回、マルタス黒塗り収支内訳書を読む(その2)までで、以下の事実をあきらかにしてきました。
(1)CCCが運営する市民交流活動センターである、丸亀市マルタスと延岡市エンクロスはどちらも年間運営費は、1億3000万円程度である
(2)どちらも、人件費や光熱水費、イベント経費、一般管理費など共通項目の支出額は、ほぼ同水準の額になっている
(3)市が直接支払う経費部分が大きい延岡エンクロスでは、人件費にも消費税を課することで、運営費総額を増やしている
これらの事実によって、あとからオープン(2021年3月)した丸亀市マルタスの運営費の積算は、延岡市エンクロスの運営費を根拠として行われているのではないか
――というのが私の推論です。
さらに言えば、2018年にオープンした延岡市エンクロスも、その事業費算定にあたっては、ほかのツタヤ図書館誘致自治体の事例、とりわけ2013年に、ツタヤ図書館の第1号として登場した佐賀県武雄市の武雄市図書館・歴史資料館をもとに行われているのではないのか。
ちなみに、武雄市の初年度、指定管理料は、1億1000万円で「直営時代よりも運営費は1000万円安くなった」とさかんに喧伝されていましたが、実際には、切り離された歴史資料館の分も入れて比較すると、3000万円増となっていたことがあとで判明しました。
1.図書館機能なければ費用は半減
なにが言いたいかといいますと、そもそもCCCを指定管理者に選定した自治体は、自分たちで予算を決めて、その範囲内で運営しようとしていません。CCCからの「これだけかかります」とされた一方的な提案をあまり詳しく吟味もせずに丸飲みしただけでした。
ですので、丸亀市マルタスにしろ、延岡市エンクロスにしろ、その運営費が適正かどうかを一度も検証することなく開館しています。それをちゃんと検証するするためには、ほかの自治体が設置している同種の施設と比較しなければなりません。
どちらの施設もCCCが他の自治体で運営している図書館ではありません。あくまでもその主たる機能は、市民センター、つまり公民館です。
それがたびたび、図書館と混同されるのは、図書閲覧コーナーを設置していて、雰囲気だけはカフェのある図書館を演出しているからです。
マルタスは、館内に6000冊、エンクロスも4万冊もの閲覧図書が自由に読めるようになっているというのが、売りになっていますが、もちろん図書館ではありませんので、どちらも貸出はしていません。エンクロスにいたっては、4万冊のうち、1万5000冊が蔦屋書店の販売本と公表されていますので、純粋に市民が自由にできる閲覧図書は2万5000冊しかありません。
通常、公共図書館と名前のつくところならば、小さいいところでも5万~10万冊くらいは蔵書しているものです。2020年6月にツタヤ図書館として開館した和歌山市民図書館は、郷土資料を除いて43万冊(令和2年度図書館要覧)あります。
それと比べると、“マルタス・エンクロス二館”の閲覧図書数は、微々たるものにすぎず、貸出機能もないので、喫茶室に暇つぶしの本・雑誌が置かれている施設と大差はないとみたほうが的確ではないかと思います。
(※開館当時、閲覧図書に、古いビジネス書が多かったとの地元市民の証言があり、もしかしたら2015年9月に武雄市で発覚した中古本購入と似たようなことが、延岡市でも行われていたのではとの疑惑が浮上。エンクロスが開館した2018年まで、福岡市の公民館にTSUTAYAの廃棄本を配架する事業(公民館に“TSUTAYA廃棄本”300冊並べた福岡市の失敗)が行われており、それと連携していた可能性もある)
貸出など図書館の基本機能がなければ、その運営費は大きく下がるはず。閲覧図書については、最低限の装備(ブックカバー)くらいはするかもしれませんが、選書、分類、ラベルやICタグ等の装備、配架、除籍などの作業もかなりの部分が簡略化でき、TRCに払うMARK書誌情報も不要でしょう。とんでもなくカネのかかる図書館システムも不要でしょう。ちなみに、和歌山市は、新図書館に新しいシステムを導入するのに3億円もの費用がかかりました。
もちろんスタッフの数も図書館機能がなければ、より少なくて済むはずですので、主な機能が市民センターでしたら、図書館と比べたら、かかる費用は大きく下がるはずなのです。
2.市民センター全国平均の3.5倍の運営費
そこで、下の表をみてください。
官設民営型市民活動支援センターの運営に関するアンケート調査報告書 より
http://osakavol.org/volo/volo1810kansetsuminei.pdf
https://web.archive.org/web/20210322231047/http://osakavol.org/volo/volo1810kansetsuminei.pdf
市民活動支援センターの指定管理料の平均が3856万円とあります。
年間1億3000万円かかるマルタス・エンクロスの運営費は、市民センター平均の3.5倍にもなるわけです。
これ、今年4月以降、延岡市が意見募集したエンクロス運営見直しについて、反対派から「運営費は高くない」「費用削減するな」との声が上がったときに、
ツタヤ図書館ウォッチャーの方がスッと、snsにこのデータを出してくれていました。
これをみれば、いかに「ツタヤ図書館もどき」がバカ高い費用がかかっているかは一目瞭然なんですが、それでも見直し反対派といいますか、CCC応援団からは、
エンクロスは、ふつうの市民センターと違って、スターバックスと蔦屋書店が代官山風の都会的センスのある空間を演出していることに高い価値がある。
だから費用が高くても仕方ないんだ。
そう主張されていました。市が当初の見直し案で、提示した運営費3割カットなんてとんでもないという論調だったんです。
いやいや、高くても仕方ないどころか、もしスタバが多くの来場者を集めて活況を呈しているとしたら、むしろ費用は安くならないとおかしいんですよ。
なぜならば、駅利用者も含めて初年度128万人もの人が通過する一等地なら、当然、延岡市がCCCからもらう賃料収入もそれなりに高い額になるはずからです。
そうした民間活力を導入することで、市民負担が大きく減るのが、本来の官民連携事業のはずなんです。
ところが、現実にCCC運営施設は、激安に優遇した賃料収入しか得られておりません(延岡市は月25万円、年間300万円、丸亀市は月12万円、年間148万円)。
スターバツクスと蔦屋書店が併設されていることによって、施設の価値が高まると解釈することは個人の自由ですが、
CCCが武雄市の頃から喧伝しているのは、官民連携によって、民間のノウハウと経営効率を導入することですから、
その原則に則れば、自治体の収入は増えて、費用は減らないとおかしいんです。なのに店舗賃料は激安優遇して費用は激高。
ここのところが、延岡市のCCC応援団が、指定管理者制度をまったく理解していない点だと思います。
3.突如出てきた市民活動サポートの価値
次に、マルタスとエンクロスのツタヤ図書館もどきが、他の自治体のそれよりも費用がかかる理由として、ふつうの市民センター・公民館よりも
スタッフが市民活動へサポート手厚く行っている
点を挙げられます。
実は、これ、エンクロスの見直しについてのパブリックコメント募集が始まった今年3月末以降に、突然出てきた意見なんですよ。
それまでは、エンクロスの魅力といえば、都会的センス溢れるスターバックスと4万冊の図書コーナーにスポットがあたっていて、
見直し反対を表明した市民のほとんどが、おしゃれなスタバをなくすのは反対!という一点のみに集中していて、市民活動のサポートが手薄になるので反対なんていう意見は、あまりみかけませんでした。
それがある時期から、まるで誰かの反対意見のお手本をコピーしたかのような意見がsnsで、突然目立つようになり、
ついには、地元商工会や反市長派議員などCCC応援団が議会への請願や申入れをして、市民活動のサポートをなくすなという声が盛り上がっていきました。
CCC応援団が請願を議会に提出したときの、地元メディアの記事を引用してみましょう。
請願書では、「エンクロス設立には多くの市民が長期間にわたって専門家と議論を交わしており、市民の思いをそのまま形にした施設として整備、運営されている」と強調。
指定管理料の見直しのため、大幅に人件費を削減することに対し「指定管理者の従業員の人件費を県の平均賃金以下に減額するのは、若者の定住に促進すべき施策に反する」。
「従業員のサポートがあって多くの市民活動などが開催され、活動者自身にまちづくりに対する意識が醸成されている。見直しは市にとっても損失になる」などと指摘。
夕刊デイリーWeb エンクロス-見直し方針案に反対、継続を 2022年05月24日
http://www.yukan-daily.co.jp/news.php?id=98678
いやいや、CCCがスタッフに払ってる賃金が最低賃金ギリギリなのに、それは容認しといて、なにをいまさら「平均賃金以下に減額」とかいってるんでしょうか。
「従業員のサポートがあって多くの市民活動などが開催され、活動者自身にまちづくりに対する意識が醸成」にいたっては、違和感しかありません。
本当に、CCCって市民活動を支援する業務を長年経験してきて、その専門スタッフも配置していたの?って、驚きました。
同社は、2018年に延岡市ではじめて、図書館ではない市民センターを一館受託しただけで、まだ4年しかたってません。
書店や図書館で開催する独自のイベントなどについては、確かに同社はプロ中のプロですから、全国の店舗での経験やノウハウは豊富にあるのでしょうけれど、市民活動の中間支援に関しては、ゼロからのスタートだったはず。
そもそも市民活動というのは、地元の人が市内各地の公民館などで、長年にわたって地道に続けてきて活発になるもので、ヨソからきた職員が相談に乗るとか、手厚い支援をしたからといって、すぐになにか成果が表れるものではありません。
延岡市や丸亀市で、市民活動が活発に行われているのだとしたら、それは地元の人の取り組みが素晴らしいのであって、センターのスタッフはただの黒子です。
専任のスタッフが常時、市民の相談にのって市民活動を支えているなんて、ほんとうかなぁと思いました。
4.CCC癒着勢力が捏造した市民の声
市営の体育館やグランドをイメージすると、わかりやすいと思います。
もしテニスが活発だとしたら、それは、地域に根付いた市民サークルの伝統があるからで、運営事務のスタッフが支援したり指導したりした成果ですか?
コーチの派遣でもしますか? 大きなお世話ですよね。また特定の競技・種目や施設だけに予算が集中したりすると、もっと市内のほかの施設にまんべんなく予算を振り向けろといわれかねません。
ここで、市民活動について、延岡市民の方から教えていただいたデータを紹介しましょう。
エンクロスを来館者の構成
①市民活動 2021年度 延べ 6940名(273回)
②エンクロスの自主活動 延べ 5375名(550回)
③エンクロスで勉強する学生
④スタバの利用者
⑤駐車場の利用者
(エンクロス内で2時間無料処理)
⑥その他
現在、入館者が年間約100万人と言われていますので、市民活動が延べ12000人なので複数回参加も考慮すると入館者の1%未満。
市民の1%はおろか、入館者の1%にも未たない市民活動を熱心にする人のために、ほかの自体同種施設の何倍もの費用をかけろと、CCC応援団の人たちは要求しているのですから、まったくもっておかしな話です。
これ、特定の宗教団体の意を受けた勢力が政府中枢に入り込んで、国民の意見とはまるで違った方向に政策を誘導している疑惑を彷彿とさせます。
CCCと癒着した市民団体や議員、商工会などが、どこにも存在しない世論を捏造して、市長にCCC優遇を強要しているかのようにみえてしまうのです。
5.運営見直しの第一歩は、情報公開から
そうした癒着勢力に屈することなく、延岡市の読谷山市長は、
CCCとの5年契約が来年3月で満期を迎えるにあたって、来年4月以降の運営体制を根本から見直しました。
これまでは、CCCから提案された予算をただ丸飲みしただけでしたが、今回、施設の機能や業務内容を見直すことで、
ようやく行政サイドが主導する形で運営予算を編成し、それをもとに次期指定管理者を公募で選定することにしたことで、正常化への道程をあゆみ始めたと言えるでしょう。
その見直しを進めるにあたっては、これまで市民にはまったく知らされていなかった運営費の内訳を公開したことが大きな一歩になったと思います。
内訳がわからなければ、安いのか高いのかを判断できません。
さらには、市内の他の施設や、他の自治体における同種の施設の運営費などとの比較してみれば、
CCCによるツタヤ館がいかに高コスト構造であり、そのクセ市民のニーズを十分に満足させるものではない
ことが浮き彫りになるはずです。
全面黒塗りだったマルタスにおける収支の内訳が全面開示された丸亀市も、エンクロスと同じように見直しを進めていける素地が整ったのではないかと思います。
もちろん、市長や議員が変わらなければ、これまで通りCCCの要求を丸飲みするだけかもしれませんけれど、
少なくとも、いまも一部の議員さんたちの間で言われている
丸亀市マルタスの運営費はほかと比べても圧倒的に安い
というデマを否定することが、これまでよりもはるかに容易になったのは間違いないと思います。
これからも引き続き両施設の動きをウォッチしていきたいと思いますので、地元の皆さまは、なにかありましたら、ぜひ情報をご提供ください。
よろしくお願いいたします。
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