2022年8月13日土曜日

マルタス黒塗の収支内訳書を読む（その1）

 ～ピンハネも許されている指定管理料～


こんにちは、日向です。



市民による審査請求の結果、ほぼ全面黒塗りだった丸亀市マルタスの運営費内訳が出てきた件、（マルタス審査請求の答申全文　参照）


肝心の開示文書のポイントを整理しておきたいと思います。



1.人件費、委託費、需用費で全体の8割超を占める



下の表をみてください。開示文書の2021年度分の金額を検証するために、書面画像からテキストを打ち直してみました。（※1）


■丸亀市マルタス令和３年度の管理運営経費 






まず、収入のほうからみていきますと、

指定管理料が1億2,970万円、多目的ホールなどの利用料が430万円となっています。


施設の利用料も指定管理者の収入にしていいよということで、これに指定管理料を合わせた1億3400万円の収入の範囲内で、マルタスを運営してくださいねという契約になっているわけです。



ここで注目したいのが収入合計額。延岡市エンクロスの初年度（2018年度）指定管理料＋運営費が1億3500万円でしたので、マルタスは、それにほぼピタリと合わせているといえそうです。


次に、支出のほうをみていきますと、いちばん大きいのが、やはり人件費で7,372万円。運営費の半額近くが人件費を占めていることがわかります。


次いで2,140万円の委託費。こちらは、“清掃、設備保守点検委託料”となっていて、施設警備なども含めて再委託されている業務に関する費用のようです。


それにつづく需用費は、電気代や水道代の光熱水費、消耗品費、印刷製本費などで1,630万円。人件費、委託費、需用費の3つの科目で、運営費全体のだいたい8割とちょっとを占めています。残りの報償費（イベント講師料）140万円 役務費（通信運搬費）170万円、使用料及び賃借料（事務機器リース料等）120万円の三つで430万円を足しますと1億1,572万円。








ここまでが、マルタスの運営にかかわる実費です。じゃあ、残りの2000万円はなんなの？というふうにみていきますと、


それが一般管理費と消費税でした。


一般管理費とは、本社経費のこと。いわゆる間接費のことですね。これが1,280万円。エンクロスの収支をみていきますと、この一般管理費は、運営費の何パーセントとあらかじめ決まった率をかけているようです。


マルタスの場合、事業費総額から逆算してみると、11.6％であることが判明。それに消費税も10％が548万円加算されて、最終的に収入と同額の1億円3,400万円の支出ということになっていました。





（※1）なお、今回開示された文書のなかには、2020年度分（令和2年度）の収支内訳もありますが、ややこしくなるので、こちらはとりあえず検証は後回しにします（マルタスは、2021年3月22日オープンですので、2020年度分は、開館日から3月31日までの10分日間の金額かと思ったら、関係者によれば、コレなぜか2月～3月の2カ月分だそうです）



2.ピンハネしたら利益になる構造


ここまででみていくと、


あれっ、CCCは、こんなのだったら、ぜんぜん儲からないじゃん


そう思われた方も多いかもしれません。


確かに、費用だけでギチギチで、利益と呼べるものは、一般管理費くらいしかありません。もちろん、これとは別に、激安で施設内に借りて営業しているスターバックスと物販店舗ではガッチリ儲けているはずですが、そちらは純粋に民業部分での数字として公表の対象にはなっておりませんので、この書面からはわかりません。


そこで、注目したいのは、なにかといいますと、


これらの経費は、実際にこれだけ本当にかかった額ではないという点です。


この収支の内訳というのは、


積算するとだいたいこんだけの費用かかりますから、指定管理料は年間1億2,970万円になります、という内訳を明示しているにすぎないんですね。


たとえば、人件費が実際には7300万円もかかっておらず、5000万円だったとしても、決算後に2300万円返さなくてもいいんです。


2017年にCCC運営の市立図書館をオープンしました岡山県高梁市では、CCCサイドからの提案書では、合計35人のスタッフが必要となっていて、その人件費8500万円と見積もられていました。（この人件費を元に、高梁市図書館の年間の指定管理料は、1億6000万円になっていたものと思われる）



2016年にCCCが提出した『高梁市提案書』より




ところが、地元関係者によれば、実際に働いているのは、30人もいないそうです。加えてCCCに委託されている観光案内所も、次々とスタッフが退職していったため、所定の人員を補給できない状態だそうです。それにもかかわらず、指定管理料は減額されることもなく支払われています。


また、2016年にCCC運営でオープンした宮城県多賀城市では、初代館長が退職後、半年以上も館長空席のままだったため、地元市民団体からその分の人件費返還の監査請求が出されましたが、この請求は、監査委員によって却下されました。実質的には、ピンハネが行われていて、役所もそれを容認しているということですね。




つまり、指定管理者制度の基本的なしくみとして、経営努力をして、当初積算した費用よりも安くできれば、その分は、指定管理者の利益にしてもいいというふうになっているわけなんです。


ただし例外なのが、電気代などの光熱水費。丸亀市の地元地元関係者によれば、令和3年度については、固定で決まった額を超えた分は、あとから追加で請求されたとのこと。（初年度と2年目の平均を出して、3年目となる令和5年度から固定になる予定）




3.エンクロスより1000平米広いマルタスが同額



さて、そのことを念頭においてみていきますと、CCCの利益は、本社経費として請求されている一般管理費だけしかないようにみえるけれども、実は、これらの経費のそこかしこに利益は潜んでいるわけです。


で、どうやら、その積算根拠というのが、役所が作成したものではなく、指定管理者、つまりCCCサイドから出てきたものだということです。


ということは、運営経費は、CCCの言い値という側面がおおいにあるわけで、延岡市でエンクロスの運営費見直しが行われたように、丸亀市でも当然、これから見直しが行われないとおかしいわけです。



そのための突破口になりそうなのが、延岡市エンクロスとの収支内訳比較です。


下をみてください。これがエンクロスとマルタスの収支比較です。



黄色地の部分がマルタスとエンクロスが同じ水準の科目。マルタスの光熱水費は、公開された資料には出ておらず関係者からの情報をもとにした。



まず、人件費は、マルタス7,372万円、エンクロス7,241万円とほぼ同水準。イベント経費・講師料も、マルタス140万円に対してエンクロス105万円、「需用費」のなかに含まれていた光熱水費もマルタス1200万円、エンクロス1178万円とこちらもほぼ同水準でした。


金額に開きのあるほかの科目は、対象や範囲が異なっていて、単純比較できないようになってはいましたが、同じ内容がひとくくりにされた項目のについては、似たような金額でした。


ちなみに、延べ床面積は、丸亀マルタス2,691.9 ㎡に対して延岡エンクロス1,659.54㎡と、マルタスのほうが約1000平米も広いのに、基本的な科目がほぼ同水準というのは、しっくりいきません。


長くなりましたので、このつづきは、別のエントリーを立てて、そちらに書きます。


マルタス黒塗り収支内訳書を読む（その2）へつづく


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