2020年10月8日木曜日

宇部市民の怒り


 

 月1300万円もらうんじゃあなくて、払うんですよ。宇部市がツタヤに。そんなバカな話あります?
 

「憤懣やるかたない」とは、まさにこういうときに使う言葉なんでしょう。


山口県宇部市で、百貨店・井筒屋が一昨年撤退したビルに“ツタヤ図書館もどき“(トキスマ賑わい交流館)を設置する計画について、少し前に、話をしてくれたある宇部市民の怒りの声です。



TSUTAYAの本社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が宇部市と連携協定を6月に締結。それによって作成された計画の中身が次第にあきらかになるにつれて、その計画案がいかにおかしいかに気づいて、反発する市民が出てきました。


トキスマ賑わい交流館に設置するブックカフェは、このまま話が進めば、CCCが直営するスターバックスのライセンス店舗と代官山風・蔦屋書店が入ってくることが予想されます。(指定管理者の選定で突然ライバルが現れて、CCCと火花を散らす事態になるのは考えにくい)


宇部市にも、オシャレなスタバと代官山風蔦屋書店がきてくれたら、百貨店撤退あとのにぎわい創出にはもってこい。ビルを井筒屋から買い取った市もテナント料が入るので、もう万々歳。


この計画を最初に聞いたとき、誰もがそう思ったはずです。


ところが、宇部市は、出店者からテナントの家賃をもらう一方で、同施設には、子育てプラザや「まちなか図書館」(本の閲覧のみで貸出しない図書館もどき)といった公共部門も入るため、その運営を委託する企業に指定管理料を払わねばなりません。


それが年間約1億9000万円(別にエレベータの維持費用が約2000万円かかるため運営費総額は2億1000万円)。管理運営を受託するのは、これまでのパターンからいえば、当然、連携協定を締結したCCCになるのは、火を見るよりも明らか。


市がもらうテナント料は、全館で合計約3000万円(スタバと蔦屋書店が負担するのはおそらく半額以下)見込まれていますから、差し引き1億円6000万円、月にすると1300万円も税金が出ていくわけです。


市民からすれば、宇部市が建物を整備しても、スタバと代官山風蔦屋書店がきてくれて、テナント収入になるのならいいんですが、そのために多額の税金を投入するとなると、話はまるで違ってきます。


整備費29億円、運営費年1.9億円とされているが、駐車場の整備費も合わせると整備費は30億円オーバーで、管理費もエレベーターの維持費を合わせると2億円をこえる。





とりわけ、近隣で商売している人にとっては、築43年のボロビルを30億もかけて市が整備してあげたあげく、そこに出店する企業に毎月1300万円もあげるなんて、到底考えられないことなのでしょう。


もちろん、民業であるテナントとは別に、公共施設の運営費としてある程度の費用がかかるのは仕方のないことではあります。


しかし、それにしても月1300万円も税金を投入するなんて、ありえないという気持ちになるのも、よくわかるような気がします。



ここで気づくのは、これまで延岡市を除いて、CCCが受託した公共図書館の場合、海老名でも多賀城でも年間3億円もの指定管理料がかかっても、賛成派の議員さんたちは、こう思っていたことでした。


人が多く集まる新しい公共図書館を運営するんだから、ある程度、費用は高くてもしょうがないよね


ところが、宇部市の場合、公共図書館は別にあって、それにはCCCは一切関与しません。


トキスマ賑わい交流館では、「まちかど図書館」と名付けたオマケ程度の本の閲覧コーナーがあるだけです。あとは子育てプラザのような市民が集まる空間を管理するだけで、CCCのノウハウを使って設置するのは、スターバックスと代官山風蔦屋書店です。


これらは、すべて民業なので、宇部市民としたら、CCCさんが来て自前でハコモノを整備してくれたら、それでいいわけです。


現実に、CCCによる代官山風の店舗であるT-siteは、大阪府枚方市をはじめ、CCCが全額自己負担で投資して全国につくられています。


ところが、しつこいようですが宇部市では、役所がハコモノを30億で整備して、毎月その民業に1300万円も払うことになるわけです。


意味がわからない


と言われる、ゆえんがそこにあります。




これ、実はツタヤ図書館すべてに共通する話です。


CCCが運営する図書館は、どこも一階の一等地にツタバ(スターバックスと蔦屋書店)を配置して、そこの借景として、知的な雰囲気を醸し出すための図書館がオマケでくっついているような施設です。オシャレ空間と、市民が喜ぶのは、決して図書館部分ではありません。


なので、宇部市に限らず、武雄市、海老名市、多賀城市、高梁市、周南市、延岡市では、


CCCに代官山蔦屋書店風のオシャレ店舗を出してもらうために、年間何億円もの税金を投入しているってことになります。単なる一企業への利益供与ですね。


それでも市の施設ですから、地元メディアでも、市の広報でも、無料で宣伝してくれます。指定管理者となったCCCは、市の公認で市民にTカードをつくらせて、ポイントビジネスなんかもやりたい放題できます。


図書館の場合、その運営実務を担ってくれるのはありがたいのかもしれませんけれど、その代わり、地域の郷土資料を捨てられそうになったり、大量の古本を入れられたり、わけのわからない独自分類に替えられたりするかもしれません。もしそうなったら、長年先達たちが大切に育んでこられた地域文化が被る直接の被害は甚大です。


宇部市では、かろうじて、CCCの基本計画による施設条例を否決しましたけれど、今後、もしこれが通って正式にCCCを指定管理者に選定しますと、過去のツタヤ図書館と同じように、巨額の税金を使った一民間企業への利益供与になってしまうでしょう。


なので、もし宇部市と同様の計画がもちあがっている自治体の人がいたら、声を大にしてこう言いたいですね。


ツタヤ図書館やツタヤ公民館ではなく、CCCの全額自己負担で、T-siteにきてもらってください。


そうすれば、きっと市民も満足するでしょう。


【参考記事】

巨額税金投入の“ツタヤ図書館もどき”、不祥事続出のCCCを「優れた事業者」判定の怪










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