こんにちは、日向です。
なにをしても文句ひとつ言ってこない相手に対しては、トコトンなめてかかるものなのかなぁ――。
ふだんの人間関係のことではなく、ビジネス、それも、自治体相手に社会教育・学術・文化にかかわる仕事をしている企業が、そういうことを平然とやってくるんだというのが、ツタヤ図書館問題にかかわるようになってから、知見を深めたことのひとつです。
本日は、図書館利用の個人情報の扱いについてです。
下をみてください。CCCのサイトで、4/1から、図書館でもTカード利用に関する規約が改定されていました。
https://www.cccmkhd.co.jp/privacy/member/ |
ウォッチャーの方が、こういう細かい改定などについても、変更があるたびにsnsで教えてくれるので、ふだんなら、多少あくどいことしてても、
ふーん、またそういうことしてるんだ、しょうがないなぁ
くらいの感想でスルーするところですが、今回は、
あれれっ、それは、さすがにマズイでしょう、まさか、そんなことする?
というような驚きがありまして、いい加減、しつこい、いつまでこの問題にかかわっているんだと思われるのも嫌なので、しばらくは大人しくしておこうと思っていたのもつかの間、またこうして黙っておれない事件が起きてしまいました。
私が、注目した規約は、和歌山市の以下の文言です。
Tカードでの和歌山市民図書館利用に関する規約
第3条(個人情報の取り扱い)
1.MKHDは、ID紐付登録を行い、管理する目的のために、図書館からTカード番号及びID紐付登録の申込年月日のみ取得します。
https://www.cccmkhd.co.jp/privacy/member/agreement-wakayamaciviclibrary/ |
MKHD? 主語がカルチュア・コンビニエンス・クラブではないんです。いつのまにか、CCCの子会社である「CCCMKホールディングス株式会社」に変わっていました。(ちなみに、海老名市などは、依然として、主語はCCC・自治体となっているものの、“ID紐付会員の図書館利用情報のうち、Tカードを提示して図書館を利用した会員のTカード番号及びID紐付登録の申込年月日のみ、ID紐付登録を管理する目的でMKHDに対し提供します”と、新たに提供先を明示している)
現在、全国で7つあるツタヤ図書館のうち、昨年CCC運営として新装開館した熊本県宇城市(Tカードは採用せず、LINEで貸出を試行)を除いたほかの6館では、本の貸出にTカードを使えるようになっています。それを利用しますと、当然、図書館の外へ利用者の情報を送信することになってしまうことを、かねてよりツタヤ図書館の大きなデメリットのひとつとして指摘されていました。
図書館界には、みなさんご存じのように
図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない
という大原則があります。戦時中の思想統制に図書館が利用された苦い経験を教訓にしたもので、明文化された法律ではないですが、利用者がいつどんな本を借りたかという個人情報は一切、外部に提供しないという綱領は、いまも図書館界で、何より優先されるものとして広く知られています。
自動貸出機についての補足説明 を参照
この大原則が、図書館の外部に利用データを送信するツタヤ図書館では、あやうくなっているんです。
とりわけ、元祖の佐賀県武雄市と岡山県高梁市については、Tカードでセルフ貸出機を利用して本の貸出をしますと、Tポイントがつく(1日3ポイント)という特典が用意されていたことから、運営するCCCだけでなく、Tポイントを運営管理するCCCの関連企業(Tポイント・ジャパン)に、利用者データが送信されることをCCC自ら認めています。
2016年高梁市提案書より。矢印が今回、図書館利用データを送信されるMKHDが担っている部分。 |
これ、常識で考えたら完全にアウトなんです。
さすがに貸出しした本のタイトルなど貸出情報までは送信されていないようですが、いつ誰が利用したのかなどの基本データは関連会社に送られていて、それらを蓄積されたうえで、マーケティング等に利用されていることは、CCC自ら認めています。
今回問題になったのは、このTポイントの会員情報を取得管理していたのがこれまでCCC本体だったのが、その行為をTポイントを管理するCCCの関連企業であるMKHD(昨年10月にTポイント・ジャパンと、CCCマーケティングが統合されてできた関連会社)が担うように、いつのまにかなっていたことです。
そうしますと、本を借りてもTポイントがつかない、武雄市と高梁市以外のツタヤ図書館の自治体でも、Tカードで本を借りるたびに、Tポイントを管理・運営する企業に、図書館利用の事実を送信することになってしまうことを意味します。
武雄市と、高梁市では、セルフ貸出を利用するとTポイントが付与されるメリットがある半面、図書館利用のデータを外部に送信されてしまうというデメリットがあったわけなんですが、この新しい規約が適用されますと、ほかのツタヤ図書館でも、Tカードを使って本を貸りただけで、その利用データがCCCの外部に流出しまうことになるわけです。ポイントは一切つかないのに。
しくみがややこしいので、なかなかこの危険性が伝わりにくいんですが、問題なのは、こういう改定がルールどおりに行なわれていないことなんです。
下をみてください。2022年3月31日までの、和歌山市の規約現物がみつからないので、とりあえず2020年の規約(この部分は変更なし)を以下に引用しますと、
こうなっています。
(こちらにありました→https://web.archive.org/web/20230331031516/https://www.ccc.co.jp/customer_management/member/agreement-wakayamaciviclibrary/)
第6条(規約の改訂)CCCは、一定の予告期間をおいてホームページまたは関連サービスサイトにおいて変更後の本規約の内容を周知(※)することにより、いつでも本規約の内容を変更することができるものとし、予告期間経過後は、変更後の本規約の内容が適用されるものとします。
改定するためには、事前にいついつからこうなりますよと予告したうえでないと有効にはならないはずなんですが、私が調べて限りでは、CCCが一定期間、そのような周知徹底をはかった形跡はみあたりませんでした。
【24時05分追記】(2023.02.28付けで、CCCは、“T会員データベース移管およびT会員規約等の改訂のお知らせ”をしており、2023.03.30付で“[追加]T会員データベース移管および規約の改訂のお知らせ”として、Tカードでの図書館利用に関する規約についての変更もしていたとのご指摘をいただきました)
※ しゅうち【周知】とは「広く人の間に知れ渡ること」なので、2日前になって、適用される図書館ではない自社サイトで告知しても、それは“周知すること”にはならない。
こんな重要なことをダマテンでやったの?
そう驚きますけれど、考えてみたら、CCCは、いつもそんな感じです。
2017年には岡山県高梁市で、市の担当部署の許可も得ずに、Tポイント付与することを敢行した「Tポイント騙し討ち事件」は、まだ記憶に新しいところです。
一方の自治体サイドの対応も、どこも本当に酷いもので、CCCからなにか通告されても、自らは一切調べようともせず、市民の大切な個人データを民間企業に預けているという意識がほとんどないのか、まったく興味・関心がない、すべてCCCにお任せ、というか、CCCの言いなりです。その無責任な対応には、いつものことながら、ほとほと呆れ返ります。
というわけで、ツタヤ自治体のなかでも特に感度が鈍い和歌山市に、以下のようなメールを送っておきました。果たして回答は来るでしょうか。
ちなみに、和歌山市では、4/1からは、この担当部署である読書活動推進課の課長さんが異動になり、新任の方が就任されたとのことです。
あっ、それから、もうひとつ大きなニュースがあったのも、忘れてました。CCC本体の代表取締役社長のポストには、副社長だった高橋誉則氏が昇格して就任。増田宗昭氏は、代表取締役社長を退きましたが、代表取締役会長兼CEOとして、これまで通り同社の指揮をとるようです。
和歌山市読書活動推進課御中
いつも、お世話になっております。
4/1より、和歌山市民図書館でのTカード利用に関する規約が改定されていることを知りました。
つきましては、お忙しいところ、たいへん恐縮ですが、以下について教えていただけますでしょうか。
(1)事前に改定内容についてCCCから情報提供や事前通告はありましたでしょうか?
(2)今回、当規約のどこがどう変更になったのか、貴課においては、把握されておりますでしょうか?
私が把握している範囲では、規約の主語がカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)からMKHDへと変更になっています。
3/31日までは、以下のようになっていました。
“CCCは、本条第1項に基づき図書館から取得した個人情報を、CCCの連結対象会社もしくは持分法適用会社及びTポイントプログラム参加企業を含む第三者に対し提供することはありません”
4/1からは、以下のように変更になりました。
“MKHDは、第1項に基づき図書館から取得した個人情報を、CCC及びCCCの連結対象会社もしくは持分法適用会社及びTポイントプログラム参加企業を含む第三者に対し提供することはありません”
https://cccmkhd.co.jp/privacy/member/agreement-wakayamaciviclibrary/index.html
これにより、和歌山市民図書館の利用者情報は、CCC本体からMKHDへと移管されたことになります。
MKHDは、昨年10月に同社のTポイント事業を担う、Tポイント・ジャパンと、CCCマーケティングが統合してできた同社の関連企業です。
https://www.ccc.co.jp/news/2022/20220228_002484.html
なので、和歌山市民図書館の利用者情報をすべてMKHDが管掌することとなり、本来、図書館の外部へは送信されてはならない利用者情報をMKHD社が取得することになります。
(3)このような重大な規約変更を、利用者へ事前通知することなく、実施していることは適切と言えるのでしょうか?
以上、取り急ぎ、疑問点を挙げました。ご回答いただけましたら幸いです。
日向咲嗣
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