2020年7月13日月曜日

和歌山市騙し討ち事件


こんにちは、日向です。

本日は、先日来、お知らせしております新和歌山市民図書館の分類についての続報を書いておきます。



図書館司書の世界では、悪名高いというと、少し語弊がありますが、専門家からみて非常に使いづらいと評判のCCC独自のLSライフスタイル)分類。

別名「ツタヤ分類」とも呼ばれております独自の分類法を、CCCが運営している他の図書館では、原則としてすべての蔵書に導入されています。

しかし、図書館をよく利用する人ほど、このLS分類に対するアレルギーは強く、みなさんもご存じのように、各地で市民がツタヤ図書館に反対する理由のひとつにもなっているわけなんです。

図書館の分類というよりも、「発見性を重視する」という書店方式の分類なので、目的の本を探しにくく、えっ、なんでこれが、この分類に入ってるの?

と驚くような分類のされ方をしていることも、めずらしくありません。


2015年10月にツタヤ図書館を開館した海老名市では、ツィッター上で「#海老名分類」が大喜利と化しまして、


『旧約聖書 出エジプト記』旅行 有川浩「阪急電車」 趣味:鉄道  東野圭吾「手紙」 手紙の書き方 「カラマーゾフの兄弟」 旅行

といったところが話題になったのは、まだ記憶に新しいところです。



さて、和歌山市では、このツタヤ分類、当初の約束では「全蔵書45万冊中、2階の5万冊のみ」だったんですけれど、

実際にオープンしてみると、児童書コーナーにも取り入れられていたんです。

そうなっている理由を、担当部署に問い合わせてみると、


もともと旧図書館でも、標準の日本十進分類(NDC)は使っておらず、新図書館へ移転するにあたって、CCCと協議を重ねた結果、CCCのライフスタイル分類とも異なる、まったく新しい分類を考案して、それを取り入れた

――という説明でした。





ここまでが、すでに書いてきた通りなんてすが、ここ数日のうちに、新たにわかったのは、市の釈明がとんでもなく不自然だってことでした。


「ツタワカ分類」とでも呼ぶべき、和歌山市とCCCが協議して考案した分類を詳細にみてみますと、これ、まんまライフスタイル分類だったんです。


下をみてください。児童書の分野に限定して、2018年に山口県周南市立徳山駅前図書館の分類と、和歌山市の分類を比較したのがこれです。



和歌山市と周南市の中分類を比較したところ。「乗り物」「点字」が追加されているくらいでほとんど変わらない。これ以下の小分類については文末に表示。




ところどころ改変されていますが、それは和歌山市独自といえるものではなく、これまでのライフスタイル分類を少しカスタマイズした程度の変更でした。


これまで和歌山市の市民団体が、何度も「Tカードと独自分類の導入をやめてください」と市長に申し入れしていましたが、そのたびに市側は、


「ライフスタイル分類は、2階の5万冊のみしか導入しないので安心してほしい」

と言っていたのですが、ふたをあけてみたら、4階の児童書コーナーでもやっていたという、いわば騙し討ちとしか思えないようなやり方で取り入れられていました。

これまで、新たなツタヤ図書館が開館するたびに繰り広げられてきた騒動が、また和歌山市でも起きているわけなんです。

いま、市当局に対して、これに関連した文書の開示をお願いしていますので、詳細がわかりましたら、改めてお知らせする予定ですが、今日までにわかったことを整理しておきます。





まず第一の疑問が、いったい、「独自分類は2階5万冊のみ」と最初に約束したのは誰だったのでしょうか?


下をみてください。2017年12月にCCCが市民図書館の指定管理者になることを承認した市議会経済文教委員会の議事録です。この中で、当時の坂下館長が

「基本が十進分類で、もう一つ独自分類もデータベースして、2階には独自分類で配架する」と発言しています。「5万冊」もこのときに出てきます。









でも、ここで不思議に思うのは、どうして館長が独自分類にまで言及しているのかってことです。

この時点では、まだ市民団体が独自分類反対の申し入れはしていなかったはず。なのに、なんで館長が先回りして、そんなこと言うのか。理解に苦しみますね。


そこで、疑ったのは、もしかして、CCC自らがそう表明していたのかもしれない。そう思っていたら、ありました。その証拠が。



前回の記事では見逃してましたが、市民団体が坂下発言の直後の12/25に申し入れをしている文書の書き出しがこうでした。


「プレゼンテーションでは、2階はツタヤ分類を使うということでしたが」

そう、やっぱりCCC自らが正式に選定される前の、選定委員会が開催した公開プレゼンテーションの場でそう言っていたのです。







ちなみに、2017年11月24日行われた公開プレゼンの内容は、非開示になっていて、資料はありません。当日も録音・撮影禁止、資料配布なしという戒下で行われたようですが(市民に公開しておいて記録はするなとは、とんでもなく異様な出来事)

出席者に改めて確認してみると、確かにそのような発言はあったということでした。


ということは、「独自分類は2階5万冊のみ」市当局が言っているわけではなく、CCCが指定管理者に選定される前に、


もし選定されたら、こういうふうにやりますので、ぜひよろしく

という意味での発言だったんですね。

それまでのツタヤ図書館においては、ライフタスイル分類についての批判が根強く

海老名市でJVを組んで一緒に運営しているTRC図書館流通センターの会長ですら公然と批判するくらいでした。



“独自分類は本との新しい出会いを生むという触れ込みだが、CCCに対して「出会いはいいが、返却後に返せなくなる、本が探せなくなるのではないか。本当にあの分類で大丈夫か」とあらかじめ疑問を呈していた”
(東洋経済オンライン・2015/10/29 『TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由』より)


そこで、CCCは、和歌山市からは「ライフスタイル分類は、一部だけであとは、全部NDCにします」と、一歩引いた形の低姿勢で臨んで選ばれた格好になっていたわけです(実際には出来レースでしたが)。


だとしたら、このフタをあけてみたら、児童書までもちゃっかり独自分類にしていたという行為は、ますます騙し討ちと言ってもいいような不誠実な行為であったことになります。


まぁ、CCCらしい、いつものことと言えば、それまでなんですが、私が許せないと思うのは、市の図書館部門が

誰がどうみても、ライフスタイル分類なのに、


市がCCCと協議して独自に考案した分類だ

などと言い訳していることです。


もともと児童書はNDCじゃあないので、それを少し改変しただけで、CCCに丸投げしているわけではない

と言いたいんでしょうけれど、いくらなんでも、その言い訳には、無理がありますよ。


詳しくみてみると、和歌山市の実情にあわせたと思われるのは、400冊もあった紙芝居(海老名は120冊程度)に小分類項目をつくったくらいで、

あとは、2013年の武雄市から始まって、新しい進出先ができるたびに、少しずつ変えていったライフスタイル分類を和歌山でも少しいいじったという程度でしかなく、とてもじゃないですが、


和歌山市の児童書に詳しいスタッフが知恵を絞ってCCCに提案をし、お互いに議論の末に考案した「ワカツタ分類」

には思えません。


もしそうであれば、少なくとも定期的に開催されている図書館協議会の場でかなり議論されているはずです。

図書館にとって分類というのは、いちばん重要な骨格部分ですから、諮問機関において、そこはまったく議論せずにスルーするなんてことはありえるのでしょうか?

もしあったとしたら、そのときの審議会委員は、全員ボンクラだったと非難されても仕方ないのではないでしょうか?

なおかつ教育委員会での承認も経ていなければいけないはずですが、そのような形跡がいまのところ一切つかめておりません。

また、図書館スタッフとCCCとの協議内容も記録されたものがあるはずですが、その有無についての回答もいただけておりません。


というわけで、和歌山市でも、不安が的中というか、なにをやってるのかとため息が出るくらいに酷いプロセスでした。

えっ、知ってたって? いや、それでもまだ丸亀市や宇部市のように、カモがネギしよって、騙されに行く自治体があとを絶たないのは、いったい、どうしてなんでしょうか?


追記 本日、和歌山市民の方が市民図書館に行って、2階と4階の独自分類の体系表をみせてほしいと、CCCと市の担当者にお願いしたところ

出せるかどうか検討する

と言われたそうです。もしかして、いまだに「ライフスタイル分類は、企業秘密」なんてCCCでは言ってるんでしょうか?






和歌山市と周南市の児童書分類比較






















和歌山市は“CCCの下請け”? へつづく
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