~御用学者へつづく人脈ルート~
こんにちは、日向です。
本日は、前から書きたいと思っていたのに、なかなか取り掛かれずにいた『公立図書館と都市経営の現在』(日本評論社)という本についての感想です。
日本評論社・書籍紹介より https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8257.html |
このタイトル聞くと、ツタヤ図書館ウオッチャーなら「ああ、あれね」とすぐにピンとくるはず。
大阪市立大学の先生が編著者となって、著名な全国の図書館の事例を詳しく紹介した本なんですが、
なにが興味深いかといいいますと、まず第一に、和歌山市民図書館の元館長の坂下雅朗氏が共著者のひとりとして名前をつらねていること。坂下氏自らが選定委員として指定管理者に選定したTSUTAYA本社・カルチュア・コンビニエンス・クラブの図書館部門の責任者である高橋聡氏も共著者のひとりです。
さらに、昨年12月に市立の図書館と美術館の指定管理者にCCCを選定した熊本県宇城市の元中央図書館長も、共著者のひとりだったことがあとから判明しまして、編著者2名を除いた事例編の著者11人中、なんと3人がツタヤ図書館関係者だったというオチがついてました。いまどきめずらしい官民連携ズブズブをイメージさせる専門書だと思います。
さて、中身については、図書館情報学の専門書というよりも、タイトルにあるように都市経営の観点から図書館建設や運営のあり方にアプローチするために、先進的な事例を紹介している本です。実務者にとってはたいへん興味深い内容かもしれませんけれど、一般の市民にとっては、少し難しすぎるような印象を持ちました。
で、私の視点からしますと、次に目についたのが編著者である、永田潤子教授と遠藤尚秀教授は、お二人とも大阪市立大学大学院・都市経営研究科教授だってことですね。
大阪市立大学大学院・都市経営研究科といえば、ツタヤ図書館と縁の深いあの人も在籍していたはずと思い出して調べてみたところ、やはり、そうでした。
あの人とは、門真市が呼んできた“御用学者” でも紹介しました追手門学院大学国際教養学部の湯浅俊彦教授のことです。
湯浅教授の略歴には、修士課程、博士課程ともに修了されたのが、大阪市立大学 創造都市研究科とあります。調べてみると、これが現在の都市経営研究科の前身のようなので、大阪市立大学からは、湯浅→永田・遠藤ラインの人脈がクッキリと浮かび上がってきました。
湯浅教授は、図書館の専門家のなかでも、一二を争うくらいカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するツタヤ図書館を高く評価する学者先生であることは、異論のないところだと思います。
なにしろ、図書館界最大のイベントとして知られている図書館総合展では、2012年から5年連続で、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する公共図書館についてのディスカッションのコーディネイターを勤めているのが湯浅教授なんですから。
その湯浅教授がかつて学位を取得した大阪市立大学・大学院の研究科の所属教授が2人が、ツタヤ図書館の関係者ともいえる3人を引っ張り出してきて編纂されたのが本書ということになります。
なので、その角度からしますと、ツタヤ図書館にアカデミズムの箔をつけるために出版された専門書籍ではないのか?
といううがった見方も、当然出てきてもおかしくないような材料が揃っています。
もうひとつ気になったのが、2020年3月という出版時期です。
和歌山市民図書館が当初オープンを予定していたのは、2019年10月でしたので、もともとその予定で企画されていたとしたら、
オープンから半年で来館者100万人を達成した和歌山市民図書館!
として紹介できますので、事例がこの本に載ること自体が、結構な宣伝効果を期待できたはずです。
ところが、実際には、CCC独自設計導入による工期遅延によって、オープンは半年延期(なぜか契約上の指定管理スタートは2019年12月)となり、さらに2020年4月グランドオープンもコロナ禍の影響で延期になりました。
結果、この本が刊行された2020年3月というのは、坂下氏が立ち上げに尽力した和歌山市民図書館は、まだ開館していませんでした。臨時窓口で貸出返却のみ行っている状態で、書架はもちろん自慢のオシャレ空間に市民は、一切立ち入りできない状態でした。
仮設窓口だけ開設した図書館を“成功事例”として取り上げるというのも不思議な話です。
さすがに、まだ建物の建築すら始まっていない図面上の多賀城市立図書館を、無理やり成功事例として和歌山市へのレポートで紹介したRIA(“ペーパー図書館”と国交省)ほどでデタラメはありませんけれど、
コロナ禍の影響が日に日に深刻化してくるなかで、まだ全面開館にもなっていない図書館の事例紹介の本書が刊行になったのは、ツタヤ図書館関係者からしてみれば、最悪の事態だったかもしれません。
さらに運の悪いことに、6月のグランドオープンのタイミングに合わせて、私がビジネスジャーナルに寄稿した記事によって、官製談合疑惑と不祥事の醜聞が次々に噴出しました。そのことで、和歌山市民図書館の行政によるガバナンス、市民との協働を実現するためのアカウンタビリティ(説明責任)などは、完全崩壊の危機に瀕しました。
1400枚の黒塗会議資料の核心部分(公募前にCCCが市長プレゼンなど)や工期遅延の裏事情などが内部告発によってあきらかになったことをすべてなかったことにして、自らに都合のいい論説だけを展開したところで、なかなか説得力のある論になるのは難しいのではないのかと思いました。
具体的な坂下氏と高橋氏の執筆部分についての感想は、のちほど詳しく取り上げたいと思います。
よろしくお願いいたします。
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