2024年12月26日木曜日

天下りした企業を選定した和歌山市・阿形教育長

 

こんにちは、日向です。


先日、和歌山市教育長が教育委員会所管の施設運営者について、とってもおかしな決裁をしていたと書いた件(和歌山市の教育長が“李下に冠を正す”の巻)で、ひとつ重大な事実を見落としていました。


下をみてください。



 2021年に教育長に就任する際、地元紙が報じた阿形氏の経歴にご注目ください。今回、西コミセンの指定管理者に選定された㈱KEGキャリア‧アカデミーに入社される前には、市教委で、教育局長をつとめていたと書かれています。


教育局長といえば、教育長に次ぐポストで事務方のトップです。和歌山市議会では、教育長に代って教育委員会の施策について答弁する機会も多く、CCCが指定管理者に選定された直後などは、図書館運営についての質問は、もっぱら教育局長が回答していました。


その事務方のトップだった人が、なぜか2020年には、民間企業の㈱KEGキャリア‧アカデミーに転籍されていました。下に掲示したのは、2020年にコロナ禍で学校が休校になったとき、この会社が受託している学童保育が貴重な子どもの居場所になっていることを報じた記事です。この記事でコメントしているのが、当時、㈱KEGキャリア‧アカデミーの事務局長だった阿形氏なのです。


わかやま新報2020年5月10日 『子どもの居場所も緊張感 休校中の学童保育』より
https://wakayamashimpo.co.jp/2020/05/20200510_93859.html




つまり、役所で教育局長まで上り詰めた人物が、その影響下にあるというか、密接な利害関係のある民間企業に天下っていたわけです。


で、ここまででしたら、「まぁ、そういうこともあるのかなぁ」くらいで話は終わりますが、この後、民間企業に一度天下った阿形氏が古巣にもどって、今度は絶大な権限を持つ教育長に返り咲き。その権限を駆使して、かつて天下った民間企業をコミセンの指定管理者に選定していたということになってしまいます。


こんなあらさまな癒着はなかなかないと言いたいところですが、和歌山市では、こういうことは、そんなにめずらしいことではないのかもしれません。


教育分野に深い知見を持った教育長が、市が仕事を発注する企業とズブズブの関係だったなんていうのは、にわかには信じられないことです。


そこで疑問が沸いてくるのが、なにゆえ、㈱KEGキャリア‧アカデミーという会社が2020年時点で放課後にこどもたちを預かる学童保育事業を受託していたのかという点です。


市議会の議事録を調べてみると、2019年9月議会で、“若竹学級運営委託事業”と呼ばれている学童保育の民間委託について活発な議論が行われていました。


民間委託する理由としては、学級数の増加に伴う指導員の人員不足があげられていました。翌年度から会計年度任用制度が始まることもふまえて、民間委託したほうがより柔軟に人を採用できて、より高い保育サービスを提供できるとした執行部の説明に対しては、民間委託に反対する議員はもちろん、それに賛成する議員からも、民間委託したときのデメリットをどう解消するのかという方向で、厳しい意見があがっていました。


https://ssp.kaigiroku.net/tenant/wakayama/SpMinuteView.html?council_id=539&schedule_id=2&minute_id=4&is_search=true


それぞれの意見の内容について書くと長くなるので辞めておきますが、令和2年度から令和4年度までの3年間に、14億6020万円、1年あたり4.8億円にもなる学童保員事業を民間委託するにあたっては、直営(15億円)よりも安くなるという試算が提示されて、最終的には、この議案が通ってしまいました。


そもそも直営では指導員の人員を確保できない状況、つまり、それだけ現場で働くスタッフの労働条件が劣悪になっている事業を、民間委託したら、ウソのように人手不足が解消されて、民間のノウハウが導入されたり、企業間の競争原理が働くことでサービスも向上するはずという民間委託神話が教育現場の周辺にも深く根差すようになっていることがよくわかるわけですが、ここの議論をみるだけでも、この事業がとても一筋縄ではいかないと思わせる難しさを感じました。


そこで、教育委員会がとったのが、民間企業に任せるけれども、ロクにノウハウのない企業にやらせて何か不祥事が起きても困るということで、教育委員会からお目付け役のような人物を派遣したのではないか、それが教育局長までつとめた阿形氏だったのではないのかって、思いました。


似たような事例は、ツタヤ図書館誘致自治体でもよくみられる人事です。たとえば、2016年に駅前移転してオープンした宮城県多賀城市立図書館の初代館長は元小学校の校長( ツタヤ図書館、元協議会長が天下り? ツタヤ図書館、市から「天下り入社」疑惑の新館長を直撃!「市長から声かけられた」)でした。また2017年にこれまたツタヤ図書館として駅前移転した岡山県高梁市も初代館長も元校長(ツタヤ図書館、再び天下り人事疑惑)でした。


いずれも、受託企業に天下りさせることでお目付け役にしたいという教育委員会の思惑と、一方で受託企業側からすれば、役所と太いパイプを持つ人物を受け入れることで、より自分たちの都合のいいように事業を進めていきたいという思惑が一致した結果と言えるのではないかと思います。


そういう視点でみますと、阿形氏の委託企業への天下りは、典型的な官民癒着の構造を浮き彫りにしたものと言えると思います。


今回注目すべきなのは、教育長という絶大なる権限を持つポストに座った人物が、かつて天下りした企業の選定に深く関与する格好になったという点です。


私は、今回、阿形氏の天下りが判明した瞬間に、どうして西コミセンの指定管理者選定発表が構成企業を明記しない団体名だけだったのかというナゾが解けたように気がしました。


選定結果の発表を起案した職員はもちろん、その情報を発表ページにアップした職員も、ほぼ例外なく教育長が、学童保育を委託した企業へ天下りしていた事実を知っていたはず。なので、その天下り先の企業が新しいコミセンの指定管理者の代表企業になったことは、できれば表に出したくないという心理が働いたのではないのか。そう思わざるを得ません。CCCよりも、むしろ、㈱KEGキャリア‧アカデミーという社名を出したくなかったから、団体名のみ発表したのではないでしょうか。


担当課の生涯学習課はもちろん、担当課が議決スケジュールを相談したという教育政策課、さらには情報公開を担当する総務部市政情報班の方もみんな、「指定管理者選定発表で団体名だけで構成企業を出さないのはおかしいのでは?」という私の質問に対して「いえ、おかしくはないと思います」と回答していましたが、その言葉の裏には、なにかを隠しているかのようなニュアンスを感じました。

ということで、本日は、ここまでしにします。



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日本ジャーナリスト会議の『月刊ジャーナリスト』に拙著の書評が掲載されました。

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2024年12月24日火曜日

和歌山市の教育長が“李下に冠を正す”の巻

 

こんにちは、日向です。


先日お知らせしました和歌山市の西コミュニティーセンターの指定管理者選定の件、本日、ようやく生涯学習課・担当者の方に、いくつかの疑問点を確認することができました。


まず第一に、CCCが構成企業に名前をつらねた団体の選定について、教育委員会の正式承認(決裁)はいつ、どのような形で行われたのかという点ですが、


やはり、予想していた通り、教育委員会の定例会に議案が提出されて議決されたわけではなく、“教育長臨時代理”という形で決裁されていたことが確認できました。


驚くのがその日付です。


教育長臨時代理の決裁は、選定委員会が開催された11月18日当日に行われた

――とのことでした。まるで、入学試験当日に入学手続きまで行われたのかのように思えてしまいました。


選定委員会後の教育委員会定例会は12月12日開催でした。なので、そこで議決していたのでは、12月5日から開催される市議会上程にはまにあいません。なんとか、年内成立にまにあわせるためには、11月18日~12月5日(議案提出締切はその数日前)までに、臨時会を開催して、そこで指定管理者選定案を議決するしかありませんでしたが、教育政策課によれば「委員の都合で、その期間中に臨時会を開催するのは難しかった」そうです。


残された手段は「教育長が教育委員の代理で決裁するしかなかった」ということのようです。


そうなりますと、そもそも12月議会に上程する指定管理者案を、11月18日に選定委員会を開催して決めるというスケジュールそのものが、最初から危うい計画だったのではないのかと思わざるを得ません。端的に言えば「最初から教育委員会の議題に乗せるつもりがなかったのでは?」と勘繰りたくなります。4社によるコンソーシアムとはいえ、問題が多発しているCCCが参画した団体の選定について、たとえ少しでも異論が出たら困るという管理職サイドの心理がどこかで働いたとしたも決して不思議ではありません。



教育委員会が所管する教育文化施設に関する議案については、先に教育委員会に諮って議決しないと、議会へ送ることはできません。ところが、和歌山市では、7年前、最初にCCCを市民図書館の指定管理者に選定したときは、なぜか、その正式な手続きを踏みませんでした。特別な場合(緊急やむをえない理由により教育委員会の議決を得ることができない)に限って許されている“教育長臨時代理”という手法を使って、教育委員会の承認手続きを通過させていたのです。


また、昨年9月議会で正式承認された、今年4月から再度5年間、市民図書館の指定管理者にCCCを選定する件でも、議会上程に間に合わないという理由で、とってもおかしな手続きが行われていました。(議案なしに“口頭議決”をした和歌山市


ただし、昨年のCCC再選定のケースでは、今回の西コミセンのように教育長臨時代理というウルトラCは使いませんでした。8月10日の教育委員会定例会で、いきなり「報告第○号」として、まだ教育委員会へ議案として提出する前の段階で、CCCの選定を委員に報告していました。その後、9月1日に臨時会を開催。そこで正式に議決して、9月4日が締切だった、経済文教委員会への議案提出してギリギリセーフというスケジュールでした。つまり、このときは教育委員会承認のための臨時会開催はできたのです。なのに、西コミセンの指定ではどうして臨時会を開催できなかったのか。その点を教育政策課にお聞きしましたところ「今回は、教育委員の都合がつかず臨時会は開催できなかった」との回答でした。


どうでもいい形式的な手続きに、そこまでこだわるのはヘンと思われたかもしれません。教育文化施設の管轄を教育委員会から市長部局に移管して、教育委員会の承認なしに決める自治体も出てきているなか、たとえウルトラCを使ってでも、教育委員会の承認手続きを経ているだけマシと思われた方もいるかもしれません。


しかし、教育委員会をはじめとした各専門委員会での議論を経て、最終的に議会で正式承認された格好になっているからこそ、指定管理者の選定というのは、それなりに重みをもってくるものです。なのに、その内実がここまでスカスカですと、決定までの一連のプロセスがすべて台無しに思えてしまうのです。


ここで改めて、7年前の2017年12月に初めて市民図書館の指定管理者にCCCを選定した際はどうだったか、簡単に振り返ってみます。


このとき、選定員会は11月24日に開催されました。12月議会に、その指定管理者案を議会に上程するにはすでに無理のあるスケジュールでしたので、11月29日に教育長臨時代理で決裁を行い、教育委員会へは事後報告の形で承認を得ていました。しかし、教育長が臨時代理で決裁するにあたっては、あらかじめ11月9日開催の定例会において、教育長が“臨時代理”する承認を委員全員から得ていたことがあとから判明しています。


つまり、指定管理者はまだどこになるかわからないけれども、選定委員会で決まった案を教育長が単独で決裁することを教育委員全員が事前に了承していたと、当時、市議会関係者が語っていました。今回の西コミセンの指定管理者については、いまのところそのような形跡はみあたらず、選定委員会で指定管理者が決まったら、その日のうちに教育長が単独で決裁しているのですから驚きます。


こういうことが許されるとしたら、教育委員会の承認手続きというのは、単なる形式的なものにすぎず、教育長が「これでいい」と思ったら、それがそのまま教育委員会の承認となってしまうわけです。


ここで、ひとつ気になる情報がはいってきました。西コミセンの指定管理者案を承認した阿形博司氏は、2022年4月に教育長に就任しています。和歌山市の教育長は、教育畑ではなく総務部など市長部局出身者がなるという印象を持ってましたが、阿形氏は、市立小学校教諭を経て市教委学校教育課長、教育局長を歴任していて、めずらしく教育畑の人でした。


で、そこまではいいんですが、就任時の地元メディアの記事の以下のくだりを読んで、思わず目が点になってしまいました。


https://wakayamashimpo.co.jp/2021/02/20210228_99762.html より



㈱KEGキャリア‧アカデミーで市若竹学級運営管理事務局長…などを務めていた。


㈱KEGキャリア‧アカデミーと言えば、今回西コミセンの指定管理者に選定された団体「ぶんきょうの杜舎」の代表企業です。







そう、異例のスピードで教育長が承認した指定管理者のうち一社は、こともあろうに、阿形氏が教育長になる前に務めていた会社だったのです。


いやぁ、これは驚きますね。CCCがこの団体に入っていたことも驚きましたが、代表企業が教育長が関係している企業だったなんて、そんなあからさまなことがあっていいんでしょうか。


おそらく、㈱KEGキャリア‧アカデミーは、西コミセンのある地域の地場に深く根差した事業を長年展開されていることから、その実績が高く評価されての選定であり、教育長がその選定結果を左右するようなことは、ありえないとは思いますけれど、その後の決裁行為を教育長が超特急で行ったとなれば、なにか便宜をはかったのではないのかって、みられても仕方のないような気がしますね。(和歌山市が新施設で“CCC選定”を隠す理由 の文末コメント欄にこの企業についての情報提供がありました)


まさに“李下に冠を正さず”とは、こういうときに使われることわざではないでしょうか。


とりあえず、本日はここまでにします。よろしくお願いいたします。





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2024年12月19日木曜日

“教育長臨時代理”を使って再度CCCを選定した和歌山市

 

こんにちは、日向です。


前回書きました和歌山市の西コミセン指定管理者にCCCが選定されていた件(和歌山市が新施設で“CCC選定”を隠す理由)、


まさか、そんなことが行われていたとは!

 

とビックリ仰天するような事実が昨日あきらかになりました。


一言で言えば、担当課が意図的に教育委員会の正式承認をスキップしていたのではないかという疑惑です。


実は、この手法、7年前、CCCが初めて市民図書館の指定管理者に選定された際にも使われたものです。発覚当初は、なんで教育委員会の承認手続きがないのか? これはもしかしたらCCC選定そのものが無効で、指定管理者募集から再度やり直しになるのでは?と指摘されて大騒ぎになったことがありました。のちに、教育長臨時代理というウルトラCを駆使していたことが判明するのですが…。

このあたりの経緯については、当時、週プレNEWSに詳しく書きましたので、お時間のある方は、のちほど以下の記事をじっくり読んでいただければと思います。


火種くすぶる和歌山市・ツタヤ図書館騒動の新疑惑ーー教育委員会「秘密会」での承認は有効か?


それとまったく同じことが、西コミセンの指定管理者選定手続きにおいても行われていた可能性が濃厚になってきました(決定文書を入手するまでは断定できませんので、後日、正確な情報をアップする予定です)。今回は図書館ではないものの、同じCCCが関与しているという一点において、いったいどういう事情がそこには隠されているのかが問題の焦点です。



まずは、下の書類をみてください。



1枚目が西コミセンの指定管理者選定についての報告、2枚目が同施設における今後5年間の指定管理料に関する報告。12月12日の教育委員会定例会に提出された模様。





これは、12月12日の教育委員会の定例会で配布された文書です。

今年11月18日に西コミセンの指定管理者選定会議が開かれて、その場で(株)KEGキャリア・アカデミーを代表企業とした団体「ぶんきょうの杜舎」が選ばれました。

この団体は、4社によって結成されたコンソーシアムであり、その構成企業の一社がCCC、カルチュア・コンビニエンス・クラブだったわけです。


この書類には、「議案第○○号」ではなく「報告第○○号」としたハンコが押されています。西コミセンを開館するためには、指定管理者選定とその予算に関する内容をまずは教育委員会内で承認してもらい、それから議会へ議案として提出して正式に決定する(経済文教委員会→本会議で議決)という流れになっているわけなんですが、


ここでおかしいのは、議会に提出する直前なのに、教育委員会がそれらを「議案」として審議したうえで、議決したことが確認できないことです。一般市民からみたらあまり意味のないことかもしれませんが、行政の手続きの順序というのは、とても厳格に定められていて、教育委員会が所管する教育文化施設に関するものについては、教育委員会に諮って議決もしていないものを、いきなり議会で審議なんかしてもらえません。

このあたりの手続きついては、先に紹介しました7年前にCCCが市民図書館の指定管理者に初めて選定されたときの拙記事を引用しておきましょう。


発端は1本のブログだったーー。2月19日、和歌山市在住の金原徹雄弁護士が『CCCを和歌山市民図書館の指定管理者に指定した行政処分は無効かもしれない』と題したブログを発表。

和歌山市は昨年11月に市民図書館の運営者(指定管理者)を公募し、CCCを選定した。そのことを報告した翌月21日の教育委員会において「事前に教育委員会のご承認をいただく必要があった」のにそうしなかったことを図書館長が陳謝している発言を見つけた金原氏が、この手続きには重大な瑕疵(かし)があると指摘したのだ。

そのブログ上では『図書館の指定管理者を決定する主体は、市長ではなく教育委員会である』、『教育委員会は、選定委員会の意見を聴いて、指定管理者の候補者を選定しなければならない』、『この手続きを経たうえで指定管理者の承認について議会の議決を経なければならない』と法的理論を逐一解説。

つまり、選定委員会→教育委員会→議会の順番で手続きを踏んで初めて、指定管理者決定が有効になるというわけだが、CCCを指定管理者に決定したプロセスでは、このうち教育委員会の手続きがスッポリと抜けていた。

有識者で構成される市の選定委員会でCCCが選ばれたのは昨年11月24日のこと。その議案が12月6日に市議会に提出され、9日後の15日に議決されたが、その間に教育委員会の会議は臨時会、定例会ともに一度も開催されていない、というのだ。(火種くすぶる和歌山市・ツタヤ図書館騒動の新疑惑ーー教育委員会「秘密会」での承認は有効か? より


 6年前のこの事件では、 教育長が“臨時代理”する承認を委員全員から得ていたことが判明。「教育長臨時代理」とは、いったい何なのか調べていくと、『教育長は、緊急やむをえない理由により教育委員会の議決を得ることができない場合には、これを臨時に代理することができる』という教育委員会の特例的な規則があり、その規定を根拠にしていました。


しかし、いくら関係者をあたっても、当時、教育委員会に諮ることができなかった「緊急やむをえない理由などありませんでした。日程的に定例会にはかる時間的余裕がなかったら、臨時会を招集すればいいだけのことなのに、それもしませんでした。

そこで私が出した結論は、要するにCCCが指定管理者に選定されたことについて教育委員から異論が出たり、広く世間で話題になったりするようなことはできるだけ避けたかったのではないか、なので、できるだけ秘密裡に進めていったのだろうというものでした。


では、今回の西コミセンの場合はどうだったのでしょうか。12月12日に指定管理者選定に関する「報告」をあげてきたということは、その時点では、すでに教育委員会の決裁が終わっているのか、もしくは、この直後に教育委員会で議決するのかのどちらかです。


担当課に問い合わせてみても、なかなか担当者がつかまらず、そのあたりのことがクリアになりませんでした。そこで、教育委員会の開催を担当する別の部署に問い合わせてみたところ、アッサリ、こう言われたのです。


西コミセンの指定管理の件でしたら、教育長臨時代理で決裁されています。正確な日付は担当課にご確認ください。


  まさか、「教育長臨時代理」というキーワードがそんなに簡単に出てくるとは思いませんでしたので、一瞬、自分の耳を疑ったほどでした。


 決裁の日付については、11月14日の定例会で議題にのぼっていないことから、その翌日から12月12日までの間のいつかということになるとのことでした。後日担当課に確認できましたら、詳細を追記する予定です。



そんなわけで、CCCが参画している団体が西コミセンの指定管理者に選定された件では、通常は行われない特別な手法を使って、教育委員会の承認を得ているのではないのかという疑惑が濃厚になってきました。


実は、昨年、CCCが今年4月からの5年間の運営を担当する指定管理者に再度選定された際にも、似たようなことが行われていました。このときも、市教委は、正式な議案書を作成せずに、説明資料だけ委員に配布して、教育長が口頭で「CCCを指定管理者にしてもよろしいか?」と聞いて議決する“口頭議決”という、とってもおかしな承認手続きが行われていることがわかりました。(詳細は、議案なしに“口頭議決”をした和歌山市 をご参照ください)


このときの「口頭議決」が「教育長臨時代理」とどこが違うかといいますと、前者は、一応、教育委員会に議案として提出はしているんです。ただし、正式な議案書は作成せず、ほかの補正予算に紛れ込ませるような形の議案にしているため、まず第一に、市民はCCC選定に関する議案を探し出せませんでした。そして、いつそれが教育委員会で議決されたかも分かりませんでした。指定管理者選定にかかわる会議は、すべて秘密会で開催されますので、いつなにが話し合われたのかすらわかりませんでした。


みつかったのは今回の西コミセンと同じく「報告第○○号」だけ。議決は、後日、急遽開催された臨時会のなかで、正式な議案書なしに説明資料だけ委員に配布して、教育長が口頭で「CCCを指定管理者にしてもよろしいか?」と聞いて議決する“口頭議決”という、これまたとんでもなく省略された手続きが行われていたことがあとで判明しました。


市民図書館の第二期指定管理者選定においても、ちょうど今回の西コミセンと同じく、12月議会直前になって駆け込みで教育委員会の承認を得るという姑息な手段が使われていたわけです。CCC案件については、3回連続でイレギュラーな行政手続きが行われていたことになります。ここまでくると、単に私の妄想と切り捨てることもできず、市民が調べてもすぐにはわからないよう徹底的にCCCの存在を隠すというのがツタヤ図書館誘致自治体のやり方なのかなぁと思わざるをえません。


とりあえず、今日はそんなところです。よろしくお願いいたします。



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「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)



日刊ゲンダイ、日本経済新聞等の書評欄で取り上げていただきました。







2024年12月17日火曜日

和歌山市が新施設で“CCC選定”を隠す理由

 

こんにちは、日向です。


先日、和歌山市民の方から


新しくできるコミュニティーセンター(コミセン)の指定管理者にCCCが選定されたらしい


という情報を教えていただきました。


すでにターミナル駅前にある市民図書館を運営している同社が、いまさら街の小さな公民館の運営に乗り出すなんてことがあるのかなぁ、もしかして図書館のついでに市内の公民館も全部CCCにやらせてTSUTAYA公民館化を推進するつもりなのかなぁなんて思いまして、ネットでググったりしてみても、これという情報が出てきませんでした。


唯一みつかったのが、以下のページでした。


https://www.city.wakayama.wakayama.jp/jigyou/1012938/1013706/1060627.html より


 来年1月に完成予定の西コミュニティーセンターの運営を担当する指定管理者を募集していて、その候補者(議会承認を経て決定)として11月に選定されたのが「ぶんきょうの杜舎」という団体でした。しかし、選定結果のところをクリックして出てきた文書も、採点結果のみで、CCCの社名はどこにもみあたりません。


あれれっ、これはガセネタか?と一瞬疑ってみたものの、よくよくみると、選定されたのは複数事業者によって構成されているコンソーシアムの団体名であり、その構成企業はどこにも書かれていませんでした。


そこでこの団体名で検索してみると、あっさり出てきました。CCCの社名が。






この情報は、市のサイトではなく、選定された団体の構成企業の一社がフェイスブックで自社が選定されたことを報告しているページでした。そこにクッキリと「ぶんきょうの杜舎」のメンバーとして「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」という社名が明記されていたのです。ちなみに、この大揚興業という社名を聞いて、すぐにCCCとの関連を思い出しました。2019年12月からCCCが市民図書館の指定管理者として運営を開始した当初、公益施設棟内にある駐輪場の運営管理を担当していたのがこの会社でした(駐輪場の管理はのちに他社に変更)。


光熱費の支払い金額の内訳欄の「大揚興業」は、駐輪場の指定管理者であり、「まちなみ景観課」は、そこを管轄する和歌山市の部署である。


つまり、地元企業3社と一緒になってCCCが「ぶんきょうの杜舎」というコンソーシアムを組んで、新たにできるコミセン(西コミニティセンター)の指定管理者に選定されていたわけです。


それにしても奇妙なのが、和歌山市の指定管理者発表のページには、その選定された事業体の構成企業の名前が一切出てこないことです。建物の施工などで、数社によって構成されるジョイントベンチャー(共同事業体)が選定される際には、当然、その構成企業名も発表されるのがふつうです。最近でしたら、PFI事業で選定されるコンソーシアムも、その構成企業が必ず明記されているものです。


なのに、構成企業がどこかも一切あかさずに、今回コンソーシアムを結成した際に命名された団体名のみを発表するというのは、あきらかにヘンです。


その点を情報公開を担当する総務部の市政情報班に問い合わせてみたところ「担当課の判断によって、単に選定された団体名のみ公表しただけではないか」とのこと。こういうことは(構成企業を公表しないこと)一般的ではないのではないのか?との疑問にも「共同事業体が指定管理者に選定されるケースはあまりないので、なんとも言えないが、別におかしいとは思わない」との見解を示しました。


これは、私の少しうがった見方かもしれませんが、一昨年に住民監査請求が出されて以来、ただでさえCCCと市の癒着が囁かれているなかで、新しいコミセンの管理運営もCCCに任せたとなると、市民の反対の声が再燃しかねない。なので、できるだけCCCの名前は隠しておきたいという心理が働いたのかなぁと思いました。


そんななか、ある関係者から、以下のような情報を教えてもらいました。


https://www.city.wakayama.wakayama.jp/jigyou/tosikeikakuseibikaihatu/1042193.html より




これ、和歌山市が2022年4月に発表した内容で、今回CCCが参画するコンソーシアムが受託した西コミセンをこれから整備するにあたって、まずは民間事業者にその施設の活用方法などを提案してもらっていたんですね。


で、この企画提案者のなかに、しっかりと「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」の名前がありました。企画提案とは言っても、ただ事業者からの意見を聞くというだけで、特定企業の提案を採用するというようなものではなくて、担当課に確認すると、最近よくあるカジュアルに民間の意見を聞く「サウンディング市場調査」みたいなものでした。


この情報は、私の検索スキルが劣っているからかもしれませんが、ふつうに「和歌山市 コミュニティーセンター」のキーワードで検索しても出てきませんでした。「整備」の言葉を入れるか、または「企画提案」を「募集」していたことを知っている人でないと、たどりつけない情報でした。


これをみて、なるほど、これは、CCCがいつもとっている手法だということがわかりました。すなわち、新しく建設される予定の施設について、その設計段階から関与して、自分たちの思うままの施設を自治体につくらせる手法です。


調べてみると、整備予定の西コミセンは、小さな公民館ではなく、延床面積が約2000平米の3階建てで、同じCCC管理施設の延岡市エンクロス(1,659.54㎡)より大きな施設なんですから、千葉県木更津市などCCCがいま全国各地で展開しようとしているTSUTAYA公民館のひとつとして数えられるような施設であることがわかりました。


で、ここからがさらに不思議なんですが、2年半前に、事業者からの企画提案を募集してからの事業のプロセスが市のサイトでは、まったく追えなくなっていました。数か月前に公表したはずの、指定管理者募集要項すらすでに削除されていて、市民がみれるのは、西コミセンの指定管理者が「ぶんきょうの杜舎」というナゾのコンソーシアムに決まったという情報だけです。


和歌山市のように、情報公開に極端に消極的な自治体というのは、事業の決定プロセスがわかるような情報を残さず、用が終わったら次々と削除していきます。詳しく知りたかったら、そのつど情報開示請求をして市民に余計な費用と手間暇かけさせるという“障害”を意図的に設けているのではないかって、いつも思いますね。


早速、担当課である生涯学習課に問い合わせてみましたが、ご担当の方は、2022年に事業者からの企画提案を募集して以降の経緯については、把握しておらず、前任者に聞かないとわからないとの回答でした。これから確認してもらって、後日、再度お聞きする予定なので、またわかりましたらご報告したいと思います。


指定管理者決定までのプロセスについては、おそらく、事業者の企画提案を募集した後、その提案内容を整理して発表されていたり、また一方で市民の意見を聞くパブリックコメントを募集したりして方向性を決めたあと、基本計画や基本設計を策定し、最後に指定管理者の募集という流れになるんだろうと思います。


もしかしたら、最初から「新しいコミセンはCCCにやらせる」という結論ありきで、その結論に向けて、この2年間さまざまなことが水面下で進められてきたのかもしれません。


それから、もうひとつこれはもう和歌山市がCCCを選定する際の恒例行事のようになってしまいましたが、指定管理者の決定についての教育委員会の議決を経て市議会へ上程するという手続きにも、おかしなことが散見されます。長くなりましたので、このつづきは、別のエントリーを立てて解説したいと思います。


よろしくお願いいたします。



アエラドットで新刊の紹介記事が少し前に出たとき、この記事がしばらくニュースランキング1位になっていました。



「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)



2024年11月19日火曜日

新刊がアマゾンで星印1つと酷評されました!

 

こんにちは、日向です。


まず本日は、カンタンな告知から。



今朝、AERA dot. さんに、新刊の紹介記事(冒頭部分抜粋)をご掲載いただきました。


「92%」黒塗り公文書の衝撃 市民図書館が出した1400枚の真っ黒い紙が語る闇の深さとは


当ブログの読者の方には、すっかりお馴染みの和歌山市民図書館について書いた「まえがき」部分です。


この記事では、“黒塗りの詰め合わせ”を受け取った当時の驚きと絶望をストレートに表現しいてます。


どうして、こんなものが許されるのか、市民の知る権利の最後の砦ともいえる図書館がこんなことをしていいいのか


という執筆の出発点ともいうべき心境を書いています。


短い記事ですが、AERA dot. さんでは、後日、もう一本ご掲載いただけるようですので、そちらも出ましたらも、また追記したいと思います。




さて、今日取り上げたいと思った本題は、タイトルのとおり、アマゾンのレビューについてです。


今回の新刊は10月11日に発売されまして、一カ月と少したったところではありますが、ありがたいことに、アマゾンでは、すでにいくつかのレビューをいただいております。


「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)


で、そのなかにですね、とんでもない「酷評」といいますか、星印1つのレビューを先日をいただきました。


以下に引用します。





 基本的に、われわれ物書きというのは、読者の方の評価は、どんなに厳しいものであっても、ありがたく謙虚に受け止めて、釈明や反論などはしてはいけない


と、私はいまも思っています。



私は、ビジネス書籍の分野では、自分の本だけでなく、構成をお手伝いした本も入れますと、もうすでに50冊以上世に送り出してきましたが、


これまで、それらについて、どのような評価をつけられても、どこかで反論したことは一度もありません。(内輪で愚痴をこぼすくらいしかできません)



下手くそは「下手くそ」と言われてしまうのは、どこの世界でも同じです。その評価を胸に、次回の著作に活かすということしかありません。


ただ、今回の星ひとつのレビューについては、一言だけ言わせていただくと



読んでないでしょ?


という感想を抱きました。もし読んでいただけていれば、あのような感想にはならないはずだからです(たとえ評価は低くても)。



そもそも、私さんざんこの本では、役所の方やカルチュア・コンビニエンス・クラブをはじめとした民間事業者の方を批判した格好になっていますので


そちらの関係者の方からしてみれば、こんなこと書かれてはとても我慢ならないと思われるのは当然のことでしょう。


なので、これからも厳しい評価を、どしどしいただくんだろうなあと、いまから覚悟をしているところです。




さて、新刊の売れ行きのほうは、おかげさまで絶好調といいたいところですが、やはりコミックや小説のように、わかりやすい物語的な面白さがありませんので、派手な動きはありません。情報公開制度とか図書館運営に関心のある人でないと、手にとってみようとはなかなか思われないので、「静かなブームをよんでいる」みたいなことでしょうか。


そうこうしているうちに、さきほど版元の編集者から連絡がありまして、


台湾の大手出版社から、今回の拙著の翻訳版を出したいというオファーがきたそうなんです。


詳細なことは、これから詰めていくと思いますが、情報公開の制度や行政運営が日本とは異なるお隣の国で、このような本が果たして受入られるのだろうかと思いました。


私が長年かかわっているビジネス書籍の分野では、韓国はじめとしたアジアに翻訳版が刊行されることは結構あり、私も過去に何度か、ほかの著者の方の構成をお手伝いしたものでは、翻訳版が出たことはありましたが、それはビジネスマネジメントや自己啓発の関する本でしたので、他国でも通用する内容でした。


しかし、黒塗り公文書に関するレポートが他国でも関心を持たれるというのは、かなり意外でした。台湾では、どのような受け止められ方があるのでしょうか。


そうなりますと、この本に書いている自治体とか企業さんのことが、海外にも知れ渡ることになりますので、関係者の皆さまにとっては、ますます戦々恐々ではないでしょうか。


いやいや、どうせ国内でもたいして話題になってないから、ぜんぜん平気


そう思っていただいたほうが、いいのかなと思いました。


とりあえず、本日のご報告は以上です。


よろしくお願いいたします。


【関連記事】


「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)












2024年11月1日金曜日

和歌山市・CCC選定会議の議事録を入手しました

 

こんにちは、日向です。


 2020年6月に、全国で6番目のツタヤ図書館としてグランドオープンした和歌山市民図書館の指定管理が、今年4月から二期目に突入しました(CCCによる指定管理は前年12月から)。どれだけ不祥事・疑惑が続出しようとも、行政側は、何事もなかったかのように自画自賛しまくるといいますか、耳に逆らう話はすべてスルーか隠蔽(ないと断言していた文書があとから出てきたり)していくさまは、もはや「官民癒着の殿堂」としての“風格”さえ漂っているようにみえます。

 さて、新刊刊行のために、このところ疎かにしておりましたツタヤ図書館ネタを少しずつ再開していきたいと思います。


その第一弾として、とりあげたいのが昨年7月7日に、ひっそりと開催されていた指定管理者選定委員会の議事録についてです。昨年11月に市民の方が開示請求されたものを入手していました。







議事録本体は文末に画像で貼り付けておきますので、のちほどじっくり、ご笑覧いただければ、これは、ただのセレモニーにすぎない「ヤラセ委員会」であることがよくおわかりいただけるとか思います。なんといっても、応募事業者がCCC一社のみなんです。これ以上ないほどの茶番ではないでしょうか。そもそも、民間委託って、企業間の競争原理が働いて、より安いい費用で、より高い成果が得られるってことではなかったのでしょうか。癒着が疑われて、どこも応募してこなければ、CCCの独占というか、食い物として、市民は直営時代よりもバカ高い運営費を、永久に負担させられつづけることになってしまいます。


当ブログでは、すでに一昨年11月から開催されていた図書館運営審議会が実質的なCCC選定会議(審議会委員と選定委員が一部ダブってます)となっていて、その場で、CCCにデタラメな実績アピールをさせることで「次期の5年間もCCCに任せる」下地づくりをしているんだろうと指摘していました。その予測があたっていたことを如実に物語る、お寒い“ヤラセ会議”であることがおわかりいただけるのではないかと思います。

館長の名前が黒塗りされた図書館の会議録 からつづく連載記事で、これまでの経緯を詳しくレポートしています)

で、今回、どうしても私が書いておきたいと思ったのは、この議事録の黒塗りのなかに、とんでもなく市民無視の痕跡がみつかったからです。一言で言えば、和歌山市民が1000日かかって、ようやく変えさせた黒塗りのルールがまた元に戻っているんです。


下をみてください。委員の名前はもちろん、プレゼンを行なった事業者サイドの担当者名までもが、ひとりの例外もなく全員黒塗りされています。(事務局となった市教委の職員をのぞく)




プレゼンをしたCCCの担当者名の非開示理由は「個人情報」だった。


次に、下をみてください。こちらは、2017年12月に開示された指定管理者選定プロセスにかかわる公文書が、黒塗りだらけだったことから、市民団体の方たちが翌年2月に審査請求をしまして、約3年かけて2020年11月の審査会の答申によって、一部黒塗りを外させることができた成果のひとつで、プレゼンしている人の名前(CCC高橋氏)が出ています。





つまり、2020年11月に和歌山市の情報公開審査会が「こういうところは開示すべき」とした答申を受けて確定したはずの新しいルールが守られておらず、また元の木阿弥に戻っているようなんです。裁判にたとえれば、判決が確定して判例となったはずが、再度同様の事案では正反対の判決が出ているのと同じです。「市民による1000日の戦い」が水泡に帰したということになり、「文句があるなら再度審査請求でもなんでもしてこいよ」というようなとんでもなく酷い話なんです。それで再度審査請求したら、また結果が出るまで3年とかかかるんでしょうか? 


さすがに、すでに終わったこととはいえ、これは看過できないと思い、和歌山市の情報公開を担当する総務部の市政情報班に電話して「こんなおかしなことがあっていいのか?」と不満をぶちまけました。


すると市政情報班では「こちらでは、選定会議議事録の開示についての詳細把握していない。(えっ、確認して助言してるでしょ?)あくまでも担当の読書活動推進課の判断でそうなっている」とおっしゃるばかりで、私が指摘している2020年に出た審査会の答申第46号の内容については「当時非常に重要な内容だったので頭に入っている。そこで指摘されたことと異なる開示がされたとは思えない。もしそのように感じるとしたら、なにか別の理由があると思うので、直接読書活動推進課に直接聞いてほしい」というような回答でした。


担当の読書活動推進課には、まだ連絡が取れておりませんが、読書活動といえば、課長さんが「その期間の除籍関連資料は不存在です」と大見得を切っていたのに、図書原簿に「返本」と手書きされた資料を突き付けられると、あとから渋々CCCの顛末書を出してきたところですから、またなんか不誠実でテキトーな言い訳するんだろうなと思うと、いまからゲンナリしています。


改めて当時の審査会答申書を詳しく検討してみましたところ、2020年の審議会答申を受けて翌年に開示した会議録で開示した事業者の担当者名を、二期目の選定委員会では黒塗りにした理由として、唯一考えられるのは、担当者が違っているのではないかということでした。


つまり、CCCが、いつも選定委員会でプレゼンを担当するのは、公共部門の責任者である高橋聡氏ですが、もしかして、第二期である昨年7月の選定委員会では、別の人物だったのではないかという疑惑が浮上してきました。


といいますのも、答申第46号では、事業者サイドの担当者名を開示すべきとしたのは、「法人の代表者(関連子会社の社長)だから」という珍妙な理由でしたので、今回は、別の人物なら「法人の代表者ではないので非開示にした」という言い訳が成り立つからです。


しかし、いちばん重要な選定会議のプレゼンで、高橋氏の部下が出てくるとは思えません。もし部下が出てきていたとしたら、応募さえすれば黙っていても選定されると和歌山市をなめきっているのでしょうか。高橋氏といえば、最近は「内閣府地域活性化伝道師」として全国各地の地方創生シンポジウムの講師として飛び回っています。

すでに二期目も無風で決まっている和歌山市などは、カンパニー長自ら出ずとも、部下に任せておいた、ということなのでしょうか。まさか、そんなことはないと思います。

たとえそうだとしても、プレゼン者の名前を黒塗りすることは、とんでもなくおかしな行為です。2021年に答申を受けて開示した議事録には、法人の代表者ではないと思われるTRC図書館流通センターのプレゼン者の名前も開示されていますので。





それからもうひとつ、2020年の答申第46号では、委員の発言を闇雲に非開示にするのではなく、条例の非開示にしてもいい例外規定には該当しないと思われるものは、たとえ開示することで「委員名が特定されるおそれがあるとしても開示すべき」となっていましたが、今回の選定会議議事録では、この答申を十分に踏まておらえず、委員の発言を丸ごと黒塗りにしている箇所がみられました。







和歌山市情報公開・個人情報保護審査会答申 (答申第46号)より抜粋



そもそも選定委員を委嘱された有識者の方たちは、当然、和歌山市から報酬をもらって意見を述べている(臨時的な特別職の公務員?)わけですから、よほどセンシティプな問題、たとえば、これを言ったら右翼とか反社の人に攻撃されてしまうよというような内容でもない限り、発言者を伏せないといけないような必要性はみあたりません。


議事録を読まれたらわかると思いますが、ほとんどがどうでもいいような発言しかしていませんし、しかも応募は一社しかなく、すでにCCCが選定されることは決定的な状況のシャンシャン会議です。なのに、個別の発言についての委員名はことごとく黒塗りなんて、いったいいつまで、そんなふざけたことを続けているんだろうなと、怒りたくなりますね。


市民の知る権利を守るために、情報公開制度を積極的に推進していく


という建前すらもかなぐり捨てて、彼らが守っているものって、いったいなんなんでしょうか。


若い職員さんたちは、まさか、公文書を黒く塗りたくるために、役所に入ったわけないですよね。


いま一度自分たちが、市民から求められているものはなんなんかを、じっくりと考えてみてほしいと思います。


よろしくお願いいたします。


【11/02 10時追記】昨日の第一稿では、発言ごとの選定委員の名前について、2020年の答申第46号で一部開示すべきとされていたのに、それを受けて市教委が開示した議事録では、この答申内容を無視していたと書きましたが、その認識は間違いでした。答申第46号では、「支障のない範囲で委員名を出すべき」という主旨ではなく、各委員の発言を丸ごと黒塗りにするのは条例の主旨にそってない、たとえ発言内容から委員名が特定できたとしても、その発言に不開示理由に該当するものがなければ、その発言部分は開示すべきと指摘している(つまり委員名の黒塗り自体は容認していた)にすぎませんでした。そのため該当部分を一部修正しました。


【11/02 11時】末尾に掲載した議事録の画像が読みにかったため、見開きにして、少しマシな画像と差し替えました。


【最近の記事】





















2024年10月25日金曜日

“黒塗り”をください♪

 

こんにちは、日向です。


本日も、新刊のテーマである「黒塗り公文書」についての話題をひとつ取り上げたいと思います。



「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)




行政について知りたいことを自治体に開示請求(申出)すると、ふつうは、担当課が該当する文書を探してくれて「こういうのがありましたよ」と、公文書が開示されるわけですが、


個人情報だったり、民間の企業秘密だったりする箇所については、例外的に非開示にしてもいいとされている条例の規定にのっとって(現実には、この例外規定を拡大解釈して片っ端から)黒塗りされて開示されるようになっています。


ところが、まったくもって本末転倒なのですが、この手続を真逆にして、いきなり自治体に「黒塗りした文書を出してください」という、おかしな開示請求をしたことがあります。


下をみてください。


これがその開示請求に対する回答です。





公開を拒否する


となっていて、その理由として


「保存期間を過ぎたことで廃棄しており、不存在のため」


と書かれています。


ほかの自治体でしたら、単に「非開示」と回答するところを、わざわざ「公開を拒否する」という強い調子のフォーマットになっているのは、神奈川県平塚市です。



ちなみに、私が開示請求をしたのは、すでに平塚市が市民へ黒塗りで開示した文書と、その市民が審査請求をした結果、黒塗りが一部外された文書をセットにしたもの。


要するに、開示された黒塗り文書に不服の申立がされ、審査会による「黒塗りは一部外して開示しなさい」という答申を受けて、実施機関(自治体の担当課)が渋々開示した案件について、


その開示までのブロセスが一通りわかる文書を全部出してください、と請求したわけなんです。


結果は、すでに捨てちゃったので、開示できません、というものでした。



市民から不服を申し立てる審査請求を受けて、専門家が開示の是非を検討した情報公開審査会による答申は、情報公開の担当課のページに、キチンと公開はされていましたが、そこには、当初黒塗りされた文書はもちろん、審査会の答申を経て、一部黒塗りが外された文書も掲載されていませんでした。


大半の市町村では、役所は情報公開制度運用のために専任の職員を配置して、市民の要請にも丁寧に答えているかのような体裁をとってはいるものの、その世界に一歩足を踏み入れてみると、とんでもなく内実を伴わない酷い運用実態だということがわかってきました。


いったいなにを黒塗りして、その後、なにが開示されたのかという事件の全容がほとんどなにもわからないようになっているんです。担当課としたら、批判を受けそうなヤバイ文書は、一刻も早く廃棄したいでしょうから、結論が出たあとから、ノコノコと第三者が開示請求なんかしたって無駄だったんです。



なんでこんなことをしたのかといいますと、新刊を書くにあたって、自分が日常的にやりとりをしているツタヤ誘致自治体に限らず、全国で起きている黒塗り公文書が出た事件をなるべく多く集めて分析してみたいと思ったからです。


全国各地で出された黒塗り公文書を調べているうちに、神奈川県平塚市で、黒塗りが外れたケースがあったことを2017年11月の毎日新聞が報じていたことを知ったのがきっかけでした。


平塚市の情報公開について報じた2017年11月の毎日新聞の記事。有料会員になって該当記事を探したがみつからなかったため、毎日新聞に問い合わせたところ、地方版の記事であることが判明。






東京都の葛西臨海水族園のように、改修計画に関して大量の黒塗り公文書が開示されたことが、すでに大きなニュースになっている場合は、その事業プロセスがわかるものとして開示請求をかければ、黒塗り文書だけは入手できます。


ところが、平塚市のように、すでに審査会をへて黒塗り部分が一部開示になった文書というのは、どこにも公開されていないうえ、すでに文書そのものも廃棄されているなど、当事者でないと、なかなか入手できないんですね、


世の中には、役所が黒塗り文書を出してくる事案は無数にありそうだから、いろんなケースの黒塗り文書を入手して類型別に分析・研究することができるはずと思っていた私の考えが浅はかだったということを痛感する結果となりました。



そこで、平塚市でこの公文書を請求した問題に関与している市民団体を探して、その関係者の方にお願いしてみることにしました。


黒塗りされた公文書の事案について、snsなどで情報発信をされている市民団体の関係者の方に、「開示された文書をみたいのですが、どなたか、それをお持ちの方をご存じないでしょうか?」という旨を依頼したメールを出してみところ、


幸運にも、すぐに「わかりました。探してみます」とのご返事をいただきました。それから一週間ほどした頃に、当初黒塗りされた文書と、審査請求を経て、黒塗りが一部外れた文書のコピーをセットでお送りいただいたという経緯でした。


下をみてください。まず、これが当初黒塗りで出てきた文書の一覧です。




企業の提案書の一部らしく、肝心の箇所は、ことごとく黒塗りされていました。


そして、審査会にかけられた結果「こんなに黒塗りするのは不適切、ココとココはちゃんと開示しなさい」と言われた結果、出てきたのが、以下の文書です。





ほんの一部だけ抜き出したものなんですが、黒塗りされているから、さぞや人に知られたら困る重要な内容が書いてあるのかと思ったら、なんのことはない、ほとんどが、ただの配置図でした。


えっ、こんなものが企業秘密?


そう目を疑うものばかりでした。



最近はツタヤ自治体でも、よく取り入れられる「マーケット・サウンディング調査」という名目で、企業側が気軽に自社のアイデアを提案できる手法。「対話」を通じて市場性等を把握するのが目的で、正式なプロポーザルではないとされているためか、多くの自治体では、幅広く、いろんな事業者から、施設活用などについてカジュアルにアイデアを募集している手前、それがすべて市民に開示されるのはマズイという気持ちになるのはわからないでもないです。


しかし、だからといって、企業秘密でもなんでもないものまで、ことごとく真っ黒に塗って出してくるというのは、いかがなものかと思いますね。


そういうふうに闇雲に黒塗りするのは、あきらかに条例の主旨に反するので、一部は開示しなさいと、平塚市情報公開審査会が答申を出してくるのは、当然と言えば当然のことなのでしょう。


このへんの詳細については新刊で、専門家の見解を詳しく解説していますので、興味のある方は、ぜひ平塚市情報公開審査会の答申内容とともに、そちらをご参照ください。



 さて、平塚市の市民の方が開示請求して黒塗りになったのは、どういう事案だったのかということも文末に簡単に説明しておきます。(新刊の草稿の一部。ページ数オーバーのためゲラで一部削除した文章です)


 一言で言えば、いま全国各地で行われている「稼げる公園」プロジェクトです。ちなみに、平塚市のこのプロジェクトは、市民団体の方々の運動のかいあって、いまだに市長の思う通りには進んでいません。


【平塚市で起きた黒塗り公文書事件】

 平塚市は、2017年に、国道134号線沿いの海岸林を含む公園整備計画を発表した。もともとは、市民から要望のあった、プール跡地を整備する計画だったが、Park-PFIの制度を利用するために、一定以上の面積が必要だったため、隣接する海岸林エリアを対象区域に加えることで開発面積の基準をクリアする計画案を作成した。これが不幸の始まり。

 海岸林は、大規模な地震による津波から住民を守り、また海岸の塩・砂・風を防ぐ防砂林としての機能を長年果たしており、またその景観も市民にとっては、貴重な財産である。それにもかかわらず、市長がロクに市民の意見も聞かずに、海岸林エリアの樹木を伐採して、なにもない無味乾燥な公園にしようとしている。そんな計画を市民は了承していない。そう思った市民団体が、署名活動などの反対運動を繰り広げるに至ったのである。

 この事業の経緯のなかで、とりわけ興味深いのが公文書の開示問題だった。ことの経緯に不審を抱いた市民が2018年10月12日「平成29年度実施 龍城ケ丘ゾーン公園整備に関るマーケットサウンディング結果に関する資料一式」を市に対して開示請求したところ出てきたのが下の画像の書面である。

 ざっくばらんに事業者の意見を聞くサウンディング市場調査という手法ではあるものの、中身は正式な提案書となんら変わらない。

 平塚市は、その提案書のなかの建築物及び駐車場の配置を示すイメージ図を丸ごと不開示とした。

開示しなくてもよい例外として条例に定められている「提案した法人の競争上の地位その他正当な利益を害する」(要するに企業秘密)を根拠にした不開示だった。

 請求者がすぐに「不開示はおかしい、すべて開示すべきだ」として、不服を申し立てる審査請求を行なったところ、平塚市の情報公開審査会にかけられた。弁護士など有識者によって構成される審査会が審議した結果、翌年2019年4月24日、市が丸ごと非開示とした「建築物及び駐車場の配置を示すイメージ図」を開示すべきとの答申を出したのだった。


「黒塗り公文書」の闇を暴く (朝日新書) 新書 – 2024/10/11 日向 咲嗣 (著)




※今回のタイトルは、「水割りをくださーい♪」で有名な“メモリーグラス 堀江淳 1976年 ”(https://www.youtube.com/watch?v=R3Hxw7SU4qk)から着想しました。