2025年8月8日金曜日

BJアーカイブ第4回・武雄市が小学生にTカード勧誘の衝撃(2015年12月18日)

 

こんにちは、日向です。


先月末からはじめましたBJアーカイブですが、その第4回は、ツタヤ図書館の3大デメリットのひとつであるTカードについです。


CCCが自社の商売で展開しているTポトントカードを、同社運営の図書館では借り出しをする際の利用カードとして使えるようにしていました。それだけでなく、武雄市や高梁市では、Tポトントカード(T機能付き利用カード含む)を使って、自動貸し出し機で貸し出し処理を行うと、Tポトントがつくというトンデモないことまで行っていました。


Tポトントがつくということは、当然、誰がいつ何を借りたかというデータをCCCが保有することになります。図書館にとって、利用者の貸し出しデータは、このうえもなくセンシティブな扱いを受けるはずなのに、平気でその規制を破ってしまっていたのです。


2013年に武雄市で第一号がオープンした当初から、図書館利用者の貸出しデータを館外に持ち出してしまう不適切な行為(図書館の自由に関する宣言にある「利用者の秘密を守る」に抵触)として、かなり強い批判を浴びていたのですが、いくら批判されても、CCCは図書館でのTカード機能付加を一向にあらためることはありませんでした。


それもそのはず。Tポトントカードを使えるようにすれば、受託した自治体で、新たにTカードを作成する市民が激増し、図図書館利用カードとのダブルカードにしてしまえば、市民がつくるTカードの作成費用も丸々自治体が負担してくれるから、こんなにおいしい話はありません。


その批判のひとつとして、このとき私が取り上げたのが武雄市が小学生に学校の中、それも教室でTカードを勧誘しているかのような常態になっていた事件についでした。


すでにBJでは消されていますので、今回、2015年12月18日の記事を以下に再録しておきます。


なお、和歌山市民図書館では、Tポトントカードは、昨年4月以降、すでに使えなくなっています。



 

ツタヤ図書館、市が全小学生にTカード加入の勧誘疑惑?教育委員会「問題ない」

武雄市図書館の利用カード(「武雄市図書館 HP」より)
 ごく普通の人による、ごく普通の日常を綴ったブログ。

 2年半前にリニューアルされて全国的に話題になった図書館のある佐賀県武雄市に住んでいるが、件の図書館についての記述はほとんどなかった。ツイッターでも、あの事件が起きるまで、図書館に関して積極的につぶやいてはいなかった。なぜなら、不用意なツイートをしてしまうと、人口5万人の小さな町ゆえ、個人が特定されてリアルの生活に支障をきたすおそれがあるためだと、ブログには書かれている。現に、そうなった人を何人も見てきているらしい。

 事件が起きたのは2月末のことだった。そんな人物がツイッターで瞬間的に沸騰した声を上げたのだ。

「なんだぁぁぁこりゃぁぁぁ!!! 」

 このツイートには、「武雄市内の小学生 保護者各位」と題された1枚のプリントの写真が添付されている。

「このたび、武雄市内児童の読書推進を目的として 武雄市図書館の利用カードの一斉作成をすることになりました」

 あたかも強制であるかのように書かれたプリントでは、「すでにお子様が図書館カードを作成されている方はお申し込みの必要はありません」と、作成していない人は申し込みが必須のように前置きしたうえで、こんな指示が書かれていた。

「作成いただくカードは2種類のタイプからお選びいただけます。A.図書利用カード B.図書利用カード(ポイント付き)」

 どちらを選択した場合でも、登録申込書と父兄の同意書の提出が必要で、さらにBの「ポイント付き」を選択した場合には、登録申込書の上段の「右規約に同意します」にチェックを入れるよう指示されている。2月末に配布され、提出期限は3月6日となっていた。

「ポイント付き」とは、武雄市図書館が公式採用しているTポイント機能がついた図書貸し出しカードのことだ。

「まさか、学校を通して市内の全児童にTカードをつくらせようとしているのか」と疑問に思われる人も多いだろう。その「まさか」が本当に起きたのである。

公立小学校全体で私企業の利益を後押しする異常さ

 Tカードは、レンタルショップのTSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開するTポイントサービスを利用するためのカードだ。提携する店で買い物や飲食するとTポイントがたまり、それを加盟店でも使える。CCCが運営する武雄市図書館の場合、無料で本を借りてもポイントがつく。

 Tカードは、CCCの主力事業のひとつだ。会員は、提携店を利用してポイントをもらえる代わりに、日々の行動履歴データは、CCCにすべて補足されることになる。CCCは、そのデータを自社のありとあらゆる部門の経営に生かすと同時に、提携企業にも個人情報を除いたデータを提供することで収益を上げる。

 そんな完全に私的な事業を、市内の学校をあげてサポートしているかのような出来事に少なからぬ父兄が強い違和感を覚え、同時に子供の個人情報までも根こそぎ一民間企業に補足されることに対して底知れぬ恐怖を抱いただろう。

 実際、この事実をツイートした人は、この後、それまで抑制していた武雄市図書館の指定管理者であるCCCに対する反感をあらわにすることになる。

 インターネット上では、このプリントについて、当初「いくらなんでも市の教育委員会がそんな公私混同なことするわけない。おそらく怪文書だろう」との見方も出ていた。しかし、やがてそれが本当に小学校で配布されたプリントであることが判明すると、そのあまりの配慮のなさに批判が殺到することとなったのは、ごく自然のなりゆきだろう。

 武雄市教育委員会に事実関係を確認したところ、「確かにそのような文書を配布したが、事前に各学校の校長には任意である旨を説明していたので、問題があったという認識はない」とのこと。

 そもそも「武雄市では、図書館が指定管理になる前から、児童・生徒の利便性のために、定期的に学校で一括してカード作成する機会を設けていて、今年だけのことではない」という。そこで「では、毎年の恒例行事なのか」と質問したところ、「いや、ここ数年は行っていなかった」と説得力がない回答をする。

 教育委員会は「この件について、直接、教育委員会への保護者【※1】からのクレームは特になかった」と説明しており、ネットでの反応とはあまりにも落差が大きい。

 しかし、東京都内の学校関係者にも取材したところ、「調べ学習のため、クラスごとに団体カードをつくることはありますが、読書推進活動の一貫として、教育委員会が全児童個人に図書館のカードを作成させるようなことは、まずあり得ない」と断言し、「まして、一民間企業の利益になると疑われるようなことをするとは信じられない」と驚く。


カード作成の何が問題なのか

 問題なのは、まず「ポイント付きカード」を希望するかどうかを市内の各世帯に選択させた大量のデータを、市が一時的にせよ保持することになった点である。

 なぜならば、「ポイント付きカードを希望した」人は、前市長が役所をあげて推進した新図書館事業を支持する「賛成派」とみることができ、「ポイント付きを希望しない」人やカードの作成を申し込まなかった人は「反対派」であるとの“踏み絵”をさせられるように感じた人もいただろう。

 門外漢にとっては、まったく荒唐無稽な話だが、一連の騒動によって、それくらい市民はナーバスになっている。場合によっては、「ポイント付き」を選ぶ生徒が多いクラスでは、同調圧力がかかるかもしれない。

 そして何より、ポイントの付くカードを作成することで、2013年にCCCが図書館の指定管理者と決まってから指摘され続けてきた問題があらためて浮かび上がってくる。それは、公共図書館において、これまで不可侵とされてきた個人の貸出(読書)履歴情報保護だ。

 どんな本を借りたかというのは、人に知られたくない個人情報として厳密に管理されるからこそ、我々は安心して公共図書館を利用できるのだか、その情報が第三者によって密かに収集されているとしたら、こんなに気味の悪いことはない。

 CCCは、借りた本の書名はもちろん、個人を特定される情報はCCC側に一切保存されないと説明しているが、カード発行時に個人情報を登録している以上、利用者はマイナンバー制度同様、個人情報について漠然とした不安を拭いきれない。

 また、未成年の場合、保護者が一度規約に同意してしまえば、将来成人してからも、自分で削除要請を出さない限り、行動履歴を延々と収集・蓄積され続ける懸念を指摘する声もある。

 子供の個人情報に関しては、昨年、最大2070万件もの顧客情報が流出して大問題となったベネッセの事件を持ち出すまでもなく、ありとあらゆる事業者にとってのどから手が出るほど欲しい「宝の山」である。その取り扱いは相当に慎重を期させないといけないなかで、教育現場で一民間企業のポイントカード会員獲得を代行するなど前代未聞である。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト


【※1】当初「父兄」としていたが、記事掲載直後から「いまはそのような表現は使わない」との指摘があり「保護者」とした。





CCC受託実績を読む~うるま市、高山市、紫波町、経産省~

 

こんにちは、日向です。


につづきまして、本日も、最近、CCCが受託した自治体の事例について書いておきたいと思います。


下の表をみてください。先日の一覧表では漏れていたCCC受託自治体一覧の追加がこれです。






4つの自治体とひとつの政府機関、計5案件が漏れていました。


埼玉県春日部市だけはすでに別エントリーで詳しく取り上げましたので、今回は、そのほかの4案件について、駆け足でみていきたいと思います。


●読谷村に次ぐPFI採用したうるま市


まず、4案件のなかでもすでに確定しているのが、沖縄県うるま市です。こちらは、世界遺産・勝連城跡周辺の整備事業をPFI方式で進められていて、公募が発表されたのが一昨年2023年11月、事業者選定が発表されたのが昨年2024年8月でした。


年間約18万人の観光客が訪れる勝連城跡は、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つ。周辺整備が不十分なため、観光消費・地域活性化につながっていないとして、民間資金とノウハウによって周辺を整備しようという事業らしいのです。


しかし、観光資源を活用した賑わしい創出という点でCCCにはとりたてて、過去になんの実績はないと思うのですが、なぜか、応募のあった3グループのなかで、CCCが「協力企業」として参画している事業者グループが選定されました。(代表企業:株式会社トータルシティービル管理)


武雄市図書館・歴史資料館などは、コロナ前から海外からのインバウンド客が観光バスで大量に見学に来ていると言われていましたので、中身関係なく「雰囲気のいい施設」として図書館を広めてきた経験と実績が高く評価されたんだろうと思います。まぁ、その“ハリボテを流行させた実績”からすれば、本物の世界遺産などの集客もいとも簡単にできてしまうと思われてのでしょう、きっと。


うるま市は、読谷村に次ぐ沖縄県内2例目のPFIです。読谷村の事業プロセスを詳しくみてきた経験から言えば、「建設と運営を合体させたPFI方式にすれば、自治体は、一切合切をコンサルタントに任せられるので、なんでもアリ」という印象です。




https://web.archive.org/web/20240112023748/https://www.city.uruma.lg.jp/1002003000/contents/p000001.html


●いきなり運営者を選定した高山市


一方、一般的なまちづくり案件ととらえた場合、これぞ公設ツタヤの典型的な手法ではないかと思ったのが岐阜県高山市です。


「飛騨高山」で知られる高山市では、高山駅西地区のまちづくりの方向性を決める市民アンケートやワークショップを2022年からスタート。このプロセスを経て、2023年5月には、文化術機能、生涯学習機能、子育て支援機能などを備えた複合施設の整備を盛り込んだ基本構想を策定。


驚くのは、この後です。ふつうなら、どのような公共施設を整備するのかを正式決定したうえで、それら施設の基本設計とか実施設計に進むはずですが、高山市は、なんといきなり


維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者


を公募型プロポーザルで募集したんです。


つまり、なにとなにをどこにつくるか、どうつくるかという話を、すべてすっ飛ばして、いきなり運営業者を決めたんです。それが今年3月のこと。


選定されたのは、企業イベント、国際会議のプロデュースを主な事業とするJTB コミュニケーションデザインを代表企業とし、構成団体としてカルチュア・コンビニエンス・クラブが入った企業グループでした。応募は2社あったものの、そのうち一社は参加資格を満たしていないとされて失格となったため実質的には1グループのみ提案審査というお寒い状況でした。


埼玉県春日部市の場合も、どんな公共施設をつくるかは未定のままでしたが、さすがに、いきなり運営者を選定するなんて野蛮なこと(?)はしてませんでした。春日部市は、あくまでも事業計画を立案するための「構築等支援業務」委託です。


それが、高山市の場合は、とにかくなにをつくるかも含めて提案してよ、そしたら、設計から運営もすべて任せるから。


と言ってるようなものですね。


選定されたCCCグループの提案書概要をみますと、


市民と共に育む、開かれた「まちのリビング」

人々が笑顔で集い、日常の中に新たなわくわくした発見と出会いが提供される

「高山市らしい賑わいと文化の拠点」として、未来にわたって愛される場を創造し続けます。


――などとなっていて、いつもの“CCC節”が炸裂していました。「まちのリビング」というキーワードは、坂出市でも使ってましたね。だんだん使いまわしがバレてきたような気がします。


https://www.city.takayama.lg.jp/shisei/1000061/1016569/1021674.html より



で、飛騨の高山市ですが、特にうるま市のように観光資源を活かした、外からの人を呼び込む「にぎわい創出」ではなく、文化ホールか子育て支援施設など、あくまでも市民を対象にしたまちづくりになっています。


それにしても「建物の設計の前に、いきなり運営者を決めるなんておかしいのでは?」と高山市の担当課に聞いてみましたところ「ただのハコモノではなく、市民本位の事業にするためには、先に運営者を決めて、その意向を設計等に反映したほうがよりいいものになる」というようなことをおっしゃってました。


そこで「いきなり運営者を決めて施設をつくった自治体で、参考にしたのはどこ?」と聞いてみましたところ、担当の方がこう答えたのにもビックリしました。


大阪府門真市です。


まさに、ピンポンですね。来年春に新しいツタヤ図書館としてオープンする予定なのが門真市です。このPFIでもないのに、事業者が自分たちのやりたいように公共施設をつくる「デザインビルド」を可能にするスキームこそが、ツタヤ図書館方式なんですから。


●あのオガールの町・紫波町がCCCを選定


さて、高山市で驚いていたところに、もうひとつ自治体あったなぁと思って調べたのが岩手県紫波町(しわちょう)です。


ここは運営事業者の選定ではなく、温泉保養公園の再整備に関する計画でした。古くなった温泉保養施設の周辺を再整備する計画で、その基本構想等を策定してくれる事業者を公募したところ、CCCが選定されたということらしいんですが、応募事業者は、CCC一社のみ。なぜかどこも関心を抱かなかったというこれまた、寒ーい案件です。


ここで、でも、まてよ。「しわちょう」って聞いたことあるな。そう思って検索してみたら、これまたビックリ仰天。図書館関係者でしたら、知らない人がいない、あの「オガール」がある町なんです。


オガールといえば「小さな町が、国の補助金に頼らず、官民連携プロジェクトで、すばらしい図書館をつくった」というサクセスストーリーが有名です。


複合施設のなかに、図書館や地域興隆センター、子育て支援施設を設置して、カフェなど民間店舗も集積したまちづくりとして2012年頃から話題になり、全国から視察がひきもきらない、成功事例として超有名なまちでした。


そんな町が、温泉保養施設の再整備計画をCCCに任せるということ自体が、どうなってんの?という話です。不可解としかいいようがありません。


私は、紫波町の「オガール」が官民連携のお手本だとは思いません。「成功事例」だとも思いません。たまたま地域の人が知恵を出し合った結果、地域の人が望むようなまちづくりができたという意味では成功なんでしょうけれど。


それは、オシャレな雰囲気のブックカフェ図書館をまるごと誘致するために、都会の企業に、なにからなにまで丸投げしてしまったツタヤ誘誘致自治体とは対極にある事例だと思います。紫波町は、CCCに何を望んているのでしょうか? 


担当課聞いてみると、具体的になにをどうするかは、まだなにも決まっておらず、現在、温泉保養施設を運営している地元事業者がいるとのことなので、それを簡単にCCCに変えるということも考えづらい。このまま話が進むとも思えませんが、果たしてどうなるのでしょうか。


●“ツタヤ図書館方式”を採用した経済産業省


さて、トリはなんといっても、政府機関のツタヤ店舗です。経済産業省別館の、誰でも利用できるオープンな共創空間「ベツイチ」にカフェ「霞が関珈琲」が、この8月にオープン。これを運営しているのがCCCらしいんです。


国の建物で民間事業者が店舗を出すんですから、当然、なにかしら公募を経て選定されたんだろうと経産省に直辣問い合わせてみましたところ、その経緯がわかるページを教えてくれました。


https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/koji/2025/20250220.html



与党の大物議員ともツーカーの間柄と言われるCCCグループの総帥・増田宗昭御大のことですから、コンペなど経ずとも、おいしい話が自動的に転がり込むのではないかと思っていたので、ちょっと意外でした。


そりゃあ、そうですよね。コンペですよね。


そう思って、募集要項をパラパラみていたら、あれれっと思う内容が次々と出てくるてのはありませんか。


募集開始が2/20、応募締め切りが3/13と、3週間しかない。土日を除けば、10日もないかも。この募集情報を知ってすぐ準備して応募できた事業者は、いったい何社あったのでしょうか?


また、ツタヤ誘致自治体でもいつも問題になる賃料ですか、



これがなんと


1平米あたり1,830円!


コーヒースタンド(厨房・カウンター)・物販店舗(陳列棚) 12.09㎡、バックヤード12.08㎡を足すと計24.17㎡


これに1,830円をかけると、カフェ店舗の月当りの賃料は、4万4,231円!





黙っていても、庁舎内で働く人たちがきてくれる霞が関の一等地お店の賃料が、たったの4万円だそうです。


もともと単価が安いうえに、厨房とカウンター、陳列棚のみ賃料の対象なんですから、そりゃあ激安になりますよね。


ちなみ、この募集要項には、こんな但し書きがついています。


【参考】

○ロビーホール(貸与外)店舗周辺約220㎡(席数約45程度)

・ホールについては使用許可対象外であり、職員の共用スペースとなるが、使用許可を受けた場所で給したものを飲食させることを妨げるものではない。


つまり、45席あるロビーホールについては、そこで客が飲食してもオッケーということは実質店舗の席と同じになるわけで、そこが賃料無料なんです。


これぞまさしく、「ツタヤ図書館方式」と言ってもいい、法の抜け道を駆使した裏技ではないでしょうか。


おそらく、政府機関にも、これからCCCはどんどん進出していくものと思われます。



というわけで、最近の公共分野におけるCCC受託案件をざっとみてきた感想としては、


smbcにアピールするために、相当焦っているのかな、


と思いました。


海外店舗や、頼みの綱のシェアラウンジも、いまいちぱっとしないと言われるなか「CCC復活」を手っ取り早くアピールするためには、公共部門でお得意の「官民連携成功事例」としてメデイアに取り上げてもらうのが近道だと思っているのではないかな


そんな感想を抱きました。


一方の自治体サイドは、特になにか考えているわけではなく、これまで通り、地方創生コンサルタントに言われるままに、「過疎ビジネス」の餌食になっているような印象です。


ということで、本日は、ここまでにします。


よろしくお願いいたします。



2025年8月5日火曜日

BJアーカイブ第3回・指定管理制度のデメリット(2015年12月9日)

 

こんにちは、日向です。


本日は、先月末からはじめましたBJアーカイブの第三回目を掲載したいと思います。


すでにBJサイトでは消されていましたので、取り急ぎ、魚拓(https://web.archive.org/)されていた記事を以下に再録しておきます。


掲載日は、2015年12月9日です。2015年12月だけでも、これで3本めの記事。実は、この後さらに、2本掲載されていますので、この月だけでも合計5本、BJにはツタヤ図書館関連の記事が掲載されていたことになります。


当時、武雄市のクズ本問題から始まって、住民訴訟へ発展し、海老名市でも独自分類が大混乱を引き起こし、愛知県小牧市に至っては、住民投票によるツタヤ計画否決と、これでもかというほど、炎上案件がつづいていたため、ツタヤ図書館問題は世間の関心が高かったということなんだろうと思います。


今回紹介する記事は、前の2本からのつづきではありませんが、以前から、私が書きたかった、図書館における指定管理制度のデメリットについて解説しています。


公共施設運営における「委託」と「指定管理」の違いがあまりにも世間には理解されていないようでしたので、そこにスポットをあてています。


いま見返すと、加筆・修正したい箇所が結構ありますが、とりあえず当時の記録として、そのまんま再録しておきたいと思います。


よろしくお願いいたします。



 

ツタヤ図書館、契約ずさんとして住民が訴訟!市が住民の情報開示要求を拒否!深まる不信

「武雄市図書館 HP」より
 当サイト記事でも何度か取り上げたが、レンタルビデオチェーンTSUTAYA(ツタヤ)を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が公共図書館を運営するに当たって、数々の疑惑の声が上がっている。その一方で、「新しいことを始めると不具合はつきもの。恐れずにチャレンジして、そのつど改善していけばよい」と、CCCを擁護する声も根強い。

 また、10月からCCCに図書館の運営を任せている神奈川県海老名市の住民アンケートでも、CCCの図書館運営に「満足している」と回答した人が8割を超える【※3】など、地元住民から一定の評価を得ていることも、まぎれもない事実である。

 しかし、これまでCCCによる不可解な図書館運営を見せつけられてきた「反ツタヤ民」からすれば、まるでチャリティーイベントの主催者が人を集めておきながら、会場内で別の私的な商売をして儲けているのと同じように映るだろう。

 つまり、公共施設で私腹を肥やす背信行為に対して怒りの声が上がっているのに、「大勢の人が来て喜んでいるのだから、それで何が悪い」と開き直っているようにもみえ、元の地味な図書館のほうがよっぽどマシと思う人も多いのではないか。

 この問題が深刻なのは、いくら反対する市民がCCCの図書館運営を糾弾し続けても「ツタヤ図書館」は簡単にはなくならず、また今後も同じスタイルの図書館が全国各地に続々とできていくのが確実であるという点だ。

 なぜならば、ツタヤ図書館で見られるような民間企業に公共施設の運営を任せる方式は、通常の民間委託とは根本的に性質が異なる「指定管理者制度」だからである。

 そもそも、CCCの公共図書館運営が度を超した公私混同になっている原因は、現行の指定管理者制度が、公務を利用して野放図なカネ儲けを企む企業にとっては抜け道だらけだからだ。行政が公務の受託企業を監視監督するガバナンス制度も正しく機能していないことが、市民たちの追及によって次第にわかってきた。

「問題が生じても、役所が指導さえすれば改善されるはず」と考えるのは、指定管理者制度の実態をまったく知らない、おめでたい話と言わざるを得ない。

指定管理者制度の問題点

 では、どこが問題なのか、具体的にみていこう。

 指定管理者制度とは、2003年の地方自治法改正によって、自治体が指定した民間の企業や団体に公の施設の管理を代行させることができるとした制度である。

 従来の管理委託制度が、民間事業者との契約によって具体的な業務の一部を委託するものであったのに対して、指定管理者制度は、指定を受けた業者に管理権限そのものを委任する行政処分の一種で、請負契約とは本質的に異なる。つまり、公共施設の運営全般に必要なことについて、指定した民間企業にほぼ全権を委任してしまうのが大きな特徴で、「丸投げ」に近い。

 指定管理者制度の問題点は、以下の5点である。

(1)公募は必須でなく、トップダウンで決めやすい

 指定管理者の選定は、原則として公募によって行われるが、場合によっては非公募でも構わない。つまり競争入札にしなくてもよいのだ。合理的理由さえあれば、随意契約としても問題はない。【※1】

 ただし、事業者の指定にあたっては、運営委託費の額にかかわらず、必ず議会の議決を経なければならない。そのため、指定管理者の選定が、市長をはじめとした議会の与党議員たちの強い影響を受けた「政治家案件」になりやすい。

 ツタヤ図書館の場合、佐賀県武雄市海老名市ともに、街の活性化に役立てたい市長サイドからCCCにアプローチしたとされていることからもわかるように、オープンな場で市民に説明しなくても、政治家がトップダウンで業者を決めやすい仕組みになっているといえる。

(2)情報開示請求が困難になる

 日本では「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)によって、行政が作成した書類については原則としてすべて開示することが義務づけられており、誰でも開示請求できる。そのため、図書館運営のような公務に関しては、仮に不正行為が行われていても発覚する可能性が高い。ところが、民間企業がからむ指定管理者においては事情が変わってくる。

 武雄市では、市民がCCCとの契約内容を開示するよう開示請求を行ったものの、市側は請求から1年以上たってから「契約内容はCCCの営業ノウハウに当たるため、開示できない」との決定を発表した。

 それを受けて市民側が異義申立を行った結果、情報公開審査会は「開示すべき」と判断し、武雄市がようやく開示に応じたが、請求から開示までになんと2年もかかっているのだ。

 それでも武雄市図書館のケースは、市当局が保持している情報だったために最終的には開示されたが、指定管理者しか保持していない情報についてはどうか。指定管理者の情報公開は努力規定にすぎないため、経理財務状況など指定管理者内部の情報については指定管理者が拒否した場合には、それ以上情報をたどるのはほぼ絶望的になる。

 うがった見方をすれば、指定管理者は都合の悪い情報をいくらでも隠蔽できるのだ。


(3)住民監査請求もできない(※2)

 市政運営などで不正行為の疑いがある場合、住民が不正を正す「伝家の宝刀」として設けられているのが、住民監査請求である。

 武雄市図書館のケースでは、市が開示したCCCとの契約内容を精査した市民が「あまりにもずさんな手続きによって結ばれた契約だ」として、今年6月に監査請求を行ったところ、市は法定期間(その事実が発生、または知ってから1年)が経過していることを理由として、2週間後に請求を却下している。監査請求の基になった契約内容に関する情報を2年も開示しなかったうえに、「1年経過したら監査請求できない」とは、あまりにも手前勝手すぎる。

 そのため市民たちは、当時の市長に対して1億8000万円の損害賠償を求める住民訴訟を提起した。

 このケースでは、指定管理が始まる前に武雄市がCCCと交わした契約そのものが監査請求の対象だが、指定管理が始まってから指定管理者が不正行為を行った場合、監査請求を行うことはできるのだろうか。

 その場合、住民監査請求を定めた地方自治法242条1項が規定する財務会計上の行為に当たらないため、対象外となっている。請求したとしてもすぐに却下され、それ以上追及できないのが実情だ。この点も、制度に穴があるとしかいいようがない。

(4)利益が出ないため周辺事業で儲けようとする

 指定管理者による公共施設の管理運営においては、毎年各事業者について業務の評価を行うのが一般的だが、業務の評価が低かったとしてもペナルティーが課せられるわけではない。

 逆に、指定管理者サイドからみれば、いくらがんばっても委託管理料が増えるわけではないため、できるだけ費用を抑えて利益を確保しようとする。

 特に図書館のように利用者から料金を徴収できない施設の運営においては、その傾向が顕著だ。ちなみに、武雄市図書館を例に取ると、13年の開業時に募集した「書籍コンシェルジュ」のアルバイト(蔦屋書店との共通募集)の時給は730円。海老名市立中央図書館の求人を見ると、フルタイムの司書スタッフは「月給19万3000円以上」だ。

 また、普通にやっていたのでは儲からないため、ツタヤ図書館のように併設した店舗で儲けるビジネスモデルが出てくるのは、ある意味必然といえるだろう。

(5)行政のガバナンスが正常に機能しない

 指定管理者は、コンプライアンス上問題のある行為(または不作為)をなすケースもあるが、不祥事を起こしても指定を取り消されるケースはかなり稀である。

 法律上、取消に当たって議会の議決は不要とされているものの、指定管理者の選定を主導した首長や与党の有力議員の意向は無視できないだろう。

 指定管理者の不祥事は、選定した役所の失態として市民にとらえられかねないため、できるだけ表沙汰にせずに穏便に済ませようとするだろう。逆に、市民からすれば、役所が不正行為をした民間事業者とグルになって不祥事を隠蔽しているようにしか見えない。

 また、指定を取り消すとなれば代わりに施設を管理運営できる体制を整えなければならないが、一度指定管理に移行してしまうと直営に戻して運営するだけのノウハウがもはや自治体にはなくなっている。かといって、後釜となる管理者を見つけるのも容易ではない。つまり、「不正行為が発覚したら、即指定を取り消す」ということは、現実的に相当困難だ。その結果、行政のガバナンスが正常に機能しないことが常態化してしまう。

指定管理者制度は沈みゆく旅客船?

 公共施設の民間委託を、大型の旅客船の運営にたとえてみよう。

 経営を効率化する際、船会社が最初に手をつけるのは、船内のレストランや劇場、遊技施設、客室清掃などの部分だ。それぞれ特定の業務を専門の業者に任せれば、効率よく業務をこなせるようになるばかりか、スタッフを直接雇用しなくて済むため、その労務管理の手間も省ける。

 次の段階が、船を動かす機関室の部分の外部委託だ。自前の機関士を雇用して、イチから一人前に育てなくても、そのつど外部から派遣してもらえば、自社では大して苦労もせずに、船を運行させていくことが可能となる。

 それでも、船の運行に関してすべての責任を負っている船長だけは船会社が直接雇用している正規社員を使い、決して外部委託はしないものだが、さらに費用を削ろうとしたときには、この船長の権限までも外部に委譲して、旅客船運行そのものを別の会社に任せる方式が浮かび上がってくる。この「船の運行を丸ごと代行させる」方式が指定管理者制度の本質である。


 この場合、一部委託とは違って、船長が船会社とは異なる会社に雇用されているという点が大きい。雇用形態も正規社員とは限らない。そうすると船長は、乗船客や船会社の安全や利益に忠実ではなくなる可能性がある。

 昨年韓国で、修学旅行中の高校生ら476名を乗せたまま沈没するという大惨事を起こしたセウォル号のことは記憶に新しいだろう。この事故で、乗客を救助せずに真っ先に逃げ出した船長は非正規雇用だったと伝えられているように、船会社が現場責任者の待遇をないがしろにすると、大きな代償を払うことになる。

 公共施設の一部業務委託は、財政難に苦しむ地方自治体にとって、ある意味仕方ない施策といえるが、丸ごと民間に任せる指定管理者制度は問題が多い。特に図書館のような文化施設にはなじまない。ましてや、海老名市のように本来、地域館を統括して司令塔の役割を果たす中央図書館の機能まで指定管理にしてしまうのは、いきすぎである。ちなみに、武雄市は市内に図書館が1館しかなく、その図書館を指定管理にしている。

 日本図書館協会によれば、全国に約3200ある公共図書館のうち、指定管理にしているのは470館で、年々増え続けてはいるものの、それでもまだ14%程度である。

 たとえば、市内に18の図書館を抱えている横浜市の場合、そのうち指定管理者に運営を任せているのは1館だけで、試験的に導入しているにすぎない。

 全国で最も民間委託を熱心に進めている東京・足立区ですら、14ある地域館はすべて指定管理となっているものの、中央図書館だけは区の直営である。

 今後も、「民間委託は素晴らしい成果を上げる」という先入観に騙され、小規模都市の中央図書館が次々と“ツタヤ図書館化”していきそうな勢いである。

 どのように街を活性化させるか頭を悩ませている自治体にとって、CCCは丸投げしておけば、難題の「人が集まる街づくり」まで代わりに企画、実行してくれるありがたい存在なのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト



【※1】2025年8月5日 特命随意契約は、緊急を要する事業や、他社がマネのできない特殊なノウハウを持っている企業と契約する場合にのみ特例的に許されるものであり、当時のCCCは、そのようなノウハウはもっておらず、すでに書店・物販やカフェを併設した図書館を運営していた企業はほかにもあった。よって、「非公募でも構わない」「公募は必須でなく、トップダウンで決めやすい」という記述は誤解をまねく恐れがある。

(※2)2025年8月5日 指定管理者制度上では「住民監査請求もできない」というのはあきらかな事実誤認です。運営者が損害を与えるなど、会計上の不正行為疑惑があれば、ごく普通に監査請求ばできます。


【※3】2025年8月5日 “神奈川県海老名市の住民アンケートでも、CCCの図書館運営に「満足している」と回答した人が8割を超える”とあるが、このアンケートは、全市民を対象とした調査ではない。あくまでも来館した人に対する調査にすぎない。CCCの運営に不満を抱き、来館しなくなった市民の意見はそこには入っていない。また、書面による自由回答形式ではなく、CCC職員による対面調査であるため「不満」と回答しにくい(圧迫面接のよう)との指摘がなされている。よって恣意的な手法によって導き出された調査結果と言える。その後もCCCは「市民の8割が満足」を自社運営の優れた点としてアピールしているが、これらの理由から、そのアピールを、同社の評価として採用すべきではないとの指摘が絶えない。






喰われる自治体~埼玉県春日部市の場合~

 

こんにちは、日向です。


本日は、続々とツタヤ化する自治体一覧~名古屋と横浜も危ない~


で取り上げました、CCCがこれから受託予定(選定される可能性の高い事業含む)の自治体では漏れていた、埼玉県春日部市の情報を少し書いておきたいと思います。



「春日部駅周辺のエリアプラットフォーム構築に向けた官民連携まちづくり説明会」という長ったらしいタイトルのイベントが8月25日に開催されるというニュースがあり、その開催の主催者になっているのがCCCでした。


https://www.city.kasukabe.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakuka/gyomuannai/7/2/33015.html




春日部市で、いつのまにかCCCがまちづくりに関する事業を受託しているのか?と調べてみました。


すると、今年4月「春日部駅周辺エリアプラットフォーム構築等支援業務委託」が公募され、7社応募があったなかで、CCCとコンサルタント会社3社によって構成されるコンソーシアムが選定されていました。


いったいなにをする事業なのか、駅前に公共施設でもつくる計画があるのかなと思って、早速、担当課に電話してみたところ、まだ特にそういう具体的な計画はないとのこと。


おかしいですよね。これは、再開発でよくあるパターンだと思うのですが、鉄道の高架化によって、新たに一等地にスペースが生まれたり、利便性が増すことを契機にして、駅周辺の賑わい創出を推進していくにはどうしたらよいのかということを、官民が連係して考えていこう、そのために関係者が集まって協議をしていく場をつろくうということなんだそうです。



んー、これはなんか、雲をつかむような話といいますか、そういうことを民間企業が旗振りして進めるというのは、いったい何を意味するのでしょうか。


「地方創生」を名目にして、国から巨額の補助金でも引っ張ってくるのかなぁと思って聞いてみたら「補助金はないです」と担当課がキッパリ。


でも、あとで調べてみたら、事業計画をこれから作成するのに、埼玉県の補助金が出ていることがわかりました。まぁ、計画や調査の費用を国や県が補助するのは、すでにこの世界では常識なのかな。


埼玉県ふるさと創造資金 主な採択事業(令和7年度第1回)より
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0106/shienseido/news20250523.html




そうすると、やっぱり、まちづくりのコンサルタントが、さまざまなイベントやワークショップを開催したりして、賑わい創出の具体的な計画をこれから詰めていくんだろうと思います。でも、そこで注意したいのが、CCCが入っているとなりますと、この後、考えられるのは、以下のような調査結果が出てくることです。


・市民アンケートを実施してみたら、わが町に足りないのは、魅力的な公共施設である


・とりわけ滞在型の図書館や市民センターが駅前に望まれている。


・図書館や市民センターに設置してほしいのは、書店やカフェである


・さまざまな市民参加のイベントをそこで開催して、にぎわい創出を実現すべきである


・子育て支援も作って、若い世帯が定住しやすい街にすべきである


・観光案内所も、駅前の公共施設内に設置すべきである。



これって、2013年の武雄市から始まって、和歌山市や最近の坂出市なんかでもさんざんみせられてきた、いつもの光景です。CCCが自ら手がけなくても、連係しているコンサルタントがCCCに都合のいい計画をどんどん進めていってくれますから。


公共施設を新たに整備しなくても、大阪府高石市みたいに、自治体が支配している第三セクター所有の駅前ビルに、破格の条件でCCCの店舗を誘致したりするパターンもあります。(高石市は、その後、市長が代わったため三セク出店止まりで、公共施設受託までには至りませんでした)


そうしますと、これから市民参加の説明会とかを開催する目的というのが、おぼろげながらみえてきます。


まちづくりの基本構想や基本計画を立案するための調査をまず担当するのが、CCCとそのグループなんですから、当然、思いっきり、自分たちが儲かる方向に報告書が作成され、それをもとに自治体が新しい公共施設の設置を決めて、その計画をCCCが作成して、結果、設計から運営までをCCCが担うようになるというわけです。


和歌山市や木更津市なんかは、まさにこの通りCCCが事業の最上流から食い込んでいて、最後の運営までを見事に取っていきました。(木更津市は、現在進行中)


中心市街地の再開発事業の場合、それによって利益を得るのは、鉄道事業者とハコモノ整備を担当するゼネコン、計画するコンサルタント、不動産事業者などです。ちなみに、和歌山市では、当初、南海電鉄和歌山市駅前に、図書館だけでなく、市民ホールや博物館もほしいと「民」からの野放図な要望が次々と出ていました。元国交省の大物次官を座長にした、まちづくり協議会では、ステークホルダーから「現状では駅前にマンションも建てられない、もっと人を呼べるようにしてほしい」というストレートな要求が出ていました。


「民」の要望をかなえるためには、いわば、なんちゅら構築等支援業務というのは“種まき”みたいなもの。ここから芽が出て成長してやがて咲いた花を、みんなでおいしくいただこうというようなことを、地方創生を飯のタネにしている人たちは、イメージしているんだと思います。



しかし、官民連携のまちづくり手法は、常に違法な官製談合スレスレで行なわれます。たとえば、千葉県木更津市では、2022年に市民交流プラザの基本設計・基本計画立案者を公募した際、応募事業者に参考資料として提供された調査報告書が、一応募者であるはずのCCCが何年も前に作成していたものであることが発覚。そりゃあCCCが絶対有利ですよ。この件は、のちに議会でも取り上げられ、その不透明な事業者選定プロセスが批判の的になりました。


市民の声をちゃんと聞いたうえで事業が進められ、各段階で、公平公正に事業者が選定されるのでしたら、外からは何もいうことはないのですが、残念ながら、現実は、上流から食い込んだ事業者がそのまんま自分たちの都合のいい計画を進めていき、いつも主役であるはずの市民は置いてけぼりになってしまいます。


巨額の公金が投入されて整備された駅前施設は、特定の民間企業に利益供与だけで終わりがちです。費用負担が増えても、それに見合うだけの地域の文化が花咲いたりすることも、まずありません。


オープンしたら「何万人達成!」と派手に来場者数はぶちあげますが、地方創生の掛け声のもとに巨額の公金が注ぎ込まれて成功した再開発は、私は、寡聞にして一例も知りません。官民連携事業では、一部の民だけが得をして、地元商店街などは、ますます寂れていくというのがこれまでの地方創生の典型的なパターンではないでしょうか。


結局、なんのために、まちづくりイベントが行なわれているのかがわからないまま、地方創生コンサルタントが儲かる事業だけがひとり歩きしていきます。



なお、いつもCCCを選定した自治体へのお約束質問を、春日部市の担当課にもしてみました。


2019年に、CCCは、基幹事業のTSUTAYAが消費者庁から景品表示法違反で1億円の課徴金を課せられたことをご存じですか?


答えは、「知りません」でした。





2025年8月2日土曜日

“塗黒的官方文件”のデザイン

 

こんにちは、日向です。


本日は、ちょっとめずらしいものを入手しましたので、そちらをみなさんにおみせしようと思います。


下をみてください。



これなんだと思います? そう、本のカバーです。

昨年10月に刊行した拙著『「黒塗り公文書」の闇を暴く』について、以前、台湾の大手出版社から、その翻訳版を出したいというオファーがきたという話を当ブログでも書いたと思うのですが、

その翻訳版がいよいよ台湾で刊行になるらしく、改めて「先方で制作したカバーデザインがこんなふうになりますので確認してください」ということで、先日、版元の編集者から送られてきたものです。

日本版も、カバー全体が真っ黒な下地で、なかなかインパクトのあるデザインでしたが、台湾版のほうは、さらにミステリアスな雰囲気を醸し出したものになっています。拡大してみましょう。






タイトルは、塗黒的官方文件 となっていて、その字面だけでも、日本語にはないミステリアスな雰囲気を感じます。


凄いのがこのデザインです。

真っ暗な闇のなかに、掌をこちらに向けた人影が、うっすらと映っていて、こちらに迫ってきています。まるでホラー映画のような怖さがあります。


民主崩壞的起點 
一千四百頁的政府文件 
92% 被徹底塗黑! 

という語句が、本書の内容をコンパクトに表現。

そして、ほかの本ならオビのある位置に、これまた本書の内容を端的に打ち込んできています。

不監督,黑幕就會常態化

不監督,公共就會私有化


日本版がそうだったように、台湾版も、本のカバーデザインが、ここまで見事に人の興味をそそるようになっているものはなかなないなぁと、感服しました。


とはいえ、漢字の字面から私が勝手に解釈しているだけで、テキストの正確な意味は少し違うのかもしれませんけれど、なにはともあれ、言葉と文化の壁を越えて、権力にあらがう市民の姿が日台共通のモチーフになっているのかなと思いました。


それにしても、法制度がまったく異なるお隣の国において、何故、日本の公文書問題についての書籍が翻訳されて読まれるのかが、とっても不思議です。

台湾といえば、「天才デジタル大臣」として有名なオードリータン氏が活躍していますから、おそらく行政の透明化を推進するための情報公開制度なんかも、日本の小さな自治体よりは進んでいるのだろうと推察しますが、それでも、こういう出版企画が通るというのは、なにかしら日本と共通した課題はあるんだろうとも思いました。


蔦屋書店がマネした台湾の超有名書店


それともうひとつ、台湾といえば、2019年に日本に初上陸した「誠品生活」を思い浮かべます。

本国・台湾の「誠品生活」は1989年の創業以来、“アジアで最もすぐれた書店”と、その店作りが世界中で注目。本だけでなく、生活にまつわる雑多な店舗が同居していて、金属加工のワークショップなど、カルチャー体験型店舗が目白押し。日本橋にオープンした誠品生活日本橋も書店でありながら、さまざまな“モノ・コト消費”に特化した店舗として人気を集めています。

そういうと、なにかを思い出しますよね。そうです。代官山や六本木にあるCCCの蔦屋書店がマネをした新業態こそが、「誠品生活」なのです。そんな誠品生活のおひざ元の台湾の版元が、誠品生活のライバルであるCCCが進める公民連係事業を進めるなかででてきた黒塗り公文書の本を翻訳出版するというのも、なかなか味わい深いものがあります。

私も、東京・日本橋COREDO(コレド)室町テラスにある同店をよくのぞきます。テーマごとにギッシリと本が詰まった書架が長くつづく売り場は、落ち着いて本を探せますし、「選書コーナー」では、新刊でないタイトルもうまく並べられていて、いまどきの書店にはない「興味をそそる」編集がなされているように感じます。

ちなみに、拙著も、発売から半年くらいは、ありがたいことに、新書コーナーのいちばんめだつ場所においていただいておりました。






「誠品生活」へ行くと、どうしてもCCCの蔦屋書店やツタヤ図書館と比べてしまいます。なにが違うのか、なにが面白いのか、そこを突き詰めていくと、CCCの海外店舗が見た目は派手なのに、いまいち人気が出ていない理由が、なんとなくわかるような気がします。

すみません。支離滅裂な話になってしまいました。

そんなわけで、台湾の方は、“塗黒的官方文件”を、ぜひよろしくお願いいたします。