“八百長”という言葉が、いちばんしっくりするでしょう。
本当は相手よりも強いはずなのにわざと負けてあげる。
メディアは、熾烈な戦いを勝ち抜いて、勝者の栄誉に輝いた者をたたえる。
ところが、そんなストーリーはすべて嘘っぱちで、ガチンコで闘っているフリをしながら
裏ではライバル同士、ガッチリ手を握っていた。
そんな茶番ではなかったのかと、この件を思い出すたびに、感じます。
さて、本日は、先日書きました
図書館流通センターの暗躍(1) のつづきです。
先月5日グランドオープンした和歌山市民図書館は、TSUTAYAの本社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する
全国で六番目のツタヤ図書館となったわけですが、
なぜか、その実現に“尽力”したのが、“図書館界のガリバー“TRC図書館流通センターでした。
日本国内のメディアを牛耳っているのが電通だとしたら、全国3200の公共図書館のうち531館を受託して圧倒的なシェアを誇っている
TRC図書館流通センターは、“図書館界の電通“と呼んでもいい存在です。
前回ご紹介したのは、和歌山市駅再開発に関連して
2016年4月14日に開催された図書館定例会での出来事。
突然、南海電鉄が「TRCからの成果物を図面以外受け取っていない」と和歌山市にクレームをつけているのです。
このとき、和歌山市民図書館の市駅前移転は決まったものの、まだ新図書館の運営者の選定はもちろんのこと、運営形態すらこれから検討していくという段階でした。
その最初の叩き台となるはずの図書館基本計画(以下、基本計画)は、TRC傘下の図書館総合研究所が地元企業とのJVで受託しました。
近くその内容が一般市民に広く公表される予定で、すでに関係者の間には、完成品が配布されているはずでした。
なのに、なにか手違いがあったのでしょうか、南海電鉄は「図面以外受け取っていない」と言い出し、あまつさえ、これから進めていく新図書館の設計業務には、
コンサル(=基本計画を策定したTRC)は「入れないと聞いているが、それでよろしいか」と市に念押し。
市も、それに対して「はい。(図書館)」と答えているのです。
この場面の何が異様かと言いますと、
まず第一に、和歌山市は南海電鉄に、新しく建築する図書館に関するコンセプトの図面だけ、ちょろっと渡しただけで、
肝心の計画の中身は知らせる必要がないとでも思ったのか、基本計画の文書すら渡していなかった。
また、これから始まる建物の設計には、コンセプトを作った会社=TRC傘下のコンサルは参加させないことを、南海電鉄と市は、改めて確認しあっているのです。
そもそも、97%が黒塗りされていて、ほかのページは、市の担当者の発言ですらほとんど真っ黒なのに、この南海電鉄とのやりとりだけは、あえて黒塗りなし。
ひとつのやりとりが完結するまでの部分が開示されているのですから、何か、尋常でないことが行われていて、
市の担当者は、どういう意図があったのかわかりませんが、あえてここだけは黒塗りしなかったのではないかと感じてしまうのです。
私の推論は、このとき、南海電鉄と、和歌山市は、あからさまにTRCを排除しにかかっていたのではないかということでした。
いったい、何があったのでしょうか?
そのことを説明するためには、以下の2つのエピソードをご紹介しましょう。
南海市駅ビルへの新図書館の移転計画が発表された翌年の2016年2月、
和歌山市内の建築士らが市民団体「みんなでつくろう未来の図書館」(以下、みん図書)を発足。
この団体が2019年度に完成が予定されている駅ビルへ移転・開館する市民図書館を応援する取り組みを始めたという記事が地元メディアに掲載されました。
このニュースの裏取りするために、独自取材を進めていくと、なぜかこの団体が開催したワークショップに、TRCのスタッフがサクラとして紛れこんでいたことがわかったのです。
『みん図書』主催のワークショップに参加した人物がこう話す。
「私が聞いていたのは、もうTRCが(図書館運営者として)入るというのは決まっている話で、どのようにTRCが図書館運営に関わるかを“市民の声”として提案するのが『みん図書』という団体。市民の声を吸い上げて図書館の運営に反映するために、意見を出す人たちを集めるような形で立ち上げられました」
まだ図書館の民営化すら本格的に議題にも上っていない段階で、新しい図書館の運営者にTRCが内定しているという話がスンナリと出てくること自体が驚きだ。
「TRCの社員もワークショップでは議事進行などを担当するファシリテーターとして入られ、図書館の専門家と一緒に市民の皆さんの意見をまとめていました」
つまり、「どんな図書館にしたいか、みんなでアイデアを出そう」と呼びかけるリーダー自らが、実は受託(予定)企業の社員だったわけで、それが事実なら、自社に都合のいい方向に結論を導くだけの“茶番劇”が繰り広げられていた可能性もある。
TRCは「議事の進行・議論の整理を行ないましたが、意見の方向性を誘導したことはありません」と釈明したが、市民主導の図書館イベントに今後、受託する可能性のある企業の社員が参加していること自体が不適切のようにも思える。
著名教授も「だまされた!」ーー和歌山市・ツタヤ図書館“談合疑惑”の裏で、競合“ガリバー企業”の不可解な影
より
ところが、この後、この証言とは180度違った内容の証言が別の関係者から寄せられました。
「和歌山市では、実はもう2年くらい前からTRCが出入り禁止のような状態になっていて、それ以降、指定管理者になるという話はなくなっていたと思ってました。何があったかまでは知りませんが、市を怒らせたか、嫌われることをしたのではないかと思います」
著名教授も「だまされた!」ーー和歌山市・ツタヤ図書館“談合疑惑”の裏で、競合“ガリバー企業”の不可解な影
より
つまり、「新しい図書館の運営者にTRCが内定している」と言われていた直後の2015年末には、
すでに市の一部関係者は「TRC排除」に動いていた気配がみられるということで、
前回紹介した2016年4月の南海電鉄と市のやりとりのなかで
「TRCからの成果物をもらってない」
「設計にコンサル(TRC)は入れない」
というやりとりは、そのことを裏付ける強固な証拠ではないのかと感じました。
ここまで書きますと、いったいなにがどうなっているのか、もうドロドロすぎて「わけわからない」と感じると思いますが、前回も書いた、このプロジェクトの前提条件を、ここで再度繰り返しておきます。
先に誤解のないように申し上げておきますと、和歌山市当局が新図書館の運営者に、一度でも、TRCに傾いたという形跡はありません。
少なくとも、市長部局と南海電鉄に関しては、このプロジェクトスタート時点から、徹頭徹尾、CCCに運営を任せて、賑わい創出してくれるツタヤ図書館にする
という意思は、かなり強固なものがあり、一度もその意思が揺らいだことはないように思えます。
この根拠となる、黒塗りなし文書を後日公開する予定です。
というわけで、和歌山市が市民図書館を民間に任せる指定管理者制度の導入に、TRCは水面下で大きな役割を果たしました。
下手に市民から反対運動が起きないよう、巧妙にイベントやワークショップを開催。著名人まで引っ張り出して、さも市民主導で進めているかのような雰囲気を醸し出し、そうした市民の声を反映させたかのような基本計画を策定したのです。
これによって、この後スンナリと指定管理者制度の導入が実現します。もし、このときに、少しでもCCCの影がみえたとしたら、たちまち市民の反対運動に火がついて、愛知県小牧市のように新図書館の駅前移転すら危うくなっていたかもしれません。
基本計画の策定については、CCCが直接関与したであろう多賀城市では、公文書なのに著名な書籍からの盗用が疑われという悲惨な状況【※1】になっていましたから、それだけは避けたいと考えた誰かがTRCをうまく使ったのでしょうか?
【※1】多賀城市の図書館計画の顛末は、
コピペ疑惑の図書館計画(1) を参照
なので、和歌山市のツタヤ図書館誘致の最大の功労者は、もしかしたら、TRC図書館流通センターだったと言えるのかもしれません。
さて、そうした経緯から、「新和歌山市民図書館の指定管理者は、TRCに内定」と一時期囁かれた時期もありましたが、それは単なる憶測あるいは、誰かが意図的に流したウワサにすぎませんでした。
逆に、基本計画策定直後に、ここまであからさまに「排除」の動きをみせられたにもかかわらず、
TRCは、なぜか、その後も粛々とこのプロジェクトに深くかかわつづけ、指定管理者の公募にも応募して、CCCと公開プレゼンまでしました。
そして、CCCに表面上は敗れた後も、開館後は、当然のことながら、図書の装備や納本でも深く関与しています。
指定管理者のコンペで敗れても、開館準備になると図書の装備等を担当するTRC
↑和歌山市情報開示20年3月版 で紹介
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あとから細かいことをひとつひとつ検証していきますと、それらは、最初からすべて“八百長”だったのではないのか、と思わざるをえないことがゾロゾロ出てくるのです。
しかし、TRCのしたたかなところは、負けてあげるにしても、タダでは転ばないということ。
あわよくばCCCの追い落としを画策し、自社のプレゼンスを高めることに余念がなかったという印象すら抱きます。次回、そのことを示す、あるエピソードを紹介する予定です。
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