『黒塗りの図書館』season3 では、
独自入手しましたの爆弾資料によって、新しい和歌山市民図書館オープンまでの不透明なプロセスについてとりあげてきました。おかげさまで、ひとつスクープを放つことができましたので、それだけで上出来と満足はしているのですが、
ただ、三回でアッサリ終わってしまいましたので、書き足りなかったこともたくさんありました。
そこのところを何回かにわけて捕捉しておきたいと思います。
まず、この記事ですね。
ツタヤ図書館、工事遅延の文書を独占入手!行政もひれ伏すCCCの“絶大な影響力”が判明
独自に入手しました内部文書によって、工期が2カ月遅れた原因について読み解いていった記事なんですが、
これ、入手した時点で、書面の一部分の記述が「白塗り」されていて、それをはがすまでが、第一幕でした。
南海電鉄の内部で作成されたと思われる工期遅延に関する説明文書。赤色の□で囲んだ部分が白くマスキングされていた。 |
誰がなんのために、こんなことをとあれこれ推理をめぐらすのも、なかなか興味深い話ではありましたが、この点は、情報提供者の身の安全を考えてあえて書きませんでした。
また、CCCの図面提出の遅れによって、煮え湯を飲まされた恰好になった南海電鉄と、頑として自らの提案を譲らないCCCとのパワーゲームみたいなものも、かいまみれるのもひとつのハイライトではありました。
でも、実はそれだけではないです。この書面には、市民図書館の工期延長にまつわる、もっと不可解な出来事がいくつも隠されていたんです。
そのひとつが、そもそもCCCが提出した「構造変更が必要なプラン変更」です。あれは、いったいなんだったのでしょうか。
今回は、その背景となる出来事を、駆け足で振り返ってみたいと思います。
下をみてください。
これ、CCCが指定管理者に選定された直後に開催された実施設計会議の議事録です。
このときの最初の議題の内容が「エスカレーターの位置と角度の変更」でした。いきなり重要な設計変更が課題にあがってきたのかと思いましたが、おかしなことにCCCはこのときの会議には出席しておりません。
11月末日に選定され、12月に正式に指定管理者として議会承認されたわけですが、同社が実施設計会議に初めて出てくるのが新年度に替わった翌年4月以降のことでした。
「空間イメージの提案」の図面だけ提出して、詳しいことは事前に打ち合わせ一切なしで進めるとは到底思えないのですが。
さて、ここでみなさんおそらく疑問に思われるのは、5/18付BJ記事でスクープしたように、2016年7月8日にCCCは、市長プレゼンに来庁していたことがわかっており、このときすでに、新市民図書館の運営者にCCCは内定していたのではないかということです。
そうしますと、正式な選定結果を待たずして、早くからCCCの提案する空間イメージを実現するべく、
CCCのフラッグシップである代官山蔦屋書店を手掛けたRIAが、超ラッキーといいますか、たまたま偶然にも、和歌山市のコンサルだけでなく、南海電鉄とものコンサル契約を締結していて、
そのうえ事業計画の全体の提案から設計関連事業までを一手に引き受けてていたわけですから、コッソリナイショで打ち合わせしていれば、指定管理者に選ばれたCCCからの空間イメージの提案もスムースに反映できたはず。
ところが、私が正式な文書で、これらの手続きをみていった限りでは、そうはなっていません。あくまでCCCが正式に選定された後、打ち合わせが行われて、それ以降に設計変更されたことになっているんです。
いくら調べてみても、多賀城市のように、CCCが選定前に設計についてRIAと詳細な打ち合わせをしていた証拠がみつからないのです。
いったい、なにがあったのでしょうか?
おそらく、この頃には、自治体の市長がCCC社長とトップ会談をするだけで、いきなり図書館をTSUTAYA化してしまう暴挙に対する世間の批判が次第に強くなっていったため、とりあえず、選定までは、表立った動きは控えたんだろうと思います。
和歌山市とは、1年ほど先行した時期に、ツタヤ図書館化の話が進んでいた山口県周南市のケースをみてみると、その動きの変遷がよくわかります。
周南市では、2013年11月にCCCと連携協定を締結して、ツタヤ図書館の誘致を当時の木村市長が独断で決めていましたが、
2016年1月には、地元市民団体が住民投票の実施を求めて署名活動をスタートしていたこともあり(その後、議会で住民投票案は否決)このまま強引に計画を推進できないと判断したのでしょうか、
周南市では、同年4月には、一度CCCとの連携協定を解消したと発表。この後、形式上は、公募して指定管理者を選定したような手続きを整えたという流れです。
2015年9月のクズ本騒動にはじまって、司書ですらどこになにがあるのかわからず大混乱に陥った独自分類、Tカード機能の図書カードを採用しているのに、個人情報保護についての当時の標準規格だったプライバシーマークを返上したりと、
CCCによるツタヤ図書館は、2015年10月の海老名市での開業時には、そのオシャレな雰囲気とは対照的に、無茶苦茶ぶりが浮き彫りになり、
周南市をはじめ、すでに誘致が内定していた自治体では、同社に地域の公共図書館運営を任せることに不安を抱く市民が激増していたのです。
その“内定自治体”のひとつだった愛知県小牧市では、15年10月に行われた住民投票によって、ツタヤ図書館建設にノーをつきつけました。
和歌山市でも、市長部局では、早くからCCCと連携したツタヤ図書館を決めていたフシがありましたが、
巨額の補助金スキームを立てて進行していくビックプロジェクトだけに、もしも万が一にも、地元の市民が反対運動でも始めて、計画が立ち往生でもしたらタイヘンなことになります。なので、和歌山市では、終始一貫して、徹底した“CCC隠し”が水面下で行われていたようにみえます。
2014年11月に、総勢15名の事務方が武雄市の視察に訪れていますので、おそらくその時期にツタヤ図書館にすることが市長周辺で密かに内定。
先日の記事でスクープしましたCCCが市長プレゼンに来庁した2016年7月8日が、おそらく当初想定されていた、CCCとの連携協定発表のタイミングだったんだろうと思います。
その3週間後の2016年7月29日、和歌山市は南海電鉄との基本協定を締結して、市駅再開発に本格着手したことを世間に公表しましたから、
当初の予定では、まず先にCCCと連携したツタヤ図書館建設を発表してから、市駅前再開発の詳細を世間にアピールするつもりだったのでしょう。
ところが、周南市がそうであったように、すでにその頃には、市長がいきなりCCCと連携してツタヤ図書館を建てるなどと発表できる状況にはありませんでした。
もしそんなことしていたら、和歌山市でも、市民の反対運動の動きが燎原の火のごとく広がっていったでしょう。
事実、CCC選定後も、CCCの独自分類とTカード導入反対や学校図書館のCCC委託反対などの請願署名が行われていて、決して少なくない数の署名が集まっていますから、
もし、公募前に他のツタヤ誘致自治体と同じく、和歌山市がCCCと連携発表などしていたら、市民のTSUTAYA反対運動も、かなり大きな展開になっていたであろうことは、想像に難くありません。
そんなわけで、和歌山市も、とりあえずは、周南市と同じく、広く事業者を募集してその中で最も優れた事業者を公平公正に選定していく公募スタイルを採用することとにしたとみることができるわけです。
そうしますと、問題はスケジュールです。指定管理者選定→CCCの提案を設計に反映がまにあうようなスケジュールにしないといけません。
下の図を見てください。2016年8月16日の会議録をみますと、当初、和歌山市当局は、2017年9月~10月までにしていく予定だったことがわかります。それが結果的には2か月遅れで、正式にCCCが指定管理者として議会承認を受けるのは、2017年12月のことでした。
2016年8月16日に開催された実施設計会議の議事録には、「公募の時期は8月中にかけたい。選定は9月の末か10月の上旬」(実際は11月末に選定)と、図書館サイドが発言している。また「構造は変わらないけど設備が変わることはあると思っておいて欲しい」と、指定管理者決定後の設計変更の可能性についても言及している。 |
南海電鉄に実施設計事業者に選定されていたRIAは、同年5月に基本設計を終えており、その直後から2018年2月までに実施設計を終える予定でした。RIAが実施設計を落札したのは、和歌山市が指定管理者募集開始した8カ月月前の2017年2月でした。
なので、当初の予定では、8月に募集開始してし、10月に事業者決定、そして翌年2月までの4か月かけて、選定された指定管理者の設計提案を反映させていくという流れだったことがわかります。
ところが、実際には、この指定管理者選定スケジュールが2か月も遅れてしまった。これもとっても不可解な出来事なんですが、当初はまったく考えていなかった、11月には公開プレゼンまで行って、広く市民に選定プロセスをみせて透明性をアピールするための段取りを急ごしらえで余儀なくされたんだろうと思います。
その結果、指定管理者の議会での正式承認から実施設計終了までは2カ月しかなくなってしまいました。
これでは、なにか大きな設計変更が出てくれば、たちまち工期は遅延してしまいます。
そうして、起きるべくして工期の遅延は起きました。
長くなりましたので、つづきは
出来レースの代償・後編 をお読みください。
《2020年6月》
●和歌山市民図書館は、ICタグ装備せず●「ICタグと自動貸出機」はセット●自動貸出機についての補足説明●和歌山市民図書館の自動貸出機について●3800万円の“安全対策”●出来レースの代償・後編●出来レースの代償・前編●専門家がほとんどいない審議会 ●『第9版 失業保険150%トコトン活用術』についてのお詫びと訂正 ●TSUTAYA占領地のレジスタンス ●疑惑まみれのグランドオープン ●“白塗り”に隠されていた告発意図
《2020年5月》
《2020年4月》
●捨てたい文書、出したい文書 ●日本でいちばん本を読まないのは和歌山市民? ●和歌山市民図書館の開館は延期? ●和歌山市民図書館4月20日開館情報 ●新しいツタヤ図書館が四国にできる? ●TSUTAYA誘致市の謎 ●和歌山市民を激怒させた南海電鉄・杉本課長の毎日新聞記事
《2020年3月》
●失業手当は在宅で受給できる? ●3年で公文書廃棄する都立高校 ●和歌山市・学校司書の請願は不採択 ●都立高校ピンハネ事件の核心 ●教育現場に忍び寄る“TSUTAYAの足音” ●和歌山市情報開示20年3月版 ●“辻褄合わせ”の破綻
《2020年2月》
●都教委の偽装請負は確信犯か? ●モラルなき「西新宿文学」 ●和歌山市都市再生課との一問一答・後編 ●和歌山市都市再生課との一問一答・前編 ●南海電鉄との一問一答 ●あからさまな利益相反 ●最終は読売新聞の22時 ●募ってはいるが募集はしてない ●アリバイ工作の痕跡 ●5,706円のアリバイ工作 ●隠蔽工作とフェイクニュース ●都教委の虚偽回答
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