2020年2月2日日曜日

隠蔽工作とフェイクニュース

こんにちは、日向です。


昨日紹介しました都立高校偽装請負事件の最新記事について、もう少し詳しく事件の背景を解説しておきたいと思います。




東京・都教委、税金から不正支出疑惑…都立高校で偽装請負を隠蔽、人員を適切に配置せず





東京都教育委員会の担当部署が作成していた不履行に関する報告書には、学校図書館を受託した事業者による驚くほどずさんな運営実態が克明に記録されている。



そもそも当ブログで学校図書館を取り上げるようになったのは、

昨年6月、和歌山市で市民図書館の指定管理者になったTSUTAYAの本社CCCが、市内小中学校の学校図書館に司書を派遣することが内々に決まっている

――との情報をキャッチしたのがきっかけでした。

なんの手続きも経ずに、公共図書館のついでに学校図書館もCCCに任せたらめんどうがなくていい

そんな安易な考えで、和歌山市当局が隠密にことを進めていたことがわかりました。

この事実をいちはやくつかんだ和歌山市の市民団体が


市民図書館だけでなく、学校図書館までツタヤ化されるなんて許せない!

と請願署名を始めるなどして、反対運動が起きました。

それをきっかけに、あれこれ調べていくうちに

学校図書館の民間委託というものが、全国的に広がりつつあり、どうやらその実態というのがかなりヤバイのではないかと思えるような話があちこちから出てきました。


なかでも、特筆に値するのが東京都立高校でした。

2011年度から学校図書館の民間委託を始めていた都立高校では、2015年7月に、偽装請負の疑いで労働局の調査を受けて是正指導されていたという衝撃的な情報に出くわしたわけです。

ちなみに、教育現場が違法認定されたという、前代未聞の出来事にもかかわらず、当時、東京都は、是正指導された事実を一切公表しませんでした。なので、メディア報道は皆無。一部の関係者の間でウワサされる程度の話で済んでいました。

でも、そんなのツタヤ図書館とは、なんのカンケーないでしょと思われるかもしれませんが、実は、これが関係大ありだったんですね。

2016年から、CCCが市立図書館の指定管理者として運営している宮城県多賀城市では、

すでに学校図書館の運営までもCCCに委託しておりまして、その現場では、都立高校が偽装請負を認定されたのと同じようなことが現実に行われていたことがわかりました。

現時点でも、いつ違法認定されてもおかしくないくらいの不適切な行為が平然と現場レポートに書かれているんです。

この話は、別のエントリーに書きましたので、詳しくはそちらをご参照ください。

自ら違法行為を暴露



公務委託の宿命



さて、公務を民間委託するときには、指揮命令系統が不明確になりがちのため、

常に違法行為スレスレに陥る(クライアントが直接委託スタッフに命令する)危険性があることは、かねてより指摘されていました。

だったら、もう館長から施設の運営を丸ごと民間に任せてしまえば、請負ではなくなるので合法になるではないかということが、

現行の指定理者制度というものが生まれてきた背景のひとつにあったわけです。

ときどき指定管理者制度が導入された施設の様態を指すときに「民営化」という表現が使われるのは、

単に業務の一部分を委託するのではなくて、

その事業そのものの経営からして丸投げしてしまえ

みたいな指定管理者制度の一側面をうまく表現しているともいえるのです。

で、学校図書館というのは、もちろん指定管理にはできません。

公立学校の運営そのものを民間に任せるということは、さすがに現行の教育制度では不可能なので、依然として偽装請負の問題というのは、どうしてもでてきてしまうんです。

なので学校図書館を民間委託にしてみれば、偽装請負リスクに陥るのは、宿命みたいなものといえるわけです。

しかし、偽装請負の被害者は、ピンハネされている現場の労働者なので、労働者が声をあげない限り、なかなか違法行為の摘発というところまではいたりません。にもかかわらず、都立高校では現場からの告発によって、2015年7月に偽装請負が東京労働局に認定されました。







一方で、偽装請負も放置するくらいムチャクチャなことになっている公務の民間委託の現場では、2015年頃からそのほかにも、契約内容が適正に履行されていない不祥事がゾロゾロと出てきていました。


その最たるものが仕様書どおり人員を配置しない不履行が行われたのに、その分について東京都は委託費を支払ったのではないかという疑惑です。


“大本営発表”と変わらない


このあたりの話は、

誰でもできる“図書館業務” 


などで詳しく書きましたので、ご関心のある方は、そちらも参照していただきたいのですが、

このときに書いた内容は、ロクに裏も取らずに書いた“飛ばし記事”じゃあないのかと感じた人も多かったと思うのですが、

ビジネスジャーナルに発表した一連の記事中の内容については、ブログの内容を慎重に確認作業をしまして、ほぼ事実と断定できるまで精度を高めたものだけを書いています。


したがって、今回の不正経理問題は、当ブログを続けてお読みいただいている読者の方にとっては、目新しさのないニュースかもしれませんが、

世間に対するインパクトという点では、私個人の取材メモとメディアの報道とでは、天と地ほどの差があるわけなんです。


そして、この記事でいちばん言いたかったのは、以下の箇所です。



偽装請負と同時に発覚した、こうした不履行の実態についても、公表されていれば、事態は変わっていたのではないだろうか。

現場で担当教諭と受託スタッフが打ち合わせしただけで偽装請負になってしまい、業務を遂行するスタッフの採用がうまくいかなければ、たちまち不履行を犯してしまう。

そんな学校図書館の委託スキームそのものが根底から崩壊しつつある実態が広く世間に知られたはずだが、東京都がこれらの事実を隠蔽し続けたことで、学校図書館の民間委託の難しさは伝わらないまま年々、野放図に広がり続けた。


東京都が都立高校の不祥事を隠蔽したことによって、


「学校図書館の民間委託は、なんの問題もなくうまくいっている」

という、間違ったメッセージを世間に与え続けています。

大げさに言えば、


イラクは大量破壊兵器を保有している

として、2003年にイラク戦争を始めた米国や


戦艦2隻撃沈、巡洋艦2隻撃沈、戦艦1隻中破、巡洋艦1隻中破

と事実を歪めて報道していた旧日本軍の大本営発表

と、本質的には、なんら変わらないような状況が続いていると言えるのではないかと思います。

CCCによるツタヤ図書館が

図書館利用者とはなんの関係もない、イベント客や駅利用客の出入りもすべてカウントし

また

館内何個所もあるBDSゲートを行き来するたびに、ひとりの人が何人にもカウントされた結果、

「年間200万人来館する図書館」
として報道されれば

ツタヤ図書館は、大成功を収めている

と誤認されるのも、まったく同じ構造です。

なので、事実はどうだったのかという検証作業が、いまもの凄く大切になってきているわけです。


そいういう目でいま一度このニュースをみていただけると幸いです。

のちほど、今回の不正経理に関する詳しい調査データをご報告したいと思います。


よろしくお願いいたします。


↓今回紹介したビジネスジャーナルの記事



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