2020年1月17日金曜日

荻窪高校で何が起きていたのか?

こんにちは、日向です。

昨日書きました「スケープゴートにされた荻窪高校」のつづきです。

ご紹介したBJの記事↓


東京都教委も非公表、都立高校・図書館運営で偽装請負発覚…都教委が現場に責任転嫁



この内容だけでは、2015年当時、都立荻窪高校の学校図書館で、いったい何が起きていたのがか、いまひとつわかりづらいと思いますので、もうすこし説明を追加しておきたいと思います。


まずは、BJの記事から、ことの経緯がわかる該当部分を引用しておきましょう。



中部経営指導センター管轄でも15年度には農芸、中野工業、荻窪の3校で契約不履行が起きている。なかでも4~6月下旬のほとんどで仕様書通りの配置できなかった荻窪高校は、契約不履行の日数がダントツで多い。

午前、午後、夜間の3部制の定時制高校である同校では、「中学生の頃に不登校だった生徒たちには、図書館に入れなくなる生徒が必ずいる」との理由から、毎日同じ業務従事者の配置を強く事業者側に要望していた。

そのことを最優先させるため、高校側は本来、複数人体制とされるべき午前の時間帯を「1人でいい」と、仕様書の定めを無視するに至った経緯が報告されている。 

生徒のことを第一に考えれば、荻窪高校の対応は正しいようにもみえるが、直接雇用でもないのに、学校側が毎日同じ人物の勤務を求めるのは明らかに制度の主旨を逸脱している。

そこで、この事実を知った都教委(高等学校教育課)は、あくまで仕様書通りに履行することを要求した。業務従事者の配置に口出しする学校の対応は、偽装請負にあたりかねないと懸念している様子が伝わってくる


ざっと、事実経過だけをみれば、BJの記事にも書きましたように、荻窪高校の司書教諭が強力な権限を持っていて、

とにかく月曜から金曜までの日中に同じ人を配置せよと、受託会社に要望していました。

その行為が偽装請負にあたるのでやめるように都教委から指導されても、頑なに拒否し続けたという経過が都教委の一連の報告書には書かれていたわけです。

ポイントは、


毎日同じ業務従事者の配置を強く事業者側に要望

というところです。


コレなんでマズイかといいますと、

そもそも請負というのは、その業務を何人でやるとか、どういうやり方でやるとかというのは、完全に受託者に任されているものです。

いつまでに完成品を何個納入するか、サービスであれば、いついつ運営業務を支障なく完遂させるのが求められているだけなんです。

なのに、「いつ、こういう人を何人をよこしてくれ」なんてクライアントが業務従事者を特定して要求したりすると、たちまち労働者派遣事業になってしまい、それは偽装請負でアウトなんです。

そこのところの理解が現場では決定的に足りなかったのではないのかと私も思っていました。

ご参考までに、この間の事実関係を事例列順に整理したものを、文末に貼り付けておきますので、ご関心のある方は、のちほどみてみてください。


その表をみていただければわかる通り、ポイントは、4/16と5/19です。

いずれも受託会社のサービスエースが仕様書どおりの配置をめざして人の手配をしたにもかかわらず、荻窪校サイドが、


「それならいらない」

と、その提案をキャンセルしているんです。


で、ここまで都の内部文書の内容を分析した私も、当初は、荻窪高校が、明らかに制度の趣旨に反したな要求をしていたのではないのと思っていたのですが、よくよくそれまでの経緯を詳しく調べてみると、あれっ、これは、ヘンだなと思ったんです。


・そもそも東京都が特定の時間帯のみ複数配置としている仕様書の記述そのものが偽装請負ととられかねないおかしなもの

・前年度までも、不履行が常態化していたときには、何も言わなかったのに、突然、厳しく言い出したのはなぜか

・もし荻窪高校の要望が仕様書と異なるのであれば、現場の実情に合わせて仕様書のほうを変更することもできたのではないのか

というような疑問もわいてきました。

また、都立高校の関係者から、話を聞きますと、荻窪高校を厳しく糾弾した都の報告書の内容とは180度異なる、思いもしなかった側面が出てきたんです。


この点も引用しておきましょう。


「このケースの場合、困難な生徒を受け入れて、どうやって育てていくかを考えた教育的な配慮として、校長も含めて職場全体の一致した要望であったように思われます。

不登校の生徒を多く受け入れているような学校は特にですが、ほかの一般の高校や小中学校でも、図書館には同じ人がいて、生徒との信頼関係を築いていかないと利用は伸びません。

荻窪高校の要求は、現場感覚としてはまっとうなものであり、この校長は最近には珍しい、現場に寄り添う良心的な校長だったのかとも思えます。

こういう良心的な職員たちが、教育現場として当然に感じていることを要望すると、違法行為になり悪者にされてしまうことが、学校図書館を業務委託すること自体に無理があることを証明しています。

また、荻窪高校の教員は、生徒のために必要な配慮と、法律や契約の制約との矛盾で苦しまれたうえに悪者にされ、気の毒に思います」


どうです? なかなかこの事件は奥が深いですね。本質には、まだ何かが隠されているように思いませんか。


そのへんは、のちほど続報等でもご紹介していきたいと思います。

というわけで、取り急ぎ、追加説明をさせていただきました。




●2015年度・荻窪高校不履行の顛末


都教委(高等学校教育課) サ社(サービスエース) 荻窪高校 中部学校経営支援センター
3月下旬 27年度の契約についてサ社と高校が事前打ち合わせ 司書教諭から午前は1名にとの要望



46 4/14/6、農芸、中野工業、荻窪で午後1名不配置発覚 3月末に複数従事者が急遽退社



47

センター来訪し謝罪・事情説明

早急に仕様書に沿った体制にするよう人員配置を指示
416
「学校の対応は、偽装請負にあたりかねない。また従事者が仕様書どうり配置されない内容で調整した高校側に問題があるので、センターから指導してもらいたい」

4/20以降、午前から複数配置で手配済と高校に連絡。ただし、毎日同じ従事者ではない
・午前中配置する人員をいったんキャンセル。月-金同一人員の要望にそった人員確保のため再度募集。
20日以降も月~金まで同一人員配置の希望に沿わない内容だったため
・火~木まで同じ従事者が勤務して、1か月程度を目途として、月~金まで同じ従事者の勤務を希望とサ社に伝達
高校から連絡。サ社からの連絡に、月から金まで同じ人員にしたいとの要望をサ社に伝え、サ社も学校の要望にそうことを了承とのこと
420


委託内容に問題ないので委託完了届受理予定
司書教諭・経営企画室を含め学校全体の意向
荻窪高校訪問。経営企画室長、学校担当、司書教諭含め状況を確認
57

5/19までに仕様書通りの人員配置ができると連絡


513
農芸高校を訪問。労働局調査前の打合せ



514 センターへ→512日以降の状況確認したい。配置不備の日時、経緯、再発防止策明記を受託者へ指示せよ


サ社へ欠員状況や対応策をまとめた報告書の提出指示
512日から14日までは日々仕様書どおりに履行
515

仕様書に沿った人員配置への対応を司書教諭の強い要望により、再度変更していた
サ社に対して8:40-12:30までの人員は不要と伝達

519 センターより荻窪高校は4/1-5/21まで午前時間帯全て1名体制であることが判明。これは学校側の希望。受託者は改善意志なし。今後も複数配置の予定ない顛末書受け取るわけにはいかない


サ社より→5/19から人員確保したが、高校の要望により8:40-12:30までの人員は不要とのことでキャンセル。5/19以降、午前以外の時間帯は仕様書通りになる
521
東京労働局がサ社受託の農芸高校を偽装請負の疑いで調査。当日、担当部署同席



522



高校へ仕様書と異なる午前1名体制指示しているのなら問題と指摘。校内で業務体制の確認・検討を要請
63

早急に、月~金の午前に配置できる人材を募集
校内で仕様書に沿った業務履行を行うよう周知徹底したとセンターへ報告
サ社に再度仕様書どおりするよう迅速な対応を連絡
68 5/19以降仕様書どおりになるという話だったのに、なぜ6/22までできないのか。状況についてまとめ、報告せよ


6/1に高校・サ社に仕様書どおり人員体制を指示
サ社現在募集中。6/22に仕様書どうり配置予定とのこと
69



サ社から午前1名確保予定。622日から配置予定
612


これまでは司書教諭の要望を直接伝達、経営企画室は、毎回関与せず。
教育の一環として図書活動をしているため、学校現場としても、現場の状況に合わせた仕様書にしてほしいと意見
荻窪高校を訪問。これまでの経過を確認し、仕様書に沿って業務を行うことを校内で徹底するよう説明。
今後は、司書教諭と情報共有を図り、適宜センターにも連絡を入れるよう依頼
615



サ社から→6/22から午前の時間帯の人員配置が確定。月~金まで同じ人員で対応するとのこと
625
センターから報告のあった配置不備の日時と異なるが、正しい内容はどちらか
センター・今回提出された状況報告書が正しい内容であり、これまでセンターから高校経理係へ報告していた内容に一部誤りがあった
センターへ顛末書提出

提出された顛末書を高校経理係へ送付


(キャプ)荻窪高校で起きた不履行について、都の高等学校教育課経理係が作成した一連の報告書の内容を時系列順に整理した表。4/16に受託者が報告した、仕様書どおりの人員配置提案を高校側が「月~金まで同じ人員でない」とキャンセル。5/19にも再度受託者が仕様書どおりの配置見込みを報告するものの、このときも同様の理由で高校側がキャンセル。いずれの行為に対しても担当部署がセンターに指導を要請。東京労働局の調査が入った5/21前後の流れから、担当部署の狼狽ぶりもみてとれる。





(キャプ)「荻窪高校の履行状況について」と題された都の高等学校教育課経理係が作成した報告書の末尾部分。荻窪高校が司書教諭による、仕様書とは異なる人員配置の要望を受託企業に出して、センターの指導にも従わなかったとして、一連の対応を厳しく糾弾する異例の内容となっている。しかし、都立高校関係者からは、都教委が現場に責任を転嫁するために作成されたアリバイづくりためのたの報告書ではないかとの指摘もある。 




スケープゴートにされた荻窪高校 にもどる

なんでツタヤ図書館と都立高校の学校図書館が関係あるのって、思われる方は、以下のエントリーから始まる一連の記事をご参照ください。

教育現場の“Tカード汚染”

都立高校の偽装請負事件の詳細については、以下のエントリーからつづく一連の記事もご参照ください。

誰でもできる“図書館業務”

↓今回紹介したビジネスジャーナルの記事


東京都教委も非公表、都立高校・図書館運営で偽装請負発覚…都教委が現場に責任転嫁



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