2019年7月12日金曜日

都立高校“ピンハネ事件”

こんにちは、日向です。

先日予告しました、東京都立高校“ピンハネ事件に関する「爆弾文書」を公開します。

ことの経緯を以下の記事にまとめてみました。



労働警察が学校に踏み込んだ日



突然、査察を受けた学校関係者は、さぞや肝を冷やしたことだろう。

下の文書をみてほしい。

FAX文書の最上段には、「2015年5月21日 10時42分」とある。続いて送付元と思われる「東京労働局 受給調整事業部」と印字されている。




「受給調整事業部」と言えば、「泣く子も黙る」労働局の先鋭部隊を抱えていることで知られている。ときには刑事告発もチラつかせて違法な派遣業者を指導している部署だ。


「業務請負(委託)に係る発注者指導の実施について」

と題された文書の日付は、FAXが送信された前日の5月20日。訪問日時は、FAX送信当日の午後2時だった。

これでは、さすがに書類を改ざんしたり隠蔽する余裕もなかっただろう。

事務連絡の文書は、挨拶分に続けて、


さて当部では、労働者派遣法並びに職業安定法の円滑な施行を図るため、事業が適正に運営されるよう法遵守の徹底、事業実態の把握を目的として、事業者に対する調査・指導を実施しております。 つきましては、業務ご多忙のおりに誠に恐縮に存じますが、下記日程で訪問させていただきたく、ご協力よろしくお願い申し上げます。

となっている。

 一般の事業所なら、「困ったなぁ」とぼやく程度で済んだかもしれないが、訪問されたのは、行政機関であり、なかおつ都立高校という教育現場であることが、ことの重大性を物語っている。



教育現場に入り込む手配師



それから2か月後の2015年7月29日付で東京労働局から出されたのが、以下の文書である。

宛先は、当時の東京都知事・舛添要一氏。都知事に、国の機関である厚労省に属する東京労働局長名で出された是正指導書である。




以前、都内の区役所が労働局から違法行為を是正指導された事件【1】を当ブログで取り上げたことがあったが、この事件は、国内の行政機関のなかでも巨大な東京都が、国から違法認定されるという、まさに前代未聞の出来事であった。

違反内容は、都立高校の図書館の運営を民間事業者に委託していた業務が、実態としては労働者派遣事業であるにもかかわらず、派遣元、派遣先ともに、派遣事業に求められている要件を欠いていること。




こう書くと、ささいな違反のように聞こえてしまうが、一言でいえば「偽装請負」である。「請負」に偽装した「派遣」だ。

契約上は、業務請負の形をとりながら、その実態は、現場で直接受託先のスタッフから指示命令を受ける
派遣となんら変わることがない無許可の派遣を行っていたことになり、

少し悪い言い方をすれば、都立高校は、違法な「手配師」とか「口入屋」を使って図書室に司書を派遣してもらっていたことになる。


ピンハネ禁止


労働基準法第6条では、以下のように規定されている。


何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

「ピンハネ禁止」とか「中間搾取の禁止」を規定したもので、

労働法で真っ先に教わる内容なので、違反の現場となった都立高校の教師の方たちなら、知らないはずはない。


日本では、長らくこの原則が堅守されていたが、1980年代以降、一部の専門性の高い職種を対象に、厳格な要件を満たした事業者に限って、例外的に「他人の就業に介入して利益を得ること」が認められたのが労働者派遣事業だった。

2000年代に入ると規制緩和の流れのなかで、派遣対象範囲がずるずると広げられてきたが、それでも無許可で派遣業を行うことは、厳格に禁止されてきた。労働行政をつかさどる厚労省としては、いくら規制緩和が進んだとしても、ここだけは譲れない最後の砦と言ってもいい。


厳格な要件を満たして認可された派遣業でもないのに、現場に派遣したスタッフを安易にクライアントの指揮命令下においてしまっては、

労務者を集めて現場に送り出すことで、自らはなんの価値も生み出さないのに、賃金をピンハネしている手配師とまったく同じことをしていたことになる。

業務請負業は、受託した事業者の責任者が、自社で採用したスタッフをマネジメントすることで、クライアントに完成品(サービス)を納品することで成り立つビジネス。

それに対して、都立高校の受託事業者は、ただ現場に採用したスタッフを派遣してピンハネしていたのだとしたら、その罪は決して軽くない。

このとき、違法認定を受けた都立高校の受託事業者は一社だけだったが、この後、すべての高校についての実態調査が行われた結果、ほかの高校でも、同様の違法実態がみつかっている。

東京都立高校に限らず、学校図書館の民間委託は、そうした偽装請負の温床になりかねない危うさを常に抱えている状況にあるのは間違いない。

そんな学校図書館の世界に、和歌山市では、TSUTAYAの看板を掲げるCCCが密かに入り込もうとしているのだ。

ちなみに、前出の労基法第6条に違反した場合、

1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という重い罰則が科せられる。

いったい、都立高校で行われていた司書派遣のどういうところが具体的に違法だったのか、その点は、次回以降、詳しくみていくことにしよう。



厚労省『労働者派遣等の労働力需給調整の仕組み』より


【1】ようこそ、“TSUTAYA小学校”へ




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