こんにちは、日向です。
先日、お知らせしておりました「東京の図書館をもっとよくする会」の総会で開催された講演会を無事、終えてきました。
「大盛況」とまではいきませんが、リモート参加も含めて結構な数の方にご参加いただきまして、いまだにツタヤ図書館問題は、広くご関心を持っていただけるテーマであることを再認識するいい機会になりました。
講演内容については、同タイトルの新書のエッセンスをご紹介したものですので、すでに本をお読みいただいた方にとっては、既知のことばかりで、いまひとつ物足りなかったかもしれません。それでも、公文書をここまで徹底的に黒塗りして開示してくる自治体の異様さについては、聴衆のみなさんに、私の認識を共有していただけのではないかと感じています。
取り急ぎ、当日参加者の方に配布されたレジメと、講演のなかでご紹介した資料・図版の一部、会場に展示した黒塗り公文書の画像を文末に掲載しておきます。
よろしくお願いいたします。
第30回 東京の図書館を もっとよくする会 総会 2025/7月13日(日)
講演:黒塗り公文書の 闇を暴く 日向咲嗣
1.和歌山市民図書館が出してきた黒塗り公文書1400枚の中身
①ツタヤ図書館とは?
・「TSUTAYA」を全国展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が指定管理者となって運営する公共図書館のこと。
・2013年4月に、佐賀県武雄市に第1号が誕生(既存建物を改装)
・ 年中無休で夜9時まで開館、開放感のある吹き抜け空間と高層書架がオシャレ、館内にスターバックスがあって、コーヒーを飲みながら本や雑誌を読める、新刊書店、レンタル店が併設、従来の図書館にはない民間ならではの斬新な試みとして注目。「官民一体の取組による画期的な図書館」として、メディアから賞賛
・武雄市では、いつのまにか大事な郷土資料が廃棄
・価値のない古本を大量に図書館蔵書として購入(2015年9月に増田社長が謝罪文)
・書店方式の独自分類がわかりにくく、2015年新装開館の海老名市では大混乱に陥り、共同事業体のTRCがCCCの運営を公然と批判
・貸し出しに採用したT カードは個人情報保護に不安という声が絶えない
②和歌山市では、市駅前に移転・建設予定の市民図書館の指定管理者を広く公募して2017年11月にCCCを選定していた
・「来年開館する市民図書館について、南海電鉄と話し合ったすべての文書」を2018年4月に開示申出⇒7月に開示
・1400枚の文書のうち約92%が黒塗りされていた
③不開示理由は、情報公開条例を総動員
(1)「個人情報なので開示しない」(行政機関は、利用目的以外の保有個人情報(民間人)の提供を禁止されている)(2)「企業秘密なので開示しない」(3)「開示すると、率直な意見交換しにくくなる」(4)おそらく、建物の図面が一部警備上の理由で開示できないということだった
2.企業秘密にあたるかは、誰がどう判断したのか?
・市民図書館の担当者が該当部分の企業に、どこを黒塗りにするかを電話で問い合わせた内容が開示。南海電鉄、RIAともにまったく同じ文句だった
・法人独自の企業 ノウハウや、営業活動上の秘密に関する情報等が記載されている部分については、法人の事業活動が損なわれる可能性があるため不開示とする
3.大量の文書を黒塗りして開示したのは市民図書館
・送られてきたダンボールを開封して衝撃。ほぼ何もわからないことに絶望
・これではなんの記事も書けないので、調査はここで終了か?
・開示を担当したのが、市民の知りたい要望に応え、情報アクセスをサポートするはずの市民図書館だったことに衝撃。
・それでもなにかわかることはないものかと黒塗り文書の中身を表にしていった
4.調整会議メンバーが大挙して武雄市視察
・14年11月に三者合同で武雄市に視察に出かけていたことが判明。
・復命書(出張報告書)は、すでに廃棄されていたが、旅費に関する文書が開示。市の職員4名(うち1名は市教委所属)、県庁の職員3名の合計7名。武雄市が発表している平成26年度の「視察受入状況」では、11月13日に「和歌山駅周辺活性化調整会議・事例研究会」の名目で15名参加。残り8名は南海電鉄サイドからの参加だった。旅程表に添付されていた内容から、主催者はRIAと推測できる。
5.多賀城市のケースとソックリな和歌山市の視察
・2016年3月に駅前にツタヤ図書館が開館した多賀城市でも、まだ何も決まっていない段階で、市教委のメンバーが武雄市に出向いてCCCのスタッフと打ち合わせしていた記録があとから流出(市教委は存在を否定していた)。
・CCCが詳細な工程表を作成。誰がいつまでに何をするかまでCCCが決めていた。和歌山市でその役割を担っていたのがRIA。
・RIAの暗躍
6.国交省からの天下りがキーマン
・和歌山県庁が開示した旅行命令簿には、県都市住宅局・都市政策課長(当時)の皆川武士氏の名前が。2012年に国土交通省から人事交流で派遣されてきた若手のキャリア官僚。2015 年7 月に退任して国交省に戻る際、地元メディアに「皆川課長は、任期中和歌山市駅前の再開発に道筋を付けました」と報じられていた。自治体に巨額の補助金を出して中心市街地の再開発を推し進めていた国が、集客の目玉にツタヤ図書館に飛びついたか
・県庁から人事交流できていた中西達彦氏。2014年7月の市長選で当選した尾花氏の出身と同じ部署にいた技官で、尾花氏の“懐刀”とみられていた人物。
7.市長が代わるタイミングで大型再開発プロジェクト推進
・南海電鉄和歌山市駅は、1972 年の駅ビル完成当時と比べて乗降客数は半減。2013年に高島屋が撤退を表明して、市駅前の空洞化が決定的になり、そこに現れたのが、駅ビルを建て替えて、集客の目玉にツタヤ図書館を誘致してくるというものだった。
・調整会議がスタートしたのが2014年6月。その2か月後に新市長が誕生。地域経済が急速にしぼんでいくなか、ツタヤ図書館をテコにして、なにがなんでも中心市街地再開発を成功させたいという国と地元の意向を実現するために担ぎ出されたパーツのひとつだったのではないか。
8.グランドオープン当日に暴かれた官製談合疑惑
・突然送られてきた2通の内部告発
・きれいに黒塗りが外された文書の中身
・言い逃れのきかない市長プレゼン
・議員が要請してようやく開示された入札調書
・落札者がいちばん高い価格をつけていた
・沈黙する当事者たち
9.市民団体が行なった2度の審査請求
・審査員の採点を明らかにせよ
・誰がCCCに高得点をつけたのか
・提案書は、ほぼのりべん
・1000日かけて勝ち取った海苔剥がし
・担当者が1年半放置していた理由
10.住民監査請求があぶり出したもの
・情報開示請求によってわかったコモンの私物化
・市民団体との情報共有の成果
・開館後も、次々とあかるみに出る不正疑惑・不祥事
・9つの監査請求
・地元メディアは、誰の味方なのか
11.黒塗り公文書が意味するもの
・歪められた行政を可視化した黒塗り公文書
・いまこの瞬間にも尋常でないことが行なわれている
・「坑道のカナリア」になった図書館
・アイヒマンの「凡庸な悪」と公務員
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