こんにちは、日向です。
先月に引き続き、今月もツタヤ図書館問題をお休みしまして、公務員の会計年度任用についての記事を、さきほど一本リリースしました。
狭山市、図書館職員を大量解雇…22年勤務のベテラン司書を雇止め、雇用保険も不支給の恐れ
先月の上旬、図書館関係者の方から、22年間も勤めた図書館を雇い止めされた母親の事例を漫画にしたリーフレット(試作版)を送っていただきまして、
そのなかにですね、17年間も雇用保険料を払っていたのに、退職後は1円も失業手当をもらえない
というデメリットが書かれておりまして、雇用保険は、私の専門分野ですので、これは看過できないとなりまして、
雇い止めされたご本人と、その方を支援する労組の幹部の方を紹介してもらいまして取材したのが7月上旬のことでした。
原稿は、一週間後くらいにはなんとか書き終えていたのですが、事実関係の確認にもたもたしているうちに週末になってしまいまして、
これは来週掲載かなと思っていたところ、さきほど、朝日新聞デジタルが数日前にあった記者会見をもとに記事を出していました。
司書を22年間「切られるとは」 地方公務員の新制度「会計年度任用」で失職
ぶっちぎり先行と思っていたら、いつのまにか後追いになってしまったという間抜けな顛末でした。
内容については、じっくりBJ記事本文を読んでいたたくとして、特に、注目していただきたいのは、
会計年度任用の3年雇い止めが、これだけ世間で騒がれるなかでも、埼玉県狭山市では、その雇い止めの手法が、飛びぬけてあくどいといいますか、エグイんです。
なにがえぐいかっていいますと、全員公募にしたまでは、よそと同じですが、その一次選考に民間企業を使ってるんです。
こんなこと誰がやったの?と責任追及されたときに、
人事専門の民間企業が公平公正に選考した結果です
と言い逃れするために行なったものとしか考えられず、人を切るのに、なかなか手の込んだことをしているんですね。
今回、32人中11人と、大量に雇い止めされたなかには、22年も勤務しているベテラン司書の方がいましたが、その方ですら、一次選考に関して
ご本人の能力や、それまでの実績、勤務評価などは一切考慮されることなく、ただ論作文とエントリシートの記載だけで足切りをするという手法です。
こんなことがまかり通るならば、市当局が、ターゲットを決めて切りたい人だけを切るなんてことが、いとも簡単にできてしまうんです。
これについて、ある図書館関係者の方から、こんなコメントを寄せていただきました。
このクビキリの背景には、大規模図書館の開発のようなものがあるように思いました。
更新の審査を行った民間企業は、自分の手でクビを切りたくない経営者に代わって、公平(分け隔てなく)に、能力による差別を行うことなく、必要とする人員のクビを切ることを請け負っている会社ではないでしょうか。
また、狭山市がそのようなことを考えつくとは思いませんので、バックで狭山市を教唆する企業がついているように思えます。
(近い将来、中央図書館を建て替えて、そのタイミングで民間企業の指定管理らするための布石として
うるさそうなベテラン司書切ったのでは? というような推論が成り立ちそう)
で、この事件については、先に身内の方描かれた漫画が公開された際に、snsで、
やれ、一方的な立場だけて描かれていて、客観的な立場ではないだの
もともと一年ごとの雇用であることを前提に働いているのに、あとで切られたと文句言うのはおかしい
なんていう、ヤフコメ調の意見が出てました。
そういう人は、そもそも労働法についての基礎知識がないので、民間企業の有期雇用でも
反復継続的に更新が繰り返された有期雇用では、正当な理由のない雇い止めは無効(労働契約法19条)になる
という大前提をまったくご存じないままに「自分の常識」で意見を言ってしまっているようでした。
この雇い止めの法理は、もともと判例として定着していたものでしたが、それを明文化して、正式に労働契約法として法整備されたのが2012年のことですので、
知らない人が多くいるのは仕方ないんですが、もう少し厚労省も、改正法の主旨を周知させてほしいと思います。
で、民間企業では、裁判になったら、たちまち雇い止めは無効という判決が下りるなかで、
公務である会計年度任用には、なぜか、この法理が適用されない。問題は、そこにあるんですよ。
つまり民間では到底通用しない乱暴な処遇が、公務の世界では、まったく合法でできてしまうわけです。
ただし、雇い止めは有効となっても、今回ケースにのようにあまりにも酷い事例では、損害賠償が認めらている判決もありますので、同じ目にあった人は、もし可能ならガンガン裁判を起こしてほしいものです。
で、そういう人には、みんなで支援して、カンパして、とんでもない悪代官のような自治体の責任者には、非難囂々浴びせかけるといいますか、悪口罵詈雑言を投げかけていきたいと思うわけなんです。
雇用保険については、自治労連埼玉県本部がチャートを作成してくれていますので、記事中のそちらを参考にしてください。
できれば、こちらは、後日解説したいと思います。
なお、事実関係の確認にあたっては、7/25に、狭山市中央図書館(狭山市教委あて)へ、以下のような質問状を送付しています。
もし回答がありましたら、そちらをあとからでも記事に追記する予定です。
よろしくお願いいたします。
狭山市教育委員会御中
いつも、お世話になっております。
フリージャーナリストの日向咲嗣と申します。
今年3月に、狭山市中央図書館で会計年度任用職員が大量に雇い止めされた件について取材を進めております。
主な関係者への取材を終えたところで、近く、ビジネスジャーナル(https://biz-journal.jp/)に寄稿するべく、いま原稿を執筆しているところです。
つきましては、お忙しいところ、たいへん恐縮ですが、以下の点についてご回答いただけましたら幸いです。
質問事項
(1)民間企業に今回の公募の選考業務(論作文やエントリーシートの内容による足切り・書類選考)を委託したとお聞きしていますが、それはどういう目的で行なわれたのでしょうか?
狭山市では、このような民間委託は、恒常的に実施されているのでしょうか?
(2)その際に、これまで勤務していた図書館スタッフの勤務評価が考慮されないとのことでしたが、それはどうしてですか?
ベテラン司書の経験は必要ないというご判断でしょうか?
(3)総務省が会計年度任用について、再度の任用は2回までとしているのは、あくまでも国の常勤の場合で、一律にこれを適用すべきものではないととされていますが、それをあえて狭山市では、適用したのは、どのようなご事情があったのでしょうか?
(4)狭山市では、図書館部門以外の部署の会計年度任用でも、3年めの公募を図書館と同じく、民間の業務委託を活用して実施されたのでしょうか?
もしほかの部門は公募が実施されていないのでしたら、その理由をお聞かせください。
(5)フルタイム会計年度任用の人は、雇用保険を一度脱退して、退職手当の対象となるようですが、それによって生じるデメリットは、あらかじめ検討されましたか?
検討されたうえで、あえて雇い止めをされたのでしたら、その人の生活権侵害になるというご認識はなかったのでしょうか。また、もしデメリットを検討されなかったのでしたら、結果的に退職するフルタイムの職員が被った不利益については、一定の責任を果たすべきと思いましたが、そのような必要はないのでしょうか。
(6)雇い止めされたベテラン司書が行なっていた児童サービスは、代わりに採用された職員によって、つづがなく継続されたのでしょうか。
(7)ベテランの司書が何人も雇い止めとなり、中央図書館では、それまで運営を担っていた正規職員も異動になって、図書館業務の経験のないスタッフが多く入られたとお聞きしていますが、それによって業務に混乱はありましたでしょうか?
また業務の質が落ちたりするようなことはなかったのでしょうか?
(8)雇い止めされた会計年度任用職員の人たちのうち希望者を復職させることを求めた署名活動が始まっていて、一か月足らずで5000人の署名が集まったようですが、これについては、どのように受け止めておられるでしょうか
以上です。
よろしくお願いいたします。
日向咲嗣
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