こんにちは、日向です。
7月から始めました「BJアーカイブ」ですが、ちょっと油断しているうちに、その後も、BJの古いツタヤ図書館批判記事が次々と消されていっているようですので、消えた記事の再録をそろそろ再開したいと思います。
前回は、2015年末の武雄市と海老名市に関する記事を何本か再録した後、昨年、香川県坂出市がツタヤ図書館を誘致したことから、急遽2020年にお隣の丸亀市がCCCを選定したときの記事を2本再録しました。
主に、ツタヤ図書館の問題について、記事には書けなかった内幕を書いています。
こんにちは、日向です。
7月から始めました「BJアーカイブ」ですが、ちょっと油断しているうちに、その後も、BJの古いツタヤ図書館批判記事が次々と消されていっているようですので、消えた記事の再録をそろそろ再開したいと思います。
前回は、2015年末の武雄市と海老名市に関する記事を何本か再録した後、昨年、香川県坂出市がツタヤ図書館を誘致したことから、急遽2020年にお隣の丸亀市がCCCを選定したときの記事を2本再録しました。
こんにちは、日向です。
先日アップしました 11番目のツタヤ図書館が決定・岐阜県瑞浪市 のつづきです。
今年9月1日に開催されました選定会議(「瑞浪駅北地区複合公共施設整備運営事業公募型プロポーザル審査委員会」)によって、CCCを代表企業とする企業グループが優先交渉権者に選定されました。
この審査結果をみて、まず最初に驚いたのがコンペに参加した4つの企業グルーブの事業者がすべて黒塗りなしで公開されていたことです。
審査結果なんですから、落選した企業グループも公表されるのは当たり前と思われるかもしれませんが、私がこれまでみてきたツタヤ案件では、競争上の利益を損なう(コンペで落選した事実が世間に知られると、ネガティブな印象を与えかねない)ことを理由に、選定企業以外はすべて黒塗りされてきました。
それが瑞浪市では、包み隠さず、応募企業グループ名がすべて公表されていたのですから、あれれっ、いったい、これはどういった風の吹き回しなのか?と思ったわけです。
それもそのはず。募集時点で、ある程度情報収集能力のある企業でしたら、最初からCCC圧倒的優位の雰囲気といいますか、「出来レースの臭いがプンプン」していることを察知して、受託可能性が低い案件には無駄に応募するのを避けると思われるからです。
参加してくる企業は、なにか特別の事情があって、お付き合いで応募しているんだろうなと、(あくまでも私の勝手な邪推ですが)とらえていました。
それが瑞浪市では、4グループ計13社も応募しているんですから、これまでのツタヤ案件には、ありえなかったパターンであることは明らかです。
次に応募企業の顔ぶれをみますと、晴れて優先交渉権者に選ばれたCCCグループには、“株式会社梓設計 中部支社”と“株式会社ライフ・クリーンサービス”の二社が構成企業として参画しています。
茨城県潮来市に本社を持つライフクリーンサーピス(ビル管理)は、和歌山市駅前に支社があることが判明。CCCから市民図書館の業務を請け負っているのかもしれないなと思っていたら、なんと、宮城県多賀城市、岡山県高梁市、香川県丸亀市と、CCCが受託している自治体に支社を構えていることから、なるほど、これまでCCCから施設管理業務を再委託されていた企業の可能性が濃厚です。
そんなCCCと懇意な企業が瑞浪市では、同じ企業グループとして応募してきれているのでしょう。
もう一社の構成企業として名前を連ねている梓設計のほうは、これまでのツタヤ案件にはないパターンです。といいますのも、CCCが表立って大型プロジェクトの設計段階からプロデュースする場合、2015年の海老名市(改装)や2016年の多賀城市(新築)、2017年の和歌山市(新築)がそうであったように、いずれも代官山T-SITEの設計を手掛けたアール・アイ・エー(RIA)とタッグを組むパターンでしたが、瑞浪市では、設計大手で公共施設の実績も多数ある別の会社と組んでいるんですね。
私が記憶している限りでは、CCCが表立ってタッグを組んだ設計事務所はRIAしかありませんでしたので、これは驚きです。(後述する周南市と延岡市が例外)
調べてみたら、昨年選定された坂出市でもCCCは、梓設計と組んでたんです。
CCCお得意の、開放的な吹き抜け空間に高層書架を設置して、ダミーの空箱を飾るという設計を担ってきたRIAとは決別して、なにか別の方向性を展開しようとしているのかなと思わざるをえません。
これは何を意味するのか。つらつらと考えていきますと、もしかしたら、CCCの社内事情と関係していて、これまでのようなゴリゴリの図書館風商業施設の設計を踏襲することに異議を唱える勢力が出てきて、増田宗昭御大の影響力が弱まっているのではないのか(smbcの影響力?)と感じました。
もしそうだとしたら、2021年の丸亀市から蔦屋書店を併設せず、2022年の宇城市から高層書架を設置せず、2024年の和歌山市からTカードも廃止するなるなど、次々と「CCCの独自性」が失われていくなかで、2013年に武雄市で確立されたツタヤ図書館のコンセプトが、坂出市以降では、いよいよ完全に崩壊することになるかもしれません。
そこで、思い出してほしいのは、今回、施工を担当する事業者は、今回の公募には入っておらず、また別途募集するという変則的なスキームが採用されていることです。(OD方式と呼ぶ)
建物の設計は2026年12月までに終えて、建設事業者はその翌年2027年に別途発注。工期は2028年11月というスケジュールになっています。
このことが何を意味するのか。出来レースの臭いがプンプンする案件に、なぜか4グループも応募してきたのかという謎とも関係しているのではないのかというのが、私の推測です。
つまり、出来レースの可能性も承知して、あえて応募してきた残り3グループの思惑としては、それぞれの背景には、どこかのゼネコンなり、地場の建設会社がいて、それらの企業にとっては、瑞浪市の運営と設計業務を一体化した公募に参加しておかないと、その後の施工業務に入札しにくい事情があるのではないのか。まったく的外れの妄想かもしれませんが、そうとでも思わないと、この異様な事態の説明がつきません。
次に、落選した残り3グループの顔触れをみていきますと、これまた、おかしなことが次々とみえてきます。
まずは、二番目の“代表企業 : シダックス大新東ヒューマンサービス”からいきますと、ココは2016年に延岡市が市民センター・エンクロス(2018年オープン)の運営者を形だけ公募(すでにCCCに内定していたが、市民からの批判の高まりを受けて実施)した際に、圧倒的に不利ななかで応募してきたのがこの会社でした。さらに言えば、2022年にエンクロスが翌年からの二期目の運営者を公募した際、結果的にCCC以外どこも応募はありませんでしたが、事前に「応募を検討している」と噂された企業がシダックスでした(関係者からのリーク)。
圧倒的に不利なことがわかっていても、応募してくれる奇特な存在なのでしょうか。
次に三番目の“代表企業 : ホーメックス”のグループです。ここは愛知県に本社を構える中部地方を地場としているビル管理会社のようですので、岐阜県の瑞浪市の事業には、手を上げてくるのは当たり前ともいえるのですが、タッグを組んだ設計事業者が、著名な“株式会社内藤廣建築設計事務所”でした。
内藤設計といえば、CCCが事業計画段階から関与した山口県周南市の徳山駅前図書館を手掛けたところです。延岡市のエンクロスは、CCCが関与する前段階で事業計画が決まってましたので、これまた著名な乾久美子氏が設計を手掛けてましたが、周南市は、駅前に図書館を新築する計画そのものにCCCが深く関与していましたので、そこだけがRIAではなく、内藤設計だったのは、ちょうど同じ時期にRIAが手掛ける和歌山市の事業が進行していたため、ではないかと思っていました。
そして、“ 丸善雄松堂”を代表企業とした、もうひとつのグループこそが、今回のいちばんのミステリーといえるものです。丸善雄松堂といえば、TRC図書館流通センターとともに、丸善CHIを持ち株会社とした、その事業会社の一員です。TRCが公共図書館を主に受託しているのに対して、丸善雄松堂のほうは大学を中心とした学校図書館の運営を専門に受託している企業として有名です。
なにが不思議かといいますと、瑞浪市の複合施設に入るのは公共図書館ですから、ここはTRCが応募してくるのが自然なはずなのに、なにゆえ丸善雄松堂が応募してきたのかということなんです。ちなみに、これまでのツタヤ案件でCCCと競合したのは、ほとんどがTRCです。2017年の和歌山市からはじまって、2020年の宇城市と門真市、2022年の読谷村など、ほぼすべてで競合したのがTRCでした。業界最大手の同社が新しい図書館の運営に手を上げてくるのは当然のことといえますので、なにゆえ今回瑞浪市では、TRCではなく、学校図書館を専門とする丸善雄松堂が応募してきたのかが不思議で仕方ありません。
今回はTRCが前面に出ることを嫌ったか、あるいは丸善雄松堂が他の自治体とのバーターで、CCCにお付き合いしてあげたのかなぁと、これまた私の勝手な邪推・妄想が頭のなかを駆け巡ります。(たとえば、2019年に、大阪市の「こども本の森中之島」の運営者にTRC・長谷工が選定され、CCCもコンペに参加したものの敗退。逆に、翌年2020年門真市の複合施設運営者選定では、CCCが選定され、TRC・長谷工は敗退した)
ちなみに、このグループには、“株式会社 JTB コミュニケーションデザイン”が構成企業として参画しています。同社は、瑞浪市と同じく岐阜県の高山市では、複合施設の“維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者”としてCCCと一緒に選定されています。JTBは、高山市ではCCCとタッグを組み、瑞浪市では、CCCと競合しているんですね。そういうことは業界ではよくあることなのかもしれませんけれど、わざわざ受託できる可能性の低いところに出てくるのは、高山市の事業と関連したなにかが、あるのかなぁと、これまた勝手に邪推してしまいそうです。
というわけで、公募に参加してきた事業者の顔ぶれをみるだけでも、これまでとは明らかに違った雰囲気をひしひしと感じるわけですが、ウォッチャーからしてみれば「こういう厳正なプロセスを経てCCCが選定されたんですよ」ということを必死でアピールしているように思えてなりません。
そのためなのか、選定結果の概要とはいえ、応募企業名をすべて公開した瑞浪市。ちょうど同じ時期にCCCが選定された香川県坂出市では、私の審査請求にもかかわらず、競合他社の社名等詳細を頑なに開示拒否しているのと実に対照的です。
思えば、2015年に愛知県小牧市のツタヤ図書館案件が、住民投票によって否決されて以来、CCCにとっては、中部地方に公共センターの拠点を築くことは悲願になってましたので、その意味で瑞浪市を予想通りCCCが受託したことは、この後、名古屋を取るための重要なステップなったと言えるのではないかと思いました。
追記 上記に関係して、なにかご存じのことやご意見がありましたら、コメント欄にどしどし書き込んでください。よろしくお願いいたします。
こんにちは、日向です。
当ブログで取り上げるタイミングを逸していたのですが、先月、岐阜県瑞浪市が、駅前複合施設の運営者に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定したこと正式に発表しました。
瑞浪駅北地区複合公共施設の整備運営事業者が決定しました!
https://www.city.mizunami.lg.jp/kurashi/machizukuri/1005848/1011455.html
老朽化した中央公民館と市民図書館を備える総合文化センターの機能を集約し、 新たな機能を追加した複合公共施設を整備。 想定延べ床面積は3200㎡程度。建設地はJR瑞浪駅駅北地区約3700㎡というプロジェクトです。
これにより、2013年の武雄市から始まって、2015年海老名市、2016年多賀城市、2017年高梁市、2018年周南市、2020年和歌山市、2022年宇城市、2025年読谷村、2026年門真市、2028年坂出市につづいて、全国で11番目のツタヤ図書館が2029年に瑞浪市にできることになりました。
設計・工事監理に3億1840万円(税込み、以下同)、開館準備が4570万円、指定管理料は年間2億円が上限。建設事業者は、2027年度に別途発注する予定。予定工事費は32億8000万円。
瑞浪市による事業者の選定結果速報が今年9月5日でしたが、7月に書きました以下の記事中でも一覧表に瑞浪市を取り上げているように、もう事業構想がスタートした2021年頃からCCCが受託するのではないかと思われる情報が次々と出てきていましたので、ツタヤウォッチャーにとっては、予想通りの展開だったということです。
今回の瑞浪市の複合施設整備のプロジェクトには、ひとつ大きな特徴があります。それは、運営業務だけでなく、建物の設計業務も一緒に担う事業者を募集したことです。
“最も魅力ある運営等を行える事業者を選定し、設計の段階から運営を想定した意見を取り入れることで、より良いサービスを提供する上で必要な、設備や機能、デザインを反映した施設整備を期待”できるからと、瑞浪市では、その理由を説明していますが、ツタヤ図書館を誘致した自治体は、どこもCCCに建物の設計段階から関与させて、CCC仕様の箱物を建てることが大前提ですので、こうするのはある意味当然のことでしょう。
和歌山市のように、設計業務と運営業務を別々に公募したりしますと、CCCが選定前から裏でコソコソと動かないといけません。「出来レース」「官製談合」と批判されないためには、最初から設計と運営を一体化させておく必要があったわけです。
では、同じく駅前にツタヤ図書館を整備する予定の坂出市とはどこが違うのかと思われた方も多いと思いますが、瑞浪市の場合、今回選定されたのは、あくまで運営と設計業務を担当する事業者です。坂出市のように運営や設計に加えて施設の整備もすべてひっくるめて担当する事業者を募集したわけではないんです。(坂出市では運営をCCCが担当し、施工は大林組)
建物の建設工事については、今回の公募には入っておらず、また別途募集するという変則的なスキームが採用されています。(OD方式と呼ぶ)
2020年以降、建築資材や人件費の高騰によって、公共施設の施工については、入札不調が続出しています。一度決まった施工業者も、あとから「やっぱり採算が合わないからやめます」と辞退するケースも出てきていて、自治体としては、とっても頭が痛い状況が続いています。そこで、施工部分については、工事がスタートする直前に実情に合った予定価格を設定して公募することにしているんだろうと思います。
当ブログでも何度か取り上げてきました千葉県木更津市が、CCCを市民活動センターで選定した後、建設予定の市庁舎整備を担当するゼネコンが辞退したため、事業計画を再度作り直すという異例の出来事がありました。そういう事態を瑞浪市は回避したかったのでしょう。
さて、ここまで書いたところで、ほんとうに設計業務と運営業務を一体化して公募する必要性はあったのかという素朴な疑問がムクムクと湧き上がってきました。
建物の設計は2026年12月までに終えて、建設事業者はその翌年2027年に別途発注。工期は2028年11月というスケジュールになっています。開館予定は2029年3月ということですから、いま急いで設計と運営をセットにして発注なんかしなくても、とりあえず今回は、設計事業者のみコンペで選定して、運営者の選定などは、建物の完成がみえてきてからでも決して遅くはないのではないのか。
市当局は、“設計の段階から運営を想定した意見を取り入れる”ためとしていますが、すでに市の意向を詳しく盛り込んだ基本計画が昨年11月に策定されていますので、設計事業者には「この基本計画を反映した建物にしてください」と発注すればいいだけのことではないでしょうか。
主役はあくまで市民であり、その市民の意見を集約して、市の担当課が作成されたのが基本計画です。設計事業者も運営事業者も、その基本計画によって与えられた課題を実現するのがミッションです。民間事業者が自分たちのやりたいような建物を設計するなど、言語道断な話だと思いませんか。
要するに、瑞浪市は、なにがなんでも運営者予定者(指定管理者)に、建物の設計までやらせたいという強固な意志を持っているんだなぁというのが私の感想です。
もしかして、市が作成した基本計画からして、すでにCCCの意向が強く反映されたものになっていて、瑞浪市も、これまでのツタヤ図書館誘致自治体がそうであったように、最初から、CCCにすべて任せることを決めていて、事業者の選定プロセスは、茶番というしかない、誰かが作った台本通りに進められたのではという疑念を今回も持っています。
長くなりましたので、選定プロセスについては、別のエントリーをたてて、詳しくみていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
こんにちは、日向です。
昨日アップしました2020年7月にリリースしました丸亀市マルタスBJ記事・前編につづいて、本日は、その後編を転載しておきたいと思います(すでにBJサイトでは消えています)。
2017年11月の和歌山市を最後に、公共施設運営の受託から遠ざかっていたCCCが2年半ぶりに受託したのが丸亀市の市民センター・マルタスでした。2013年に武雄市で話題になった初のツタヤ図書館をみた首長たちが、「ぜひ、こういうのをわが町にもつくってほしい」と殺到し、CCC前には黙っていても行列ができるほどツタヤ人気でしたが、2015年にオープンした海老名市で次々と不祥事が発覚したのを契機に、その“素人ぶり”があかるみに出ると、今度は各地で市民のツタヤ図書館反対運動が勃発。すでに内定していた愛知県小牧市では、住民投票の結果、CCCによるツタヤ図書館計画を全面的に見直すことになったのはまだ記憶に新しいところです。
そんな状況のなかで、CCCは独自の開拓方法を編み出します。すなわち、各地の自治体の首長や議会の有力者との関係を新たに構築する一方、新しく施設を整備する自治体では、その運営者を募集する前の開業準備における支援業務の段階から深く入り込むことで、いつのまにかスンナリ指定管理者に選定される、現在とっているような手法を次第に確立していきます。その手口の詳細がはっきりとわかったのが、丸亀市マルタスでの選定ブロセスだったのです。
前編では、延岡エンクロスの館長が議会に呼ばれて単独プレゼンをするという前代未聞の癒着ぶりをみてきましたが、後編では、その受託を強力に支援した“市議会のドン”と呼ばれる人物が登場します。
タイミングの悪いことに、CCCが受託するのと前後して、市議会のドンがパワハラスキャンダルに見舞われます。副市長がドンを告発したこの事件は、全国紙でもデカデカと取り上げられることとなり、その背景には、度重なる業者への口利き疑惑などの闇がかいまみえる展開に。そして、昨年からパワハラ知事として話題を集めた兵庫県のように、丸亀市でも百条委員会が開催されて、ことの真相解明に取り組むことになりました。
その狭間に、競合ゼロでCCCが新しい市民センターの指定管理者に選定されるという茶番劇が展開されていくのでした。
それでは、丸亀市・マルタスのBJ記事・後編をどうぞ。
丸亀市は6月19日、市民交流活動センターの運営者に、全国でレンタル店「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定する議案を可決した。
指定管理者の募集に応募したのはCCC一社のみだったが、すでに1年前から開業準備の支援業務をCCCが格安価格で受託していたことが判明。昨年11月、“CCC推し”の議員4人が、丸亀市と同じくCCCが運営する市民活動センター・エンクロスを視察。年末には、これから公募しようという時期なのに、CCCのみが議会の場に登壇してプレゼンするという前代未聞の出来事が起きていた。
前回記事『CCC、公共施設運営を受託する“巧妙すぎる”手口…丸亀市の管理受託の不可解な経緯』では、そんなCCC選定に至るまでのプロセスに見られた不可解な出来事をレポートしたが、今回はさらに詳しく、公共施設における民間委託の実態に迫ってみたい。
丸亀市の事例で興味深いのは、宮崎県延岡市が2018年4月に開設した駅前型複合施設「エンクロス」との共通点が多いことである。エンクロスは、CCCが初めて図書館ではない複合施設の運営を受託したケースだ。
かつてツタヤ図書館の第1号として脚光を浴びた佐賀県武雄市図書館の運営方法、たとえば高層書架、Tカード導入、書店方式の独自分類などは、その後にCCCが受託した自治体でも、ことごとく踏襲された。「武雄市ではこうでした」とCCCが言えば、誘致自治体は前例のない大胆な施策もスンナリ受け入れた。それと同じく、第2の“ツタヤ公民館”となる丸亀市では、延岡エンクロスの事例を完全にコピーしようとしているようにみえる。
たとえば、年間の指定管理料は両市共に約1億3000万円。年間の来館目標者数も70万人で、まったく同じ。丸亀市は、延岡エンクロスを“CCC運営の成功事例”としてとらえて、賑わい創出や市民活動の活性化などを期待しているという。
こんにちは、日向です。
さきほどアップした坂出市情報公開についての記事のなかで、お隣の丸亀市マルタスをCCCが受託した際の拙稿を引用しようと思ったら、例によってすでにBJサイトから消えていました。
こういう記事がなくなるとなにかと不便ですので、BJアーカイブとして以下に再録しておきたいと思います。
2020年7月にリリースされた記事で、前編と後編に分かれています。今回はその前編を復活させておきます。
2017年11月末に、和歌山市で駅前移転する新図書館の指定管理に選定されて以来、新規受託が途絶えていたCCCでしたが、2年半ぶりの受託が丸亀市でした。それも図書館ではなく、宮崎県延岡市に次ぐ2例目の市民センターを受託したのですから、当時は「えっ、どうして?」という驚きでした。
当時のCCCには、市民センター運営の実績などまったくありませんでしたが、2018年に延岡市でエンクロスという駅ビルの中に新設した市民交流スペースに、貸出をしない閲覧用の図書を並べて、スターバックスと蔦屋書店を設置した施設の運営を担っていただけでしたが、そのエンクロスについて、地元の人が「ありえない数字」とまで断言する「年間120万人来館」と喧伝して実績をアピールしていたのです。
2013年の武雄市の後、海老名市、多賀城市、高梁市、周南市あたりまでは、クズ本事件など不祥事が次々発覚する前の2014年頃までに各地の市長等との密約で内定していたと思われる案件でしたが、初のコンペを勝ちぬいたとされていた和歌山市ものちにどうやら出来レースだったことがわかってきまして、そのあとの第一弾が丸亀市の受託でした。いかにして、実績もノウハウもないCCCが公共施設運営の案件に食い込んでいくのか、その疑問に最初に答えてくれたのが丸亀市でした。前置きはそれくらいにして、以下アーカイブをどうぞ。
※前回までは、タイトルを「BJアーカイブ第〇回~」という書式にしていましたが、今回はそこから5年近く飛びますので、掲載年月表示のみに変更しました)
香川県丸亀市は6月19日の市議会本会議で、今秋完成予定の市民交流活動センターの運営者に、レンタル大手TSUTAYAを全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定する議案を可決した。
「ついに四国にもツタヤ図書館ができるのか」と思って取材してみると、丸亀市の場合、図書館ではなく市民活動センターの運営であることが判明したが、この決定には関係者の戸惑いと不満の声が渦巻いていた。しかも、CCC選定のプロセスには不可解な出来事がいくつも潜んでいた。いったい、丸亀市に何が起きていたのか。民間委託の最前線をレポートする。
今年10月以降に完成予定の丸亀市の市民交流活動センターは、市庁舎の新築に合わせて施設内に併設される複合施設の一部分。開館は2021年3月中を予定。敷地面積1万800平米のうち同センター機能は1~2階の2フロアで、最大1800平米を占める。この施設に用意されたスペースに市民が集い、カフェや図書閲覧コーナーでくつろいだり、趣味サークルやさまざまな文化活動が行われるという。
今回、CCCが受託したのは、この公民館部分の運営だ。同社がこれまで運営を受託した公共施設7つのうち、宮崎県延岡市の「エンクロス」だけは図書館ではなく、公民館にブック&カフェを併設したような複合施設(図書を閲覧できるが貸出はしない)。丸亀市は、その延岡市に続く全国で2番目の“TSUTAYA公民館”になる。
丸亀市が選定委員会を開催してCCCを市民交流活動センターの指定管理者に選定したのは、今年3月30日。5人の審査委員(うち3名は市職員)が全6項目について採点した結果、600点満点中408点を獲得したCCCを選定したのだが、応募したのはCCCの1社のみ。つまり、選定会議は、ただのセレモニーにすぎなかったのだ。ある関係者は、こう振り返る。
「もともと、地元の団体が運営するという話だったんですが、なぜか昨年春頃に突然、民間企業に任せるという話が出てきて、びっくりしましたね」
取材を進めていくと、選定会議の1年前から、すでにCCCは丸亀市に深く食い込んでいたことが判明した。
昨年6月、開業準備の支援業務を担当する委託事業者が公募され、この業務を受託したのがCCCだった。担当部署がこう説明する。
「市民参加のワークショップを開いたり市民アンケートを行って市民のニーズを把握し、運営計画に生かす業務です。公募には2社が応募いただきまして、価格だけでなく提案内容も含めて評価するプロポーザル方式で審査した結果、CCCさんを選定しました。CCCさんは、公募する少し前に営業の方からお問い合わせがありまして、あとから責任者の方(高橋聡カンパニー長)ともお話ししました」
このときに市が設定した委託金額の「上限価格」は350万円。2社が競合したが、この時にCCCがつけたのは、上限価格に極めて近い348万4800円だった。先の関係者が、こう述懐する。
「ある議員さんが『天下のツタヤさんが350万円で、ようきたなぁ』と、CCCの社員に聞いたら、『いや、350では絶対に赤字ですよ。延岡から宿泊費と旅費だけでも、それくらいかかりますから』と答えたそうです。じゃったら、何狙っとんの?という話ですよね」
ちなみに、先月ツタヤ図書館を開業した和歌山市が、市民参加のワークショップを開催したり市民アンケートを行う支援業務の委託者を2015年に公募したときの委託金額は、丸亀市の約3倍に当たる約1000万円。それでも当時、「安い」と言われたことからすれば、丸亀市が設定した350万円が、いかに破格だったかがわかる。350万円の上限価格を定めた根拠について、丸亀市の担当部署は、こう回答した。
「根拠となる見積もりをとっていたのか、調べてみましたがありませんでした。当時の予算の関係で、『このくらいしか出せない』ということで決まったと記憶しています」
つまりCCCは、指定管理者として選定される1年前に、同業他社は見向きもしない低条件で設定された開業準備事業を、あえて受託。その実績によって、コンペなしで“本命”の指定管理の仕事を取ったかのようにみえる。
さらに驚くのが、CCCが選定された時期である。同社の基幹事業である子会社のTSUTAYAが、消費者庁から景品表示法違反で1億円の課徴金納付命令を下されたのは、昨年2月22日のことだ。TSUTAYA・TVの「定額見放題」サービスが“虚偽広告”と認定されての罰則だったが、それから3カ月しかたっていない時期に、CCCは“優れた事業者”として、丸亀市から公共施設の運営者に選定されていることになる。担当部署は、こうしたCCCの不祥事について、「まったく知らなかった」というから不思議だ。
まだ指定管理者の公募すらしていない段階で、一民間事業者が議会の場で堂々と営業活動するというのは、異例の出来事。前出の関係者は、こう批判する。
「優れた運営事例を紹介するにしても、市の職員が行うのならいいんですよ。ところが、事業者が出てきて議会で直接プレゼンなんかしたらアウトですよ。もちろん、批判した議員もいましたが、まったく聞き入れられなかったみたいですね」
CCCだけが事前に議会プレゼンを許されたとしたら、後から指定管理者が広く公募されて行われた選定委員会での審査など、ただの茶番でしかない。事前に、そうした内実を他社が察知していたとしたら、わざわざプロポーザルを書いて応募してこないのは、当然といえるだろう。前出の関係者は、こう嘆く。
「指定管理料は年間、1億3000万円です。人件費からこの金額を算出したらしいのですが、丸亀は、延岡のように駅前施設ではありませんので、賑わい創出を目的としていないのに、なぜそんなにかかるのでしょうか。ただ部屋を貸し出すだけで、CCCに市民活動中間支援のノウハウなんて本当にあるんですか」
さらに、裏で一部の議員がCCCと癒着して指定管理者にしたのではないかと批判する。そこで、“CCC推しの有力議員のひとり”と名指しされた公明党の内田俊英・前市議会議長を直撃したところ、こう説明があった。
「同僚議員に誘われて、昨年11月に延岡を視察したのは事実です。実際に出かけてみると、市民の自主的な活動が活発に行われているのを目にしまして、このすばらしさを、みなさんにわかっていただこうと思い、CCCさんを市議会にお呼びした次第です。ご批判も受けましたが、わかっていただけましたので、今は呼んでよかったと思っています」
CCCが公共施設を丸ごと運営するケースは、2013年の佐賀県武雄市を皮切りに全国7つの自治体で誕生している。
武雄市では、ツタヤ図書館を運営し始めた初年度に年間90万人の来館者を集め、「官民連携の成功モデル」と称賛の嵐だったが、15年に系列の古書店から大量の古本を仕入れていたことが発覚したのをきっかけに、以後の評価はダダ下がり。わかりにくい独自分類や、高層書架に飾るダミー本の費用、利用カードとTカードの連携による個人情報に関する不安など、その杜撰な運営実態が次第に明らかになり、進出予定の自治体では次々と市民の反対運動が勃発。
そのためか、2017年12月の和歌山市を最後に、同社を公共施設運営の委託先として選定する自治体は途絶えていた。そんななか、3年ぶりに同社に運営を委託したのが丸亀市だった。
だが、丸亀市民の間には、駅前に美術館併設で運営している市立中央図書館の先行きまで心配する声が上がっている。
「今のところ中央図書館は市が直接運営していますが、指定管理にしろという議員の声が次第に大きくなっているので、『ついでにCCCに図書館も任せろ』という話になりかねないですよね」
全国的にも珍しい、美術館を併設したアート建築の丸亀市立中央図書館が、もしCCC運営になるとしたら、7年前の武雄市から始まった、観光客が押し寄せる“見世物図書館”がまた現れることになるのだろうか。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)
こんにちは、日向です。
前回と前々回は、昨年ツタヤ図書館誘致を決めました坂出市の審査請求・弁面書に対して送付した反論書を公開しました。
・情報公開制度の運用状況について令和5年以降の実施機関別件数(令和5年度)公開請求件数 126件全部公開 63件一部公開 52件非公開 11件(うち文書不存在 10件)(実施機関別内訳)市長 107教育委員会 16監査委員 3合計件数 126(令和6年度)公開請求件数 99件全部公開 54件一部公開 43件非公開 2件(うち文書不存在 2件)(実施機関別内訳)市長 85教育委員会 15 ※2件市長と重複農業委員会 1合計件数 99(重複分を除く。)
・情報公開制度の運用状況について各年度における実施機関別・審査請求件数(令和2年度)0件(令和3年度)1件(市長 1件)(令和4年度)0件(令和5年度)7件(市長 7件)(令和6年度)0件
坂出市情報公開・個人情報保護審査会委員(1)坂入 誠(弁護士)(2)三谷 茂寿(公認会計士)(3)三野 郁子(本市人権擁護委員)(4)塚本 俊之(香川大学法学部教授)(5)三野 秀行(本市行政相談委員)
公務終了後、市民の皆さんへ挨拶まわりを行いました。途中、坂出市立大橋図書館で子ども達に読み聞かせをしているボランティアの方に出会い、「新しい図書館を楽しみにしています」と言われ、市が進めている「坂出駅周辺再整備」に意を強くしました。市民から力をいただきました。感謝です‼️
こんにちは、日向です。
昨日アップしました坂出市の弁明書への反論(坂出市の弁明書に反論しました)につづいて、本日は、坂出市教委の弁明書に対する反論書を公開したいと思います。
ちょっとややこしいんですが、情報開示請求というのは、その権限を持つ部局に対して行うしくみになっていて、今回、坂出市駅前に図書館も入る複合施設の建設プロジェクト全般については、管轄が市長部局ですから市長宛てに行います。
またそれとは別に、図書館という教育文化施設の運営に関しては、教育委員会が権限を持っていますから、教育長宛てに行うというわけです。
ただし、例外的に教育文化施設の権限を市長部局へ移管した自治体の場合、図書館に関することも市長宛てだけでいいということになっています。とりあえず、坂出市は、図書館の権限を市長部局に移管しておりませんので、同じ内容の情報開示請求を、市長宛てと教育長宛てに行い、それぞれの部局が保管している情報を別々に開示してくるというしくみになっています。
本日は、その教育委員会バージョンをご紹介するわけですが、最初の開示請求の内容がほぼ同じですから、どちらの部局の弁明書の内容もほぼ同じです。よって、私の反論もほぼ同じです。市教委バージョンで、若干、市長部局にはなかった部分がつけ加えられているのは、私の審査請求に「不存在決定を出してほしい」という内容が加えられているからです。
情報の開示を求めておきながら、「不存在を出せ」というのは、市教委の弁明にもある通り、論理的に矛盾するように思えますが、今回の坂出市の事業が既存の中央図書館(市立大橋記念図書館)を廃止して、駅前に移転するという図書館の存立にかかわる重要事項ですから、それについての議題を教育委員会に上程して、教育委員会として正式に廃止・移転を決定した文書がなければなりません。なので、それについての情報の開示を1アイテムとして求めていたにもかかららず、議決・決裁どころか、そのことを教育委員会内部で話し合った記録さえ開示されておりませんでしたので、そのことを明確にすめためには「図書館の廃止・移転に関する文書は不存在」という決定を出してもらわねばなりません。
教育委員会には一切はからずに、有福市長の鶴の一声で図書館の廃止・移転を決めたということであれば、今回の駅前移転プロジェクトはあきらかに手続きに瑕疵があったということになってしまいますので、「そこは頬被りしたい」というのが坂出市の事務方サイドの思惑だろうと思いますので、果たして、そんな都合のいいことが許されるのがどうかを、審査会の委員の先生方に詳しくご審議いただきたいというのが私の要望です。
というわけで、以下に市教委弁明書への反論をどうぞ
(市長宛てのご反論をすでにお読みになった方は、市長部局バージョンにはなかった市教委バージョンのテキストの色を赤にしていますので、そちらのみお読みいただければと思います)
(市教委弁明)
処分庁が今回開示した文書は、各所に黒塗りがあるため、上記の「個人情報」が具体的にどの部分を指し示しているのか判然としないが、公文書に、ただ個人の氏名が記載されているというだけでは、そのすべてが当該条例における「個人情報」として「非公開情報」にあたるわけではない。
審査請求人は「ボランティア意見交換会」参加者氏名の開示など求めていないが、当該事業にかかわる行政サイドの人物の肩書・氏名は当然開示されるべき(公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は不開示情報から除外されている)で「非開示情報」にはあたらないのは、自治体の情報公開に関係している者にとっては、「イロハのイ」である。また、当該事業の公募に参加した民間企業サイドに関しても、提案書等に記載されている業務を統括する(予定)の責任者については、秘匿されるべき「個人情報」にはあたらないのも、これまでの判例であきらかになっている。ゆえに、それらは、黒塗りせずに開示されるべきである。
(市教委弁明)
処分庁は、開示した公文書のなかから、いわゆる「企業秘密」にあたる部分を抜き出して「非開示情報」としたと解されるが、具体的にどの部分が、どのような理由で「企業秘密にあたる」かは、一言も説明しておらず、理由は依然として不明なままである。
改めていうまでもないことだが、単に、法人の事業に関する情報が記載されているだけでは、それが無条件に「企業秘密にあたる」わけではない。判例では、「ただ漠然と競走上の利益が損なわれる恐れがある」というだけでは非開示対象になる「企業秘密」とはいえず、個別の記載事項について、詳細に検討した結果、その情報を公開することによって、あきらかに当該企業の利益が損なわれると判定される箇所のみ「非開示情報」と認められている。
長年、総務省で公共経営にかかわった後、東京都中野区や神奈川県平塚市等で情報公開審査会の委員(平塚市では会長)を務めている神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「企業秘密」について以下のような見解を示している
「競争上の利益というのは、本来、その企業が持つ独自のノウハウであり、ほかの企業にはマネのできない特殊なもののはず。それと認められる部分は、もちろん黒塗りするのはやむをえない。しかし、多くの場合、そういう独自の技術・ノウハウとはいえないものを、ただ漠然と『競争上の地位に影響がある』としていたりしますで、私が出ている審査会では、本当に企業秘密と言えるものなのかどうかをひとつひとつよく検討したうえで、そうでない場合は、全面開示すべきとの答申を出すことになります」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版93ページ)
坂出市情報公開審査会には、坂出市の公民連携課が非開示とした部分の法人情報について「企業秘密にあたる」とした理由を聴取し、場合によっては、その情報の当事者である企業にも聴取したうえで、どれが「法人の事業活動の自由や競争上の地位の保護を目的として、ノウハウに関する 情報や法人の事業活動が損なわれると認められる情報」にあたるかを精査していただきたい。
(市教委弁明)
上記で指摘されている、いわゆる「審議、検討等情報」が非公開となるかどうかは、以下の要素を考慮して個別具体的に判断されるものである。
(1)単に自由な意見交換が損なわれる可能性があるだけでなく、それが公共の利益と比較して看過できないほど不当であるかどうか
(2)単なる客観的な調査データなどは非開示に該当しない
(3)時間が経過して最終的な意思決定がなされた後については、「自由かつ率直な意見交換を確保するために必要」とは認められない
坂出駅前に新しい図書館を建設する当該事業の計画はすでに決定されており、いまさら担当事業者の選定プロセスの情報が公開されたからといって、自由かつ率直な意見交換を確保しにくくなることは考えにくい。逆に、プロセス情報を秘匿することで、市民にいらぬ誤解を与えかねない。
(市教委弁明)
「他市が行なう事務または事業に関する情報」「使用料などの契約内容」がなにゆえ「事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」というのも、意味不明である。
坂出市の実務者たちがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)等、民間企業運営の公共施設を視察した際に説明された指定管理料等の運営費に関する情報は、メディアでも報道されているのはもちろん、各地の視察団が作成した復命書等においてCCCから説明された内容として、多数ネット上に公開されている(私的な慰安旅行ではなく、貴重な税金を費やして得た調査結果は市民に開示されるのは当然)。
それらの情報はすでに「公開情報」として扱われるべきものであり、条例に定められた例外的な非開示情報にはあたらないのは、改めて指摘するまでもないことである。
そもそも運営費の金額やスタッフの人数等については、これから新しい図書館を整備するにあたって貴重な参考情報であることから、このような基本的な情報を非開示にしていたのでは、なんのために職員が多額の公費を使って各地を視察したのかと市民は怒りを覚えるだろう。
それでもなお、非開示にすべきと市教委サイドが主張されるのならば、審査会は、企業秘密同様に、上記に、該当する情報が開示されることで具体的にどのような支障が生じる可能性があるのかを関係者に聴取したうえで、ご審査いただきたい。
(市教委弁明)
企業が自治体に提出した文書は、本来、すべて開示されるべきものである。「公にしないとの条件で任意に提出された」とは、当該企業と坂出市教委の間で、事前にどのような協議・約束がなされたのだろうか。
通常の公募型プロポーザル等のコンペにおいて「公にしない」という約束を自治体が当該企業と交わすことは、はなはだ不適切である。公務委託業者の募集要項には「応募にあたって、市に提出された文書はすべて公開する」旨が記載されていて、そのことを承知のうえで事業者は応募してくるのが一般的である。
坂出市においては、なにゆえ、市教委がその原則を捨てているのだろうか。本当に、当該企業と坂出市教委はそのような密約をしたのか。もししたであれば、不都合な情報はなんでもかんでも「公にしないとの条件で任意に提出された」ものとして非開示にできてしまう。結果、例外規定の抜け穴を飛躍的に広げることととなり、「公にしない」との約束そのものが情報公開条例の精神を踏みにじるものになってしまうと言わざるをえない。
よって、坂出市教委が当該企業とそのような約束をしたのかどうかを審査会は詳しく調査すべきであり、もし、そのような約束を市教委が勝手にしたのならば、その情報を公にすることによって、具体的にどのような不利益を当該企業が被る可能性があるのかを情報公開条例の趣旨にのっとって、詳細に検討していただきたい。
なお、前出の神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、この点について以下のような見解を示している。
「あらかじめ公開しないことを前提に任意で提出された文書なので、開示できないというケースもよくありますが、そういう論理が通用するのは、航空機や列車の事故で編成される調査委員会だけです。関係者個人の刑事責任を追及すると事故原因がわからなくなるため、原因調査を目的としておおやけにしないという前提で調査が行われます。しかし、一般的な公文書においては、そういう約束そのものが不適切であり、そのような約束をしていたとしても、開示すべきものは開示しなければなりません」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版102ページ))
(市教委弁明)
これまで述べてきた通り、坂出市教委は、情報公開の例外規定を拡大解釈して、むやみに公文書を黒塗りしている。「非公開情報の妥当性」は、どこにもみあたらない。
(市教委弁明)
公募型プロポーザルの選定の概要は、確かに、坂出市のサイトに掲載されているようだが、それは、あくまでも市長部局による開示である。
図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、教育委員会独自に、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきか等を、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な内容を決定していなければならない。
審査請求人は、そのような情報があるはずと教育委員会に情報開示請求をしたのである。にもかかわらず、事業者の選定についての情報を市のホームページで公表していることで、審査請求人の要求に充分に答えているとする市教委のこの回答は、はなはだ不誠実だと言わざるを得ない。
(市教委弁明)
しつこいようだが、審査請求人は、坂出市教委に求めているのは、新図書館について、教育委員会独自の検討プロセスがわかる書面である。
坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。
しかるに、坂出市教委は、各自治体への視察に関する記録のほか、図書館協議会等、教育委員会内でふだん行なわれている定例会等の文書のみを開示しただけで、新図書館移転に関して内部で議論したことがわかる書面は一枚もみあたらない。
その決定プロセスが何もないのに、突然決定した、駅前移転する新図書館に関するパンフレットのような書面が添付されているのみである。
審査請求人は、市教委委がどのような文書を作成保管しているのかわからないため、決定プロセスに関して、他市への視察記録等、いくつか例示するなど、とりあえず保管しているものをすべて出してほしいとお願いしたものである。
それによって開示された文書の中には、審査請求人が求めている市教委独自に検討・決定したことがわかる文書を仮に「A」とするならば、市教委の開示は「B「C」「A」「D」といったふうに、当然「A」が含まれているものと期待していた。
しかるに、市教委が今回開示した文書は、「B「C」D」と、最も核心部分にあたる「A」がひとつも含まれていなかった。
「A」を出してくださいとお願いしているのに、「B「C」D」を出してきて「適法かつ適正である」と開き直られては、返す言葉がない。
「A」については作成保管していないのならば、その点を明確にすべきである。審査請求人が求めている「市教委が、新図書館移転を決裁した文書は不存在」と明確に回答すべきである。雑多な関連情報のみ開示して、目くらましをするような行為は、市長から独立して教育行政をつかさどるという教育委員会に課せられた責任と役割を意図的に放棄しているに等しい。
何度も繰り返すが、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が所管する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。
教育委員会決裁のプロセスを経ていないということならば、坂出市の新図書館建設は、適正な手続きを経ていない行為といわざるをえず、もし今後、それに関して住民訴訟が提起された場合には、最悪、新図書館建設は違法との判決を下される可能性すらある。
それほど重要なことだけに、審査会の先生方には、市教委の情報公開について、審査請求人が求めている情報を開示していないことを正しく認定していただきたい。
このようなめくらまし行為が許されるのであれば、市民の情報公開制度に対する信頼は地に落ちるといわざるをえない。
なお、CCCを公共施設の運営者に選定した自治体においては、本件と同様の行政が出した黒塗り公文書について審査請求人をはじめとした市民から度重なる審査請求が行なわれており、それらの自治体においては、情報公開審査会が詳細に検討した結果「開示すべき」との答申が出されていることも付記しておく。
たとえば、審査請求人が2021年6月に熊本県宇城市に行なった審査請求では、審査請求の手続きを行なったとたん実施機関は、審査会の答申を待たずして、CCCと競合した企業名の黒塗りを一部外した文書を開示し、また審査会の答申後には、黒塗りされていた選定委員に関する情報の大半が開示された。
2017年にCCCを図書館の指定管理者に選定した和歌山市では、地元市民が翌年3月、黒塗りだらけの開示に対して審査請求を行ない、それまでほぼ全面黒塗り状態で開示されたCCC及び同社と競合したTRC図書館流通センターによる提案書について、その約8割の黒塗りがはずされた文書が開示されている。
さらには、坂出市のお隣りにある丸亀市でも、2022年8月、CCCが運営するマルタスの運営費の内訳が「企業の競争上の利益を損なう」ことを理由にすべて黒塗りだったのが、情報公開審査会で審議された結果「すべて開示すべき」との答申が出され、運営費の詳細な内訳が市民に対して開示されることとなった。
坂出市でも、情報公開審査会の委員の先生方には、必ずや、公正公平で賢明なご審議をしていただけるものと期待しております。