こんにちは、日向です。
先日アップしました 11番目のツタヤ図書館が決定・岐阜県瑞浪市 のつづきです。
今年9月1日に開催されました選定会議(「瑞浪駅北地区複合公共施設整備運営事業公募型プロポーザル審査委員会」)によって、CCCを代表企業とする企業グループが優先交渉権者に選定されました。
黒塗りなしの意味
この審査結果をみて、まず最初に驚いたのがコンペに参加した4つの企業グルーブの事業者がすべて黒塗りなしで公開されていたことです。
審査結果なんですから、落選した企業グループも公表されるのは当たり前と思われるかもしれませんが、私がこれまでみてきたツタヤ案件では、競争上の利益を損なう(コンペで落選した事実が世間に知られると、ネガティブな印象を与えかねない)ことを理由に、選定企業以外はすべて黒塗りされてきました。
それが瑞浪市では、包み隠さず、応募企業グループ名がすべて公表されていたのですから、あれれっ、いったい、これはどういった風の吹き回しなのか?と思ったわけです。
4グループ応募の謎
それもそのはず。募集時点で、ある程度情報収集能力のある企業でしたら、最初からCCC圧倒的優位の雰囲気といいますか、「出来レースの臭いがプンプン」していることを察知して、受託可能性が低い案件には無駄に応募するのを避けると思われるからです。
参加してくる企業は、なにか特別の事情があって、お付き合いで応募しているんだろうなと、(あくまでも私の勝手な邪推ですが)とらえていました。
それが瑞浪市では、4グループ計13社も応募しているんですから、これまでのツタヤ案件には、ありえなかったパターンであることは明らかです。
RIAとの決別
次に応募企業の顔ぶれをみますと、晴れて優先交渉権者に選ばれたCCCグループには、“株式会社梓設計 中部支社”と“株式会社ライフ・クリーンサービス”の二社が構成企業として参画しています。
茨城県潮来市に本社を持つライフクリーンサーピス(ビル管理)は、和歌山市駅前に支社があることが判明。CCCから市民図書館の業務を請け負っているのかもしれないなと思っていたら、なんと、宮城県多賀城市、岡山県高梁市、香川県丸亀市と、CCCが受託している自治体に支社を構えていることから、なるほど、これまでCCCから施設管理業務を再委託されていた企業の可能性が濃厚です。
そんなCCCと懇意な企業が瑞浪市では、同じ企業グループとして応募してきれているのでしょう。
もう一社の構成企業として名前を連ねている梓設計のほうは、これまでのツタヤ案件にはないパターンです。といいますのも、CCCが表立って大型プロジェクトの設計段階からプロデュースする場合、2015年の海老名市(改装)や2016年の多賀城市(新築)、2017年の和歌山市(新築)がそうであったように、いずれも代官山T-SITEの設計を手掛けたアール・アイ・エー(RIA)とタッグを組むパターンでしたが、瑞浪市では、設計大手で公共施設の実績も多数ある別の会社と組んでいるんですね。
私が記憶している限りでは、CCCが表立ってタッグを組んだ設計事務所はRIAしかありませんでしたので、これは驚きです。(後述する周南市と延岡市が例外)
調べてみたら、昨年選定された坂出市でもCCCは、梓設計と組んでたんです。
CCCお得意の、開放的な吹き抜け空間に高層書架を設置して、ダミーの空箱を飾るという設計を担ってきたRIAとは決別して、なにか別の方向性を展開しようとしているのかなと思わざるをえません。
これは何を意味するのか。つらつらと考えていきますと、もしかしたら、CCCの社内事情と関係していて、これまでのようなゴリゴリの図書館風商業施設の設計を踏襲することに異議を唱える勢力が出てきて、増田宗昭御大の影響力が弱まっているのではないのか(smbcの影響力?)と感じました。
もしそうだとしたら、2021年の丸亀市から蔦屋書店を併設せず、2022年の宇城市から高層書架を設置せず、2024年の和歌山市からTカードも廃止するなるなど、次々と「CCCの独自性」が失われていくなかで、2013年に武雄市で確立されたツタヤ図書館のコンセプトが、坂出市以降では、いよいよ完全に崩壊することになるかもしれません。
ゼネコンと地元業者の影
そこで、思い出してほしいのは、今回、施工を担当する事業者は、今回の公募には入っておらず、また別途募集するという変則的なスキームが採用されていることです。(OD方式と呼ぶ)
建物の設計は2026年12月までに終えて、建設事業者はその翌年2027年に別途発注。工期は2028年11月というスケジュールになっています。
このことが何を意味するのか。出来レースの臭いがプンプンする案件に、なぜか4グループも応募してきたのかという謎とも関係しているのではないのかというのが、私の推測です。
つまり、出来レースの可能性も承知して、あえて応募してきた残り3グループの思惑としては、それぞれの背景には、どこかのゼネコンなり、地場の建設会社がいて、それらの企業にとっては、瑞浪市の運営と設計業務を一体化した公募に参加しておかないと、その後の施工業務に入札しにくい事情があるのではないのか。まったく的外れの妄想かもしれませんが、そうとでも思わないと、この異様な事態の説明がつきません。
TRCが出てこず、丸善雄松堂の意味は?
次に、落選した残り3グループの顔触れをみていきますと、これまた、おかしなことが次々とみえてきます。
まずは、二番目の“代表企業 : シダックス大新東ヒューマンサービス”からいきますと、ココは2016年に延岡市が市民センター・エンクロス(2018年オープン)の運営者を形だけ公募(すでにCCCに内定していたが、市民からの批判の高まりを受けて実施)した際に、圧倒的に不利ななかで応募してきたのがこの会社でした。さらに言えば、2022年にエンクロスが翌年からの二期目の運営者を公募した際、結果的にCCC以外どこも応募はありませんでしたが、事前に「応募を検討している」と噂された企業がシダックスでした(関係者からのリーク)。
圧倒的に不利なことがわかっていても、応募してくれる奇特な存在なのでしょうか。
次に三番目の“代表企業 : ホーメックス”のグループです。ここは愛知県に本社を構える中部地方を地場としているビル管理会社のようですので、岐阜県の瑞浪市の事業には、手を上げてくるのは当たり前ともいえるのですが、タッグを組んだ設計事業者が、著名な“株式会社内藤廣建築設計事務所”でした。
内藤設計といえば、CCCが事業計画段階から関与した山口県周南市の徳山駅前図書館を手掛けたところです。延岡市のエンクロスは、CCCが関与する前段階で事業計画が決まってましたので、これまた著名な乾久美子氏が設計を手掛けてましたが、周南市は、駅前に図書館を新築する計画そのものにCCCが深く関与していましたので、そこだけがRIAではなく、内藤設計だったのは、ちょうど同じ時期にRIAが手掛ける和歌山市の事業が進行していたため、ではないかと思っていました。
そして、“ 丸善雄松堂”を代表企業とした、もうひとつのグループこそが、今回のいちばんのミステリーといえるものです。丸善雄松堂といえば、TRC図書館流通センターとともに、丸善CHIを持ち株会社とした、その事業会社の一員です。TRCが公共図書館を主に受託しているのに対して、丸善雄松堂のほうは大学を中心とした学校図書館の運営を専門に受託している企業として有名です。
なにが不思議かといいますと、瑞浪市の複合施設に入るのは公共図書館ですから、ここはTRCが応募してくるのが自然なはずなのに、なにゆえ丸善雄松堂が応募してきたのかということなんです。ちなみに、これまでのツタヤ案件でCCCと競合したのは、ほとんどがTRCです。2017年の和歌山市からはじまって、2020年の宇城市と門真市、2022年の読谷村など、ほぼすべてで競合したのがTRCでした。業界最大手の同社が新しい図書館の運営に手を上げてくるのは当然のことといえますので、なにゆえ今回瑞浪市では、TRCではなく、学校図書館を専門とする丸善雄松堂が応募してきたのかが不思議で仕方ありません。
今回はTRCが前面に出ることを嫌ったか、あるいは丸善雄松堂が他の自治体とのバーターで、CCCにお付き合いしてあげたのかなぁと、これまた私の勝手な邪推・妄想が頭のなかを駆け巡ります。(たとえば、2019年に、大阪市の「こども本の森中之島」の運営者にTRC・長谷工が選定され、CCCもコンペに参加したものの敗退。逆に、翌年2020年門真市の複合施設運営者選定では、CCCが選定され、TRC・長谷工は敗退した)
ちなみに、このグループには、“株式会社 JTB コミュニケーションデザイン”が構成企業として参画しています。同社は、瑞浪市と同じく岐阜県の高山市では、複合施設の“維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者”としてCCCと一緒に選定されています。JTBは、高山市ではCCCとタッグを組み、瑞浪市では、CCCと競合しているんですね。そういうことは業界ではよくあることなのかもしれませんけれど、わざわざ受託できる可能性の低いところに出てくるのは、高山市の事業と関連したなにかが、あるのかなぁと、これまた勝手に邪推してしまいそうです。
というわけで、公募に参加してきた事業者の顔ぶれをみるだけでも、これまでとは明らかに違った雰囲気をひしひしと感じるわけですが、ウォッチャーからしてみれば「こういう厳正なプロセスを経てCCCが選定されたんですよ」ということを必死でアピールしているように思えてなりません。
そのためなのか、選定結果の概要とはいえ、応募企業名をすべて公開した瑞浪市。ちょうど同じ時期にCCCが選定された香川県坂出市では、私の審査請求にもかかわらず、競合他社の社名等詳細を頑なに開示拒否しているのと実に対照的です。
思えば、2015年に愛知県小牧市のツタヤ図書館案件が、住民投票によって否決されて以来、CCCにとっては、中部地方に公共センターの拠点を築くことは悲願になってましたので、その意味で瑞浪市を予想通りCCCが受託したことは、この後、名古屋を取るための重要なステップなったと言えるのではないかと思いました。
追記 上記に関係して、なにかご存じのことやご意見がありましたら、コメント欄にどしどし書き込んでください。よろしくお願いいたします。
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