こんにちは、日向です。
昨日アップしました坂出市の弁明書への反論(坂出市の弁明書に反論しました)につづいて、本日は、坂出市教委の弁明書に対する反論書を公開したいと思います。
ちょっとややこしいんですが、情報開示請求というのは、その権限を持つ部局に対して行うしくみになっていて、今回、坂出市駅前に図書館も入る複合施設の建設プロジェクト全般については、管轄が市長部局ですから市長宛てに行います。
またそれとは別に、図書館という教育文化施設の運営に関しては、教育委員会が権限を持っていますから、教育長宛てに行うというわけです。
ただし、例外的に教育文化施設の権限を市長部局へ移管した自治体の場合、図書館に関することも市長宛てだけでいいということになっています。とりあえず、坂出市は、図書館の権限を市長部局に移管しておりませんので、同じ内容の情報開示請求を、市長宛てと教育長宛てに行い、それぞれの部局が保管している情報を別々に開示してくるというしくみになっています。
本日は、その教育委員会バージョンをご紹介するわけですが、最初の開示請求の内容がほぼ同じですから、どちらの部局の弁明書の内容もほぼ同じです。よって、私の反論もほぼ同じです。市教委バージョンで、若干、市長部局にはなかった部分がつけ加えられているのは、私の審査請求に「不存在決定を出してほしい」という内容が加えられているからです。
情報の開示を求めておきながら、「不存在を出せ」というのは、市教委の弁明にもある通り、論理的に矛盾するように思えますが、今回の坂出市の事業が既存の中央図書館(市立大橋記念図書館)を廃止して、駅前に移転するという図書館の存立にかかわる重要事項ですから、それについての議題を教育委員会に上程して、教育委員会として正式に廃止・移転を決定した文書がなければなりません。なので、それについての情報の開示を1アイテムとして求めていたにもかかららず、議決・決裁どころか、そのことを教育委員会内部で話し合った記録さえ開示されておりませんでしたので、そのことを明確にすめためには「図書館の廃止・移転に関する文書は不存在」という決定を出してもらわねばなりません。
教育委員会には一切はからずに、有福市長の鶴の一声で図書館の廃止・移転を決めたということであれば、今回の駅前移転プロジェクトはあきらかに手続きに瑕疵があったということになってしまいますので、「そこは頬被りしたい」というのが坂出市の事務方サイドの思惑だろうと思いますので、果たして、そんな都合のいいことが許されるのがどうかを、審査会の委員の先生方に詳しくご審議いただきたいというのが私の要望です。
というわけで、以下に市教委弁明書への反論をどうぞ
(市長宛てのご反論をすでにお読みになった方は、市長部局バージョンにはなかった市教委バージョンのテキストの色を赤にしていますので、そちらのみお読みいただければと思います)
(市教委弁明)
処分庁が今回開示した文書は、各所に黒塗りがあるため、上記の「個人情報」が具体的にどの部分を指し示しているのか判然としないが、公文書に、ただ個人の氏名が記載されているというだけでは、そのすべてが当該条例における「個人情報」として「非公開情報」にあたるわけではない。
審査請求人は「ボランティア意見交換会」参加者氏名の開示など求めていないが、当該事業にかかわる行政サイドの人物の肩書・氏名は当然開示されるべき(公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は不開示情報から除外されている)で「非開示情報」にはあたらないのは、自治体の情報公開に関係している者にとっては、「イロハのイ」である。また、当該事業の公募に参加した民間企業サイドに関しても、提案書等に記載されている業務を統括する(予定)の責任者については、秘匿されるべき「個人情報」にはあたらないのも、これまでの判例であきらかになっている。ゆえに、それらは、黒塗りせずに開示されるべきである。
(市教委弁明)
処分庁は、開示した公文書のなかから、いわゆる「企業秘密」にあたる部分を抜き出して「非開示情報」としたと解されるが、具体的にどの部分が、どのような理由で「企業秘密にあたる」かは、一言も説明しておらず、理由は依然として不明なままである。
改めていうまでもないことだが、単に、法人の事業に関する情報が記載されているだけでは、それが無条件に「企業秘密にあたる」わけではない。判例では、「ただ漠然と競走上の利益が損なわれる恐れがある」というだけでは非開示対象になる「企業秘密」とはいえず、個別の記載事項について、詳細に検討した結果、その情報を公開することによって、あきらかに当該企業の利益が損なわれると判定される箇所のみ「非開示情報」と認められている。
長年、総務省で公共経営にかかわった後、東京都中野区や神奈川県平塚市等で情報公開審査会の委員(平塚市では会長)を務めている神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「企業秘密」について以下のような見解を示している
「競争上の利益というのは、本来、その企業が持つ独自のノウハウであり、ほかの企業にはマネのできない特殊なもののはず。それと認められる部分は、もちろん黒塗りするのはやむをえない。しかし、多くの場合、そういう独自の技術・ノウハウとはいえないものを、ただ漠然と『競争上の地位に影響がある』としていたりしますで、私が出ている審査会では、本当に企業秘密と言えるものなのかどうかをひとつひとつよく検討したうえで、そうでない場合は、全面開示すべきとの答申を出すことになります」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版93ページ)
坂出市情報公開審査会には、坂出市の公民連携課が非開示とした部分の法人情報について「企業秘密にあたる」とした理由を聴取し、場合によっては、その情報の当事者である企業にも聴取したうえで、どれが「法人の事業活動の自由や競争上の地位の保護を目的として、ノウハウに関する 情報や法人の事業活動が損なわれると認められる情報」にあたるかを精査していただきたい。
(市教委弁明)
上記で指摘されている、いわゆる「審議、検討等情報」が非公開となるかどうかは、以下の要素を考慮して個別具体的に判断されるものである。
(1)単に自由な意見交換が損なわれる可能性があるだけでなく、それが公共の利益と比較して看過できないほど不当であるかどうか
(2)単なる客観的な調査データなどは非開示に該当しない
(3)時間が経過して最終的な意思決定がなされた後については、「自由かつ率直な意見交換を確保するために必要」とは認められない
坂出駅前に新しい図書館を建設する当該事業の計画はすでに決定されており、いまさら担当事業者の選定プロセスの情報が公開されたからといって、自由かつ率直な意見交換を確保しにくくなることは考えにくい。逆に、プロセス情報を秘匿することで、市民にいらぬ誤解を与えかねない。
(市教委弁明)
「他市が行なう事務または事業に関する情報」「使用料などの契約内容」がなにゆえ「事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」というのも、意味不明である。
坂出市の実務者たちがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)等、民間企業運営の公共施設を視察した際に説明された指定管理料等の運営費に関する情報は、メディアでも報道されているのはもちろん、各地の視察団が作成した復命書等においてCCCから説明された内容として、多数ネット上に公開されている(私的な慰安旅行ではなく、貴重な税金を費やして得た調査結果は市民に開示されるのは当然)。
それらの情報はすでに「公開情報」として扱われるべきものであり、条例に定められた例外的な非開示情報にはあたらないのは、改めて指摘するまでもないことである。
そもそも運営費の金額やスタッフの人数等については、これから新しい図書館を整備するにあたって貴重な参考情報であることから、このような基本的な情報を非開示にしていたのでは、なんのために職員が多額の公費を使って各地を視察したのかと市民は怒りを覚えるだろう。
それでもなお、非開示にすべきと市教委サイドが主張されるのならば、審査会は、企業秘密同様に、上記に、該当する情報が開示されることで具体的にどのような支障が生じる可能性があるのかを関係者に聴取したうえで、ご審査いただきたい。
(市教委弁明)
企業が自治体に提出した文書は、本来、すべて開示されるべきものである。「公にしないとの条件で任意に提出された」とは、当該企業と坂出市教委の間で、事前にどのような協議・約束がなされたのだろうか。
通常の公募型プロポーザル等のコンペにおいて「公にしない」という約束を自治体が当該企業と交わすことは、はなはだ不適切である。公務委託業者の募集要項には「応募にあたって、市に提出された文書はすべて公開する」旨が記載されていて、そのことを承知のうえで事業者は応募してくるのが一般的である。
坂出市においては、なにゆえ、市教委がその原則を捨てているのだろうか。本当に、当該企業と坂出市教委はそのような密約をしたのか。もししたであれば、不都合な情報はなんでもかんでも「公にしないとの条件で任意に提出された」ものとして非開示にできてしまう。結果、例外規定の抜け穴を飛躍的に広げることととなり、「公にしない」との約束そのものが情報公開条例の精神を踏みにじるものになってしまうと言わざるをえない。
よって、坂出市教委が当該企業とそのような約束をしたのかどうかを審査会は詳しく調査すべきであり、もし、そのような約束を市教委が勝手にしたのならば、その情報を公にすることによって、具体的にどのような不利益を当該企業が被る可能性があるのかを情報公開条例の趣旨にのっとって、詳細に検討していただきたい。
なお、前出の神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、この点について以下のような見解を示している。
「あらかじめ公開しないことを前提に任意で提出された文書なので、開示できないというケースもよくありますが、そういう論理が通用するのは、航空機や列車の事故で編成される調査委員会だけです。関係者個人の刑事責任を追及すると事故原因がわからなくなるため、原因調査を目的としておおやけにしないという前提で調査が行われます。しかし、一般的な公文書においては、そういう約束そのものが不適切であり、そのような約束をしていたとしても、開示すべきものは開示しなければなりません」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版102ページ))
(市教委弁明)
これまで述べてきた通り、坂出市教委は、情報公開の例外規定を拡大解釈して、むやみに公文書を黒塗りしている。「非公開情報の妥当性」は、どこにもみあたらない。
(市教委弁明)
公募型プロポーザルの選定の概要は、確かに、坂出市のサイトに掲載されているようだが、それは、あくまでも市長部局による開示である。
図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、教育委員会独自に、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきか等を、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な内容を決定していなければならない。
審査請求人は、そのような情報があるはずと教育委員会に情報開示請求をしたのである。にもかかわらず、事業者の選定についての情報を市のホームページで公表していることで、審査請求人の要求に充分に答えているとする市教委のこの回答は、はなはだ不誠実だと言わざるを得ない。
(市教委弁明)
しつこいようだが、審査請求人は、坂出市教委に求めているのは、新図書館について、教育委員会独自の検討プロセスがわかる書面である。
坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。
しかるに、坂出市教委は、各自治体への視察に関する記録のほか、図書館協議会等、教育委員会内でふだん行なわれている定例会等の文書のみを開示しただけで、新図書館移転に関して内部で議論したことがわかる書面は一枚もみあたらない。
その決定プロセスが何もないのに、突然決定した、駅前移転する新図書館に関するパンフレットのような書面が添付されているのみである。
審査請求人は、市教委委がどのような文書を作成保管しているのかわからないため、決定プロセスに関して、他市への視察記録等、いくつか例示するなど、とりあえず保管しているものをすべて出してほしいとお願いしたものである。
それによって開示された文書の中には、審査請求人が求めている市教委独自に検討・決定したことがわかる文書を仮に「A」とするならば、市教委の開示は「B「C」「A」「D」といったふうに、当然「A」が含まれているものと期待していた。
しかるに、市教委が今回開示した文書は、「B「C」D」と、最も核心部分にあたる「A」がひとつも含まれていなかった。
「A」を出してくださいとお願いしているのに、「B「C」D」を出してきて「適法かつ適正である」と開き直られては、返す言葉がない。
「A」については作成保管していないのならば、その点を明確にすべきである。審査請求人が求めている「市教委が、新図書館移転を決裁した文書は不存在」と明確に回答すべきである。雑多な関連情報のみ開示して、目くらましをするような行為は、市長から独立して教育行政をつかさどるという教育委員会に課せられた責任と役割を意図的に放棄しているに等しい。
何度も繰り返すが、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が所管する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。
教育委員会決裁のプロセスを経ていないということならば、坂出市の新図書館建設は、適正な手続きを経ていない行為といわざるをえず、もし今後、それに関して住民訴訟が提起された場合には、最悪、新図書館建設は違法との判決を下される可能性すらある。
それほど重要なことだけに、審査会の先生方には、市教委の情報公開について、審査請求人が求めている情報を開示していないことを正しく認定していただきたい。
このようなめくらまし行為が許されるのであれば、市民の情報公開制度に対する信頼は地に落ちるといわざるをえない。
なお、CCCを公共施設の運営者に選定した自治体においては、本件と同様の行政が出した黒塗り公文書について審査請求人をはじめとした市民から度重なる審査請求が行なわれており、それらの自治体においては、情報公開審査会が詳細に検討した結果「開示すべき」との答申が出されていることも付記しておく。
たとえば、審査請求人が2021年6月に熊本県宇城市に行なった審査請求では、審査請求の手続きを行なったとたん実施機関は、審査会の答申を待たずして、CCCと競合した企業名の黒塗りを一部外した文書を開示し、また審査会の答申後には、黒塗りされていた選定委員に関する情報の大半が開示された。
2017年にCCCを図書館の指定管理者に選定した和歌山市では、地元市民が翌年3月、黒塗りだらけの開示に対して審査請求を行ない、それまでほぼ全面黒塗り状態で開示されたCCC及び同社と競合したTRC図書館流通センターによる提案書について、その約8割の黒塗りがはずされた文書が開示されている。
さらには、坂出市のお隣りにある丸亀市でも、2022年8月、CCCが運営するマルタスの運営費の内訳が「企業の競争上の利益を損なう」ことを理由にすべて黒塗りだったのが、情報公開審査会で審議された結果「すべて開示すべき」との答申が出され、運営費の詳細な内訳が市民に対して開示されることとなった。
坂出市でも、情報公開審査会の委員の先生方には、必ずや、公正公平で賢明なご審議をしていただけるものと期待しております。
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