2025年10月16日木曜日

坂出市の弁明書に反論しました

 

こんにちは、日向です。


本日は、坂出市の情報開示請求についての続報です。


JR坂出駅前にツタヤ図書館を核とした複合施設を建設する件で1月に開示された情報に、一部不開示となっている部分についてもすべて開示してほしいという主旨で、不服を申し立てる審査請求を6月に行いました。


 
 それについて、担当課から「弁明書」というのが7月に送られてきておりまして、この内容に反論があるのなら、9月末日までに「反論書」を提出せよということでしたので、なんとか反論書を期日までに作成して総務部の情報公開担当課に送りました。

 本日は、その反論書を公開しておきたいと思います。

 詳しくは、この文末をお読みいただくとして、簡単に坂出市の弁明書についての感想を述べておきたいと思います。


 坂出市の市長部局が「非開示」とした理由としては、

・個人情報
・企業秘密
・「審議、検討等情報」

―――の三点が主なもので、黒塗り公文書を出してくるときの定番理由といってもいいものばかりでした。
 
 個人情報だから出せない、企業秘密にあたるから出せない、率直な意見交換をしにくくなるから出せない――は、毎度毎度、その理由をコピベするだけで「不開示理由」にもなるし、審査請求された際の「弁明」にもなるというわけです。

 こう言ったら失礼かもしれませんが、この手の書面作成には、エーアイは必要ありません。この三つの文面をコピペするだけで必要事項がかけてしまう、誰でもできるお仕事です。

 開示決定に書かれた「不開示理由」には、具体的にどの部分がどの理由にあたるかの説明すらありませんでした。

 なので、反論するほうも、個別箇所を指定せず、弁明書にざっくりと反論できますので、わりとラクです。

 あとは、ざっとみていただければわかるように、そもそも担当課には、市民に新しい図書館を建設する事業を決めたプロセスを詳しく説明して、自分たちが決めた計画に対して理解を求めるつもりなど、微塵もないようです。

 なにを聞いても、ただ「今後も適切に進めて参ります」を延々と繰り返す、壊れたロボットを相手にしているような、いつものツタヤ自治体の“ディスコミュニケーション”を味わわせてくれます。

 では、反論文をどうぞ。




反論書

2025年9月30日

  

                                     

   坂出市長殿

審査請求人 

      日向咲嗣    



               (連絡先 hina39@gmail.com)





令和7年8月13日付の弁明書に対して、次のとおり反論します。









 処分庁が今回開示した文書は、全面黒塗ページが多数あるため、上記の「個人情報」がどの部分を指し示しているのか判然としないが、公文書に、ただ個人の氏名が記載されているというだけでは、そのすべてが当該条例における「個人情報」として「非公開情報」にあたるわけではない。

 審査請求人は「市が開催したワークショップ等の参加者名」の開示など求めていないが、当該事業にかかわる行政サイドの人物の肩書・氏名は当然開示されるべき(公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は不開示情報から除外されている)で「非開示情報」にはあたらないのは、自治体の情報公開に関係している者にとっては、「イロハのイ」である。また、当該事業の公募に参加した民間企業サイドに関しても、提案書等に記載されている業務を統括する(予定)の責任者については、秘匿されるべき「個人情報」にはあたらないのも、これまでの判例であきらかになっている。ゆえに、それらは、黒塗りせずに開示されるべきである。






 処分庁は、開示した公文書のなかから、いわゆる「企業秘密」にあたる部分を抜き出して「非開示情報」としたと解されるが、具体的にどの部分が、どのような理由で「企業秘密にあたる」かは、一言も説明しておらず、理由は依然として不明なままである。

 改めていうまでもないことだが、単に、法人の事業に関する情報が記載されているだけでは、それが無条件に「企業秘密にあたる」わけではない。判例では、「ただ漠然と競走上の利益が損なわれる恐れがある」というだけでは「企業秘密」とはいえず、個別の記載事項について、詳細に検討した結果、その情報を公開することによって、あきらかに当該企業の利益が損なわれると判定される箇所のみ「非開示情報」と認められている。


 長年、総務省で公共経営にかかわった後、東京都中野区や神奈川県平塚市等で情報公開審査会の委員を務めている神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「企業秘密」について以下のような見解を示している。



「競争上の利益というのは、本来、その企業が持つ独自のノウハウであり、ほかの企業にはマネのできない特殊なもののはず。それと認められる部分は、もちろん黒塗りするのはやむをえない。しかし、多くの場合、そういう独自の技術・ノウハウとはいえないものを、ただ漠然と『競争上の地位に影響がある』としていたりしますで、私が出ている審査会では、本当に企業秘密と言えるものなのかどうかをひとつひとつよく検討したうえで、そうでない場合は、全面開示すべきとの答申を出すことになります」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版93ページ)


 坂出市情報公開審査会には、坂出市の公民連携課が非開示とした部分の法人情報について「企業秘密にあたる」とした理由を聴取し、場合によっては、その情報の当事者である企業にも聴取したうえで、どれが「法人の事業活動の自由や競争上の地位の保護を目的として、ノウハウに関する 情報や法人の事業活動が損なわれると認められる情報」にあたるかを精査していただきたい。

 法人の担当者の氏名については前述した通りである。




 上記で指摘されている、いわゆる「審議、検討等情報」が非公開となるかどうかは、以下の要素を考慮して個別具体的に判断されるものである。

(1)単に自由な意見交換が損なわれる可能性があるだけでなく、それが公共の利益と比較して看過できないほど不当であるかどうか


(2)単なる客観的な調査データなどは非開示に該当しない


(3)時間が経過して最終的な意思決定がなされた後については、「自由かつ率直な意見交換を確保するために必要」とは認められない


 坂出駅前に新しい図書館を建設する当該事業の計画はすでに決定されており、いまさら担当事業者の選定プロセスの情報が公開されたからといって、自由かつ率直な意見交換を確保しにくくなることは考えにくい。逆に、プロセス情報を秘匿することで、市民にいらぬ誤解を与えかねない。





 「加点の内訳や計算方法」が、何を意味するものか、いまひとつ判然としないが、もしこれらが当該事業者の選定にかかわる評価だとしたら、その採点方法についての情報がなにゆえ「非開示情報」にあたるのかが不明である。むしろ公正な審査が行なわれたことを示すためには、その採点方針に関する情報こそ包み隠さず開示されるべきである。

 また「他の地方公共団体の費用に関する情報が(非開示情報に?)該当し」というのも、意味不明である。

 坂出市の実務者たちがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)運営の公共施設を視察した際に説明された指定管理料等の運営費に関する情報は、メディアでも報道されているのはもちろん、各地の視察団が作成した復命書等においてCCCから説明された内容として、多数ネット上に公開されている。

 それらの情報はすでに「公開情報」として扱われるべきものであり、条例に定められた例外的な非開示情報にはあたらないのは、改めて指摘するまでもないことである。







 各応募者に対する評価や企画提案概要が市のホームページで公開されているのだとしたら、「こちらを参照されたし」として、そのページのリンクを示すか、または、そのコピーを開示文書にも含めるべき(開示しているとしたら、開示文書名とページ番号を記載するべき)と思うが、なにゆえ、そうされないで、ここに「申し添える」とされているのか理解に苦しむ。坂出市の公民連係課は、市民に行政の施策に対する理解を求めようとする意識が極めて希薄か、その努力を著しく怠っているのではないのかと思わざるをえない。


 また、落選した各事業者名が開示されていないことことも、審査請求人にとっては、大きな不満である。もし、落選したことが世間に知られることでその企業が不利益を被る可能性があるという理由(これも企業の競走上の利益を損なうから?)によって非開示にされたのであれば、それも間違いである。前出の幸田教授は、以下のように述べている。


「不採用になったことが知られると、否定的な評価があったと噂されてデメリット生じるという理由で、落選企業の提案書が非開示になることが多いですが、ちゃんと検討すれば、ほとんどの場合、そういう論理は成り立ちません。なぜかというと、応募があった複数の事業者をどのように比較して選んだかを判断するためには、選定された事業者の提案だけでなく、落選した事業者の提案も公開しなければ判断できないというのがまずひとつ。もうひとつは、落選したという事実が公表されたからといって、そのことが具体的な損害に結び付くという証明は、そう簡単にはできないからです。

 具体的にどのような不利益が生じるのかということが示されないといけないのですが、ほとんどのケースではそれは証明できないのです。審査会まで行けば、こんな理由は成り立たない。少なくとも、私が手がけた自治体の審査会では、そのような非開示理由を認めたことはありません」(日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版92~93ページ)








 当該事業は、「図書館建設に限定したものではない」とはいえ、地元メディアで「レンタル大手「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する図書館を核とする」(2024年9月6日付 朝日新聞デジタル) と派手に報じられことからもわかるように、ツタヤ図書館がコアになっている事業である。

 そして、CCCによる図書館建物の設計や運営についての提案が評価された以上(選定されたコンソーシアムのなかで図書館の実績があるのはCCCのみ)、そのことについて同社がこれまで各地で起こした不祥事等の悪評をまったくなかったこととして、坂出市の選定委員会が評価したことは、2013年の武雄市以来これまでの経緯を知るものにとっては、強い違和感を覚えるのは当然のことである。

 そのような審査請求人の疑念を公民連係課の職員が「妥当性を欠いている」ととらえているとしたら、それはおそらくCCCが自ら発信している広告宣伝要素の強い一方的な情報のみに偏った情報受信をしているためと思われる。そこで、2021年に熊本県宇城市に提出した審査請求書中のCCC運営に関する記載を本文末尾に追記しておく。


 なお、CCCを公共施設の運営者に選定した自治体においては、本件と同様の行政が出した黒塗り公文書について審査請求人をはじめとした市民から度重なる審査請求が行なわれており、それらの自治体においては、情報公開審査会が詳細に検討した結果「開示すべき」との答申が出されていることも付記しておく。

 たとえば、審査請求人が2021年6月に熊本県宇城市に行なった審査請求では、審査請求の手続きを行なったとたん実施機関は、審査会の答申を待たずして、CCCと競合した企業名の黒塗りを一部外した文書を開示し、また審査会の答申後には、黒塗りされていた選定委員に関する情報の大半が開示された。

 2017年にCCCを図書館の指定管理者に選定した和歌山市では、地元市民が翌年3月、黒塗りだらけの開示に対して審査請求を行ない、それまでほぼ全面黒塗り状態で開示されたCCC及び同社と競合したTRC図書館流通センターによる提案書について、その約8割の黒塗りがはずされた文書が開示されている。

 さらには、坂出市のお隣りにある丸亀市でも、2022年8月、CCCが運営するマルタスの運営費の内訳が「企業の競争上の利益を損なう」ことを理由にすべて黒塗りだったのが、情報公開審査会で審議された結果「すべて開示すべき」との答申が出され、運営費の詳細な内訳が市民に対して開示されることとなった。

 坂出市でも、情報公開審査会の委員の先生方には、必ずや、公正公平で賢明なご審議をしていただけるものと期待しております。




《参考情報》ツタヤ図書館誘致自治体における不祥事

(2021年6月に宇城市に提出した審査請求書より引用)


 本件の指定管理者に選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、2013年に佐賀県武雄市で公共図書館の運営を受託して以来、その運営手法の是非が、図書館界のみならず、広く世間一般で関心事になっているのは周知の通りである。


2015年9月10日には、同社が、武雄市図書館の運営するにあたって、市場価値が極端に安いと思われるような中古図書を大量に系列企業から仕入れて図書館に配架していたことが発覚。この件では、増田宗昭社長自らの名前で書かれた謝罪文を自社サイトに掲載した。【※1】


 また、同時期に同社の指定管理がスタートした神奈川県海老名市では、共同事業体を構成する業界最大手のTRC図書館流通センターの谷一文子会長(当時)によって、同社が導入した独自分類やその独善的運営手法が厳しく批判されるなどの問題が表面化しており、


以来、同社の図書館運営能力に関して疑問を抱く市民が続出し、武雄市だけでも住民訴訟2件、神奈川県海老名市でも住民訴訟1件、宮城県多賀城市では住民監査請求2件が提起されている。


2015年10月には、愛知県小牧市で同社に運営を委ねることに反対する市民が続出し、同社が提案する新図書館建設計画について住民投票が実施された結果、計画中止に追い込まれた。


2016年には、同社が図書館の空間設計から手掛けた計画が進められていた山口県周南市でも反対運動が起こり、住民投票実施をめぐって8737名もの有効署名が提出されたが、議会はこれを否決して世間的な批判を浴びた。



 そうしたなか、同社が参加した公共施設の指定管理者選定に対しては、世間的な注目度は非常に高く、選定プロセスが公正公平に行われたことを示す必要があるため、2017年12月に同社を市民図書館の指定管理者に選定した和歌山県和歌山市では、同社選定プロセスを詳細に開示した。


ところが、和歌山市が開示した文書は、黒塗りばかりで不開示が多かったため、市民が審査請求を行った結果、審査会において、昨年10月に一部開示命令が出されている。


2019年10月には、和歌山市内の会社経営者が、同社指定管理に決まった市民図書館建設に関係した公文書のほとんどを市当局が黒塗りで不開示としたことに強く抗議して、和歌山市長を相手取った国家賠償請求を提起している。


最近では、2020年9月、山口県宇部市において同社を運営者とした複合施設の計画が一度は採用されたものの、余りにも費用対効果が良くないとして、施設条例が市議会で否決されている。


以上のような経緯を知る者としては、今回宇城市が行った図書館と美術館の指定管理者選定プロセスについての情報開示は、2013年以来、日本全国で起きた、いわゆる「ツタヤ図書館問題」などまるで何もなかったかのような杜撰な対応であり、情報開示による事業の透明化を求める世間の流れと逆行しているといわざるをえない。











【※1】CCCサイトに掲載された増田宗昭氏の謝罪文。現在は削除されている。


2025年8月15日金曜日

経産省“コーヒースタンド”はCCCのみ応募だった

 

こんにちは、日向です。


先日、 CCC受託実績を読む~うるま市、高山市、紫波町、経産省~ で取り上げました経産省・コーヒースタンドの件、ひとつ追加情報がありましたので、追記しておきたいと思います。


8月1日、経済産業省別館の、誰でも利用できるオープンな共創空間「ベツイチ」にカフェ「霞が関珈琲」がオープン。この運営を担っているのがCCCで、3月に行われたコンペによって選定されたとされていました。

https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/koji/2025/20250220.html


で、経産省に問い合わせて教えてもらった募集要項をみてみたら、なんとツタヤ図書館ばりのおかしなことがゾクゾクと出てきたんです。


募集開始が2/20、応募締め切りが3/13と、3週間しかない。土日を除けば、10日もないかも。この募集情報を知ってすぐ準備して応募できた事業者は、いったい何社あったのでしょうか?


また、ツタヤ誘致自治体でもいつも問題になる賃料ですか、



これがなんと


1平米あたり1,830円!


そこで、経産省に問い合わせのメールを出しておいたら、昨日、以下のような主旨の回答がきました。


お尋ねいただいた件についてですが、本件公募では複数社より事前質問があり、計1社より応募がありました。経済産業省において公募資料6 企画提案事項を評価基準として審査を行い、採択事業者を決定しております。

公募資料6 企画提案事項:https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/koji/2025/downloadfiles/20250220_06.pdf



なるほど、やっぱりそうですか。事前に、公募条件についての質問は複数社からあった(木更津市と酷似)ものの、応募はCCC一社のみだったとのこと。ということは、これは実質、特命随意契約ですね。


●街の書店を潰した“元凶”を救済?


 経産省といえば、最近、中小企業庁、文部科学省、文化庁など関係省庁と連携して、次々と閉店していく街の書店を支援する施策に力を入れていることが話題になつていますが、


まさか、TSUTAYAの大量閉店で青息吐息の大手・CCCまでをも救済するつもりなのでしょうか。


かつて資本の力にモノ言わせて、全国で街の書店を次々と潰していった“元凶”ともいえる大手資本が、政府機関の庁舎内に相場の数十分の一の賃料で、確実にもうかるカフェを出店させてもらったりすることは、あからさまな官民癒着といえるのではないでしょうか。


ちなみに、経産省別館には、一階の“ベツイチ”とは別に、七階に関係者のみ入れる会員制の“ベツナナ”という共創空間も設置されていて、こちらもCCCが運営を受託しています。


もし、国が本気で町の書店の経営支援を行うつもりなら、真っ先に、全国の駅前にあるCCC運営のツタバ(スタバ+蔦屋書店)店舗の賃料を世間相場にするよう、自治体に指導すべきではないでしょうか。

世間相場よりはるかに激安の賃料で借りて、しかも図書館など公共施設の運営費付きの大手事業者に、街の小さな書店やカフェは到底太刀打ちできません。


CCCが公共施設運営している街には、もう、ぺんぺん草も生えないくらい書店文化が廃れていくのではないかと危惧しているのは、果たして私だけなのでしょうか。




カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長兼CEO:髙橋 誉則、以下「CCC」)は、経済産業省内に創設された新たな共創空間およびカフェの運営を開始いたします。本取り組みは、経済産業省の掲げるミッション「未来に誇れる日本をつくる。」の実現に向けたオフィス整備事業の一環として実施されるものです。



 

2025年8月8日金曜日

BJアーカイブ第4回・武雄市が小学生にTカード勧誘の衝撃(2015年12月18日)

 

こんにちは、日向です。


先月末からはじめましたBJアーカイブですが、その第4回は、ツタヤ図書館の3大デメリットのひとつであるTカードについです。


CCCが自社の商売で展開しているTポトントカードを、同社運営の図書館では借り出しをする際の利用カードとして使えるようにしていました。それだけでなく、武雄市や高梁市では、Tポトントカード(T機能付き利用カード含む)を使って、自動貸し出し機で貸し出し処理を行うと、Tポトントがつくというトンデモないことまで行っていました。


Tポトントがつくということは、当然、誰がいつ何を借りたかというデータをCCCが保有することになります。図書館にとって、利用者の貸し出しデータは、このうえもなくセンシティブな扱いを受けるはずなのに、平気でその規制を破ってしまっていたのです。


2013年に武雄市で第一号がオープンした当初から、図書館利用者の貸出しデータを館外に持ち出してしまう不適切な行為(図書館の自由に関する宣言にある「利用者の秘密を守る」に抵触)として、かなり強い批判を浴びていたのですが、いくら批判されても、CCCは図書館でのTカード機能付加を一向にあらためることはありませんでした。


それもそのはず。Tポトントカードを使えるようにすれば、受託した自治体で、新たにTカードを作成する市民が激増し、図図書館利用カードとのダブルカードにしてしまえば、市民がつくるTカードの作成費用も丸々自治体が負担してくれるから、こんなにおいしい話はありません。


その批判のひとつとして、このとき私が取り上げたのが武雄市が小学生に学校の中、それも教室でTカードを勧誘しているかのような常態になっていた事件についでした。


すでにBJでは消されていますので、今回、2015年12月18日の記事を以下に再録しておきます。


なお、和歌山市民図書館では、Tポトントカードは、昨年4月以降、すでに使えなくなっています。



 

ツタヤ図書館、市が全小学生にTカード加入の勧誘疑惑?教育委員会「問題ない」

武雄市図書館の利用カード(「武雄市図書館 HP」より)
 ごく普通の人による、ごく普通の日常を綴ったブログ。

 2年半前にリニューアルされて全国的に話題になった図書館のある佐賀県武雄市に住んでいるが、件の図書館についての記述はほとんどなかった。ツイッターでも、あの事件が起きるまで、図書館に関して積極的につぶやいてはいなかった。なぜなら、不用意なツイートをしてしまうと、人口5万人の小さな町ゆえ、個人が特定されてリアルの生活に支障をきたすおそれがあるためだと、ブログには書かれている。現に、そうなった人を何人も見てきているらしい。

 事件が起きたのは2月末のことだった。そんな人物がツイッターで瞬間的に沸騰した声を上げたのだ。

「なんだぁぁぁこりゃぁぁぁ!!! 」

 このツイートには、「武雄市内の小学生 保護者各位」と題された1枚のプリントの写真が添付されている。

「このたび、武雄市内児童の読書推進を目的として 武雄市図書館の利用カードの一斉作成をすることになりました」

 あたかも強制であるかのように書かれたプリントでは、「すでにお子様が図書館カードを作成されている方はお申し込みの必要はありません」と、作成していない人は申し込みが必須のように前置きしたうえで、こんな指示が書かれていた。

「作成いただくカードは2種類のタイプからお選びいただけます。A.図書利用カード B.図書利用カード(ポイント付き)」

 どちらを選択した場合でも、登録申込書と父兄の同意書の提出が必要で、さらにBの「ポイント付き」を選択した場合には、登録申込書の上段の「右規約に同意します」にチェックを入れるよう指示されている。2月末に配布され、提出期限は3月6日となっていた。

「ポイント付き」とは、武雄市図書館が公式採用しているTポイント機能がついた図書貸し出しカードのことだ。

「まさか、学校を通して市内の全児童にTカードをつくらせようとしているのか」と疑問に思われる人も多いだろう。その「まさか」が本当に起きたのである。

公立小学校全体で私企業の利益を後押しする異常さ

 Tカードは、レンタルショップのTSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開するTポイントサービスを利用するためのカードだ。提携する店で買い物や飲食するとTポイントがたまり、それを加盟店でも使える。CCCが運営する武雄市図書館の場合、無料で本を借りてもポイントがつく。

 Tカードは、CCCの主力事業のひとつだ。会員は、提携店を利用してポイントをもらえる代わりに、日々の行動履歴データは、CCCにすべて補足されることになる。CCCは、そのデータを自社のありとあらゆる部門の経営に生かすと同時に、提携企業にも個人情報を除いたデータを提供することで収益を上げる。

 そんな完全に私的な事業を、市内の学校をあげてサポートしているかのような出来事に少なからぬ父兄が強い違和感を覚え、同時に子供の個人情報までも根こそぎ一民間企業に補足されることに対して底知れぬ恐怖を抱いただろう。

 実際、この事実をツイートした人は、この後、それまで抑制していた武雄市図書館の指定管理者であるCCCに対する反感をあらわにすることになる。

 インターネット上では、このプリントについて、当初「いくらなんでも市の教育委員会がそんな公私混同なことするわけない。おそらく怪文書だろう」との見方も出ていた。しかし、やがてそれが本当に小学校で配布されたプリントであることが判明すると、そのあまりの配慮のなさに批判が殺到することとなったのは、ごく自然のなりゆきだろう。

 武雄市教育委員会に事実関係を確認したところ、「確かにそのような文書を配布したが、事前に各学校の校長には任意である旨を説明していたので、問題があったという認識はない」とのこと。

 そもそも「武雄市では、図書館が指定管理になる前から、児童・生徒の利便性のために、定期的に学校で一括してカード作成する機会を設けていて、今年だけのことではない」という。そこで「では、毎年の恒例行事なのか」と質問したところ、「いや、ここ数年は行っていなかった」と説得力がない回答をする。

 教育委員会は「この件について、直接、教育委員会への保護者【※1】からのクレームは特になかった」と説明しており、ネットでの反応とはあまりにも落差が大きい。

 しかし、東京都内の学校関係者にも取材したところ、「調べ学習のため、クラスごとに団体カードをつくることはありますが、読書推進活動の一貫として、教育委員会が全児童個人に図書館のカードを作成させるようなことは、まずあり得ない」と断言し、「まして、一民間企業の利益になると疑われるようなことをするとは信じられない」と驚く。


カード作成の何が問題なのか

 問題なのは、まず「ポイント付きカード」を希望するかどうかを市内の各世帯に選択させた大量のデータを、市が一時的にせよ保持することになった点である。

 なぜならば、「ポイント付きカードを希望した」人は、前市長が役所をあげて推進した新図書館事業を支持する「賛成派」とみることができ、「ポイント付きを希望しない」人やカードの作成を申し込まなかった人は「反対派」であるとの“踏み絵”をさせられるように感じた人もいただろう。

 門外漢にとっては、まったく荒唐無稽な話だが、一連の騒動によって、それくらい市民はナーバスになっている。場合によっては、「ポイント付き」を選ぶ生徒が多いクラスでは、同調圧力がかかるかもしれない。

 そして何より、ポイントの付くカードを作成することで、2013年にCCCが図書館の指定管理者と決まってから指摘され続けてきた問題があらためて浮かび上がってくる。それは、公共図書館において、これまで不可侵とされてきた個人の貸出(読書)履歴情報保護だ。

 どんな本を借りたかというのは、人に知られたくない個人情報として厳密に管理されるからこそ、我々は安心して公共図書館を利用できるのだか、その情報が第三者によって密かに収集されているとしたら、こんなに気味の悪いことはない。

 CCCは、借りた本の書名はもちろん、個人を特定される情報はCCC側に一切保存されないと説明しているが、カード発行時に個人情報を登録している以上、利用者はマイナンバー制度同様、個人情報について漠然とした不安を拭いきれない。

 また、未成年の場合、保護者が一度規約に同意してしまえば、将来成人してからも、自分で削除要請を出さない限り、行動履歴を延々と収集・蓄積され続ける懸念を指摘する声もある。

 子供の個人情報に関しては、昨年、最大2070万件もの顧客情報が流出して大問題となったベネッセの事件を持ち出すまでもなく、ありとあらゆる事業者にとってのどから手が出るほど欲しい「宝の山」である。その取り扱いは相当に慎重を期させないといけないなかで、教育現場で一民間企業のポイントカード会員獲得を代行するなど前代未聞である。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)


【※1】当初「父兄」としていたが、記事掲載直後から「いまはそのような表現は使わない」との指摘があり「保護者」とした。





CCC受託実績を読む~うるま市、高山市、紫波町、経産省~

 

こんにちは、日向です。


につづきまして、本日も、最近、CCCが受託した自治体の事例について書いておきたいと思います。


下の表をみてください。先日の一覧表では漏れていたCCC受託自治体一覧の追加がこれです。






4つの自治体とひとつの政府機関、計5案件が漏れていました。


埼玉県春日部市だけはすでに別エントリーで詳しく取り上げましたので、今回は、そのほかの4案件について、駆け足でみていきたいと思います。


●読谷村に次ぐPFI採用したうるま市


まず、4案件のなかでもすでに確定しているのが、沖縄県うるま市です。こちらは、世界遺産・勝連城跡周辺の整備事業をPFI方式で進められていて、公募が発表されたのが一昨年2023年11月、事業者選定が発表されたのが昨年2024年8月でした。


年間約18万人の観光客が訪れる勝連城跡は、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つ。周辺整備が不十分なため、観光消費・地域活性化につながっていないとして、民間資金とノウハウによって周辺を整備しようという事業らしいのです。


しかし、観光資源を活用した賑わしい創出という点でCCCにはとりたてて、過去になんの実績はないと思うのですが、なぜか、応募のあった3グループのなかで、CCCが「協力企業」として参画している事業者グループが選定されました。(代表企業:株式会社トータルシティービル管理)


武雄市図書館・歴史資料館などは、コロナ前から海外からのインバウンド客が観光バスで大量に見学に来ていると言われていましたので、中身関係なく「雰囲気のいい施設」として図書館を広めてきた経験と実績が高く評価されたんだろうと思います。まぁ、その“ハリボテを流行させた実績”からすれば、本物の世界遺産などの集客もいとも簡単にできてしまうと思われてのでしょう、きっと。


うるま市は、読谷村に次ぐ沖縄県内2例目のPFIです。読谷村の事業プロセスを詳しくみてきた経験から言えば、「建設と運営を合体させたPFI方式にすれば、自治体は、一切合切をコンサルタントに任せられるので、なんでもアリ」という印象です。




https://web.archive.org/web/20240112023748/https://www.city.uruma.lg.jp/1002003000/contents/p000001.html


●いきなり運営者を選定した高山市


一方、一般的なまちづくり案件ととらえた場合、これぞ公設ツタヤの典型的な手法ではないかと思ったのが岐阜県高山市です。


「飛騨高山」で知られる高山市では、高山駅西地区のまちづくりの方向性を決める市民アンケートやワークショップを2022年からスタート。このプロセスを経て、2023年5月には、文化術機能、生涯学習機能、子育て支援機能などを備えた複合施設の整備を盛り込んだ基本構想を策定。


驚くのは、この後です。ふつうなら、どのような公共施設を整備するのかを正式決定したうえで、それら施設の基本設計とか実施設計に進むはずですが、高山市は、なんといきなり


維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者


を公募型プロポーザルで募集したんです。


つまり、なにとなにをどこにつくるか、どうつくるかという話を、すべてすっ飛ばして、いきなり運営業者を決めたんです。それが今年3月のこと。


選定されたのは、企業イベント、国際会議のプロデュースを主な事業とするJTB コミュニケーションデザインを代表企業とし、構成団体としてカルチュア・コンビニエンス・クラブが入った企業グループでした。応募は2社あったものの、そのうち一社は参加資格を満たしていないとされて失格となったため実質的には1グループのみ提案審査というお寒い状況でした。


埼玉県春日部市の場合も、どんな公共施設をつくるかは未定のままでしたが、さすがに、いきなり運営者を選定するなんて野蛮なこと(?)はしてませんでした。春日部市は、あくまでも事業計画を立案するための「構築等支援業務」委託です。


それが、高山市の場合は、とにかくなにをつくるかも含めて提案してよ、そしたら、設計から運営もすべて任せるから。


と言ってるようなものですね。


選定されたCCCグループの提案書概要をみますと、


市民と共に育む、開かれた「まちのリビング」

人々が笑顔で集い、日常の中に新たなわくわくした発見と出会いが提供される

「高山市らしい賑わいと文化の拠点」として、未来にわたって愛される場を創造し続けます。


――などとなっていて、いつもの“CCC節”が炸裂していました。「まちのリビング」というキーワードは、坂出市でも使ってましたね。だんだん使いまわしがバレてきたような気がします。


https://www.city.takayama.lg.jp/shisei/1000061/1016569/1021674.html より



で、飛騨の高山市ですが、特にうるま市のように観光資源を活かした、外からの人を呼び込む「にぎわい創出」ではなく、文化ホールか子育て支援施設など、あくまでも市民を対象にしたまちづくりになっています。


それにしても「建物の設計の前に、いきなり運営者を決めるなんておかしいのでは?」と高山市の担当課に聞いてみましたところ「ただのハコモノではなく、市民本位の事業にするためには、先に運営者を決めて、その意向を設計等に反映したほうがよりいいものになる」というようなことをおっしゃってました。


そこで「いきなり運営者を決めて施設をつくった自治体で、参考にしたのはどこ?」と聞いてみましたところ、担当の方がこう答えたのにもビックリしました。


大阪府門真市です。


まさに、ピンポンですね。来年春に新しいツタヤ図書館としてオープンする予定なのが門真市です。このPFIでもないのに、事業者が自分たちのやりたいように公共施設をつくる「デザインビルド」を可能にするスキームこそが、ツタヤ図書館方式なんですから。


●あのオガールの町・紫波町がCCCを選定


さて、高山市で驚いていたところに、もうひとつ自治体あったなぁと思って調べたのが岩手県紫波町(しわちょう)です。


ここは運営事業者の選定ではなく、温泉保養公園の再整備に関する計画でした。古くなった温泉保養施設の周辺を再整備する計画で、その基本構想等を策定してくれる事業者を公募したところ、CCCが選定されたということらしいんですが、応募事業者は、CCC一社のみ。なぜかどこも関心を抱かなかったというこれまた、寒ーい案件です。


ここで、でも、まてよ。「しわちょう」って聞いたことあるな。そう思って検索してみたら、これまたビックリ仰天。図書館関係者でしたら、知らない人がいない、あの「オガール」がある町なんです。


オガールといえば「小さな町が、国の補助金に頼らず、官民連携プロジェクトで、すばらしい図書館をつくった」というサクセスストーリーが有名です。


複合施設のなかに、図書館や地域興隆センター、子育て支援施設を設置して、カフェなど民間店舗も集積したまちづくりとして2012年頃から話題になり、全国から視察がひきもきらない、成功事例として超有名なまちでした。


そんな町が、温泉保養施設の再整備計画をCCCに任せるということ自体が、どうなってんの?という話です。不可解としかいいようがありません。


私は、紫波町の「オガール」が官民連携のお手本だとは思いません。「成功事例」だとも思いません。たまたま地域の人が知恵を出し合った結果、地域の人が望むようなまちづくりができたという意味では成功なんでしょうけれど。


それは、オシャレな雰囲気のブックカフェ図書館をまるごと誘致するために、都会の企業に、なにからなにまで丸投げしてしまったツタヤ誘誘致自治体とは対極にある事例だと思います。紫波町は、CCCに何を望んているのでしょうか? 


担当課聞いてみると、具体的になにをどうするかは、まだなにも決まっておらず、現在、温泉保養施設を運営している地元事業者がいるとのことなので、それを簡単にCCCに変えるということも考えづらい。このまま話が進むとも思えませんが、果たしてどうなるのでしょうか。


●“ツタヤ図書館方式”を採用した経済産業省


さて、トリはなんといっても、政府機関のツタヤ店舗です。経済産業省別館の、誰でも利用できるオープンな共創空間「ベツイチ」にカフェ「霞が関珈琲」が、この8月にオープン。これを運営しているのがCCCらしいんです。


国の建物で民間事業者が店舗を出すんですから、当然、なにかしら公募を経て選定されたんだろうと経産省に直辣問い合わせてみましたところ、その経緯がわかるページを教えてくれました。


https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/koji/2025/20250220.html



与党の大物議員ともツーカーの間柄と言われるCCCグループの総帥・増田宗昭御大のことですから、コンペなど経ずとも、おいしい話が自動的に転がり込むのではないかと思っていたので、ちょっと意外でした。


そりゃあ、そうですよね。コンペですよね。


そう思って、募集要項をパラパラみていたら、あれれっと思う内容が次々と出てくるてのはありませんか。


募集開始が2/20、応募締め切りが3/13と、3週間しかない。土日を除けば、10日もないかも。この募集情報を知ってすぐ準備して応募できた事業者は、いったい何社あったのでしょうか?


また、ツタヤ誘致自治体でもいつも問題になる賃料ですか、



これがなんと


1平米あたり1,830円!


コーヒースタンド(厨房・カウンター)・物販店舗(陳列棚) 12.09㎡、バックヤード12.08㎡を足すと計24.17㎡


これに1,830円をかけると、カフェ店舗の月当りの賃料は、4万4,231円!





黙っていても、庁舎内で働く人たちがきてくれる霞が関の一等地お店の賃料が、たったの4万円だそうです。


もともと単価が安いうえに、厨房とカウンター、陳列棚のみ賃料の対象なんですから、そりゃあ激安になりますよね。


ちなみ、この募集要項には、こんな但し書きがついています。


【参考】

○ロビーホール(貸与外)店舗周辺約220㎡(席数約45程度)

・ホールについては使用許可対象外であり、職員の共用スペースとなるが、使用許可を受けた場所で給したものを飲食させることを妨げるものではない。


つまり、45席あるロビーホールについては、そこで客が飲食してもオッケーということは実質店舗の席と同じになるわけで、そこが賃料無料なんです。


これぞまさしく、「ツタヤ図書館方式」と言ってもいい、法の抜け道を駆使した裏技ではないでしょうか。


おそらく、政府機関にも、これからCCCはどんどん進出していくものと思われます。



というわけで、最近の公共分野におけるCCC受託案件をざっとみてきた感想としては、


smbcにアピールするために、相当焦っているのかな、


と思いました。


海外店舗や、頼みの綱のシェアラウンジも、いまいちぱっとしないと言われるなか「CCC復活」を手っ取り早くアピールするためには、公共部門でお得意の「官民連携成功事例」としてメデイアに取り上げてもらうのが近道だと思っているのではないかな


そんな感想を抱きました。


一方の自治体サイドは、特になにか考えているわけではなく、これまで通り、地方創生コンサルタントに言われるままに、「過疎ビジネス」の餌食になっているような印象です。


ということで、本日は、ここまでにします。


よろしくお願いいたします。



2025年8月5日火曜日

BJアーカイブ第3回・指定管理制度のデメリット(2015年12月9日)

 

こんにちは、日向です。


本日は、先月末からはじめましたBJアーカイブの第三回目を掲載したいと思います。


すでにBJサイトでは消されていましたので、取り急ぎ、魚拓(https://web.archive.org/)されていた記事を以下に再録しておきます。


掲載日は、2015年12月9日です。2015年12月だけでも、これで3本めの記事。実は、この後さらに、2本掲載されていますので、この月だけでも合計5本、BJにはツタヤ図書館関連の記事が掲載されていたことになります。


当時、武雄市のクズ本問題から始まって、住民訴訟へ発展し、海老名市でも独自分類が大混乱を引き起こし、愛知県小牧市に至っては、住民投票によるツタヤ計画否決と、これでもかというほど、炎上案件がつづいていたため、ツタヤ図書館問題は世間の関心が高かったということなんだろうと思います。


今回紹介する記事は、前の2本からのつづきではありませんが、以前から、私が書きたかった、図書館における指定管理制度のデメリットについて解説しています。


公共施設運営における「委託」と「指定管理」の違いがあまりにも世間には理解されていないようでしたので、そこにスポットをあてています。


いま見返すと、加筆・修正したい箇所が結構ありますが、とりあえず当時の記録として、そのまんま再録しておきたいと思います。


よろしくお願いいたします。



 

ツタヤ図書館、契約ずさんとして住民が訴訟!市が住民の情報開示要求を拒否!深まる不信

「武雄市図書館 HP」より
 当サイト記事でも何度か取り上げたが、レンタルビデオチェーンTSUTAYA(ツタヤ)を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が公共図書館を運営するに当たって、数々の疑惑の声が上がっている。その一方で、「新しいことを始めると不具合はつきもの。恐れずにチャレンジして、そのつど改善していけばよい」と、CCCを擁護する声も根強い。

 また、10月からCCCに図書館の運営を任せている神奈川県海老名市の住民アンケートでも、CCCの図書館運営に「満足している」と回答した人が8割を超える【※3】など、地元住民から一定の評価を得ていることも、まぎれもない事実である。

 しかし、これまでCCCによる不可解な図書館運営を見せつけられてきた「反ツタヤ民」からすれば、まるでチャリティーイベントの主催者が人を集めておきながら、会場内で別の私的な商売をして儲けているのと同じように映るだろう。

 つまり、公共施設で私腹を肥やす背信行為に対して怒りの声が上がっているのに、「大勢の人が来て喜んでいるのだから、それで何が悪い」と開き直っているようにもみえ、元の地味な図書館のほうがよっぽどマシと思う人も多いのではないか。

 この問題が深刻なのは、いくら反対する市民がCCCの図書館運営を糾弾し続けても「ツタヤ図書館」は簡単にはなくならず、また今後も同じスタイルの図書館が全国各地に続々とできていくのが確実であるという点だ。

 なぜならば、ツタヤ図書館で見られるような民間企業に公共施設の運営を任せる方式は、通常の民間委託とは根本的に性質が異なる「指定管理者制度」だからである。

 そもそも、CCCの公共図書館運営が度を超した公私混同になっている原因は、現行の指定管理者制度が、公務を利用して野放図なカネ儲けを企む企業にとっては抜け道だらけだからだ。行政が公務の受託企業を監視監督するガバナンス制度も正しく機能していないことが、市民たちの追及によって次第にわかってきた。

「問題が生じても、役所が指導さえすれば改善されるはず」と考えるのは、指定管理者制度の実態をまったく知らない、おめでたい話と言わざるを得ない。

指定管理者制度の問題点

 では、どこが問題なのか、具体的にみていこう。

 指定管理者制度とは、2003年の地方自治法改正によって、自治体が指定した民間の企業や団体に公の施設の管理を代行させることができるとした制度である。

 従来の管理委託制度が、民間事業者との契約によって具体的な業務の一部を委託するものであったのに対して、指定管理者制度は、指定を受けた業者に管理権限そのものを委任する行政処分の一種で、請負契約とは本質的に異なる。つまり、公共施設の運営全般に必要なことについて、指定した民間企業にほぼ全権を委任してしまうのが大きな特徴で、「丸投げ」に近い。

 指定管理者制度の問題点は、以下の5点である。

(1)公募は必須でなく、トップダウンで決めやすい

 指定管理者の選定は、原則として公募によって行われるが、場合によっては非公募でも構わない。つまり競争入札にしなくてもよいのだ。合理的理由さえあれば、随意契約としても問題はない。【※1】

 ただし、事業者の指定にあたっては、運営委託費の額にかかわらず、必ず議会の議決を経なければならない。そのため、指定管理者の選定が、市長をはじめとした議会の与党議員たちの強い影響を受けた「政治家案件」になりやすい。

 ツタヤ図書館の場合、佐賀県武雄市、海老名市ともに、街の活性化に役立てたい市長サイドからCCCにアプローチしたとされていることからもわかるように、オープンな場で市民に説明しなくても、政治家がトップダウンで業者を決めやすい仕組みになっているといえる。

(2)情報開示請求が困難になる

 日本では「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)によって、行政が作成した書類については原則としてすべて開示することが義務づけられており、誰でも開示請求できる。そのため、図書館運営のような公務に関しては、仮に不正行為が行われていても発覚する可能性が高い。ところが、民間企業がからむ指定管理者においては事情が変わってくる。

 武雄市では、市民がCCCとの契約内容を開示するよう開示請求を行ったものの、市側は請求から1年以上たってから「契約内容はCCCの営業ノウハウに当たるため、開示できない」との決定を発表した。

 それを受けて市民側が異義申立を行った結果、情報公開審査会は「開示すべき」と判断し、武雄市がようやく開示に応じたが、請求から開示までになんと2年もかかっているのだ。

 それでも武雄市図書館のケースは、市当局が保持している情報だったために最終的には開示されたが、指定管理者しか保持していない情報についてはどうか。指定管理者の情報公開は努力規定にすぎないため、経理財務状況など指定管理者内部の情報については指定管理者が拒否した場合には、それ以上情報をたどるのはほぼ絶望的になる。

 うがった見方をすれば、指定管理者は都合の悪い情報をいくらでも隠蔽できるのだ。


(3)住民監査請求もできない(※2)

 市政運営などで不正行為の疑いがある場合、住民が不正を正す「伝家の宝刀」として設けられているのが、住民監査請求である。

 武雄市図書館のケースでは、市が開示したCCCとの契約内容を精査した市民が「あまりにもずさんな手続きによって結ばれた契約だ」として、今年6月に監査請求を行ったところ、市は法定期間(その事実が発生、または知ってから1年)が経過していることを理由として、2週間後に請求を却下している。監査請求の基になった契約内容に関する情報を2年も開示しなかったうえに、「1年経過したら監査請求できない」とは、あまりにも手前勝手すぎる。

 そのため市民たちは、当時の市長に対して1億8000万円の損害賠償を求める住民訴訟を提起した。

 このケースでは、指定管理が始まる前に武雄市がCCCと交わした契約そのものが監査請求の対象だが、指定管理が始まってから指定管理者が不正行為を行った場合、監査請求を行うことはできるのだろうか。

 その場合、住民監査請求を定めた地方自治法242条1項が規定する財務会計上の行為に当たらないため、対象外となっている。請求したとしてもすぐに却下され、それ以上追及できないのが実情だ。この点も、制度に穴があるとしかいいようがない。

(4)利益が出ないため周辺事業で儲けようとする

 指定管理者による公共施設の管理運営においては、毎年各事業者について業務の評価を行うのが一般的だが、業務の評価が低かったとしてもペナルティーが課せられるわけではない。

 逆に、指定管理者サイドからみれば、いくらがんばっても委託管理料が増えるわけではないため、できるだけ費用を抑えて利益を確保しようとする。

 特に図書館のように利用者から料金を徴収できない施設の運営においては、その傾向が顕著だ。ちなみに、武雄市図書館を例に取ると、13年の開業時に募集した「書籍コンシェルジュ」のアルバイト(蔦屋書店との共通募集)の時給は730円。海老名市立中央図書館の求人を見ると、フルタイムの司書スタッフは「月給19万3000円以上」だ。

 また、普通にやっていたのでは儲からないため、ツタヤ図書館のように併設した店舗で儲けるビジネスモデルが出てくるのは、ある意味必然といえるだろう。

(5)行政のガバナンスが正常に機能しない

 指定管理者は、コンプライアンス上問題のある行為(または不作為)をなすケースもあるが、不祥事を起こしても指定を取り消されるケースはかなり稀である。

 法律上、取消に当たって議会の議決は不要とされているものの、指定管理者の選定を主導した首長や与党の有力議員の意向は無視できないだろう。

 指定管理者の不祥事は、選定した役所の失態として市民にとらえられかねないため、できるだけ表沙汰にせずに穏便に済ませようとするだろう。逆に、市民からすれば、役所が不正行為をした民間事業者とグルになって不祥事を隠蔽しているようにしか見えない。

 また、指定を取り消すとなれば代わりに施設を管理運営できる体制を整えなければならないが、一度指定管理に移行してしまうと直営に戻して運営するだけのノウハウがもはや自治体にはなくなっている。かといって、後釜となる管理者を見つけるのも容易ではない。つまり、「不正行為が発覚したら、即指定を取り消す」ということは、現実的に相当困難だ。その結果、行政のガバナンスが正常に機能しないことが常態化してしまう。

指定管理者制度は沈みゆく旅客船?

 公共施設の民間委託を、大型の旅客船の運営にたとえてみよう。

 経営を効率化する際、船会社が最初に手をつけるのは、船内のレストランや劇場、遊技施設、客室清掃などの部分だ。それぞれ特定の業務を専門の業者に任せれば、効率よく業務をこなせるようになるばかりか、スタッフを直接雇用しなくて済むため、その労務管理の手間も省ける。

 次の段階が、船を動かす機関室の部分の外部委託だ。自前の機関士を雇用して、イチから一人前に育てなくても、そのつど外部から派遣してもらえば、自社では大して苦労もせずに、船を運行させていくことが可能となる。

 それでも、船の運行に関してすべての責任を負っている船長だけは船会社が直接雇用している正規社員を使い、決して外部委託はしないものだが、さらに費用を削ろうとしたときには、この船長の権限までも外部に委譲して、旅客船運行そのものを別の会社に任せる方式が浮かび上がってくる。この「船の運行を丸ごと代行させる」方式が指定管理者制度の本質である。


 この場合、一部委託とは違って、船長が船会社とは異なる会社に雇用されているという点が大きい。雇用形態も正規社員とは限らない。そうすると船長は、乗船客や船会社の安全や利益に忠実ではなくなる可能性がある。

 昨年韓国で、修学旅行中の高校生ら476名を乗せたまま沈没するという大惨事を起こしたセウォル号のことは記憶に新しいだろう。この事故で、乗客を救助せずに真っ先に逃げ出した船長は非正規雇用だったと伝えられているように、船会社が現場責任者の待遇をないがしろにすると、大きな代償を払うことになる。

 公共施設の一部業務委託は、財政難に苦しむ地方自治体にとって、ある意味仕方ない施策といえるが、丸ごと民間に任せる指定管理者制度は問題が多い。特に図書館のような文化施設にはなじまない。ましてや、海老名市のように本来、地域館を統括して司令塔の役割を果たす中央図書館の機能まで指定管理にしてしまうのは、いきすぎである。ちなみに、武雄市は市内に図書館が1館しかなく、その図書館を指定管理にしている。

 日本図書館協会によれば、全国に約3200ある公共図書館のうち、指定管理にしているのは470館で、年々増え続けてはいるものの、それでもまだ14%程度である。

 たとえば、市内に18の図書館を抱えている横浜市の場合、そのうち指定管理者に運営を任せているのは1館だけで、試験的に導入しているにすぎない。

 全国で最も民間委託を熱心に進めている東京・足立区ですら、14ある地域館はすべて指定管理となっているものの、中央図書館だけは区の直営である。

 今後も、「民間委託は素晴らしい成果を上げる」という先入観に騙され、小規模都市の中央図書館が次々と“ツタヤ図書館化”していきそうな勢いである。

 どのように街を活性化させるか頭を悩ませている自治体にとって、CCCは丸投げしておけば、難題の「人が集まる街づくり」まで代わりに企画、実行してくれるありがたい存在なのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)



【※1】2025年8月5日 特命随意契約は、緊急を要する事業や、他社がマネのできない特殊なノウハウを持っている企業と契約する場合にのみ特例的に許されるものであり、当時のCCCは、そのようなノウハウはもっておらず、すでに書店・物販やカフェを併設した図書館を運営していた企業はほかにもあった。よって、「非公募でも構わない」「公募は必須でなく、トップダウンで決めやすい」という記述は誤解をまねく恐れがある。

(※2)2025年8月5日 指定管理者制度上では「住民監査請求もできない」というのはあきらかな事実誤認です。運営者が損害を与えるなど、会計上の不正行為疑惑があれば、ごく普通に監査請求ばできます。


【※3】2025年8月5日 “神奈川県海老名市の住民アンケートでも、CCCの図書館運営に「満足している」と回答した人が8割を超える”とあるが、このアンケートは、全市民を対象とした調査ではない。あくまでも来館した人に対する調査にすぎない。CCCの運営に不満を抱き、来館しなくなった市民の意見はそこには入っていない。また、書面による自由回答形式ではなく、CCC職員による対面調査であるため「不満」と回答しにくい(圧迫面接のよう)との指摘がなされている。よって恣意的な手法によって導き出された調査結果と言える。その後もCCCは「市民の8割が満足」を自社運営の優れた点としてアピールしているが、これらの理由から、そのアピールを、同社の評価として採用すべきではないとの指摘が絶えない。