2026年7月19日日曜日

多賀城市に講演に行ってきました

 

こんにちは、日向です。


先日お知らせしておりました通り、昨日、宮城県多賀城市に講演に行ってきました。


地元の市民団体の方には、ひとかたならぬご歓待をしていただき、2016年3月に「第三のツタヤ図書館」として駅前に移転・開館しました多賀城市立図書館も案内していただきました。


武雄、海老名もそうですが、改めてツタヤ図書館名物の高層書架を下から仰ぎ見ましたところ、上段には、これまたツタヤ図書館名物といえる空箱ダミー本が飾られていました。

この風景を「オシャレ」「カッコイイ」と絶賛して、インスタにあげる観光客のみなさんには、「いやぁ、あれ偽物の空箱ですからね、こんなものを公共図書館に飾るのは、恥ずかしいですよ」と一言言いたくなりました。


入口付近の一等地で開館当時営業していたCCC(子会社のソウツー)経営ファミマ!は撤退してなくなり、しばらく空き店舗になっていたと聞いてましたが、そこには、新たに、人気のうどん屋さんができていて、そこでお昼をいただきました。


3階には、これまたCCC経営のレストランがあったと記憶している(まちがっていたらご指摘ください)のですが、そこはシャッターが下りていて、まだ空き店舗のままでした。レンタルDVDのところには、CCCがこのところ力を入れて展開している有料のコワーキングスペースが開店していました。(関係者の方によれば「多賀城は、CCCの独自仕様なので、テナントがはいりづらい。ほかの公共施設はどこも標準的な店舗の仕様なので少し空いてもすぐほかのテナントが入る」そうです)


講演会が終わって、図書館を視察した後には、市民団体の皆さまが懇親会に呼んでいただいて、そこでみなさんと交流させていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。


で、肝心の講演の内容ですが、前半の第一部は、昨夏、「東京の図書館をもっとよくする会」での講演(「東京の図書館をもっとよくする会」で講演してきました)とほぼ同じ内容ですので、その部分については、昨年夏の記事にレジメを貼り付けてますので、そちらをご覧いただければと思います。


第二部では、2016年3月オープン直前に多賀城市でも起きた古本問題についてお話しました。当時、ビジネスジャーナルで何回かにわけて連載しましたが、あまりにも多岐にわたっていて、ややこしい内容でしたので、今回の講演では、短くまとめて、こういうこうがあったんですよということをお話しました。そのレジメをこの文末にに貼り付けておきます。

都合でご参加いただけなかった方は、ぜひこちらを参照していただければと思います。

それかから、主催市民団体の尾形陽子さんと、現在、宮城県会議員の藤原益栄さんには、ご著書を頂戴しました。尾形さんは、『育ちあう住民と図書館 各地の活動を持ちより,分けあう (JLA図書館実践シリーズ 51)』(https://www.jla.or.jp/publications/978-4-8204-2506-9/)に共著者のおひとりとしてツタヤ図書館問題について書かれていらっしゃいます(172ページ~)。

また藤原議員は、郷土の歴史研究家としても長年ご活躍されている方で、多賀城民報で連載されていた地元多賀城にまつわるエッセイ風の読み物『多賀城歴史歳時記』を一冊にまとめて2019年に刊行(5冊目のご著書)されたそうです。

いずれも、多賀城を知るためには欠かせない本といえそうです。もしよろしかったら、拙著とともに、ご愛読いただけたらと思います。


よろしくお願いいたします。







【第二部】 多賀城市立図書館の選書問題からみえてくるもの


中古編


1. 3万5000冊のうち1万3000冊が中古本だった


追加蔵書購入にかかわる選書リスト冊数














2.なぜ大量の中古本を買わされたのか



3.いくらで買わされたのか


中古は1冊1,000円、新品本は1冊2,000円/2015年1月6日CCC提出見積書より

(決算額は中古1冊920円、新品本2,085円)



4.図書館が古本を買うことは、通常あるのか?


「公立図書館(行政事務)の世界では、会計処理の問題として中古を購入することは基本的に

しません。調達は、物品会計規則に則って、原則として物品は必ず入札か見積もり合わせでな

ければなりません。古本でしか入手できない本を買うことはありますが、その場合には古書組

合に依頼して、購入した本が本当にそれだけの価値があることを証明する鑑定書を作成しても

らい、それを添付します」(大澤氏)「古本を買うと、公正さが保てないのが一番の問題」

「定価であれば、どこから購入しても不正の余地はありません。ところが、中古の場合には、

その価値がわからないため、不正行為の温床になりかねないからです」(池沢氏)


5.どれくらい古いのか?

中古選書・出版年度別


単独年で、もっとも多いのは13年で全体の15.5%。次いで14年の14.4%。これに複数年の10~12

年の34.6%を合わせると、6年未満のゾーンに全体の66%が収まる。 だが、残り34%は刊行から6年以上経過した中古本であり、それが4400冊を超える


6.1冊当たりの市場価格はいくら?


古本屋店主コメント

5年落ちの一般的な買取価格は1冊10~50円で、店頭売価は100円がいいところでしょう。

よほど良い本であれば300円つけることもありますが、それ以上では売れません」



7.市が「妥当な価格」と判断した根拠は?




8.選書リストには価格欄がない

 


上の図は、価格欄のない多賀城市立図書館の選書リスト

下の図は、価格欄のある海老名市立中央図書館の選書リスト



9.土砂と同じ「一山いくら」で購入


「----砂を買うのとわけ違うんですよ、図書館の本を買うというのは。あの砂はだめ、

この砂はいいとかというのではないですよ、砂を買うとき。砂は立米何ぼで買います。

けれども、図書の選定はやっているでしょう、中古本自体。全ての本をリストを上げて

もらって、教育委員会の皆さんはだめなものはだめだとはじいていったんでしょう。

だから、一冊一冊教育委員会が選定、チェックしたんでしょう、実際には」(2016年9月21日開催・多賀城市議会決算特別委員会で藤原益栄議員の発言)



10.大量の古本を買うと起きる現象は?

大半が2000年代。後述する新刊編の選書リスト「料理」の冒頭部分には、

ズラリと90年代が並んでいたのと比べたら、むしろ廃棄した本のほうが

新しいくらいである。これだけ大量の古本を買うのだから、当然、こういう逆転現象も容易に起こり得る。

11.どういう本を買っているのか



「多賀城市立図書館が追加蔵書購入した中古本ジャンル別一覧」


第1位・料理本 2620冊  

第2位・美容・健康 2146冊  

第3位・旅行 1218冊  

第4位・住まいと暮らし 1091冊 








12.どういう方針で選書したのか



・多賀城市教育の「選書基準」(2015年4月10日多賀城市教育委員会教育長決定)


図書館を利用したことがない方でも入れやすい雰囲気づくりをするために」、

また「本を介して人々がつながるコミュニティ空間を創るため、以下のジャンルから

重点的に選書する」として、「料理」「旅行」「実用書」「児童書」を重視するとしている。

この基準に沿ったことでCCCの選書に「料理」や「旅行」などの生活・実用書が多くなった。


・「鮮度が命」の生活・実用書は、中古ではなく最新のものを取り揃えるべき。

「果物を豊富に取り揃えて集客する」と宣言した食料品スーパーマーケットが、

一部意図的に腐りかけの果物を安く仕入れ、見かけだけ果物を多く並べているようなものだ。
・5年超経過した本(グラフ中の黄色と赤の部分)を大量に含んでいることが一目瞭然



新刊編


1.どんな本を選書しているのか



















・新刊で最も多く選書しているのは「人文」2414冊、新刊計1万9250冊のうち12.5%を占める。

・「人文」とは、CCC独自の「ライフスタイル分類」による分類に基づき、思想、哲学、宗教、

民族学などの文科系の学術的な分野を含む

・第2位が「児童書」の2360冊(12.3%)、第3位が「アート」で2332冊(12.1%)と続く。

この3ジャンルだけで全体の4割近くを占めている。

・中古本の選書では「料理」「美容・健康」「旅行」がトップ3で、生活・実用書ジャンルの書籍

が圧倒的に多かったのと比べると新刊分は、一般的な図書館の蔵書に近い。
 しかし、「経済」62冊、「産業」65冊、「法律」69冊と、実務書がいずれも極端に少なく、

やはり偏った選書となっていることがわかる。
・市教委が重点的に選定する分野に指定している「歴史・郷土」が、1018冊しかない。

新刊リストのうち5.3%。中古本での選書を調べてみても、213冊(中古全体の1.6%)しかない。中古本・新刊本を合わせた場合は全体の3.8%。市が重点指定していない「アート」を大量選書

する一方、重点指定した「歴史・郷土」が少ない。選定基準のなかで、「郷土・歴史コーナーは、史都多賀城として強化すべきコーナー

のひとつ」として、多賀城に関連した郷土資料、東日本大震災を後世に伝えるための

記録資料等を強調して列挙されている。


2.何回に分けて選書しているか


・第5回では「アート」を1089冊、「児童書」を1010冊も選書し、第6回では「ビジネス」

を555冊、第7回では「料理」を964冊、「自然科学」699冊といったように、毎回力を入れ

るジャンルを決めて、そのつど特定分野を集中的に大量選書している










3.どういうスケジュールで進められたか




4.新刊なのに、刊行年が古い本が異様に多い

・第8回以降は09年よりも古い本が急激に増えている

・特に第8回は、選書時点で刊行から6年超11年未満(05~09年)が570冊あり、11年以上

経過したものも188冊あり、1989年より古い本も115冊含まれている。



5.新刊なのに、古い10ケタISBN

6~8省略(『ほぼ月刊ツタヤ図書館』 2019年1月3日木曜日 謎のISBNその(1) 参照)




9.中古書店の在庫リストを元に選書?



 市民にとって残念だったのは、新図書館に、書店に並んでいるのと同じような新鮮な新刊

が大量に配架される情景が、きれいに消え去ったということ

・逆の立場からみれば、中古リストで新刊を買うことで、図書館の蔵書と書店の陳列商品

との差別化がしっかりとでき、併設の蔦屋書店への影響を最小限抑えることにCCCは、

見事に成功した


・もし、図書館側に、住民ニーズのより高い最新刊が2万冊も入っていれば、新刊書店の魅力

は、相当に色あせていたはず。図書館は、カフェの借景としてお洒落な空間を演出してくれれば、

それでいいのだから。


指定管理者が経営する書店の営業を考えれば、図書館の選書は、できるだけ書店の売れ筋在庫

とかぶらないようにならざるをえない。よってツタヤ図書館の選書が市民のニーズに応えられ

ないのは、書店併設のため「利益相反」という宿命的な問題であるといえる。


追加・謝罪の5日後に再犯?


●多賀城市立図書館の新装開館スケジュール

 CCCが謝罪した2015年9/10の直後に提出された第3回リスト2049冊はすべて中古だった。

市教委は一部受入を拒否したものの、最終的に7割以上は許可を出している。また、

その後の第4回は、市教委自ら作成したもので、それも含めた2ヵ月半にわたって選書作業

は完全にストップしている。




 武雄市の古本騒動で謝罪文が発表された5日後の9月15日に第3回選書リストが提出されて

いる。すべて「中古本」だ。刊行後10年超経過した本は一冊もなかったが、全体の約2割にあ

たる491冊は、2009年以前に刊行された本だった。

 世間を騒がせた中古本問題を気にしたのか、市教委は、この選書の受入を一部拒否してはい

るものの、7割以上は受入を許可している。さらに空白の2か月半挟んだ12月1日にも、

第5回・中古部分1700冊の選書リストが提出され、こちらについても市教委は、審査の

結果、ほとんどを受入許可している。

 古本騒動の渦中にあった、このときのCCC図書館運営事業に対する世間の信頼は失墜し

「ツタヤ図書館は、死んだに等しい」と言っても決して過言ではない状況だったはず。

 再度信頼を取り戻すためには、行動で示すしかない。よりによって、そんなときに、

中古本の大量選書を継続し、市当局も、それをやすやすと許可したのは、市民に対する

裏切り行為だったのではないか、という疑念がいまだ消えない。






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