2018年12月20日木曜日

●図書館で起きた時給180円事件(1)

 こんにちは、日向です。

 昨日、東京・練馬区立図書館の非常勤司書で構成される労働組合が「直接雇用の継続を求めてストライキ突入か」というニュースが飛び込んできました。

 12月19日現在、区教委と「一定の合意が得られた」として、直近のストライキは延期になりましたが、このニュースをきっかけにして、公共図書館の民間委託の是非についての関心が急速に高まっているようです。

 そこで、今回は、私が図書館の問題に関心を持つきっかけになった個人的な体験を披露したいと思います。

 以下は、2017年7月9日、「東京の図書館をもっとよくする会」の招きで、講演させていただいたときの記録です。そのダイジェスト版を、何回かに分けて、転載させていただきます。

 これを読めば、図書館の運営を丸ごと民間企業に任せると、どういうことが起きるのか、ツタヤ図書館だけの問題ではないことがおわかりいただけるかと思います。

 また、四面楚歌に立たされた労働者が、各地の労働組合の皆さんの支援の輪によって支えられていることも実感していただけるのではないかと思います。

よろしく御願いいたします。


1.区立図書館・時給180円事件

 私が図書館の問題を書くきっかけになったのは、個人的な事情です。都内の公共図書館を運営していたある民間事業者が、時給180 円でパートの人を働かせてしまったという事件がありまして、これが起きたのがうちの妻が勤めていた図書館でした。少し長いですが読み上げます。



  2011年夏、区立図書館の指定管理者である㈱TK(仮名)は、図書館蔵書2万冊に、盗難防止BDS 装置を装着する業務をパート従業員の時間外労働によって実施した。その際、割高となる時間外手当を支払うことを避けるため、パート従業員が余暇に内職として取り組んだかのように偽装して、完全出来高払いの給与(1枚7円)を支払った。(1日の仕事を終え、タイムカードを押してから図書館内で作業開始)


 その結果、作業開始当初、この作業にあたったパート従業員の賃金は、時給にすると180円にも満たない額となった。パート従業員を監督する立場にあった職員のA さんは「これは、不正な脱法行為ではないか」と、再三、館長及び地域学習センター長に中止するよう進言したが、まったく受け入れられらなかった。正しいことを主張したはずのAさんは会社から「トラブルを起こす人間」とみなされたのか、翌年3月末で契約更新を拒絶され、実質解雇された。
事件を報じるAERAの記事


 概略はこういう事件です。これがそのときの作業の出来高表(図表20「BDS タトルテープ装着作業表」枚数のみ掲載)です。赤で囲んだところは、30~50 枚で時給に換算すると200円以下のところ。青で囲んだところは100枚を少し超えていますが、大体300円とか400円のところです。

 当時の最低賃金・時給821 円を上回るためには、2時間の作業で1 日235 枚以上が必要なのですが、最後まで誰一人1 日235 枚達成できた人はいませんでした。中にはアフター5ではなく、非番の日にわざわざ出てきてやってらした方もいましたが、3 時間・4 時間やってもその枚数にならなかったということです。


2.どんな作業だったのか

 現場を知っている方は“1 枚7 円だったら、そんなに安くならないだろう”という疑問を持たれるかもしれませんので、作業マニュアル(図表21「BDS タトルテープ装着作業の基本的な流れ」)を出してみました。1 番から11 番までありますが、7 番までは付帯作業で、実際にテープを貼るのは8 番だけです。これから作業する本を出してきたり、リストを作ったり、それに団体カードで貸出作業をしたりとかして、やっとテープを貼れるんです。その後、後作業もあります。


3.A さんの中止進言と会社の報復

“1人1時間程度”とありますが、実際はみなさん2時間程度やっていらした――というのがこの事件の真相です。その中止を進言したのが、ここで「A さん」と書いたうちの妻です。すると、翌年1月、雇用主の運営会社は、妻に対して、4月以降、契約を更新しないと通告してきました。

 雇止めの理由書には、こう書かれていました。


“ルールを守らない。協調性がない。誠意がない。業務を遂行する能力、勤務態度が十分でないと認められるため”

 そのように虚偽の内容を出してきたものですから、ここからが納得がいかない、うちの妻がとった行動です。

4.納得いかないA さんがとった行動

①区へ公益通報

 まず区に公益通報しました。先に私の方から区長に“こういう事件に対処しないのですか”という手紙を書いたところ、区長部局から公益通報制度の利用を勧められましたので、妻がそれに応じました。で、所管するのがコンプライアンス推進課というところで、第三者機関としての外部の弁護士さん(公益監察員)に事件の調査を委嘱し、その人が関係者に事情聴取をして報告書を出すということでした。

 ところがこの公益監察員という第三者機関は、区に不正があったかどうかを調査するためのものであって、労働者個人を救済するための制度ではないのです。

“調査はするが、雇止めについては区には権限がないため何もできない。あなたが自分の権利を守るためには、自ら裁判を起こすか、権限を持っている労働基準監督署 (労基署)に行きなさい”と、妻は弁護士に言われたそうです。また“一緒に労基署に行きましょうか”とコンプライアンス推進課の職員に言われたそうですが、“区自らが不正行為を糾弾するつもりもないなら、意味ないじゃないか”と本人はたいへん憤慨しておりました。


②地域労組に加入・団体交渉を通じで解雇撤回を求める

 次に、地元の労働組合に入って、団体交渉という流れになりました。これは、他の会社でもよくあるパターンだと思いますが、雇用主の会社は、組合が申し入れた団交には、一応形だけは応じるふりをするがノラリクラリ対処する。“有期雇用なので更新拒否に理由は必要ない。内職の件は、区に説明して理解してもらった”と、うそぶき、組合が要求したことへの回答とか文書提出はすべて拒否するという対応を取りました。


③労働基準監督署(労基署)へ不当解雇と最低賃金法違反を通報

 もう一つは労基署です。労基署にも不法行為の中止の進言をしたら解雇されたと告発に出向きましたところ、対応した係官は、労働契約法の範囲内でしか指導できないとのこと。(1年ごとの契約なので、雇用主である会社は、単に契約を更新しなかっただけで、解雇ではないと主張すれば、労基署は、違法認定するのは困難)

 館長はじめほぼ全員が非正規で働いている指定管理の図書館で、労基署がこういう対応をすると、中でどんな不法行為があっても指定管理者のやりたい放題になってしまいます。

 時給180円で働かされたパート従業員に対する労基法違反についても、被害者本人からの申告がないと動けないというのです。しかし、本人からの申告は無理です。なぜなら会社が非常に強いプレッシャーをかけていて、うちの妻が告発しようとした次の週にミーティングをやって、全員に内職の実態について内申書みたいなものを出しなさいというパワハラをしていました。するとみなさん“私は最低賃金未満で働かされました”という事実を言えなくなって、申告も出来ない。もし、申告したら、妻と同様に契約更新を拒絶されかねません。

 ここは非常に難しいところでした。労基署は、妻からの申告を第三者からの通報として“一応受理はするけれども、結果はどうなるかは分からない”というような対応でした。
 その結果、“下手に正義感を発揮して、告発はしたけれども、告発者は一切守られない。権利回復は、ほぼ絶望的”というよう最悪の事態になりつつありました。

(「図書館で起きた時給180円事件(2)」につづく)


2018年12月19日水曜日

「大家さんと闘うボク」(2)

家賃は今すぐ下げられる
(発行:三五館シンンャ/発売:フォレスト出版)より



 こんにちは、日向です。

 先日の 「大家さんと闘うボク」(1) に続いて、本日も、拙著の告知をさせていただきます。

 先月刊行された『家賃は今すぐ下げられる』(発行:三五館シンンャ/発売:フォレスト出版)では、担当編集者N氏の実体験を事細かにレポートしています。






 顧問弁護士が何人もゾロゾロと出てくる大手サブリース会社と家賃値下げ交渉をしたN氏は、ある一言によって、それまで劣勢だった交渉の局面を一気に打開しました。

 そのときの交渉材料のひとつが更新料でした。

 その顛末は、本書をお読みいただくとして、今回は、この更新料の法的効力について解説した本書から一部、ダイジェスト(というより、こちらのほうが長い)にしてご紹介したします。






●更新料を払わないで訴えられたらどうなる?

 平成23年7月の最高裁判決によって「更新料は有効」との判断が示された。それまで「法的根拠がない更新料を請求するのは違法行為で無効である」との判決が何件か相次いでいた流れを根底から覆したもので、これにより「更新料は必ず払わないもの」との論調が勢いを増した。
 しかし、知っておきたいのは、このとき最高裁は、単に「更新料は有効」と認めただけで、「更新料の支払い義務」を無条件で肯定しているわけではないということ。

 まず第一に、「更新料が有効」とされるのは、1.高額すぎない(1年更新で3か月未満)、2.法定更新の場合にも更新料は払うと契約書に予め記載されていた--の2条件を満たしている場合に限ると言う基準が示された。
 ということは、契約書に明記されている1カ月分程度の更新料は、払わないと大変なことになると思いがちだが、現実には、そうとは言えない。

 大家側は、「更新料を払え」と店子を訴えることはできる。また、店子の更新料不払いを理由に契約解除を求めて提訴することもできる。しかし、そのことと、裁判所が「家賃高いと文句ばかり言ってないで、店子は、いますぐ更新料を払え」とか「更新料を払わないような店子は契約解除して叩き出しても良い」と言う判決が出ることとの間には、まだ大きな乖離があると言わざるを得ない。

 裁判所は、双方の事情を詳しく聞いたうえで慎重に判断することになる。その過程において「家賃高すぎる」との主張も店子側はおおいに展開できる。途中で裁判官から、更新料を払うかわりに家賃を世間相場まで下げる和解案が示される可能性も高い。そうなったら大家側にとっては、提訴は、完全に薮蛇だ。なので大家側は、まず提訴してこない。

 もし、敗訴となったとしても、その時点で更新料を払えば済むだけの話である。(請求時からの金利が加算されるが、元の額が数万円なので、加算額は、せいぜい数千円程度)
 立場の弱い店子保護の借地借家法の精神から鑑みて、単に家賃減額交渉がまとまるまで更新料支払い猶予しているだけの店子との「契約解除」を裁判所が安易に認めるとは考えにくい。

 それにもかかわらずネットの記事などで、「更新料を支払わないと、裁判に訴えられたら必ず負ける」とか「契約で定められた更新料の支払を店子が拒否したら、契約解除される」などといった大家寄りの発言をする弁護士(不動産業界の利害関係者)も少なくないので、そのような言辞に騙されないよう、くれぐれも注意したい。

●更新料請求は違法!

 「更新料は有効」として平成23年7月の最高裁判決の至った背景を解説しておこう。
大前提として、忘れてはいけないのは、この判決が、店子は大家に更新料を払えというものではなく、すでに店子が払った更新料を大家は返還しなくていいよというものであった点である。

 その数年前から「更新料を請求するのは違法行為で無効である」との判決が各地で相次いでいた流れからすれば、このとき、いよいよ最高裁でも同じ判断が下されるのではないかと、世の不動産事業者たちは、戦々恐々として見守っていた。

 ところがふたをあけてみれば、「常識的な範囲内で、契約にも定められていれば有効」という肩透かしを食らわすような結果になったのだが、この判断は、更新料の積極的な肯定ではなく、すでに払った分を返還しなくていいよという消極的な更新料の肯定だったのだ。

●サラ金を壊滅させた“鬼平判決”

 同じような話をみなさんもどこかで聞いたことがあるはず。そう、サラ金の過払い請求である。
 本来、法律で定められた利息制限法(改正前10万円以上100万円未満は18%)を超えた違法な金利を取っていると、法的には超えた分は返還せよという判決が出るはず。ところが、利息制限法超であっても、違反すると刑罰が課せられる出資法(改正前29.2%・最高40%)未満であれば、たとえ違法無効であっても、債務者が返済した分は返還しなくてもいいよという「みなし弁済」を認めていた。

 この利息制限法超・出資法未満の「グレーゾーン金利」で、サラ金は大儲けしていたのだ。契約書面・領収書面を交付していて、その契約のもとに債務者が任意に超過利息を支払っているのであれば、合法であると裁判所がお墨付きを与えていたからだ。

 ところが、2006年1月に突然、最高裁が法解釈を厳密に行って、この「みなし弁済」を認めない判決を出した。それまで法律が求める要件をすべて満たした貸し付けを行っていて、裁判をすれば連戦連勝だった貸金業者が敗訴したことで、業界は大混乱に陥った。

 以後、過払い請求が激増。訴訟になると貸金業者はことごとく敗訴。武富士をはじめとしたサラ金事業者は、壊滅的な打撃を受け、まるで氷河期に突入したときの恐竜のように、たった数年で次々と倒れていった。(逆に、弁護士激増で瀕死寸前だったはずの法曹業界は、おおいに潤った)

●ネット記事で洗脳する「お抱え弁護士」

 さて、賃貸住宅における更新料も、そうした文脈でみると、賃貸にかかわる不動産事業者にとって、更新料の有効性を問う裁判は、サラ金のグレーゾーン金利の再来のようにみえていたはず。件の最高裁判決が出るまでは、戦々恐々だったわけだ。

 来島氏がコメントしている通り、もし、最高裁が「更新料は無効」などと判断したら、過払い金請求と同じく、過去にさかのぼって、日本列島のありとあらゆる賃借人たちから、すでに払った更新料を返せと一斉に請求されかねず、サラ金業者のように殲滅まではいかないにしても、賃貸業界は、かなり大きな打撃を受けたはずだ。

 ところが、結果は「消極的な肯定」だった。最高裁も、更新料が無効との判決を出したときの不動産事業者への影響の甚大さも考慮したはずで、ドラスチックな変更は避けたというのが大方の法律家の見方だろう。

 「消極的な肯定」ではあっても、最高裁が更新料を「有効」であるとの判断を示したのも紛れもない事実。当然、賃貸事業にかかわる不動産事業者の利害関係者たちは、これを機に「更新料は支払い義務のあるもの」というキャンペーンを張りだした。ネット記事の多くは、不動産会社のスポンサードのため、あっというまに世間では「法定更新しても、更新料の支払い義務はある」という論調が定着した。

 しかし、積極的な肯定、つまり、大家側が更新料を請求して、それを店子側はあらかじめ契約で合意していたんだから、無条件で払いなさいという判決が出ているわけではない。
 なので、家賃減額交渉を行っていて、その交渉が決裂したために、やむなく更新料の支払いを猶予しているケースでも、裁判所が払えという判決を出すか、さらには更新料不払いを理由に契約解除を認めるかどうかは、かなり怪しいと言える。

 もし、そのような店子敗訴の判決が出たとしたら、実質的に、弱い立場の賃借人を保護する借地借家法の精神を大きく逸脱してしまうからだ。これでは、法律との整合性がつかない。

 サラ金の「みなし弁済」のときのように、事業者側が調子に乗って、債務者を次々と提訴すると、それまで「消極的な肯定」をしていたにすぎない裁判所が、弱い立場の賃借人を保護するために、突然、事業者側の契約手続きに、より厳格化を求める可能性も捨て切れない。

 だから、サブリース大手も含めた大家サイドは、「更新料を払え」という「積極的肯定」を求めた訴訟は、まずしてこないのではないかと筆者はみている。

 業界の賢い弁護士は、サラ金の二の舞いにだけはならないように静かにしているべきと考えているはず。一方で、「更新料は支払い義務あり」と言い続けるのがいちばん効果的だと認識していて、いまのところその戦略は、見事に成功していると言える。世間はそれをなんとなく受容してしまうからだ。。

 以上のようなことから、店子サイドは、闇雲に更新料を不払いにするのではなく、家賃減額交渉を行ったうえで、その交渉が決裂したためにやむなく更新料の支払いを猶予しているというスタンスをとり続けることが重要であると言えるだろう。


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「大家さんと闘うボク」(1)

 こんにちは、日向です。

 本日は、ツタヤ図書館関連は、いったんお休みして、先月刊行になりました拙著『家賃は今すぐ下げられる』の告知をさせていただきます。

 ズバリ家賃を安くする方法を紹介した本なのですが、2012年に三五館から刊行しました『家賃を2割安くする法』をベースにして、今回、最新の情報を盛り込んで全面改定しました。



(発行:三五館シンンャ/発売:フォレスト出版)より
家賃は今すぐ下げられる!



 最大の目玉は、もちろん著者独自の消費生活論なのですが、その論を見事に実証してくれたのが担当編集者N氏の体験談だったというところがミソです。

 コメンテーターとなった専門のコンサルタントの先生が「いや、それは交渉しても無理ですよ」と言うくらい、社内弁護士も多数抱えていそうな大手サブリース会社を相手に、ズブの素人であるN氏が更新時の家賃値下げ交渉をして対等に渡り合ったのです。

 この挿話部分を、N氏自からが、ベストセラーの書名をもじって、こう呼んでいました。


「大家さんと闘うボク」




諸般の事情でボツとなった、まぼろしのカバー




 裏話をしますと、実は、本書の表紙にも、このキャッチコピーが、あの本のパロディとして、大きく印字される予定だったのですが、諸般の事情によりまして、泣く泣くこのアイデアは、撤回されることになりました。

 イラストレーターさんが抜群に上手い(パロディなのに似すぎ!)だけに、いま思い出しても、少し残念ですね。



●更新料はタダになる!

 さて、ことの顛末は、本書をお読みいただきたいのですが、この事例のなかでも、大きなテーマになったのが「更新料」でした。

 いま住んでいる物件に住み続けたければ、2年ごとに、家賃の1カ月にあたる「更新料」を店子=借りる側が払うという、実におかしな慣習なのですが、ネットの記事を見ますと、法律の専門家たちが口を揃えて「明確に支払い義務があり、裁判になったら負ける」と脅してしていることに気づきます。

 私も、以前、ネット記事で、賃貸住宅の更新料は無効ではないかと書いたところ、弁護士と思われる方たちから「判例の主旨を理解していない」と、批判されたことがあります。
 彼らの言説は、一見もっともらしく響くのですが、よく中身をみてみると、賃貸業界の需給バランスを理解していない机上の空論です。

 大家さんサイドでも、多くの人は「更新料なんかいらないから、より長く住み続けてほしい」のに、これがあるばかりに「店子に退去されてしまって空室に苦しむことになる」と思っている人も実は、少なくありません。

「更新料なんかいらんから、10年でも20年でも住み続けてくれ」。2年に一度の更新料を取るばかりに「そろそろ引っ越しを」となるわけで、大家さんとすれば、「寝た子を起こすな」です。

 つまり、更新料をとってトクをするのは仲介する不動産業者だけで、店子にとってはもちろん、大家にとっても、実に不合理でおかしな制度なのです。

 そんなわけで、不動産の素人であるN氏ですが、顧問弁護士が何人もゾロゾロと出てくるなかで、この更新料の支払いをキッパリと拒否したのです。凄くないですか?
 次回、もう一度更新料について、さらに詳しく迫っていきます。

「大家さんと闘うボク」(2) につづく


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2018年12月15日土曜日

「『CCCの営業マン』~」を検証する(3)

こんにちは、日向です。

本日も、続けて「『CCCの営業マン』 と呼ばれた話題の市議を直撃!【後編】

の内容を検証します。



「指定管理者制度導入のときに大きく議論すべき。いちばんのねっこはそこ。直営から指定管理者制度の導入のときにいろいろと注文をつけるべき。一年間で公募するだとか。指定管理者に導入するならこういったタイムテーブルでやるべきではないかと。それができないのなら指定管理者制度はなじまないというような注釈つけて議論すべき」


CCCの指定管理者選定の妥当性を問う前に、そもそも新図書館の運営者を民間企業に委ねる「指定管理者制度」の導入するときに、その是非を市民は議論するべきだった。

もし異論があるのなら、そのときに公募期間を長くとるとか、そもそも図書館のような社会教育施設は、指定管理者制度の対象にすべきだはないといった議論があってしかるべき。

事業者の選定で文句を言うくらいなら、最初から制度導入時に反対しとけよというわけです。


理屈としては、確かに一理ありますが、和歌山市の場合、指定管理者制度導入も、一般の市民がなにがどうなっているのかよくわからないまま、あっという間に決まってしまったという事情を考慮しなければなりません。

形式的には、アンケートを行ったり、市民参加型のワークショップを開催したりして市民の意見を聞いたことにはなっているのですが、

地元市民の方に聞くと、ほとんどなんの議論も起きないままとんとん拍子に指定管理者制度の導入が決まってしまった印象が強いと言います。

そのあたりの顛末については、文末に紹介しています週プレNEWSに詳しくレポートしましたので、そちらを読んでいただきたいのですが、

実に巧妙な仕掛けがあちこちに施されていて、気がついたら、図書館は民間企業に運営させる流れができていました。


市民の要望や意見がキチンとした形で聞き入れられた形跡はほとんどみられませんでした。

しかも、その際の住民対策は、CCCが担当したわけではありません。

後にプレゼンでライバルとなる図書館流通センター(TRC)が、役所に代わってきれいに道筋を整えてくれていたのです。

全国に3500ある公共図書館のうち、一部委託も含めて500館を受託しているTRCは、この業界では圧倒的なシェアを誇るガリバー企業です。

図書館を民間に任せたい自治体にとっては、不動産を購入するときに、ローン申請からややこしい地権者との交渉まですべて代行してくれる業者さんのような便利な存在といえるでしょう。

なにゆえ、ライバルTRCが指定管理者制度導入までの道筋をきれいにしいてあげたのについては、あえてここでは述べませんが、戸田議員は、そういった経緯もある程度知ったうえで、指定管理導入のときに議論すべきだったと言っているのは、ズルイなぁと思いますね。


持論がコロコロ変わる

で、もうひとつは、クラスタの方からも、ご指摘がありましたように、指定管理にしたときの人件費についてこう述べている点です。

「定年退職前の年俸1000近くある職員が30人配置されて、それが人件費として配置されるのと比べたら、はるかに安いと思う」


「昔と比べて団塊の世代多く退職されてきているのて、人件費下げてきているけれども、いままで出先機関の問題というのが、たとえば年俸1000の正職員10人雇うだけで1億円。そういった議論で言うと、一概に安い高いとかいう論点になりますか」

市のベテラン職員を30人も雇用している直営の図書館なんてあるでしょうか? 

直営でも、館長と数人の正規職員を除けば、あとはすべて「非常勤」と呼ばれる時給でフルタイム働く人と、週20時間程度のパートタイマーなどの非正規スタッフを直接雇用しているところがほとんどのはず。

なのに、いまだに高額給与の公務員を抱えていると言い出すのには驚きました。


そのあたりの矛盾点をつかれると、新図書館とは規模が違うので比較が困難と言い出したり、それも苦しいと思ったのか、市民に喜ばれるのなら高くてもいいと、コロコロと持論が変わるのです。

「安いけれども、市民にとってこんな図書館なんか行きたくないわぁ、たとえばこんな公共施設なんか行きたくないわあ、職員だけがいつも座ってて、誰も市民がよりつかない公共施設もたまにはある。そんなところでかかる費用がどれだけ安くても、その建物自体が無駄ではないかという・・さえおこるしね」

「多額の費用かかってても、来館者数が多くて、市民にとってはシンボリック的なさまざまな目的の公共、図書館に限らずですよ、公共施設ならば、高い安いの議論ではなく、非常に市民にとって愛されて、市民に活用されていることにおいなら、非常にいい物件、お金のかけかたしているなぁと」


市の直営は、公務員の人件費が高い→非正規だらけで人件費高くない→高くても質の高いサービス・企画力が期待できる

というところまできました。CCCの運営が「質の高いサービス・企画力」を提供していると受け止めている人は、残念ながら、あまりいませんので、最後の持論が崩れるのも、時間の問題でしょう。

吹き抜けスペースの高い飾り棚に空箱を大量にならべた雰囲気のなかで、タダで雑誌や本をパラパラめくれるというだけの施設に、物珍しさで、大量の見物客が来るのです。

しかし、そのような時間を消費するだけの空間には、誰しも、やがては飽きるものです。

巨額の税金が使われるわけですから、飽きた後に、いったい何が残るのかが、厳しく問われるのだと思います。


「黒塗り」資料に隠された重大な疑惑…和歌山市“ツタヤ図書館”は官製談合の産物なのか?


著名教授も「だまされた!」ーー和歌山市・ツタヤ図書館“談合疑惑”の裏で、競合“ガリバー企業”の不可解な影


炎上しまくりの“ツタヤ図書館”で利権を巡る仁義なき「談合レース」が…!?







2018年12月12日水曜日

メディア公開しても、市民には黒塗りの理不尽

こんにちは、日向です。

昨日書きました
「『CCCの営業マン』~」を検証する(2)
にて


市民には絶対にみせないけれども、議員とメディアにはみせる。それがCCCによるツタヤ図書館の流儀なのでしょうか。

と書きましたところ、クラスタの方たちから

「TKOのときからそうだった」
「当時はあちこちで少しずつ出てくるパース図を懸命に収集していた」

とのご指摘をいただきました。

ツタヤ図書館を誘致した自治体はどこも、CCCを選定した瞬間から、自分のところの図書館のパースすら勝手に発表することができなくなるんですね。

和歌山市では、市民が開示請求したCCCの提案内容は真っ黒でしたが、委員会に提出されたCCC選定報告には、ちゃんとパースが掲載されていました。



左が委員会に提出されたCCC提案、右は市民に開示されたCCC提案


メディアに掲載された「ツタヤ図書館」の記事にも、パースが使用されていたところをみますと、CCCがメディアに提供する形で発表されたものでしょう。

自治体は、CCCの許可が得られないと、市民には開示することすらできないということなのでしょうか。


和歌山市民図書館の公式サイトに掲載されている「新図書館建設情報」も、昨年11/24のプレゼンを最後に更新が停止しています。新図書館のパースをアップするのに、CCCの許可が得られなかったでしょうか。


巨額の補助金で専用の建物を用意してあげ、巨額の開業準備費で、独自分類とTカードを取り入れた図書整備とシステム構築をさせてあげ、そのうえに、直営時代の2倍の指定管理料を払って運営を任せていても、なお、市民は、新図書館のパース1枚自由にみることもできない。それが「ツタヤ図書館」なんでしょうか。











2018年12月10日月曜日

「『CCCの営業マン』~」を検証する(2)

こんにちは、日向です。

先日に引き続いて
「『CCCの営業マン』 と呼ばれた話題の市議を直撃!【前編】【後編】の内容を検証します。


前編から後編にかけて続けられた戸田議員の発言で、もうひとつ気になったのは、以下の箇所です。

 筆者が、しつこく「CCCが応募していることを、市民に知らせるための期間が必要だったのでは?」との主旨の質問に対して、戸田議員は、こう回答しています。


「~本来、選定するときというのは、静謐な環境で選ばないことには、市民の声とか、外野の声聞きながら選ぶものではないんですよ。(ああ、そうなんですか)いや、そうですよ。中立中性(公平中立?)な誰が選ぶかわからないなかで選ぶというのが本来の選び方ではないですか。だって、偏って意見、偏った圧力、偏った思いのあるものがこれ公平さに欠くと思いません?」

この点は、戸田議員のほうが、まったくもって正しいことを述べていると思います。

 通常、指定管理者募集においては、選定結果発表前の応募段階から、企業名をあげてどこが応募していることを公表されることは、まずありません。

応募企業が事前にわかってしまうと、選定委員や市教委周辺に対して、外からの不当な圧力がかかりかねないからです。この後の私の質問でも述べているように、一般的には、応募社名は公表されずに審査が行われます。

その結果、選定された企業だけが社名と提案内容が発表され、落選した企業については、企業名や提案内容などは最後まで伏せられたままです。

そりゃあ、そうでしょう。結果的に、受託できなかったわけですから、落選した事実を世間に知られたり、あるいはアピールした独自ノウハウを公開されたりすればデメリットが生じるおそれがあるからです。

逆にいえば、選定された企業のほうは、これから公金をもらって受託するわけですから、できる限り情報開示に努めなければなりません。

にもかかわらず、和歌山市は、冒頭プレゼンだけを公開して、参加企業名を明らかにしました。当日、録音・撮影は一切禁止。

これって、ものすごくチグハグな対応だと思いませんか?

社名公表してプレゼン公開するのであれば、両者の提案内容は、ある程度公開しないと、市民にとって納得のいくものにはなりません。

事実、「TRCのほうが良かった」という意見も多かったようです。

しかし結果は、CCCの圧勝。プレゼン公開した対応とはうってかわって、選定プロセスの詳細を市民が開示請求したところ、市は、黒塗りだらけで開示してきました。

これに対して、現在、市内の図書館サークルの方たちが不服の申立を経て、審査請求まで行っています。

このような市の対応を振り返ってみますと、「もっと周知期間が必要だったのでは?」という私の質問は、まったくもってトンチンカンでした。

公開プレゼンは、単に

「市当局が選定プロセスを透明化したフリ」をするためのアリバイ作りにすぎなかった

わけですから、そのようなイベントになにか特別な意味があるわけがありません。

応募社名など開示する必要はなく、要は、選定後にCCCの提案内容をすべて開示すべきであり、もし開示できないとしたら、そのような事業者に公務を受託させてはいけないということなんです。

もちろん、どうしても秘匿したい企業ノウハウというのは、一部存在するのかもしれませんが、それは、ほんの一部分であり、例外的にその数行だけ不開示にすればすむ話です。

提案内容が真っ黒の「のり弁」になるなどということは、決して許されないと思います。

なお、CCCが選定された直後に行われた経済文教委員会で配布された資料を入手しましたところ、そこでは、市民に不開示としたCCC提案のパース図面がすべてきれいに公開されていました。そして新聞などメディアにも「CCC提供」として、その資料は配布されていました。

市民には絶対にみせないけれども、議員とメディアにはみせる。それがCCCによるツタヤ図書館の流儀なのでしょうか。

市民に開示したCCC提案図書館のパース
議員向けに委員会で配布されたCCC提案図書館のパース


話が脱線しましたので、元に戻しますと、

公開プレゼンでCCCとTRCが対決した結果、公平・公正な審査を経て指定管理者を選定した

ということに和歌山市はしたかったんだと思いますが、そのプロセスを詳しく調べていくと、おかしなことが次々と出てきてしまい、とてもじゃあないけど「公正なプロセスによってCCCが選定された」などと言えない状況であることが、私がこれまで発表してきた記事によって次第に明らかになってきました。

そのあたりのことも、戸田議員をはじめ和歌山市の議員の方たちには、目を背けず、ぜひ真相解明にご協力いただきたいと思います。


2018年12月9日日曜日

「『CCCの営業マン』 ~」を検証する(1)

こんにちは、日向です。

先日アップしました「『CCCの営業マン』 と呼ばれた話題の市議を直撃!【前編】【後編】」に思いのほか、たんさんの方が関心をもっていただいたようで、たいへんありがたく思い、かつ驚いております。

改めて読み直してみて、気づきました。
同議員の発言内容は、編集することなくそのまま掲載しましたので、一方的な意見の垂れ流しになっている恐れがありますね。 

 そこで今日は、この二記事の気になった箇所について、いくつか解説のコメントを入れておきたいと思います。

【前編】

--業者の選定で一週間とか二週間、これだけCCCの猛烈な批判があるなかで、和歌山市、県庁所在地の和歌山市が一週間で決めたというのは、みなさん絶句なんですが?
との質問に、戸田議員は、「僕はみんなが批判している理由がわからない」と述べています。

和歌山市の保育所関係の公募と公営住宅の指定管理のケースをあげています。前者は市が広報しているのに、市民が知らなかっただけ、後者は、公募期間は長かったのに結果的に一社しか応募がなかった。公募期間の長さよりも、一社しか応募がなかったこともほうが問題だというようなご主張されています。

すでに、みんさんお気づきのことと思いますが、この反論は、いつのまにか、一般市民の立場から、公募に参加する事業者の立場での話しにすりかわっているんてすね。
公募期間が長かったら、もっと多くの事業者が入札に参加したのではないかと。

しかし、私の質問は、最初から応募事業者の数なんか問題にしていません。問題だらけのTSUTAYAを展開するCCCの名前が出てから、二週間もたたないうちに決定されたことで、和歌山市民は、愛知県小牧市など、ほかのTSUTAYA導入自治体で起きた反対運動を完全に封じ込められたのではないかということでしたが、そうした論点を、ほとんど理解していただけなかったようです。

CCCとTRCの二社が応募してきて、急遽一部分のみ公開プレゼンとしたことで、たとえ応募期間が短くても、公正に審査さたれのだから、何が問題なのかという主張には一理あるようにも思えます。

しかし、週プレNEWSの連載にも書きましたように、そもそもこの公募自体が官製談合の疑いが濃厚です。公開されたプレゼンも冒頭のあたりさわりのない部分のみで、審査委員による肝心のヒアリングは非公開。あとから開示された両者の提案内容は、ほとんど黒塗りのうえ、ヒアリングでの発言内容ですら、大半が黒塗り。およそ「決定プロセスの透明性が確保された」とは言いがたい状況でした。

こうした状況について、戸田議員は、あまり理解されている様子はなく、説得力のある反論もありませんでした。お友達である前・武雄市長との交流のなかで培ってきた「TSUTAYA図書館は素晴らしい。それに文句を言う奴はおかしい」との意見を述べているにすぎないのではないかという印象を持ちました。

「ニーズに応える」という錦の御旗

そのあたりのことは「問題指摘されたことは? 分類とか古本の問題噴出は?」との私の質問に対する回答にもよく現れています。

「ようは、大(多数)の意見がおかしいおかしいとなるならばね、それは市民の半数がおかしいというならば改善の余地があるけれども、僕が海老名図書館に行ったときも、市民があんだけ来館者として多くの方が来られててね、さまざまな満足をした表情で、選書されている方やカフェ楽しんでいる方や子供が遊んでいるスペースで横に・・しているのかな。市民のひとりひとりの姿みていると、あんだけの人が入っていることを考えると、これは図書館以上の市民としての満足度が高まっているのかなと見方している」

これ、ツタヤ図書館のうたい文句である「何万人が来館」「市民の8割が満足」をそのまんま表したような感想ですね。(実際には、その数字の根拠すら怪しいのですがねここではそのことは問題にしません)

これにちゃんと反論しようとすると非常に長くなりますので、簡単に指摘しておきますと、公共の役割は、「利用者のニーズに応えること」ではないということなんです。

図書館は、社会教育機関ですが、学校教育を例にしますと、経営を任された民間企業が、生徒を集めるために、登校時間を自由にして好きな音楽や映像みるだけでいいという学校つくったらどうなるでしょうか。勉強嫌いの生徒のニーズにぴったりとあっているので一時的には入学希望者が激増するでしょう。でも、それは長続きはしませんよね。それまでいたマジメな生徒は入ってこなくなり、マナーも悪く荒れた学校になってしまいます。それでいて、「ニーズにこたえるため」に、生徒が喜びそうな機材やソファー、ゲームなど多数も取り揃えるために費用だけはバカ高くかかります。


社会教育機関である図書館の場合、レクリェーションという付随的な目的も付加はされていますが、やはり本来の存在意義は、住民の社会教育ですから、専門書、実務書、学術書なども一通り取り揃えて、調査研究したいという市民のためには、それなりに幅広い分野の図書をそろえ、専門の司書のレファレンスが必要です。ですから、突然、何千冊も料理や趣味の古本を大量に入れたり、カフェの音楽がうるさかったり、イベントが騒がしかったりするのは、図書館の機能としては、評価は低くなるはずです。

戸田市議が言うのは、おそらく「図書館」ではなくて、子育てセンターとか、公民館とか、市民交流スペース、体育館みたいな公共施設をイメージしているのでしょうけれど、図書館は、教育委員会が管轄する社会教育機関ですから、それ本来の機能をまず果たしたうえで、レクリエーション等の付随的な機能を満たすべきです。

そのことを踏まえたうえでの、市民の評価ということになりますと、CCC運営のツタヤ図書館は、すでに2013年の佐賀県武雄市をはじめとして全国に5館(ブックスカフェの延岡市を入れると6館)できていますので先行事例がどうなっているのか、多少なりとも調べる気があれば、利用者や登録者は減る一方で、貸出数にいたっては、最初から驚くほど少ないことが判明【1】していますから、和歌山市は、市当局はもちろん、議員さんももう少し勉強して発言していただきたいと思うわけです。

「いや、そんなことはいいんだ。図書館なんかいらない、欲しいのは無料レンタル屋だ」というのでしたら、それはそれで仕方ないことですので、施設の名称を「TSUTAYA館」に変更されてはいかがでしょうか。

【1】武雄市図書館・歴史資料館の場合、新装開館した2013年に貸出数は、急激に増えているが、その後は下降の一途を辿り、2017年に新たに増設した、こども図書館との数字を別にすると、本館のみの貸出数は、新装開館前の数値をすでに下回っている。一方、貸出数とは逆に、指定管理料と図書費は右肩上がりに増えている。詳しくは、以下を参照。

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