2025年11月28日金曜日

BJアーカイブ・2015年12月21日・ ツタヤ図書館誘致の市長に収賄疑惑

 

こんにちは、日向です。


7月から始めました「BJアーカイブ」ですが、ちょっと油断しているうちに、その後も、BJの古いツタヤ図書館批判記事が次々と消されていっているようですので、消えた記事の再録をそろそろ再開したいと思います。


前回は、2015年末の武雄市と海老名市に関する記事を何本か再録した後、昨年、香川県坂出市がツタヤ図書館を誘致したことから、急遽2020年にお隣の丸亀市がCCCを選定したときの記事を2本再録しました。

  
 本日は、また2015年末に戻って、当時、話題になった宮城県多賀城市議会での質疑をまとめた記事を転載したいと思います。

 タイトルをみてわかる通り、中身は、武雄市での出来事です。
 
 武雄市で発覚したクズ本騒動のスキャンダルが、翌年3月にオープン予定の多賀城市にも飛び火した格好になっています。
 
 地方議会の一般質問は、だいたいが事前に用意された台本を読み上げるだけの退屈なものですが、ツタヤ図書館問題に限っていえば、そのつまらないはずの地方議会が突如、議論が白熱して、それをウォッチャーたちがsnsなどが取り上げて、話題沸騰するようになりました。

 なんとかその雰囲気を伝えられないかと思い、多賀城市議会での市議と教育長とのやりとりを原稿にしましたが、しかし、議会での質疑のエッセンスを記事で再現するという試みの原稿は、BJ編集部ではスンナリとは受け入れられませんでした。長すぎたり、冗長になったりといったところに担当編集者の方が手を入れていただいて、なんとか掲載にこぎつけたという舞台裏がありました。

 というわけで、以下に2015年12月21日のBJ記事を再録しておきます。(今回からは、記事の雰囲気を忠実に再現するために記事をまるごと画像にしました)




https://web.archive.org/web/20160406120111/http://biz-journal.jp/2015/12/post_12968_5.html より









瑞浪市の異変は、なにを意味するのか?

 

こんにちは、日向です。


先日アップしました 11番目のツタヤ図書館が決定・岐阜県瑞浪市 のつづきです。


今年9月1日に開催されました選定会議(「瑞浪駅北地区複合公共施設整備運営事業公募型プロポーザル審査委員会」)によって、CCCを代表企業とする企業グループが優先交渉権者に選定されました。


黒塗りなしの意味


この審査結果をみて、まず最初に驚いたのがコンペに参加した4つの企業グルーブの事業者がすべて黒塗りなしで公開されていたことです。


審査結果なんですから、落選した企業グループも公表されるのは当たり前と思われるかもしれませんが、私がこれまでみてきたツタヤ案件では、競争上の利益を損なう(コンペで落選した事実が世間に知られると、ネガティブな印象を与えかねない)ことを理由に、選定企業以外はすべて黒塗りされてきました。


それが瑞浪市では、包み隠さず、応募企業グループ名がすべて公表されていたのですから、あれれっ、いったい、これはどういった風の吹き回しなのか?と思ったわけです。




4グループ応募の謎


 しかもですよ、応募したのが4グループもあったというんですから、この点も従来のツタヤ案件では考えられないことです。私が記憶している限りでは、直近の坂出市にしろ、読谷村にしろ、木更津市にしろ、宇城市にしろ、和歌山市にしろ、かろうじて競合が1グループ(または一社)あっただけで、三つ巴以上の競合になることは、ほとんどありませんでした。


それもそのはず。募集時点で、ある程度情報収集能力のある企業でしたら、最初からCCC圧倒的優位の雰囲気といいますか、「出来レースの臭いがプンプン」していることを察知して、受託可能性が低い案件には無駄に応募するのを避けると思われるからです。


参加してくる企業は、なにか特別の事情があって、お付き合いで応募しているんだろうなと、(あくまでも私の勝手な邪推ですが)とらえていました。


それが瑞浪市では、4グループ計13社も応募しているんですから、これまでのツタヤ案件には、ありえなかったパターンであることは明らかです。


RIAとの決別


次に応募企業の顔ぶれをみますと、晴れて優先交渉権者に選ばれたCCCグループには、“株式会社梓設計 中部支社”と“株式会社ライフ・クリーンサービス”の二社が構成企業として参画しています。


茨城県潮来市に本社を持つライフクリーンサーピス(ビル管理)は、和歌山市駅前に支社があることが判明。CCCから市民図書館の業務を請け負っているのかもしれないなと思っていたら、なんと、宮城県多賀城市、岡山県高梁市、香川県丸亀市と、CCCが受託している自治体に支社を構えていることから、なるほど、これまでCCCから施設管理業務を再委託されていた企業の可能性が濃厚です。


そんなCCCと懇意な企業が瑞浪市では、同じ企業グループとして応募してきれているのでしょう。


もう一社の構成企業として名前を連ねている梓設計のほうは、これまでのツタヤ案件にはないパターンです。といいますのも、CCCが表立って大型プロジェクトの設計段階からプロデュースする場合、2015年の海老名市(改装)や2016年の多賀城市(新築)、2017年の和歌山市(新築)がそうであったように、いずれも代官山T-SITEの設計を手掛けたアール・アイ・エー(RIA)とタッグを組むパターンでしたが、瑞浪市では、設計大手で公共施設の実績も多数ある別の会社と組んでいるんですね。


私が記憶している限りでは、CCCが表立ってタッグを組んだ設計事務所はRIAしかありませんでしたので、これは驚きです。(後述する周南市と延岡市が例外)

調べてみたら、昨年選定された坂出市でもCCCは、梓設計と組んでたんです。




CCCお得意の、開放的な吹き抜け空間に高層書架を設置して、ダミーの空箱を飾るという設計を担ってきたRIAとは決別して、なにか別の方向性を展開しようとしているのかなと思わざるをえません。


これは何を意味するのか。つらつらと考えていきますと、もしかしたら、CCCの社内事情と関係していて、これまでのようなゴリゴリの図書館風商業施設の設計を踏襲することに異議を唱える勢力が出てきて、増田宗昭御大の影響力が弱まっているのではないのか(smbcの影響力?)と感じました。


もしそうだとしたら、2021年の丸亀市から蔦屋書店を併設せず、2022年の宇城市から高層書架を設置せず、2024年の和歌山市からTカードも廃止するなるなど、次々と「CCCの独自性」が失われていくなかで、2013年に武雄市で確立されたツタヤ図書館のコンセプトが、坂出市以降では、いよいよ完全に崩壊することになるかもしれません。


ゼネコンと地元業者の影


そこで、思い出してほしいのは、今回、施工を担当する事業者は、今回の公募には入っておらず、また別途募集するという変則的なスキームが採用されていることです。(OD方式と呼ぶ)

建物の設計は2026年12月までに終えて、建設事業者はその翌年2027年に別途発注。工期は2028年11月というスケジュールになっています。


このことが何を意味するのか。出来レースの臭いがプンプンする案件に、なぜか4グループも応募してきたのかという謎とも関係しているのではないのかというのが、私の推測です。


つまり、出来レースの可能性も承知して、あえて応募してきた残り3グループの思惑としては、それぞれの背景には、どこかのゼネコンなり、地場の建設会社がいて、それらの企業にとっては、瑞浪市の運営と設計業務を一体化した公募に参加しておかないと、その後の施工業務に入札しにくい事情があるのではないのか。まったく的外れの妄想かもしれませんが、そうとでも思わないと、この異様な事態の説明がつきません。


TRCが出てこず、丸善雄松堂の意味は?


次に、落選した残り3グループの顔触れをみていきますと、これまた、おかしなことが次々とみえてきます。


まずは、二番目の“代表企業 : シダックス大新東ヒューマンサービス”からいきますと、ココは2016年に延岡市が市民センター・エンクロス(2018年オープン)の運営者を形だけ公募(すでにCCCに内定していたが、市民からの批判の高まりを受けて実施)した際に、圧倒的に不利ななかで応募してきたのがこの会社でした。さらに言えば、2022年にエンクロスが翌年からの二期目の運営者を公募した際、結果的にCCC以外どこも応募はありませんでしたが、事前に「応募を検討している」と噂された企業がシダックスでした(関係者からのリーク)。


圧倒的に不利なことがわかっていても、応募してくれる奇特な存在なのでしょうか。


次に三番目の“代表企業 : ホーメックス”のグループです。ここは愛知県に本社を構える中部地方を地場としているビル管理会社のようですので、岐阜県の瑞浪市の事業には、手を上げてくるのは当たり前ともいえるのですが、タッグを組んだ設計事業者が、著名な“株式会社内藤廣建築設計事務所”でした。

内藤設計といえば、CCCが事業計画段階から関与した山口県周南市の徳山駅前図書館を手掛けたところです。延岡市のエンクロスは、CCCが関与する前段階で事業計画が決まってましたので、これまた著名な乾久美子氏が設計を手掛けてましたが、周南市は、駅前に図書館を新築する計画そのものにCCCが深く関与していましたので、そこだけがRIAではなく、内藤設計だったのは、ちょうど同じ時期にRIAが手掛ける和歌山市の事業が進行していたため、ではないかと思っていました。


そして、“ 丸善雄松堂”を代表企業とした、もうひとつのグループこそが、今回のいちばんのミステリーといえるものです。丸善雄松堂といえば、TRC図書館流通センターとともに、丸善CHIを持ち株会社とした、その事業会社の一員です。TRCが公共図書館を主に受託しているのに対して、丸善雄松堂のほうは大学を中心とした学校図書館の運営を専門に受託している企業として有名です。


なにが不思議かといいますと、瑞浪市の複合施設に入るのは公共図書館ですから、ここはTRCが応募してくるのが自然なはずなのに、なにゆえ丸善雄松堂が応募してきたのかということなんです。ちなみに、これまでのツタヤ案件でCCCと競合したのは、ほとんどがTRCです。2017年の和歌山市からはじまって、2020年の宇城市と門真市、2022年の読谷村など、ほぼすべてで競合したのがTRCでした。業界最大手の同社が新しい図書館の運営に手を上げてくるのは当然のことといえますので、なにゆえ今回瑞浪市では、TRCではなく、学校図書館を専門とする丸善雄松堂が応募してきたのかが不思議で仕方ありません。


今回はTRCが前面に出ることを嫌ったか、あるいは丸善雄松堂が他の自治体とのバーターで、CCCにお付き合いしてあげたのかなぁと、これまた私の勝手な邪推・妄想が頭のなかを駆け巡ります。(たとえば、2019年に、大阪市の「こども本の森中之島」の運営者にTRC・長谷工が選定され、CCCもコンペに参加したものの敗退。逆に、翌年2020年門真市の複合施設運営者選定では、CCCが選定され、TRC・長谷工は敗退した)


ちなみに、このグループには、“株式会社 JTB コミュニケーションデザイン”が構成企業として参画しています。同社は、瑞浪市と同じく岐阜県の高山市では、複合施設の“維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者”としてCCCと一緒に選定されています。JTBは、高山市ではCCCとタッグを組み、瑞浪市では、CCCと競合しているんですね。そういうことは業界ではよくあることなのかもしれませんけれど、わざわざ受託できる可能性の低いところに出てくるのは、高山市の事業と関連したなにかが、あるのかなぁと、これまた勝手に邪推してしまいそうです。


というわけで、公募に参加してきた事業者の顔ぶれをみるだけでも、これまでとは明らかに違った雰囲気をひしひしと感じるわけですが、ウォッチャーからしてみれば「こういう厳正なプロセスを経てCCCが選定されたんですよ」ということを必死でアピールしているように思えてなりません。


そのためなのか、選定結果の概要とはいえ、応募企業名をすべて公開した瑞浪市。ちょうど同じ時期にCCCが選定された香川県坂出市では、私の審査請求にもかかわらず、競合他社の社名等詳細を頑なに開示拒否しているのと実に対照的です。


思えば、2015年に愛知県小牧市のツタヤ図書館案件が、住民投票によって否決されて以来、CCCにとっては、東海地方に公共センターの拠点を築くことは悲願になってましたので、その意味で瑞浪市を予想通りCCCが受託したことは、この後、名古屋を取るための重要なステップなったと言えるのではないかと思いました。


追記 上記に関係して、なにかご存じのことやご意見がありましたら、コメント欄にどしどし書き込んでください。よろしくお願いいたします。





2025年11月12日水曜日

11番目のツタヤ図書館が決定・岐阜県瑞浪市

 

こんにちは、日向です。


当ブログで取り上げるタイミングを逸していたのですが、先月、岐阜県瑞浪市が、駅前複合施設の運営者に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定したこと正式に発表しました。


瑞浪駅北地区複合公共施設の整備運営事業者が決定しました!

https://www.city.mizunami.lg.jp/kurashi/machizukuri/1005848/1011455.html



 老朽化した中央公民館と市民図書館を備える総合文化センターの機能を集約し、 新たな機能を追加した複合公共施設を整備。 想定延べ床面積は3200㎡程度。建設地はJR瑞浪駅駅北地区約3700㎡というプロジェクトです。

 これにより、2013年の武雄市から始まって、2015年海老名市、2016年多賀城市、2017年高梁市、2018年周南市、2020年和歌山市、2022年宇城市、2025年読谷村、2026年門真市、2028年坂出市につづいて、全国で11番目のツタヤ図書館が2029年に瑞浪市にできることになりました。


設計・工事監理に3億1840万円(税込み、以下同)、開館準備が4570万円、指定管理料は年間2億円が上限。建設事業者は、2027年度に別途発注する予定。予定工事費は32億8000万円。


瑞浪市による事業者の選定結果速報が今年9月5日でしたが、7月に書きました以下の記事中でも一覧表に瑞浪市を取り上げているように、もう事業構想がスタートした2021年頃からCCCが受託するのではないかと思われる情報が次々と出てきていましたので、ツタヤウォッチャーにとっては、予想通りの展開だったということです。






 今回の瑞浪市の複合施設整備のプロジェクトには、ひとつ大きな特徴があります。それは、運営業務だけでなく、建物の設計業務も一緒に担う事業者を募集したことです。


 “最も魅力ある運営等を行える事業者を選定し、設計の段階から運営を想定した意見を取り入れることで、より良いサービスを提供する上で必要な、設備や機能、デザインを反映した施設整備を期待”できるからと、瑞浪市では、その理由を説明していますが、ツタヤ図書館を誘致した自治体は、どこもCCCに建物の設計段階から関与させて、CCC仕様の箱物を建てることが大前提ですので、こうするのはある意味当然のことでしょう。


和歌山市のように、設計業務と運営業務を別々に公募したりしますと、CCCが選定前から裏でコソコソと動かないといけません。「出来レース」「官製談合」と批判されないためには、最初から設計と運営を一体化させておく必要があったわけです。


では、同じく駅前にツタヤ図書館を整備する予定の坂出市とはどこが違うのかと思われた方も多いと思いますが、瑞浪市の場合、今回選定されたのは、あくまで運営と設計業務を担当する事業者です。坂出市のように運営や設計に加えて施設の整備もすべてひっくるめて担当する事業者を募集したわけではないんです。(坂出市では運営をCCCが担当し、施工は大林組)


建物の建設工事については、今回の公募には入っておらず、また別途募集するという変則的なスキームが採用されています。(OD方式と呼ぶ)


2020年以降、建築資材や人件費の高騰によって、公共施設の施工については、入札不調が続出しています。一度決まった施工業者も、あとから「やっぱり採算が合わないからやめます」と辞退するケースも出てきていて、自治体としては、とっても頭が痛い状況が続いています。そこで、施工部分については、工事がスタートする直前に実情に合った予定価格を設定して公募することにしているんだろうと思います。


当ブログでも何度か取り上げてきました千葉県木更津市が、CCCを市民活動センターで選定した後、建設予定の市庁舎整備を担当するゼネコンが辞退したため、事業計画を再度作り直すという異例の出来事がありました。そういう事態を瑞浪市は回避したかったのでしょう。


基本計画あるのに、事業者に丸投げ?


さて、ここまで書いたところで、ほんとうに設計業務と運営業務を一体化して公募する必要性はあったのかという素朴な疑問がムクムクと湧き上がってきました。


建物の設計は2026年12月までに終えて、建設事業者はその翌年2027年に別途発注。工期は2028年11月というスケジュールになっています。開館予定は2029年3月ということですから、いま急いで設計と運営をセットにして発注なんかしなくても、とりあえず今回は、設計事業者のみコンペで選定して、運営者の選定などは、建物の完成がみえてきてからでも決して遅くはないのではないのか。


市当局は、“設計の段階から運営を想定した意見を取り入れる”ためとしていますが、すでに市の意向を詳しく盛り込んだ基本計画が昨年11月に策定されていますので、設計事業者には「この基本計画を反映した建物にしてください」と発注すればいいだけのことではないでしょうか。

主役はあくまで市民であり、その市民の意見を集約して、市の担当課が作成されたのが基本計画です。設計事業者も運営事業者も、その基本計画によって与えられた課題を実現するのがミッションです。民間事業者が自分たちのやりたいような建物を設計するなど、言語道断な話だと思いませんか。


https://www.city.mizunami.lg.jp/kurashi/machizukuri/1005848/1011455.htmlより


要するに、瑞浪市は、なにがなんでも運営者予定者(指定管理者)に、建物の設計までやらせたいという強固な意志を持っているんだなぁというのが私の感想です。


もしかして、市が作成した基本計画からして、すでにCCCの意向が強く反映されたものになっていて、瑞浪市も、これまでのツタヤ図書館誘致自治体がそうであったように、最初から、CCCにすべて任せることを決めていて、事業者の選定プロセスは、茶番というしかない、誰かが作った台本通りに進められたのではという疑念を今回も持っています。


長くなりましたので、選定プロセスについては、別のエントリーをたてて、詳しくみていきたいと思います。


よろしくお願いいたします。